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「脳出血の余命」はご存じですか?代表的な症状・後遺症・なりやすい人を医師が解説!

 公開日:2026/03/05
「脳出血の余命」はご存じですか?後遺症が残る割合やなりやすい人を医師が解説!

脳出血の余命とは?メディカルドック監修医が脳出血の余命・症状・原因・なりやすい人の特徴・治療法などを解説します。

佐々木 弘光

監修医師
佐々木 弘光(医師)

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医師、医学博士。香川大学医学部卒業。奈良県立医科大学脳神経外科に所属し、臨床と研究業務に従事している。現在、市立東大阪医療センターに勤務。脳神経外科学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医、脳卒中学会専門医、の資格を有する。

「脳出血」とは?

脳出血とは、脳の血管が何らかの原因で破れて出血し、脳細胞を破壊する病気のことをいいます。一般的に脳梗塞、脳(内)出血、くも膜下出血の3つを総称して脳卒中と呼ばれるため、脳出血も脳卒中の1つに分類されます。また専門的には、脳出血は部位や原因によって様々な種類があります。そして運動麻痺や感覚障害、呂律困難などの後遺症を残し、重症な場合は意識を失い、生命の危機に瀕する危険な疾患です。しかし普段から意識することで発症を予防することも可能です。ここではその原因や症状、予防法などを解説していきます。

脳出血の後遺症・余命

まず脳出血は起きた瞬間に脳の細胞の大部分が破壊され、何らかの後遺症は免れ得ないことが多いです。日本の脳卒中データバンクという統計によると、脳出血の患者さんが退院時に介助の必要がなく、機能的に自立が保たれている状態(modified Rankin Scaleの0~2レベルの状態といいます。)であった割合は31.6%とされ、自宅に退院できた割合は28.2%と報告されています。すなわち約6-7割の人は退院時に何らかの後遺症を残し、自宅退院が困難であったことが分かります。
また同じ統計によると、脳出血の経過が悪くなる要因として、より高齢であること、今まで脳卒中を起こしたことがあること、出血量が多いこと、意識不明など重症であること、が挙げられており、寝たきりや死亡する患者さんの割合も32.2%と非常に高く、重篤な疾患といえます。そして仮に最初は出血の量が少なかったとしても、遅れて出血が拡大する危険性もあるため、迅速な対応と入院が必要になります。
脳出血の余命についても研究がいくつかありますが、例えば2008年に報告された秋田県全域を対象とした研究では、50歳の脳出血患者さんの平均余命は男女ともに20~25年程度であったとされ、これは日本人全体の男女の平均寿命よりも10年程度短くなる可能性があると報告されています。しかし発症時の年齢や脳出血の重症度によって状況が大きく異なるため、一律で余命を想定することは難しく、脳出血以外(誤嚥性肺炎など)の合併症によって入院中に死亡する可能性なども含めて、5~10年程度の余命となる場合も考えられます。

脳出血の代表的な症状

脳出血は突然発症し、急激な症状を呈します。さらにそれらが後遺症となって、その後の患者さんの人生を大きく左右します。具体的には運動麻痺や感覚障害、呂律困難、嚥下障害といった神経の症状、突然の頭痛やめまい・嘔吐といった身体的な症状に加え、重症では意識不明になるなど、脳出血の部位や量に応じて多彩な症状を認めます。
脳は基本的に体の反対の動きや感覚を司っています。つまり右側の脳に出血が生じると、左の手足や顔面の麻痺、感覚を感じにくくなるといった具合です。また右利きの人の9割は左側の大脳の、特に前頭葉や側頭葉と呼ばれる場所に言語機能の中枢があります。従ってこれらの場所に出血した場合は、言葉が出にくくなったり、言葉の理解ができず意思疎通ができなくなったりする失語(言語障害)と呼ばれる症状を呈します。
その他に、例えば後頭葉と呼ばれる箇所は視覚に関わり、損傷すると部分的に視野が欠けてしまいますし、頭頂葉と呼ばれる箇所は空間認識や物事の処理・段取りなどに関わり、損傷するとそれらの複雑な処理能力が障害される可能性があり、大脳の損傷部位によって症状は様々です。
大脳以外に、大きく分けて小脳、脳幹とよばれる部分もあります。小脳は体のバランスなどを保つ役割をしていて、出血するとめまいや嘔吐、ふらついて立てない、物をうまくつかつかめない、といった症状を認めます。
また脳幹は呼吸、心拍、意識などの生命活動といった役割を果たし、文字通り生命の根「幹」となる非常に重要な場所です。従って脳幹の出血は生命の危機に直結することも多く、大変危険な場所です。

脳出血の主な原因

高血圧

脳出血の原因にはいくつかありますが、中高年以上で特に原因として多いのが高血圧や動脈硬化です。これは血圧が高いままで放置していると、血管の壁が脆くなり、破れて出血してしまうためです。また動脈硬化を誘発しうる喫煙、糖尿病、脂質異常症などもリスクとなります。

脳血管の異常

高血圧以外の原因として、脳動脈瘤、脳動静脈奇形や動静脈瘻といった血管の異常や海綿状血管腫、脳腫瘍から出血することもあります。これらの発症要因はそれぞれ異なりますが、異常な血管の発達などは家系的・遺伝的要因が影響することもあります。ただし、いずれにしても高血圧などの血管に負担がかかりやすい状態は出血のリスクになるので避けることが望ましいです。またこれらの疾患は脳ドックで頭のMRIを撮った時に偶然見つかることもあり、発見時は無症状のこともあります。

脳出血になりやすい人の特徴

性差・年齢層

脳卒中データバンクによると、脳出血は日本人の脳卒中による死亡の約20%を占めており、欧米人と比べて日本人は5倍以上、脳出血の割合が多いとされます。従って、そもそも日本人は脳出血に要注意な人種、と言えます。
また男性の方が女性よりも発症頻度が高い傾向にあるとされ、発症年齢については、男性では40歳台から脳出血の発生頻度が増えていき、60歳台でピークを迎え、80歳台まで発症頻度は高くなっています。一方、女性でも50-60歳台から脳出血の発生頻度が増え、80歳台でピークを迎えるとされています。

生活習慣

高血圧が原因の脳出血を起こした患者さんの平均血圧は、65歳未満の人で184/105mmHg以上、65歳以上の人でも175/93mmHg以上であったとされ、高血圧の放置がいかに危険かわかります。そして高血圧の最大の原因は高塩分食です。すなわち普段から味の濃い物などを好んで食べる人は注意が必要です。また血圧を測る習慣のない人や、病院に行った時だけ血圧を測って、大丈夫、と安心している人でも、実は自宅での血圧が高くなる“隠れ高血圧”だった、ということもあります。まずは家庭での血圧を記録する習慣をつけてみましょう。
さらにこれらの脳出血患者さんは、高血圧以外にも脂質異常症、糖尿病などの持病があったこと、生活背景に喫煙や過度の飲酒があったことも傾向として報告されており、加えて過去に脳卒中や心疾患の経歴がある患者さんも脳出血を起こしやすいとされています。特に脳出血が重症となる患者さんの一一因に、1日3合以上の高度の飲酒があったとの報告もあり、過度の飲酒にも注意が必要です。

季節性

発症の季節性についても報告があります。特に75歳以上の人の高血圧性脳出血は、夏よりも冬に1.3倍程度多かったと報告されています。従って冬場の急激な温度変化などにも注意が必要です。

脳出血の治療法

血圧を下げる、開頭手術

脳出血が軽度の場合、頭痛や嘔吐などの症状で病院に来院される人もいます。一方で急激に出血が拡大する重篤な場合は、その場で倒れて動けなくなったり、意識不明になったりして救急搬送されるケースもあります。特に突然発症の意識障害や片側の麻痺がある場合などは、救急隊員が高度な医療を提供できる病院や脳神経外科・脳神経内科のある病院を優先的に選定して搬送します。すなわち脳出血は脳神経外科や脳神経内科、救命救急科などでの速やかな対応が必要となります。
治療は出血原因の特定と血圧の安定が重要です。まず頭部CTや造影CT、時に頭部MRIなどの検査で原因を特定します。脳出血が確認されれば、発症直後は出血が少量であっても時間をおいて拡大する危険性があるため緊急で入院し、血圧を下げて安定させる治療を行います。基本的に出血が少量で手術をするメリットが低い場合は、入院中に血圧の安定化とリハビリを行いつつ、定期的なCT検査等で出血が自然に吸収されていくのを確認します。
一方、手術を行うべき状況は、命が切迫している危険な状態の時です。特に出血量が多く、正常な脳が圧迫されて押し潰されている脳ヘルニア、という状態は特に緊急性が高く、直ちに開頭手術を行い、出血を除去します。近年では小さく開頭して内視鏡を用いて出血を除去するような手術も多くなされてきています。また出血の原因が高血圧以外の場合にも、開頭手術を考慮する場合があります。一方、出血があまりにも巨大すぎる場合や脳幹出血の場合はそもそも手術が困難であり、発症時点ですでに手の施しようがなかった、という場合もあります。

リハビリ

脳出血の危険な状態が落ち着くまで最低でも2~4週間程度かかりますが、その間、内科的治療と同じくらい重要なのが、リハビリによる後遺症の軽減です。「リハビリテーション科」という診療科で、医師や看護師のほかに理学療法士、作業療法士、言語療法士と呼ばれるリハビリに特化した役職の人も所属しており、入院中のリハビリ治療を並行して行います。特に入院の初期は医療行為・治療のウェイトが高いのですが、徐々にリハビリのウェイトが大きくなっていくイメージです。
またリハビリ治療に特化した「回復期リハビリ病院」というものもあります。これは後遺症が中等度から重度の患者さんで、最終的に直接自宅に退院することが難しい場合に、さらに集中的なリハビリをするために移動(転院)する病院です。移動した先の入院期間については、症状によってさらに数か月から半年程度までおよぶ可能性もあり、その後も長期の福祉・介護施設やサービスの利用が必要となる場合もあります。

後遺症のケアと再発予防

脳出血によって生じた手足の麻痺や呂律困難、嚥下障害などは日常生活においても大きな障害になります。リハビリを終え、無事に自宅退院した後も、車いすや装具、杖、といった歩行補助具の使用やバリアフリー設備の改装、その他の介護物品をそろえる等の身体障害・介護サービスの利用が必要となる場合もあるため、本人や家族さんは担当医と相談して適切な申請を行いましょう。
通院によるリハビリの継続も重要であり、麻痺による筋力の衰えを予防することが可能です。また退院後に適切な血圧管理がなされていない場合、脳出血が再発する危険性もあります。従って、退院後も外来通院を継続して、降圧薬などの内科的治療を継続しましょう。

「脳出血の余命」についてよくある質問

ここまで脳出血の余命などを紹介しました。ここでは「脳出血の余命」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

脳出血は何年生きることができるのでしょうか?

佐々木 弘光医師佐々木 弘光(医師)

脳出血の余命を一概に説明することは難しく、出血の原因や出血量、部位、重症度によっても大きく異なってきますが、一般的な平均余命から10年程度短くなる可能性が考えられます。一方で高血圧性脳出血に限っては、男性は40歳台から、女性でも50-60歳台からと、比較的若年から発症頻度が増えます。従って、一命をとりとめ、麻痺などの後遺症が残ってしまっても、その後の外来通院による再発予防やリハビリによる後遺症の軽減を通じて、10~20年以上の長期的な余命も期待できます。特に若年者やもともとの健康状態が良い人ほど、残されている筋力や潜在的な脳機能に余力がある可能性が高いので、長期生存する可能性は高いとも考えられます。

まとめ

脳出血はある日突然発症し、重篤な後遺症を残して、その後の人生を大きく左右します。しかし高血圧などが原因は、日頃の生活習慣を見直すことで予防は可能です。また仮に脳出血を発症してしまっても、リハビリや介護サービスを利用したり、再発予防に努めたりすることによって、乗り越えられることもたくさんあります。もしご不安な場合は一度かかりつけ医や脳神経外科・脳神経内科の医師などに相談してみましょう。

「脳出血」と関連する病気

「脳出血」と関連する病気は12個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

内科系の病気

脳神経系の病気

脳出血の発症には生活習慣病が関連するものから脳血管の異常など様々な原因が考えられます。

「脳出血」と関連する症状

「脳出血」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

脳出血のサイン

いずれの症状も突然発症することが特徴的です。重篤な後遺症を残して、その後の人生を大きく左右する可能性のある病気なので、普段の生活習慣の見直しから発症予防に努めることが重要です。

この記事の監修医師