「CT検査とMRI検査の違い」とは?見つかる病気やメリットも解説!【医師監修】

CT検査とMRI検査の違いとは?Medical DOC監修医がそれぞれの目的と違い/検査項目/見つかる病気などをわかりやすく比較解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
CT検査とMRI検査の違いとは?
CT検査とMRI検査は、レントゲン検査のように、がんをはじめとするさまざまな病気に対する画像検査の方法となります。健康診断でも用いられることもあります。
しかし、これらの違いや、どっちがいいのか、あるいは両方受ける方がいいのか、といった疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回の記事では、CTと MRIの違いをわかりやすく解説していきます。
まずは、それぞれの検査の違いについて、簡単に述べます。
- CT(Computed Tomography)
X線を使用し、体の断面を撮影します。撮影時間が短く(5~20分)、骨や肺の撮影に適しています。肺がん、肺炎、心疾患、肝臓疾患などの診断に用いられます。また、頭蓋骨骨折などの骨折の診断や、尿路結石といったカルシウムが豊富な病変の検出にも有効です。
空間分解能に優れており、異なる二つの点を識別できる最小の距離がとても小さいことが特徴です。 - MRI(Magnetic Resonance Imaging)
強い磁場と電磁波を使用し、水素原子の共鳴を利用して体の断面を撮影します。
高解像度の画像を提供することが可能です。撮影時間が長く(20~60分)、閉所恐怖症の人には不向きという欠点もあります。
MRIは高い組織分解能を持ちます。すなわち、異なる組織のコントラストや特性を識別できる能力が高いのです。高い組織分解能は、微細な組織の違いや病変をより明確に描写できることを意味します。これにより、腫瘍や異常組織の検出が正確になり、診断の精度が向上します。
MRIは特に高い組織分解能を持ち、軟部組織の詳細な評価に優れています。
そのため、脳、脊髄、子宮や卵巣といった婦人科系の臓器の撮影に適しています。
卵巣腫瘍などで良性か悪性かの鑑別をしたい場合にも信号の違いによって予測をつけることが可能です。
検査 | CT | MRI |
---|---|---|
使用原理 | X線 | 磁場と電磁波 |
撮影時間 | 5~20分 | 20~60分 |
適用部位 | 肺、心臓、肝臓 | 脳、脊髄、子宮や卵巣 |
メリット | 短時間で撮影可能、肺や骨の撮影に有効 | 高解像度画像、骨に囲まれた部位の撮影に有効 |
デメリット | エックス線被爆がある、骨や金属に囲まれた場所は不向き | 撮影時間が長い、閉所恐怖症の人には不向き、刺青などでMRI撮影ができない人がいる |
CT検査(CTスキャン)の目的と検査の流れ
それでは、CT検査の目的と検査の流れについて詳しく解説していきましょう。
CT検査の目的
CTスキャンは、体の断面画像を取得することで、内部の異常を迅速かつ詳細に検出します。肺がん、肺炎、心疾患、肝臓疾患、あるいは骨折の診断に適しています。
CT検査では、X線が体を通過するときの減衰(げんすい:つまり吸収される度合い)を計測し、これをCT値(Hounsfield単位、HU)として表示します。
CT値は、水の吸収値を0HU、空気を-1000HU、骨を1000HU以上として標準化されています。この値により、異なる組織の密度差を可視化し、診断に役立てます。例えば、腫瘍や血管の異常を見つけるのに有効です。
簡単には、骨のようなCT値が高いものは白く、逆に肺のように空気が豊富な臓器はCT値が低くなるので黒く写ります。
CT検査の検査方法・検査内容
CT検査は、患者がベッドに横たわり、CTスキャナーというドーナツ型の装置の中を移動することで行います。
装置はX線を使用して身体の断面画像を撮影し、コンピューターがこれを解析して詳細な3D画像を生成します。検査は通常、5〜15分程度で終了し、特定の部位を撮影するために造影剤が静脈投与されることもあります。検査中、技師は別室から患者を監視しており、声がけをしてくれることもあります。
CT検査の費用の目安・保険適用
費用は1万~3万円程度で、多くの場合、健康保険が適用されます。
健康診断の場合には、全額自費になることもあります。
MRI検査(MRI画像診断)の目的と検査の流れ
それでは、MRI検査について解説していきましょう。
MRI検査の目的
MRIは磁場と電磁波を使用し、高解像度の画像を提供することで、脳、脊髄、関節の異常を検出します。また、子宮や卵巣といった婦人科系の疾患の診断にも役立ちます。
例えば、脳の萎縮(いしゅく)具合や神経の変性についてもMRIで調べることができ、認知症の診断にも役立ちます。
MRI検査の検査方法・検査内容
患者は専用の衣服に着替え、金属製品をすべて外します。閉所恐怖症の有無を確認されることもあります。
検査対象部位を正確に撮影するために、患者はMRIスキャナーのベッドに横たわります。ヘッドコイルやボディコイルなど、特定の部位に適したコイルが使用されます。
強力な磁場とラジオ波パルスを使用して体内の水素原子を刺激し、その反応を検出します。これにより、詳細な断層画像が生成されます。撮影時間は部位や目的により20〜60分程度です。
必要に応じて、画像をより鮮明にするために造影剤が静脈投与されることがあります。
MRI検査の費用の目安・保険適用
費用は2万~5万円程度で、健康保険の適用が可能です。
CTと同様に、健康診断の場合には自己負担となる場合があります。
CT検査でわかる病気・疾患は?
ここではMedical DOC監修医がCT検査でわかる病気・疾患について解説します。
肺がん
肺がんは、肺の組織に発生する悪性腫瘍で、主な原因は喫煙、職業性曝露、空気汚染などです。
CTスキャンでは、肺がんは異常な塊や結節として映ります。肺がんの種類によっても画像の所見は変わりますが、一般的にはトゲトゲとした形の塊は悪性のものを疑います。
CTは肺がんの早期発見やステージングに非常に有効です。
治療法には手術、放射線治療、化学療法、免疫療法があります。治療はがんの種類とステージにより異なります。
持続する咳、血痰、体重減少、息切れなどの症状がある場合、早期に医療機関を受診するべきです。
呼吸器内科をまずは受診しましょう。
気胸
気胸は、肺の一部が破れて空気が胸腔に漏れ出すことで、肺が部分的または完全にしぼむ状態です。主な原因は外傷、肺疾患、自然発生(特に若年痩せ型男性に多い)です。
CTスキャンでは、空気が胸腔内に溜まり、肺がしぼんでいる様子が詳細に映ります。
健康診断などの胸部レントゲンで見つかる場合もあります。しかし、CTスキャンではレントゲンよりも正確で、小さな気胸や原因となる肺の異常も検出可能です。
治療法には、自然に回復を待つ方法、酸素療法、胸腔ドレナージ、手術などがあります。治療法は症状の重さによります。
突然の胸痛、呼吸困難がある場合、早急に医療機関を受診する必要があります。
呼吸器内科または胸部外科を受診します。
尿路結石
尿路結石は、腎臓や尿管に結石ができる病気です。主な原因は水分摂取不足、高カルシウム血症、遺伝的要因などです。
CTスキャンでは、結石は高密度の白い点として映ります。CTは結石の位置や大きさを正確に特定するのに非常に有効です。例え尿路結石が見つからなくても、尿路結石がある部分より腎臓側の尿管が拡張(かくちょう:ひろがっていること)していることで、結石を疑うこともできます。
療法には、自然排出の促進、薬物療法、衝撃波砕石術、内視鏡手術などがあります。治療は結石の大きさや位置によります。
強い腰痛、血尿、排尿困難などの症状がある場合、早急に医療機関を受診するべきです。
症状がある場合には、泌尿器科を受診します。
MRI検査でわかる病気・疾患は?
ここではMedical DOC監修医がMRI検査でわかる病気・疾患について解説します。
脳卒中
脳卒中は、脳の血管が詰まるか破れることによって引き起こされる病気です。脳に血の固まりができる脳出血、脳の細胞が壊死してしまう脳梗塞、さらに脳の表面の血管が切れてしまうくも膜下出血をまとめ、脳卒中といいます。
主な原因は高血圧、動脈硬化、心臓病、糖尿病などです。
早期発見と迅速な治療が重要です。治療法には血栓溶解療法、抗凝固療法、外科手術などがあります。リハビリテーションも回復に不可欠です。
MRIは脳の詳細な画像を提供し、微細な異常や初期の梗塞を検出できます。また、過去の出血も発見できます。一方で、CTは緊急時の出血や大きな梗塞の迅速な診断に有効です。
突然の片側の麻痺、言語障害、視覚障害、強い頭痛などの症状が現れた場合、直ちに医療機関を受診するべきです。
脳神経外科または脳神経内科を受診します。
子宮頸がん
子宮頸がんは、子宮の頸部に発生するがんです。主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)感染です。
子宮頸がんにとっては早期発見が重要で、治療法には手術、放射線治療、化学療法があります。定期的な検診とHPVワクチン接種が予防に有効です。
MRIはがんの浸潤範囲や転移の有無を高解像度で評価でき、子宮頸部の病変を詳細に調べることに役立ちます。一方、CTは主にがんの位置やリンパ節、肝臓や肺などへの転移を確認するのに使われます。MRIに比べて軟部組織の詳細な評価には適していません。
異常な出血、骨盤痛、異常な帯下がある場合は医療機関を受診するべきです。
婦人科を受診します。
卵巣腫瘍
卵巣腫瘍は、卵巣に発生する良性または悪性の腫瘍です。腫瘍性と非腫瘍性、良性と悪性に分けられ、さらに表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍の3つに分類されます。原因は遺伝的要因、ホルモンの影響、生活習慣などが考えられます。
MRIは卵巣腫瘍の診断に非常に有効で、腫瘍の大きさ、形状、内部構造を詳細に評価できます。T1強調像やT2強調像を用いて脂肪成分や血液成分を区別し、腫瘍の性質を評価します。また、造影剤を使用することで腫瘍の浸潤や血流状態を確認できます。CTとは異なり、MRIは磁場を利用するため放射線被曝がないのも利点です。
卵巣腫瘍の治療法には手術、化学療法、放射線治療があります。良性腫瘍の場合、手術で摘出されることが多く、悪性腫瘍の場合は化学療法や放射線治療が併用されることがあります。早期発見が重要であり、定期的な検診が推奨されます。
下腹部の痛みや腫れ、不正出血、消化器症状(便秘や腹部膨満感)が続く場合、早急に医療機関を受診するべきです。
婦人科を受診します。
CT検査で再検査・要精密検査と診断されたら?
CT検査で再検査・要精密検査と診断された場合には、疑われる疾患を確認するための追加医検査が必要です。例えば、肺がんを疑われCTで病変が見つかった際には、必要に応じて生検(せいけん)といって実際にその細胞を採取し、がんかどうかを調べる検査が行われます。
MRI検査で再検査・要精密検査と診断されたら?
MRI検査で再検査・要精密検査と診断された場合にも、その疑われる病気かどうかを診断するための追加検査が行われます。あるいは、子宮頸がんを疑う場合にMRIでほぼ子宮頸がんとの診断がついたとしましょう。その次には、肺や胸部から骨盤部のCTやPET-CTを撮影し、肝臓や肺、リンパ節、骨などへの転移がないかどうかを調べることになります。
「CT検査とMRI検査の違い」についてよくある質問
ここまでCT検査とMRI検査の違いなどを紹介しました。ここでは「CT検査とMRI検査の違い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
健康診断ではCT検査とMRI検査、どちらを受診した方がいいですか?
木村 香菜 医師
CT検査は肺がんや骨の異常などを短時間で評価できますが、放射線被ばくがあります。MRI検査は脳や脊髄などの軟部組織の詳細な画像を提供し、放射線被ばくがありませんが、撮影時間が長くなります。検査の目的や部位によって適切な方法を選ぶため、どちらを選択するかについての疑問がある場合には、医師と相談してみるとよいでしょう。
人間ドックのCT検査とMRI検査ではどちらの方が費用が高いですか?
木村 香菜 医師
CT検査とMRI検査の料金については、一般的にはMRI検査の方が費用は高くなります。
胸のCT検査でわかること、見つかる異常について教えてください。
木村 香菜 医師
胸部CT検査では、肺がん、肺炎、肺結核、気胸、肺塞栓症、肺気腫などの異常を詳細に評価できます。また、胸部大動脈瘤や心臓の形態異常、リンパ節の腫れも検出可能です。
CT検査のデメリットを教えてください。放射線の影響はありませんか?
木村 香菜 医師
CT検査の主なデメリットは放射線被ばくです。特に頻繁に受けると、累積放射線量が増加し、がんリスクがわずかに上昇する可能性があります。また、造影剤を使用する場合、アレルギー反応や腎機能への影響も考慮する必要があります。
MRI検査とCT検査はどちらが時間がかかりますか?
木村 香菜 医師
一般的にはMRI検査の方が時間がかかります。
まとめ CT検査とMRI検査の違いはX線を使うか磁場を使うかの違い!
CT検査はX線を使用し、短時間で肺や骨の評価に優れています。一方、MRI検査は磁場と電磁波を使用し、脳や軟部組織の詳細な画像を提供しますが、撮影時間が長くなります。どちらの検査が適しているかは、診断する部位や目的によりますので、医師と相談して選びましょう。
「CT検査・MRI検査」の異常で考えられる病気
「CT検査・MRI検査」から医師が考えられる病気は25個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
CT検査で異常が見つかる可能性のある病気
循環器系の病気
- 心筋梗塞
- 冠動脈疾患
消化器系の病気
- 肝臓がん
- 膵炎
- 胆嚢炎
泌尿器系の病気
- 腎結石
MRI検査で異常が見つかる可能性のある病気
整形外科系の病気
- 椎間板ヘルニア
- 関節炎
- 軟骨損傷
CT検査やMRI検査ではさまざまな疾患を検出することが可能です。それぞれに得意不得意があります。