FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「起立性調節障害」とは?大人・症状・原因についても解説!【医師監修】

「起立性調節障害」とは?大人・症状・原因についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「起立性調節障害」とは?大人・症状・原因についても解説!【医師監修】

起立性調節障害は、自律神経の調節機能の乱れから、朝なかなか起きられないなどの不調をきたす病気です。

学童や思春期のお子さんに多く、この病気が不登校の原因となっていることもあります。

またこの病気の症状は周囲の理解を得にくく、本人は辛い思いをしているのに、ただダラダラ怠けていると思われたり、夜更かしで朝起きられないだけと思われたりなど、誤解を招くこともあります。

今回はこの病気について、主な症状と病気の原因・治療方法・早期発見のポイントまでを紹介しましょう。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

プロフィールをもっと見る
【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

起立性調節障害の症状と原因

うずくまる子供

起立性調節障害はどのような病気ですか?

  • 起立性調節障害はODとも呼ばれ、自律神経機能不全の1つです。自律神経には交換神経と副交感神経の2種類があります。交感神経は身体を活発に活動させる時に、副交感神経は身体を休める時に優位になります。ところがこの自律神経の調節機能がうまく働かないと、バランスが崩れ、様々な不快症状が発現するのです。起立性調節障害は、自律神経のバランスが崩れやすい思春期に起こることが多く、軽症例を含めると中学生の約10%がこの病気にかかるといわれています。

どのような症状が現れますか?

  • 朝は起こしても起きられず、起床時間が遅れます。また、立ち眩み・嘔気・頭痛など貧血様の症状、頭痛・腹痛などに悩まされます。気分が落ち込むなど、抑うつ症状となる場合もあり、心理的な因子が関与している場合も多いです。

起立性調節障害の原因を知りたいです。

  • そもそも人間は直立歩行するため、立ち上がった時に重力に逆らって血液を循環させるので、無理が生じています。この血液循環を調節する役割を持つ自律神経機能に問題が生じると、下半身に血液が滞留し、上半身は血液不足になります。そのため特に朝立ち上がった時に全身に倦怠感が生じるほか、脳にも血液が届きにくくなり、めまいや立ちくらみを引き起こします。また運動不足や心理的ストレス、水分の摂取不足などもこの病気を誘因・悪化させる原因です。

子供に多い病気なのですね。

  • 自律神経のバランスが崩れやすい思春期に差し掛かる、10歳~16歳に多く発症する病気です。小学生の約5%、中学生の10%がこの病気にかかるといわれています。また、朝起きられないといった症状から不登校に繋がるケースもあり、不登校児童・学生の3~4割はこの病気がみられるようです。思春期のお子さんは心理的ストレスを感じやすく、特に責任感が強く真面目に頑張ろうとするお子さんに発症しやすい傾向があります。そしてこの病気が不登校に繋がり、学校に通えないことが心理的ストレスになって、症状を悪化させるケースもあります。

大人が発症した際の症状・原因は?

  • 思春期に症状が完全に改善せずに、成人になっても症状が持続する方が1割程度がおり、またストレスによって再燃することもあります。大人の起立性調節障害も症状は子どもと同じで、朝起きられなくなったり、頭痛・めまい・立ちくらみなどを感じるのが特徴です。やはり自律神経のバランスが崩れていることが原因ですので、交感神経と副交感神経のバランスを整えるような生活リズム・食生活の指導や運動不足の改善を主に行います。

起立性調節障害の検査と治療方法

説明する看護師

起立性調節障害が疑われる場合は何科を受診しますか?

  • 子どもに多い症状ですので、小児科を受診してください。この病気は午後にかけて改善していくことが多いので、症状が強く出ている午前中にかかるのがベストです。

どのような検査をするのですか?

  • まずはめまい・立ちくらみ・頭痛・腹痛・顔色が悪いなどの症状、朝体調が悪いのに夜は元気になるなど、この病気の特徴が2~3当てはまれば起立性調節障害を疑います。次に鉄欠乏性貧血やてんかんなど、似たような症状が出る基礎疾患の検査をし、除外します。起立性調節障害としての検査は、新起立試験と呼ばれる試験を午前中に実施しています。仰向けに寝て10分間安静にした時と、起立時の血圧・脈拍・血流音を調べて診断するものです。現在はこの検査により、起立性調節障害を次の4つのタイプに分類しています。
  • 起立直後性低血圧(軽症型、重症型)
  • 体位性頻脈症候群
  • 血管迷走神経性失神
  • 遷延性起立性低血圧
  • その後、問診で日常生活の症状や心理的ストレスを測定し、重症度を判断します。起立性調節障害で最も多いタイプは体位性頻脈症候群です。血管迷走神経性失神は、失神や立っていられないほどの立ちくらみなど、強い症状を伴います。

起立性調節障害は治りますか?

  • 重症度によって治療期間は異なりますが、治ることが多い疾患であります。軽症の場合は治療に2~3カ月、重症の場合は2~3年完治までに要することが多いです。重症のお子さんは学校に通えていないことが多く、社会復帰には、保護者をはじめ周囲のサポートが必須となります。

治療方法が知りたいです。

  • 薬を使わない治療がメインです。立ち上がる時、立っている時に症状が強く出るので、頭を下にしてゆっくり起立するなどの日常生活の工夫を指導します。また、水分と塩分をしっかりとる、適度な運動をするなど血液循環改善のための指導もします。そのうえで、場合によってはミドドリン塩酸塩、β遮断薬、漢方などを処方することがありますが、薬だけの効果は薄いです。そして大事なのが本人や周囲がこの病気をしっかりと理解し、決して本人の性格によって引き起こされているわけではないということを共有することです。心理的ストレスが一因となっている場合は、ストレスを取り除くようなケアに取り組む必要があります。

起立性調節障害の予防と早期発見のポイント

子供を見守る親

起立性調節障害の予防方法はありますか?

  • はっきりとした予防方法はありませんが、自律神経機能不全が原因の病気ですので、自律神経のバランスを整えてあげる生活を心がけるといいでしょう。具体的には、早寝早起きをする、食べすぎに気を付ける、ぬるめの風呂に浸かって血行を促進するなどです。刺激物であるカフェインの摂取にも注意してください。またもしこの病気の治療過程で、水分不足や運動不足などが指摘された場合は、そこに気を付けると再発防止になるでしょう。ストレスを溜めないことも大事です。

早期発見のポイントを教えてください。

  • この病気はお子さんの発症が多いですから、症状をうまく訴えることができないことがあります。保護者の方がお子さんの生活に目を配り、朝辛そうにしている、食欲がなくなったなどの傾向があったら気にかけてあげることが大事です。またお子さんが朝起きられなくなったり、遅刻が増えたりしたら、本人の努力や性格の問題と決めつけ叱るのではなく、この病気を疑ってみることが大切です。本人と周囲がこの病気について事前に理解しておき、不調が見られたら早めに病院にかかることが早期発見に繋がるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 起立性調節障害は思春期に発症しやすい病気で、朝起きられないなどの症状は、本人以外にはなかなかうまく伝えることができません。思春期の難しさも相まって、コミュニケーション不足からこの病気の発見が遅れたり、見つからないまま学校に行けなくなっているお子さんもみられます。周りのサポートがうまく得られないと治療に取り組めず、心理的ストレスから症状が悪化するおそれすらあります。保護者の方だけでなく、学校やお子さんの友人などにもこの病気への理解を促し、支えてあげてください。

編集部まとめ

寄り添う親子
起立性調節障害は10歳~16歳に多く発症し、不登校の一因ともなっている疾病です。

自律神経のバランスの崩れから、朝起きられない・起きた時に頭痛や腹痛がするといった症状が現れます。

治療は自律神経の機能を整える生活環境や食生活の指導がメインになります。また、ゆっくり起き上がるなど生活上の工夫も大切です。

大人になって再発することもありますが、ほとんどは適切な治療をすれば改善します。

この病気は、朝が不調で夜になると元気になることが多いので、本人の怠慢や生活の乱れの問題と捉えられがちです。

決して本人の性格からくる問題ではないので、起立性調節障害が引き起こす症状を周囲もよく理解し、サポートしてあげることが大切です。

この記事の監修医師