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「ASTとALTを下げるには」どうしたらいい?3つの改善方法を医師が解説!

 公開日:2024/04/22
「ASTとALTを下げるには」どうしたらいい?3つの改善方法を医師が解説!

肝機能の数値、AST(GOT)とALT(GPT)を下げるには?Medical DOC監修医が改善方法や脂肪肝など肝臓病のリスク・基準値ほかを解説します。

関口 雅則

監修医師
関口 雅則(医師)

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浜松医科大学医学部を卒業後、初期臨床研修を終了。その後、大学病院や市中病院で消化器内科医としてのキャリアを積み、現在に至る。内視鏡治療、炎症性腸疾患診療、消化管がんの化学療法を専門としている。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医。

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肝機能の数値、AST(GOT)・ALT(GPT)とは?

AST(GOT)やALT(GPT)は、健康診断や血液検査で肝機能を測る項目として代表的なものです。いずれもトランスアミナーゼという酵素であり、高値の場合には肝機能障害などが疑われます。今回の記事では、AST(GOT)やALT(GPT)が高いと言われた場合に考えられる原因や対策について解説していきます。

肝臓の健康度を測る数値、AST(GOT)・ALT(GPT)とは何?

AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)は、GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)とも呼ばれます。ASTは、アミノ酸の代謝に関与する酵素の一つで、肝臓、心臓、筋肉、腎臓、脳などの組織に広く存在しています。
一方、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)とも呼ばれます。ALTもアミノ酸の代謝に関与する酵素の一つで、主に肝臓に存在しています。
肝臓の細胞が損傷を受けるとASTやALTが血液中に放出されるため、血中のAST、ALT値の高さは肝臓の損傷の程度を示す指標として利用されます。
ALTは肝臓の損傷をより正確に反映します。一方、ASTは肝臓以外の組織にも存在するため、肝臓以外の損傷も反映することがあります。そのため、ASTとALTの比率(AST/ALT比)も肝臓の疾患を診断する際の重要な指標となります。
ASTやALTは低いとどうなるのか、と思うことがあるかもしれません。これらの数値が低ければ肝機能は正常の場合がほとんどです。しかしながら、肝硬変などの病気では、障害を受ける肝細胞がほとんど死滅してしまっているため、ASTやALTは低く出ることもあります。

AST・ALTの検査方法は?

AST・ALTの検査方法は、血液検査によって行われます。

健康診断や肝機能の検査でAST・ALTが高い原因は?

肝機能検査でASTやALTが高い値を示す原因は多岐にわたります。慢性肝炎や肥満による脂肪肝では、ALTが特に高くなることが多いです。一方、肝硬変や肝がん、アルコール性肝障害ではASTがより高くなる傾向が見られます。
その他、ASTは肝臓以外の組織にも存在しているため、筋肉の損傷や筋ジストロフィーなどの筋疾患でも上昇することがあります。また、心筋が損傷を受けると、ASTが血液中に放出されるため、心筋梗塞でもASTが上昇することがあります。

検査でAST・ALTが高いと肝臓が悪い状態?

AST(GOT)とALT(GPT)が検査で高い値を示した場合、肝臓が何らかの理由で損傷を受けている可能性があります。ただし、ASTとALTが高いからといって必ずしも肝臓が重度に悪い状態であるとは限りません。軽度から中程度の上昇であれば、肝臓の炎症や軽度の損傷を示している可能性があります。一方で、これらの数値が非常に高い場合(正常値の数倍以上)は、重度の肝臓疾患や急性の肝障害を示唆することがあります。
結論として、ASTとALTの値だけで肝臓の状態を判断することはできません。他の肝機能検査の結果や、肝臓の疾患に関連する症状やリスク因子(アルコール摂取、肥満、ウイルス性肝炎の感染歴など)も考慮する必要があると言えます。
また、血液検査の直前に激しい筋トレを行うと、筋肉にダメージが加わることでASTが上昇する場合もあります。

検査でAST・ALTの数値が高い人の改善方法・下げる方法は?

それでは、検査でAST・ALTの数値が高い場合に、改善する方法について解説していきます。

食生活を見直す

肝機能は食事の影響を受けることがあります。特に、脂肪肝はASTとALTの数値を上げる原因の一つです。揚げ物やファストフードなどの高脂肪食を控え、野菜や果物、全粒穀物、白身魚などの低脂肪食品を積極的に取り入れましょう。

運動を習慣化する

運動は肝臓の健康を促進し、体重管理にも役立ちます。ウォーキングやジョギング、水泳など、自分に合った運動を定期的に行いましょう。まとまった時間を毎日確保することが難しい場合には、まずは「通勤の際に一駅分歩く」「歩いて買い物にいく」など、日々の生活の中で活動量を増やすような工夫をしてみましょう。

お酒の飲み過ぎをやめる

アルコールは肝臓に負担をかけるため、摂取を控えるか、適量にとどめることが重要です。1日あたり日本酒は1合、ビールなら中びん1本程度までにしておくことが勧められます。検査項目の一つγ-GTPが高値の方はお酒の飲み過ぎが疑われますが、ASTやALTの上昇も伴っている場合にはアルコール性肝炎の可能性もあります。その際は断酒が必要な場合もあります。

健康診断のAST(GOT)・ALT(GPT)の見方と精密検査が必要なAST(GOT)・ALT(GPT)に関する数値・結果

健康診断・血液検査のAST・ALTの基準値と結果の見方

それでは、AST・ALTの基準値と結果の見方について説明します。
日本人間ドック学会では、AST・ALTの検査結果を以下の表のように定めています。

基準範囲 要注意 異常
AST 30以下 31-50 51以上
ALT 30以下 31-50 51以上

(単位 U/L ユニットパーリットル)
こうした基準によって、健康診断での血液検査結果は「正常」「要注意」あるいは「異常」と判定されるのです。

健康診断・血液検査のAST・ALTの異常値・精密検査基準と内容

AST、ALTはいずれも51U/L以上の場合には、肝機能が一時的に悪くなっているのか、あるいは病気があってASTやALTが上昇しているのかを詳しく調べる必要があります。
精密検査では、肝機能検査の追加検査を血液検査で行います。例えば、ASTやALT以外の肝機能指標(ALP、γ-GTP、ビリルビンなど)を測定します。また、ウイルス性肝炎の検査として、B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の感染を調べます。
さらに、超音波検査(エコー検査)で肝臓の形態や脂肪肝の有無などを確認します。必要であれば、CTやMRIで肝臓の詳細な画像診断を行い、肝臓の病変の有無などについて詳しく確認します。
こうした検査費用は施設や検査内容によって異なります。保険診療が適用される場合もありますが、自己負担が必要な場合もあります。具体的な費用については、受診する医療機関に事前に確認してください。
再検査や精密検査は、かかりつけ医や専門の肝臓病センター、大学病院などの専門医療機関で行うことが一般的です。異常値が確認されたら早めに(数週間以内に)精密検査を受けることが勧められます。

肝機能のAST・ALTが高い人がかかりやすい病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、AST・ALTが高いと指摘された人にとって注意するべき病気・疾患を紹介します。

急性心筋梗塞

急性心筋梗塞は、心臓の血管(冠動脈)が血栓などによって詰まり、心筋が酸素不足に陥ることで起こる病気です。主な原因は、動脈硬化による冠動脈の狭窄(狭くなる)や閉塞(詰まる)です。狭心症と似ていますが、心筋梗塞はより重篤で、心筋が壊死します。
AST、ALTはともに増えますが、AST>ALTのパターンをとることが多いです。
心筋梗塞の疑いがある場合、速やかに救急車を呼び、病院で治療を受ける必要があります。初期治療では、血栓溶解療法や冠動脈造影による冠動脈内ステント留置術(PCI)が行われることが多いです。
胸痛、胸の圧迫感、息苦しさ、冷や汗などの症状が5分以上続く場合には、すぐに医療機関を受診することが必要です。
心臓内科や循環器内科で診察を受けることになります。

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)などのウイルスによって引き起こされる肝臓の炎症です。感染経路はウイルスによって異なり、血液や性行為、食品や水などが原因となることがあります。
AST、ALTはウイルス性肝炎の急性期では高値を示すことがあります。慢性化した場合には、肝細胞が壊れ、減っていきます。すると、炎症を起こす細胞自体がなくなるので、ASTやALTは徐々に減少していきます。
ウイルス性肝炎は、原因となるウイルスによって治療法が異なりますが、B型肝炎ウイルスによる急性肝炎では一般的に抗ウイルス薬は使いません。B型慢性肝炎の場合には、インターフェロン(注射薬)と核酸アナログ製剤(内服薬)を行います。C型慢性肝炎の場合には、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の内服治療が行われます。
黄疸、倦怠感、食欲不振、腹痛、発熱などの症状が現れた場合には、肝臓内科や消化器内科で診察を受けましょう。

脂肪肝

脂肪肝は肝臓に脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。原因には、肥満、高脂血症、糖尿病、過度のアルコール摂取などが挙げられます。
脂肪肝の改善には、適切な食事、定期的な運動、体重管理などの生活習慣の改善が重要です。また、アルコールを控えることも肝臓への負担を軽減します。お酒を飲まない人の脂肪肝のなかにも肝炎になるケースがあり、「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と呼ばれます。これは、肝硬変や肝がんの前段階となってしまうこともあります。
脂肪肝は特に自覚症状がないため、定期健康診断で脂肪肝の所見があった場合には再検査や精密検査を受けるようにしましょう。肝臓内科や消化器内科で診察を受けることが一般的です。

アルコール性肝障害

アルコール性肝障害は、長期間の過度なアルコール摂取によって肝臓が損傷する病気です。アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変などが含まれます。
治療法では、アルコールの摂取を完全に中止することが最も重要です。また、栄養療法としてビタミンB群や亜鉛などの栄養補給が行われることがあります。
過度なアルコール摂取の習慣があり、肝機能の異常が気になる場合には肝臓内科や消化器内科で診察を受けることが必要です。

薬剤性肝障害

薬剤性肝障害は、特定の薬物によって肝臓が損傷する病気です。抗生物質、抗てんかん薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが原因となることがあります。また、サプリメントなどによっても肝障害が現れる可能性があります。
AST、ALTは増加しますが、肝障害のタイプによってその上がり方のパターンは変わってきます。
対処法は、はじめに肝障害の原因と考えられるような薬物の使用を中止することです。そして、肝機能の回復を確認するために、定期的な検査が行われます。
特定の薬物を服用後に黄疸、倦怠感、食欲不振などの症状が現れた場合には、内科や肝臓内科で診察を受けることが一般的です。また、原因薬を処方した科に相談することも重要です。

溶血性貧血

溶血性貧血は、赤血球が正常よりも早く破壊され、血中の赤血球数が減少することによって引き起こされる貧血の一種です。原因としては、遺伝的要因、自己免疫疾患、感染症、薬剤反応、物理的損傷などがあります。
血液検査ではヘモグロビンの低下や、肝機能では血清間接ビリルビンという項目が上昇する所見などが見られます。また、赤血球が壊れることを溶血(ようけつ)といいますが、そのためにAST、ALTが増加することがあります。
溶血性貧血では原因に応じた治療が行われます。たとえば、自己免疫性溶血性貧血の場合はステロイドや免疫抑制剤や脾臓摘出術(ひぞうてきしゅつじゅつ)が行われることがあります。
強い疲労感、息切れ、動悸、黄疸、尿の色が濃いなどの症状が現れた場合や、もともと溶血性貧血と診断されており、症状が悪化した場合は受診が必要です。この際には、血液内科や内科で診察を受けることが一般的です。溶血性貧血の症状や原因に応じて、専門の医師による診断と治療が行われます。

「AST・ALTを下げるには」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「AST・ALTを下げるには」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

健康診断でAST・ALTの高さを指摘されました。食事で改善できますか?

関口 雅則関口 雅則 医師

はい、食事の改善はASTとALTの数値を下げるための一つの方法です。高脂肪の食事は肝臓に負担をかけるため、脂肪分の少ない食品を選びましょう。揚げ物やファストフードの摂取を控え、野菜、果物、全粒穀物、白身魚などの低脂肪食品を積極的に取り入れてください。抗酸化物質が豊富な野菜や果物を多く摂ることも大切です。

AST・ALTが高い人は飲酒を控えれば数値が下がるのでしょうか?

関口 雅則関口 雅則 医師

はい。ASTとALTが高い場合、飲酒を控えることは数値を下げるのに有効な方法の一つです。アルコールは肝臓で代謝されるため、飲酒によって肝臓に負担がかかります。特に長期間の過度な飲酒は、肝臓の炎症や脂肪肝、さらには肝硬変や肝臓癌といった重篤な肝障害のリスクを高めることが知られています。
アルコールを控えることで、肝臓への負担が減り、肝細胞が回復し、ASTとALTの数値が改善される可能性があります。ただし、数値が高い他の理由がある場合も考えられるので、飲酒の習慣を見直すだけでなく、医師の診察を受けることが重要です。

肝臓のAST・ALTが50U/Lだと治療で入院が必要になりますか?

関口 雅則関口 雅則 医師

肝臓のAST・ALTが50U/Lでも一般には入院は必要ありません。一時的に肝機能酵素が上昇している可能性もありますので、きちんと精密検査を受けることが大切です。

AST・ALTを下げるのに筋トレは効果がありますか?

関口 雅則関口 雅則 医師

筋トレや一般的な運動は、肝臓の健康に良い影響を与えることが知られています。定期的な運動は体重の管理に役立ち、脂肪肝の予防や改善に効果的であり、結果としてASTとALTの数値を下げることにもつながります。筋肉を動かすことで全身の血流が改善し、肝臓の代謝機能も向上する可能性があります。
筋トレの際に、プロテイン飲料を飲む習慣がある人もいるでしょう。プロテイン飲料に関しては、高たんぱく質の食事が肝臓に過度の負担をかけることは一般にはありません。しかし、もともと肝機能に問題がある場合はプロテインの摂取量に注意が必要です。特に、肝硬変などの重篤な肝障害のある人は、たんぱく質の摂取制限が必要な場合があります。健康な人であれば、適切な量のプロテイン摂取は筋トレの効果を高め、健康維持に役立ちますが、ASTとALTの数値が高い場合は医師に相談し、個別の指示に従うことが重要です。

ストレスがある場合、AST・ALTを下げるのは難しいですか?

関口 雅則関口 雅則 医師

ストレスは肝機能障害に悪影響を与える可能性があります。そのため、AST・ALTを下げるために、ストレスを軽減することが役立つ可能性があります。ストレスを管理することは、ASTとALTの数値を改善する上で重要な役割を果たします。リラクゼーション、定期的な運動、十分な睡眠、趣味や社交活動など、ストレスを減らすための方法を取り入れることが効果的です。

まとめ 肝臓のAST・ALTを下げるには食生活の改善と運動を!

今回の記事では、肝機能の指標であるAST、ALTについて詳しく解説しました。健康診断などでAST、ALTが高いと言われた場合には、まずは飲酒を含む食生活の改善と運動習慣について気を付けてみましょう。しかし、ASTやALTが高い場合にはいろいろな病気が隠れている場合もありますので、異常値の場合には精密検査を受けるようにしましょう。

「AST・ALT」の異常で考えられる病気

「AST・ALT」から医師が考えられる病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器系の病気

循環器系の病気

血液内科系の病気

筋疾患の病気

AST、ALTが高い場合には、肝臓に問題が生じている可能性が高いです。しかしながら、中には他の病気が隠れていることもあるので、健康診断で異常を指摘された場合には医療機関を受診するようにしましょう。

この記事の監修医師