目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 健康診断
  4. 健康診断で「中性脂肪が高い」と言われたら?原因と対処法について解説!【医師監修】

健康診断で「中性脂肪が高い」と言われたら?原因と対処法について解説!【医師監修】

 公開日:2025/06/17
健康診断で「中性脂肪が高い」と言われたら?原因と対処法について解説!【医師監修】

中性脂肪が高いと言われたらどうすればいい?Medical DOC監修医が主な原因と改善方法、基準値や病気のリスクなどをわかりやすく解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

プロフィールをもっと見る
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

目次 -INDEX-

中性脂肪が高いと言われたらどうすればいい?

中性脂肪が高い状態が続くと内蔵脂肪が蓄積し、肥満やメタボリックシンドロームを招いて動脈効果が進行したり、生活習慣病を発症するリスクにもなります。
健康診断などで中性脂肪が高いと言われたら、何が原因かを知り、食生活や運動習慣を改善しましょう。

中性脂肪とは?

中性脂肪とは食物に含まれる脂質の多くで、体を動かすエネルギー源です。体内の中性脂肪は、利用されなかったエネルギーが中性脂肪に変換され、肝臓や細胞に蓄えられたものです。糖質が不足した時など必要に応じて分解されエネルギーとして利用されます。体内の中性脂肪が過剰になると脂肪肝や肥満の原因になります。

中性脂肪とコレステロールの違いは?

中性脂肪とコレステロールはどちらも脂質ですが、働きが異なります。
中性脂肪は体を動かすエネルギー源になる・脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の吸収を助ける・体温を維持するなどです。コレステロールはエネルギー源にはならず、細胞膜やホルモンや胆汁酸の材料となります。

中性脂肪と体脂肪の違いは?

血液中に存在する中性脂肪は、体を動かすエネルギー源です。中性脂肪がエネルギー源として使われず脂肪組織に蓄えられたものが体脂肪で、内臓の周りにつく内臓脂肪と皮下細胞につく皮下脂肪に分けられます。体脂肪率が高いと生活習慣病を発症するリスクが高まります。

中性脂肪が高くなる主な原因

中性脂肪が高くなる原因の多くは糖質・脂質・エネルギー・アルコールの摂りすぎなど食生活や運動不足によるものです。糖尿病など他の生活習慣病・メタボリックシンドローム・加齢による基礎代謝の低下やホルモンバランスの変化なども中性脂肪が高くなる原因になります。

エネルギーの過剰摂取

エネルギーを過剰に摂取し続けると、利用しきれず体内に蓄えられるため、中性脂肪が高くなる原因になります。
エネルギー摂取量は1日当たり、標準体重×25~30kcalにします。標準体重を維持できるエネルギー摂取量にしましょう。

糖質の過剰摂取

糖質は体内で分解されブドウ糖になってエネルギー源として利用されます。ブドウ糖は余ると中性脂肪に変換されるため、糖質の過剰摂取は中性脂肪が高くなる原因になります。
糖質を多く含む菓子やジュース類を控え、1日の糖質摂取量をエネルギー比率の50~60%にしましょう。

(例:成人男性60kg:必要エネルギー約1800kcal、糖質からのエネルギー900~1080kcal(225~270g程度))、

脂質の過剰摂取

脂質は1gで9kcalあります。糖質やたんぱく質は1gで4kcalなので、脂質の摂取量が増えるとエネルギー過剰摂取になり、中性脂肪がつく原因になります。
揚げ物や脂身の多い肉類を減らし1日の脂質摂取量をエネルギー比率の20~25%にしましょう。
(例:成人男性60kg:必要エネルギー約1800kcal、脂質からのエネルギー360~450kcal(40~50g程度))

アルコールの過剰摂取

アルコールの過剰摂取は肝臓での中性脂肪合成を亢進します。アルコールやつまみの摂取はエネルギー過剰になりやすく、肥満や脂肪肝を招き中性脂肪を高くする原因になります。
純アルコール量で1日25g(日本酒約1合、ビール大瓶1本633mL程度)以下にして、休肝日を作りましょう。中性脂肪の数値が500mg/dL以上の場合は膵炎の発症予防のため禁酒が必要です。

肥満やメタボリックシンドローム

肥満やメタボリックシンドロームなども中性脂肪が高くなる原因になります。内臓脂肪が多い状態は、中性脂肪を低下させるアディポネクチンという物質の減少や肝臓での中性脂肪の合成を亢進させるため血中の中性脂肪が増加します。
改善するには肥満の解消や現体重から1~3%の体重を減らし、維持することです。
痩せていても中性脂肪が高い人は、隠れ肥満(サルコペニア肥満)といわれる、筋肉量に比べて内臓脂肪が多くなっている状態です。エネルギー制限ではなく、食べる内容や食べ方を見直し、運動不足を解消しましょう。

健康診断の「中性脂肪」の見方と再検査が必要な「中性脂肪が高い」場合に関する数値・結果

ここまでは中性脂肪が高いと言われた場合について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

「中性脂肪」の基準値(正常値)と異常値

中性脂肪の基準値は空腹時(10時間以上の絶食)採血で30~149mg/dLです。
脂質異常症の診断基準は空腹時150mg/dL以上、随時(空腹時以外)採血で175mg/dL以上です。空腹時で500mg/dL以上ある場合は急性膵炎を発症する危険があります。

「中性脂肪が高い」ときの再検査内容

中性脂肪が高い時の再検査は血液検査をします。中性脂肪は食事によって影響を受けるため、原則として10時間以上絶食後の空腹時に行いますが、非空腹時の数値を確認する場合もあります。費用は保険適用となりますが、医療機関や検査・診察内容によりさまざまです。
健康診断などで中性脂肪が高いと指摘され、再検査や精密検査の結果を受けたら、速やかにかかりつけの医療機関や一般内科を受診しましょう。特に数値が高い場合は急性膵炎を発症する危険があるため、症状がない場合でもすぐに再検査・精密検査を受けましょう。
再検査をしても高値の場合、食事・運動などの生活改善をします。場合によっては薬物療法を併せて治療していきます。

「中性脂肪が高い」と発症する可能性のある病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「中性脂肪が高い」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

動脈硬化

動脈硬化とは、血管の壁にコレステロールがたまり血管が厚くなる、血管の弾力の低下、血管内が狭くなった状態です。動脈硬化の原因は加齢や脂質異常症・高血圧・糖尿病などの生活習慣病やメタボリックシンドローム、喫煙や運動不足などです。
動脈硬化は腎硬化症・虚血性心疾患・脳梗塞・脳出血などの疾患の発症の原因となります。
動脈硬化は生活習慣病を改善することが進行の予防になります。健康診断などで生活習慣病やメタボリックシンドロームを指摘されたら、速やかに一般内科を受診しましょう。

糖尿病

糖尿病とは血糖を下げるインスリンというホルモンの作用不足により、高血糖が続く病気です。発症の原因は遺伝因子や環境因子が関わっています。1型糖尿病と2型糖尿病があり、1型は自己免疫疾患でインスリンが分泌しないことで発症し、インスリン自己注射が必要です。2型はインスリンの分泌不足や効きが悪くなることで発症します。高血糖が長期間持続した状態は動脈硬化が進行し、合併症を起こすリスクが高まります。網膜症・腎症・神経障害が糖尿病特有の三大合併症です。
食事療法と運動療法が基本となりますが、食事療法と運動療法で十分な効果が得られない場合は薬物療法を併用します。
健康診断などで高血糖やHbA1cの高値を指摘されたり、体重減少・口渇・多飲・尿量の増加・倦怠感などの症状がある場合は速やかに一般内科を受診しましょう。

脂質異常症

脂質異常症の診断基準は、LDLコレステロールが140mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL未満、中性脂肪(空腹時)150mg/dL以上で、脂質の代謝異常の状態です。自覚症状がないため放置しておくと動脈硬化が進みやすくなります。主な原因は食べ過ぎ・過度の飲酒・肥満・運動不足です。女性は閉経するとホルモン分泌が少なくなるため、LDLコレステロールや中性脂肪が上昇しやすくなります。
食事療法は適正量のエネルギー摂取・肉より魚の摂取を増やす・菓子やジュースやアルコールを控える・野菜や海藻やきのこなど食物繊維を多く含む食品を多く摂ることなどです。食事療法を行っても改善しない場合は薬も併用していきます。
健康診断などでコレステロールが高いと指摘されたら速やかに一般内科を受診しましょう。

心筋梗塞

心筋梗塞とは血管の閉塞や血管に血栓が詰まり、心臓に血液が流れなくなり心筋の細胞の壊死が起こる病気です。多くの原因が動脈硬化によります。10分以上続く激しい胸痛や呼吸困難、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。
治療法は薬で血栓を溶かすことや、手術で閉塞した血管を広げたり新しい血管を作ります。再発予防は脂質異常症・糖尿病・高血圧などの生活習慣病の改善や薬物療法です。
激しい胸痛が続く、呼吸困難など、心筋梗塞を疑う症状があれば早急に救急要請をしましょう。

脳梗塞

脳梗塞とは脳の血管に動脈硬化が起こり、閉塞した血管に血の塊ができ血管を塞ぐ脳血栓症と心臓から血栓が脳に運ばれて血管を塞ぐ脳塞栓があります。半身のまひやしびれ、ろれつが回らない、立てない・歩けない、視野が欠けるなどの症状が現れます。脳の細胞はほとんどが再生しないため、後遺症が残る場合が多いです。
脳梗塞発症後4~5時間以内であれば、血栓を溶かす薬を注射し脳の血管に詰まった血栓を溶かす治療が可能なこともあります。この治療により、後遺症の軽減が期待できます。再発予防は生活習慣の改善と薬物療法を行います。
疑わしい症状があれば早急に救急要請をしましょう。

「中性脂肪が高い」ときの正しい対処法・改善法は?

※適切な食事と運動、生活習慣について触れてください。

魚や食物繊維を増やしましょう

中性脂肪を下げる食べ物は、魚(特に青魚など脂肪が多い魚)です。魚油に多く含まれるn-3系脂肪酸は中性脂肪を下げる作用があります。魚油は食後の中性脂肪の吸収抑制効果もあります。
野菜・海藻・大豆・きのこなど食物繊維を多く摂ることもおすすめです。食物繊維は中性脂肪や血糖の上昇を抑制する効果があります。

菓子やアルコールを制限しましょう

控えた方がいい食べ物は菓子・ジュースなど糖を多く含む食べ物やアルコールの多飲です。少糖類(砂糖・菓子・ジュース・果物など)は消化に時間がかからず、食べた後に中性脂肪や血糖が高くなるので摂りすぎに注意しましょう。

夕食のエネルギーを控えめにしましょう

夕食のボリュームが多いことや夕食後に菓子や果物の摂取・夜食の摂取は、中性脂肪の合成亢進や肥満の原因となり、中性脂肪が高値になりやすい原因となります。3食のエネルギーを同じ程度にするか夕食を1日の中で1番低エネルギーにすること、夕食後はエネルギーのあるものを摂取しないことをおすすめします。

食べ過ぎに注意しましょう

エネルギーの過剰摂取や肥満予防のために、満腹まで食べず腹八分目をこころがけましょう。ゆっくりとよく噛んで食べると食べ過ぎ防止や吸収が緩やかになります。野菜など食物繊維を多く含む食品から食べるようにすることで食後の中性脂肪値や血糖値の急上昇の予防になります。

適切な運動を習慣にしましょう

運動には脂質の代謝を促進させ、体重や内臓脂肪を減少させる効果があります。運動時間や頻度の目安は、1日合計30分以上を週3回以上または週に150分以上、中強度以上(通常速度の歩行に相当する運動強度)の有酸素運動(歩行、速歩、水中運動)がおすすめです。日常生活で座位の時間が長いと、下半身の筋肉を動かすことがなく、全身の血行不良になったり、代謝が低下します。座ったままの生活を避け、時々立ち上がったり、こまめに動くことをおすすめします。中性脂肪を下げるためには運動だけではなく、食事の改善を併せて実施することが重要です。

「中性脂肪が高い」についてよくある質問

ここまで中性脂肪が高いと言われた場合について紹介しました。ここでは「中性脂肪」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

健康に注意が必要な中性脂肪の値はどれくらいでしょうか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

中性脂肪の基準値は空腹時採血で30~149mg/dLです。空腹時では150mg/dL以上、空腹時以外では175mg/dL以上で異常値と判断されます。なお、空腹時で500mg/dL以上ある場合は、急性膵炎を発症する危険があるので、特に注意が必要です。

中性脂肪値が300以上で高い人はどんな治療が必要ですか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

中性脂肪値が300以上の場合、受診勧奨となります。まずは医療機関を受診し診察を受けましょう。血液検査の再検査や生活習慣の改善をしても高値が続く場合は薬物療法も併せて行います。

女性で中性脂肪が高い場合、主な原因はどんなことが考えられますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

中高年の女性で中性脂肪が高い場合には、女性ホルモンの影響が考えられます。閉経するとホルモン分泌が少なくなるため、LDLコレステロールや中性脂肪が上昇しやすくなることが知られています。

中性脂肪の高い人が控えた方がいい食べ物や飲み物を教えてください。

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

お菓子やジュースなどの糖を含む食べ物やアルコールを摂りすぎることは控えましょう。全般的に食べ過ぎや飲み過ぎはよくありません。満腹になるまで食事はせずに、ゆっくりとよく噛んで食べることで、過剰な食事摂取を抑えることができます。

編集部まとめ 中性脂肪が高いと言われたら食生活と運動習慣を改善しましょう!

中性脂肪は脂質の摂りすぎだけではなく、エネルギー・糖質・アルコールの過剰摂取、内臓脂肪型肥満や運動不足なども高くなる原因です。
中性脂肪を下げるには、適正なエネルギー摂取・菓子やジュースなどに含まれる消化されやすい少糖類やアルコールの制限・魚に多く含まれるn-3系脂肪酸の摂取や野菜など食物繊維の摂取を増やすなど食生活の改善や運動習慣の改善が効果的です。
中性脂肪が高い状態を放置してしまうと、生活習慣病の発症や動脈硬化を進行させて心疾患や脳梗塞などの病気を引き起こす危険があります。
健康診断などで中性脂肪が高いと指摘されたら早めに医療機関を受診しましょう。

「中性脂肪」の異常で考えられる病気

「中性脂肪」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

腎臓内科の病気

中性脂肪が高いまま放置してしまうと、肥満やメタボリックシンドロームを引き起こしたり、動脈硬化の進行や他の病気になってしまうリスクが高まります。健康診断などで中性脂肪が高いと指摘されたら早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師