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「高血圧の基準値」はご存知ですか?男女別・年代別の基準値も医師が解説!

 公開日:2025/01/12
「高血圧の基準値」はご存知ですか?男女別・年代別の基準値も医師が解説!

高血圧の基準値はどれくらい?Medical DOC監修医が診断基準や血圧が高くなる原因・気をつけたい病気・予防法などを解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

高血圧とは?

血圧とは、血液が心臓から押し出され血管の内側にかかる圧力のことです。血圧の高さは、心臓の血液を押し出す力と血管の太さや弾力性などにより決まります。上の血圧とは、心臓が収縮し血液を押し出すことで血管にかかる圧力です。収縮期血圧とも言います。一方、下の血圧は心臓が拡張した時の血管にかかる圧力であり、拡張期血圧とも呼ばれます。血液の量が多くなったり、末梢の血管が何らかの原因で細くなったり、硬くなることで血圧が上昇します。

高血圧の基準値

診察室において血圧が140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。診察室血圧と家庭血圧の間に差がある場合には、家庭血圧による診断を優先します。

男女別・血圧の基準値

高血圧の基準は男性、女性での変更はなく、一律に診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上とされています。

2024年(令和6年)4月から変わった高血圧の基準値

高血圧の診断基準の変更はありません。以前から診察室での血圧140/90mmHg以上、家庭での血圧135/85mmHg以上が高血圧の診断基準です。
全国健康保険協会(協会けんぽ)が健康診断において、未治療の高血圧の方への受診推奨基準を160/100mmHgへ変更したことでこのような誤解が生じているようです。受診推奨基準がなぜ変更になったかは分かりませんが、受診推奨基準が変わったとしても、血圧が高いことでの脳心血管病のリスクが変わったわけではありません。変わらず140/90mmHg以上の高血圧を認めた場合には、内科受診をお勧めします。

年代による高血圧の基準値

基本的には、高血圧の基準については年代に関係なく140/90mmHg(診察室血圧)です。しかし、年代や病態により降圧目標が異なります。75歳未満での降圧目標は130/80mmHg未満です。しかし、75歳以上の高齢者や、脳血管障害患者、蛋白尿陰性の腎臓病患者では140/90mmHg未満が降圧目標となっています。
特に高齢者では血圧が低すぎると、ふらつきなどが生じたり、日常生活に支障が出ることもあり注意が必要です。しかし、75歳以上であっても心血管病のリスクがあり、130/80mmHg以下の降圧が望まれる場合もあります。高齢者に関しては、個々の状態に合わせて治療目標を決定することが大切です。また、50代、60代の患者さんでも血圧が急激に下がることで、ふらつきなどが出る場合には、自己判断をせず、主治医に相談をしてみましょう。

血圧測定のやり方

家庭での血圧測定には、上腕カフ血圧計を用います。測定は原則2回行い、その平均値を血圧値とします。家庭血圧の測定は、自動血圧計を用いて行います。自動血圧計の精度は、日本製の装置であれば大きな問題はないです。高血圧の診断や降圧剤の効果判定のためには、朝・晩それぞれの測定を7日間(少なくとも5日間)程度行って判定します。

高血圧の主な原因

塩分過多

塩分の過剰摂取は血圧上昇の原因となります。最新の「令和元年国民健康・栄養調査」の報告では、日本人の塩分摂取量が多く、平均10.1g/日[1] でした。塩分を6g/日未満とすることで有意に血圧の低下がみられ、脳心血管病イベントの抑制が期待できます。このことより、減塩目標値は6g/日未満が推奨されます。減塩は高血圧の予防とともに、腎臓病の予防にもつながります。
高血圧とならないためにも、日ごろから減塩を心がけましょう。

肥満

近年の日本人の高血圧の患者さんの特徴としては、男性の肥満を伴う高血圧が増加しています。近年BMI≧25の肥満の割合は、20歳以上の男性では33%、女性では22.3%と[1] 増加傾向です。今後さらに増加する可能性が考えられ、これに伴い高血圧の割合も増える可能性があります。肥満の高血圧発症のリスクは、1.5~2.5倍と推定されています[2] 。肥満を予防することが、高血圧の予防につながるため、気を付けましょう。
最近は、運動不足の方も増えており、普段から食事や生活習慣の見直しを行い、若い時から高血圧を予防することが非常に大切です。有酸素運動により、収縮期血圧で2-5mmHg、拡張期血圧で1-4mmHgの低下が期待されると報告されています。運動を日常的に取り入れ、身体活動量が増えることが肥満の予防にもつながります。

喫煙・大量飲酒

一本の紙巻きたばこの喫煙で15分以上血圧上昇が持続すると示されています。喫煙することで、交感神経の亢進作用、酸化ストレスの増大、血管収縮が起こり血圧が上昇しやすくなります。また、慢性的な影響として、喫煙による動脈硬化も考えられます。紙巻きたばこ15本/日以上の喫煙者で、高血圧を発症する確率が有意に高いです。喫煙をしないようにすることが、高血圧予防の第一歩となるといえます。
飲酒の習慣も血圧上昇の原因となります。また、大量の飲酒は高血圧だけではなく、脳卒中や心房細動、がんの原因にもなり死亡率を高めます。高血圧を予防するためにはエタノールを男性で20-30mL(日本酒1合、ビール中瓶1本、ウイスキーダブル1杯程度)/日以下(女性はその半分以下)に制限しましょう。節酒をすることで高血圧を予防することができます。普段から気をつけましょう。

高血圧になりやすい人の特徴

飲酒・喫煙

1日15本/日以上の喫煙、エタノール換算で20-30mL/日以上の飲酒は高血圧のリスクになり得ます。禁煙、節酒を心がけることで高血圧を予防することができます。

運動不足・肥満

BMI≧25の肥満は高血圧のリスクをあげます。また、運動不足が続くことで肥満やメタボリック症候群となることも考えられ、普段からエネルギー摂取量が多くなりすぎないように、また運動不足とならないように気を付けましょう。

ストレス・睡眠不足

ストレスにより高血圧の発症が2倍以上高まることが報告されています。また、睡眠障害も高血圧の原因となります。ストレスをかけないようにすることは、現代において困難ではありますが、なるべくリラックスできるように生活環境を整える、また睡眠不足にならないようにすることが高血圧の予防につながります。

「高血圧」になると発症しやすい病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「高血圧」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

脳梗塞

脳の血管が詰まってしまうと、急に手足が動かしにくくなったり顔面の麻痺が起こったり、ろれつが回らなくなったりする症状が現れます。これが、脳梗塞の症状です。脳梗塞には2通りの発生機序があります。一つ目はアテローム血栓性脳梗塞といい、高血圧を含めた生活習慣病により動脈硬化が進み、血管が細くなることが原因で起こるものです。二つ目は、心房細動に伴い、心臓内に血の塊ができてしまいこれが脳に飛ぶことで脳の血管が詰まってしまうものです。生活習慣病を改善する事、不整脈がある場合には早めに治療を行い脳梗塞を予防する事でそれぞれの機序による脳梗塞を予防することができます。
また、脳梗塞によると思われる症状が現れた場合には、至急病院を受診しましょう。症状が強い場合には、救急車を呼び、救急外来を受診することも必要です。

くも膜下出血

クモ膜下出血とは、脳の表面のくも膜下腔という場所に出血した状態です。約8割は脳動脈瘤という脳の血管にできたこぶが破裂して起こります。急激な、激しい頭痛が特徴です。
クモ膜下出血をきたす危険因子としては、喫煙、高血圧の保有、1週間に150g以上の飲酒が挙げられています。喫煙で1.9倍、高血圧の保有は2.8倍、大量の飲酒で4.7倍とそれぞれリスクが増加します。生活習慣とともに高血圧をコントロールすることが非常に重要です。ハンマーで殴られたような急激で激しい頭痛が起こった時には、救急車を呼んで救急外来を受診しましょう。

狭心症

冠動脈という心臓に血液を供給している血管が何かしらの理由で細くなると、心筋への血流が悪化し酸素の供給が不十分となります。この状態が狭心症です。これにより、胸が締め付けられる感じや、痛みが生じることがあります。これを発作といいます。
この狭心症の発作が起こる原因には2通りあります。動脈硬化により冠動脈が細くなり、運動をしたときなど心臓の拍動が早くなった時に、血液の供給が十分でないと胸が痛くなります。これが労作性狭心症です。頻度が増えたり、症状が強い場合に心筋梗塞に移行することもあり、注意が必要です。
もう1つは安静時狭心症といい、安静時に胸の痛みが起こります。冠動脈が痙攣して細くなり、狭心症発作を起こします。
労作性狭心症は高血圧を含めた生活習慣病が危険因子となります。狭心症発作が起こる場合には、循環器内科を受診しましょう。また、胸痛が長引き症状が強い場合には救急外来を受診しましょう。

高血圧

高血圧とは、血管に過度の圧力がかかっている状態です。このため、高血圧が持続すると血管に負担がかかり脳出血をきたしたり、心臓に負担がかかり心不全を引き起こすこともあります。
高血圧は自覚症状があまり見られないことが多いです。頭痛、動悸、肩こり、めまいなどの症状が出た場合、高血圧による症状かもしれません。いつもと違い、おかしいと感じた場合には、可能であれば、まず自宅で血圧を測定してみましょう。血圧が自宅で135/85mmHg以上が持続する場合、内科、循環器内科を受診しましょう。症状がなくとも、健康診断で高血圧を指摘された場合には早めに受診することをお勧めします。
高血圧は放置すると、脳卒中や狭心症、心筋梗塞などの原因となります。早めに血圧をコントロールすることが大切です。

「高血圧の基準値」についてよくある質問

ここまで高血圧の基準値について紹介しました。ここでは「高血圧の基準値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

病気のリスクが上がる高血圧の基準値について教えてください。

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

複数の研究報告の結果より、血圧が130/80mmHg未満では脳心血管病による死亡リスクが低いことが分かり、これが75歳未満の成人での降圧目標となっています。これより高い血圧では脳心血管病の死亡リスクが増加すると考えられており、この降圧目標を達成できるように治療を行います。75歳以上の高齢者や、脳血管障害患者、尿蛋白陰性の腎臓病患者では、140/90mmHgが降圧目標です。

積極的な水分補給で高血圧を下げることはできますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

積極的な水分補給のみでは高血圧を下げることができません。

高血圧の診断基準は2024年から変わったのでしょうか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

高血圧の診断基準の変更はありません。以前と変更はなく診察室血圧で140/90mmHg以上家庭血圧で135/85mmHg以上が高血圧の診断基準です。全国健康保険協会(協会けんぽ)が健康診断において未治療の高血圧の方への受診推奨基準が160/100mmHgへ変わったことでこのような誤解が生じているようです。なぜこのように変わったのかは、疑問ですが、以前と変わらず高血圧による脳心血管病のリスクは血圧上昇とともに上がります。高血圧を認めたら、早めの内科受診をお勧めします。

40代で血圧の上が150・下が90の場合高血圧ですか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

75歳以下であれば、140/90mmHg(診察室で)以上であれば高血圧と診断されますので、40代での150/90mmHgは高血圧と考えられます。健康診断で指摘された場合、白衣高血圧の可能性もありますので、まず自宅で1週間程度血圧を測ってみてください。自宅でも135/85mmHg以上が持続している場合には、早めに内科、循環器内科を受診しましょう。

編集部まとめ 高血圧の基準値は140/90mmHgで変更なし!

高血圧は自覚症状が出づらい病気です。しかし、自覚症状がないからと言って高い血圧を放置することで脳卒中や狭心症、心筋梗塞などの心血管病の危険性が増えます。放置をせずに、改善するように行動することが大切です。
血圧が130~140/80~90mmHgの境界域では、まず生活習慣から見直すことが大切です。禁煙、節酒と適正体重を保つこと、6g/日以下の減塩を実践することで、改善が期待できます。140/90mmHg以上が持続する場合には、早めに病院を受診し、適切な生活習慣の指導を受ける事、また高血圧が持続する場合には降圧剤を使用することも検討されます。時に誤解をされることもあるようですが、高血圧の基準gは140/90mmHg以上で変更はありません。この値を上回るようでしたら、内科受診をしましょう。

「高血圧」の異常で考えられる病気

「高血圧」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

  • 心血管病(狭心症、心筋梗塞、大動脈瘤、大動脈解離など)

脳神経科の病気

  • 脳卒中(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など)

内分泌代謝科の病気

腎泌尿器科の病気

高血圧はさまざまな病気に関連しています。動脈硬化を進行させ、脳卒中や心血管病などの重篤な病気を引き起こします。高血圧は自覚症状が少ないですが、健康診断で高血圧を指摘された場合には早めに内科受診をしましょう。

この記事の監修医師