「血液検査のAST」は体の何を見ている?異常値の原因やALTとの違いも医師が解説!

血液検査のAST(GOT)を改善するには?メディカルドック監修医が数値が高い・低い主な原因や基準値、ALTとの違い、肝臓や心臓の病気の注意点を解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
血液検査のAST(GOT)とは?
AST(GOT)は健康診断でも測定される項目の一つです。数値の意味を正しく理解することで、肝臓だけでなく全身の状態を把握する手がかりになります。
AST(GOT)は体の中でどんな働きをする酵素?
ASTはアミノ酸代謝に関わる酵素で、肝臓・心筋・骨格筋などに存在します。これらの細胞が傷つくと血液中に漏れ出るため、数値の上昇は細胞障害のサインとして捉えられます。単独では原因臓器の特定が難しく、他の検査と合わせて評価します。
AST(GOT)とALT(GPT)の決定的な違い
ASTは肝臓だけでなく心臓や筋肉など全身の細胞に含まれる酵素です。一方ALTは主に肝臓に存在します。そのためALTが高い場合は肝障害が疑われます。ASTの方が高い場合は、アルコールの影響や筋肉・心臓の病気も含めて評価する必要があります。
AST(GOT)は一般的な血液検査で調べられる?
ASTは、静脈から採血した血液で測定できる検査項目です。健康診断や人間ドックのほか、肝機能を確認する目的で日常診療でも広く行われています。特別な準備は不要ですが、検査前の飲酒や激しい運動により一時的に上昇することがあります。正確に評価するためには、検査前日は生活習慣にも注意が必要です。
健康診断の「AST」の見方と再検査が必要な数値・結果
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
血液検査の「AST」の基準値と結果の見方
一般的な基準値は30IU/L以下とされています。ただし施設ごとに基準は多少異なります。31〜50程度は軽度上昇として経過観察となることもありますが、持続する場合は原因検索が必要です。単回の値ではなく、変動の有無も重要な判断材料です。
血液検査の「AST」の異常値・再検査基準と内容
51IU/L以上は異常値とされ、消化器内科での評価が勧められます。再検査では血液検査に加え、腹部超音波などが行われます。費用は3,000〜4,000円程度が目安です。MRI検査が追加される場合は、より高額になると想定されます。急激な上昇や症状がある場合は早めの受診が望まれます。結果に応じて生活指導や薬物療法が検討されます。
血液検査でAST(GOT)が低くなる主な原因
ASTの低値は注目されにくいものの、特定の状態を示すことがあります。背景を踏まえて評価することが大切です。
ビタミンB6が欠乏している
ASTはビタミンB6を補酵素として働く酵素であるため、体内でこのビタミンが不足すると酵素活性が低下し、血液検査で低値を示すことがあります。偏った食事や栄養不良、アルコールの多飲などが原因となることがあり、特に高齢者や食事量が少ない方では注意が必要です。食事内容の見直しや栄養補給により改善するケースもあります。
重度の肝機能障害
進行した肝不全では、ASTを産生する肝細胞そのものが減少するため、結果として血中のASTが低値となることがあります。この場合、数値が低いからといって安心できる状態ではなく、むしろ肝機能が大きく低下している可能性があります。アルブミンやビリルビンなど他の指標と合わせて評価し、早急な対応が求められることもあります。
透析中である
透析を受けている方では、ASTを含む酵素の値が低く出ることがあります。これは血液の希釈や代謝の変化、補酵素の不足などが関係していると考えられています。そのため一般的な基準値をそのまま当てはめると実態とずれることがあり、透析患者では経過や他の検査結果を踏まえた評価が重要になります。
血液検査でAST(GOT)が高くなる主な原因
ASTの上昇は多くの人が経験する所見ですが、原因は一つではありません。生活習慣から重篤な疾患まで幅広く含まれます。
アルコールや脂肪肝など肝臓にダメージがある
飲酒習慣や肥満に伴う脂肪肝では、肝細胞の障害によりASTが上昇します。初期は自覚症状に乏しいことが多く、健診で初めて指摘されるケースも少なくありません。生活習慣の見直しが改善の鍵となります。
肝臓以外の病気
ASTが圧倒的に高い場合、心筋梗塞や筋疾患、溶血性貧血などの肝臓以外の病気の可能性もあります。特に胸痛や筋肉痛などの症状を伴う場合は、肝臓以外の原因を含めた評価が必要です。
「血液検査のAST」の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「AST」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
急性肝炎・慢性肝炎
ウイルス感染や薬剤などにより肝細胞が障害される疾患です。発症から6か月以内のものを急性肝炎、6か月以上持続するものを慢性肝炎と呼びます。倦怠感や食欲低下、黄疸などがみられることがあります。血液検査や画像検査で診断し、原因に応じた治療を行います。消化器内科の受診が適しています。
肝硬変
慢性的な肝障害が進行し、肝臓の構造が変化した状態です。肝細胞の破壊によりASTが上昇することがあります。腹水やむくみ、出血傾向、意識障害などがみられることがあり、進行すると肝がんのリスクも高まります。定期的な検査と専門医による管理が重要です。
急性心筋梗塞
心臓の血管が詰まり、心筋への血流が途絶えることで発症します。心筋細胞の壊死によりASTが上昇することがあります。胸の圧迫感や冷や汗、呼吸困難などがみられ、突然発症する点が特徴です。命に関わるため、症状があれば直ちに救急要請が必要です。
多発性筋炎
自己免疫の異常により筋肉に炎症が生じる疾患です。筋細胞の破壊に伴いASTが上昇することがあります。手足の筋力低下や筋痛が徐々に進行し、日常動作に支障をきたすこともあります。血液検査や筋電図、筋生検などで診断し、専門医による治療が行われます。
「AST」の異常値を戻す正しい対処法・改善法は?
ASTの改善には原因に応じた対応が必要です。肝臓や筋肉などどの臓器が影響しているかを踏まえつつ、まずは生活習慣の見直しから始めることが基本となります。
お酒を控える
アルコールは肝細胞に負担をかけ、AST上昇の原因となります。飲酒習慣がある場合は禁酒または節酒を行うことで、肝機能の回復が期待できます。個人差はありますが、数週間から1か月程度の飲酒制限で数値が改善することもあります。継続的に数値が高い場合は、医療機関での評価も検討が必要です。
血液検査前日に激しい運動を控える
筋肉への強い負荷でもASTは上昇するため、検査前日に激しい運動を行うと一時的に高値となることがあります。特に筋トレや長時間の有酸素運動は影響しやすいため、検査前日は軽い運動にとどめることが望まれます。正確な結果を得るためには、普段と大きく異なる活動を避けることが重要です。
バランスの良い食事を摂取する
脂質や糖質の過剰摂取は脂肪肝の原因となり、AST上昇につながります。主食・主菜・副菜をそろえた食事を意識し、たんぱく質やビタミン、食物繊維を十分に取り入れることが大切です。また、過食を避け適正体重を維持することも重要なポイントです。食生活の見直しは長期的な改善につながります。
「血液検査のAST」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血液検査のAST」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
ASTはいくつから異常値でしょうか?
木村 香菜 医師
一般的には51IU/L以上で異常と判断されます。ただし基準値は施設により異なるため、検査結果の記載に従うことが大切です。
ASTが高いと、体にはどのような症状が出ますか?
木村 香菜 医師
軽度の上昇では自覚症状がないことが多い一方、原因となる疾患により倦怠感や黄疸、胸痛、筋肉痛などが現れることがあります。
お酒を飲まないのにASTだけが高い原因は何ですか?
木村 香菜 医師
筋肉の負荷や心疾患、薬剤の影響などが考えられます。ALTや他の検査値と合わせて評価する必要があります。
ASTとALTの両方を下げるには、日常生活で何をすれば良いでしょうか?
木村 香菜 医師
体重管理、飲酒制限、バランスの良い食事、適度な運動が基本です。数値が高い状態が続く場合は医療機関での評価が必要です。
まとめ
ASTは肝臓だけでなく全身の細胞障害を反映する指標です。単独の数値だけで判断せず、ALTや症状、生活背景と合わせて評価することが重要です。健診で異常を指摘された場合は放置せず、原因の確認と適切な対応につなげることが健康維持に直結します。
「血液検査のAST」の異常で考えられる病気
「血液検査のAST」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
肝臓の病気
循環器系の病気
筋肉・その他の病気
ASTの異常は肝臓の病気に限らず、心臓や筋肉など幅広い異常のサインとなることがあります。数値だけで自己判断せず、他の検査結果や症状と合わせて医療機関で評価することが重要です。
「血液検査のAST」と関連する症状
「血液検査のAST」と関連する症状は8個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
ASTの異常は自覚症状がないまま見つかることも少なくありません。一方で、胸痛や黄疸などの症状を伴う場合は、緊急性の高い疾患が隠れている可能性もあるため注意が必要です。
参考文献


