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「息を吸うと背中が痛い」症状で考えられる病気はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2024/12/30

息を吸うと背中が痛い時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

※この記事はMedical DOCにて『「息を吸うと背中が痛い」原因は?深く吸うと痛む場合や対処法も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

今村 英利

監修医師
今村 英利(ネムクリニック下井草院)

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2009年新疆医科大学を卒業し、中国医師免許を取得。2019年に日本医師免許を取得。神戸大学大学院(腫瘍・血液内科学講座)にて血液悪性腫瘍の研究に従事。2019年に日本医師免許と医学博士号を取得。赤穂市民病院、亀田総合病院、新宿アイランド内科クリニック院長、在宅医療(訪問診療)などを歴任後、2024年9月ネムクリニック下井草院に院長として着任。現在は、内科・皮膚科全般の疾患を幅広く診療している。

「息を吸うと背中が痛い」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「息を吸うと背中が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

ぎっくり背中

ぎっくり腰ならぬ、ぎっくり背中というワードを聞いたことがあるでしょうか?これ、実は病名ではありません。僧帽筋、脊柱起立筋という筋肉の炎症により筋性・筋膜性の疼痛を生じており、突発的に生じることが多く親しみやすいネーミングのため、ぎっくり背中と言われています。朝起きて生じていることもあり寝違えたと言われる方もいます。
腰に負担のかかる作業や姿勢、体幹筋(腹筋、背筋)の低下、体重増加がリスクとなるため、適度な運動を心がけましょう。基本的に動いた時のみの痛みですので、安静にしている時や夜間就寝時にも痛みを感じる場合には、整形外科へ早めの受診をご検討ください。

胸膜炎

息を大きく吸うと、胸が持ち上がり、肺の中に空気が取り込まれます。このように息を吸う時には、胸郭(肋間筋、肋骨)の持ち上がりに伴い肺が膨らみます。その際に肺と胸郭の間にある胸膜という膜も動き、摩擦があります。そのため、呼吸時に痛みがある場合は、胸郭や胸膜、肺に関係のある疾患が原因となっていることが考えられます。前述の肋間筋損傷、肋骨骨折、気胸などがありますが、胸膜炎という疾患も知られています。
胸膜炎は、細菌や結核菌、がんなどによって胸膜に炎症を起こす疾患です。胸膜炎単独で発症することは少なく、肺炎やがんなどに付随して発症します。胸や背中の痛み、発熱、咳嗽、呼吸苦といった症状が出ますので、症状が気になる場合には呼吸器内科を受診しましょう。

狭心症や心筋梗塞

狭心症や心筋梗塞は、どちらも心臓の冠状動脈が狭くなったり閉塞したりすることで、心筋への血流が不足し、胸痛やその他の症状を引き起こす状態です。胸痛や圧迫感、息切れ、疲労感などの症状があります。また、痛みが左腕、肩、首、あご、背中に広がることがあります。心筋梗塞の場合は、上記の症状が強く現れ、長く持続します。その他に冷え汗、吐き気、嘔吐なども出ることがあります。症状が現れた場合、すぐに救急車を呼ぶことが必要です。 狭心症や心筋梗塞は迅速な診断と治療が重要ですので、胸痛や関連する症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診することが必要です。

大動脈解離

大動脈解離は、大動脈の内膜が裂け、血流が内膜と中膜の間に流れ込むことで、動脈壁が分離する重篤な状態です。高血圧、マルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群などの結合組織疾患、大動脈瘤、外傷などが主な発症原因で、突然の激しい胸痛、背中や肩甲骨間に放散することが多く、鋭く裂けるような痛みが特徴です。解離の範囲によって腹痛、意識障害、息切れ、発汗、吐き気、四肢の麻痺や冷感が生じることがあります。緊急対応が必要で、大動脈解離が疑われる場合は、すぐに緊急医療を求めることが重要です。自宅での対処は行わず、直ちに救急車を呼び、病院に搬送される必要があります。

帯状疱疹

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus、VZV)によって引き起こされる病気です。子供の頃に水痘(水ぼうそう)に感染した後、ウイルスは神経節に潜伏し続けます。免疫力が低下したときにウイルスが再活性化し、帯状疱疹として発症します。帯状疱疹の初期症状は、皮膚に発疹が現れ、帯状に広がることが特徴です。痛みを伴うことが多く、安静時の痛みがメインですが、発疹が背中に出現した場合は、深呼吸すると背中が痛くなることもあります。一般的には皮膚科を受診します。 帯状疱疹は早期の診断と治療が重要であり、適切な医療機関を受診することで重篤な合併症を防ぐことができます。

肋間神経痛

肋間神経痛は、外傷、帯状疱疹、姿勢の悪さ、筋肉の緊張、場合によって内臓疾患、胸膜炎や心臓疾患、消化器系の病気などが原因で、肋骨の間を走る神経が痛みを引き起こす状態です。
肋骨に沿って急にジクジク、ピリピリするような痛みが出るが短時間で消失するのが特徴です。また、上半身を動かしたり、深呼吸や咳、くしゃみしたりすると痛みが増悪することが多いです。肋間神経痛はさまざまな原因で発症するため、適切な診断と治療を受けることが重要です。痛みが持続する場合や強い痛みがある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

筋肉の疲労による痛み

筋肉の疲労による痛みは、過度の運動や長時間の同じ姿勢などによって引き起こされる筋肉の疲労や緊張から生じます。激しく長時間の運動、特に普段使わない筋肉を酷使した場合、または不適切な運動やストレッチ不足の時に、乳酸の生成過程で水素イオンが作られるため筋肉が酸性に傾くこと、エネルギー源である筋グリコーゲンの蓄えが少なくなることで筋肉疲労が生じると考えられています。筋肉の疲労による痛みは、適切な休息と治療を行うことで通常は回復します。しかし、痛みが持続する場合や症状が悪化する場合は、医療機関を受診して専門的な診断と治療を受けることが重要です。

前胸部キャッチ症候群

前胸部キャッチ症候群は、胸の前部に突然鋭い痛みが生じる症状です。特に子供や若い成人に見られます。発症の正確な原因は不明ですが、肋間神経の刺激、姿勢、ストレスや緊張などが誘因として考えられます。痛みが出た場合は、リラックスして安静にすることが大切です。深呼吸を試みることで痛みが軽減されることがありますが、初めは痛みが増悪することもあるので、注意が必要です。前胸部キャッチ症候群は一過性のもので、特定の治療を必要としない場合が多いですが、痛みが続く場合や他の症状がある場合は専門医に相談することが重要です。

食道アカラシア

食道アカラシアは、食道の運動機能が低下し、食べ物や飲み物が胃にうまく送り込まれない疾患です。発症の原因は完全には解明されていませんが、神経の異常、自己免疫反応、遺伝的要因などが考えられています。食べ物や飲み物を飲み込む際に困難がある場合やそれによって体重が減少している場合、胸や背中の痛みを感じる場合は消化器内科を早めに受診しましょう。食道アカラシアは早期診断と適切な治療が重要です。症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが推奨されます。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃潰瘍および十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の内壁がただれて傷ができる病気です。多くの潰瘍はヘリコバクター・ピロリ菌感染によって引き起こされます。ほかにも非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、過剰な胃酸分泌、遺伝的要因、家族歴がある場合、発症リスクが高くなることがあります。症状は食後が多く、みぞおちに痛みを生じ、背中の痛みが起こります。 吐き気や嘔吐、食欲不振、体重減少をともない、進行すると吐血などの症状が現れることもあります。胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、適切な診断と治療によって症状を改善し、再発を防ぐことができます。症状がある場合は、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが重要です。

膵臓がん

すい臓がんは、膵臓の悪性腫瘍で、初期症状が乏しく、進行すると肩甲骨の下に痛みや不快感が生じます。基本は呼吸に関わらず痛みを感じますが、息を吸う時の痛みと訴えられる方もいます。ほかの症状として、体重の減少や食欲不振、消化不良、黄疸などが見られます。膵臓がんは進行が早いため、早急に進行度の評価を行い、手術もしくは化学療法の方針を決めることが重要です。

胆のう炎

急性胆のう炎とは、胆石などが詰まることにより胆のうに炎症を起こしている状態です。胆のうあたりのお腹を抑えながら深呼吸しようとすると痛みで息を吸えなくなるという症状(Murphy兆候)を認めます。また、炎症が強い場合は背中にも疼痛が放散します。発熱や悪寒、腹痛、背中の痛み、 悪心・嘔吐などの症状があり、重症例では黄疸、意識障害などへ繋がります。発熱や嘔吐などもある場合は、消化器内科への受診を検討しましょう。

急性虫垂炎(盲腸)

急性虫垂炎(盲腸炎)は、虫垂(盲腸の一部)が炎症を起こす状態です。虫垂の内腔が糞石、リンパ組織の腫大、寄生虫、異物などで閉塞されることが主な原因とされています。 主な症状は腹痛、特に右下腹部に持続的な痛みがある場合。最初はへその周りから始まり、次第に右下腹部に移動することが多いです。ほかにも発熱、吐き気、嘔吐、食欲不振、背中の痛みなども出ることがあります。急性虫垂炎は早期に適切な治療を受けることが重要です。自宅での対処は行わず、医療機関を受診する必要があります。

「息を吸うと背中が痛い」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「息を吸うと背中が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大きく息を吸うと背中が痛いのは何科にかかるべきですか?

今村 英利今村 英利 医師

呼吸時に症状がある場合は、胸郭(肋間筋、肋骨)や胸膜、肺に関係のある疾患が原因となっていることが考えられます。胸を押して痛いところがあれば胸郭に原因がある場合が多く整形外科が適しています。また、触って痛いところがなく、安静時にも呼吸苦などの症状がある場合は、内科を受診しましょう。

息を吸うと背中が痛い症状の予防で気をつける生活習慣は何ですか?

今村 英利今村 英利 医師

肋間筋炎や僧帽筋炎など筋肉の炎症による息を吸うときの背中の痛みの場合、運動不足による筋力の低下や柔軟性の低下がある時、またいつもと違う運動をした時などに起こりやすくなります。日頃から適度な運動習慣を身につけましょう。

深呼吸をすると息が詰まって背中が痛くなるのはすい臓が原因ですか?

今村 英利今村 英利 医師

膵臓が原因の可能性もあります。痛みの他に、お腹が張る感じや食欲不振などの症状があれば腹部精密検査を受けましょう。

ぎっくり背中で息を吸うと痛い場合、どんな治療方法がありますか?

今村 英利今村 英利 医師

ぎっくり背中という正式名称はありませんが、ぎっくり腰ならぬ、ぎっくり背中とよく呼ばれます。背部周囲の筋肉に急に炎症を起こすことで疼痛を感じます。僧帽筋などの炎症によって、肩甲骨周囲の痛みを自覚される方が多いようです。消炎鎮痛剤や湿布での加療が基本となりますが、筋の凝りをほぐしてくれるようなお薬もあります。また、整形外科クリニックなどでは、理学療法士によるリハビリテーション加療(治療)を行なっていることが多く、ストレッチやマッサージなど専門職による施術が受けられます。

まとめ

息を吸う時に背中の痛みの原因になる疾患は上記のように多く考えられます。呼吸とは関係ありませんが、上記以外にも胃潰瘍や十二指腸潰瘍、腎盂腎炎、尿管結石などなど背部痛の原因疾患は多岐に渡り、呼吸のしづらさを感じることもあります。長引く場合やいつもと様子が違う場合は、無理せず早めの病院受診を心がけましょう。

「息を吸うと背中が痛い」で考えられる病気と特徴

「息を吸うと背中が痛い」から医師が考えられる病気は13個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

呼吸器科の病気

消化器科の病気

腎泌尿器科の病気

整形外科の病気

痛みがどのくらい痛いか、どのように発症したか、呼吸によって痛みが変わるか、などによって考えられる病気は変わってくるので、詳しく医師へ伝えましょう。

「息を吸うと背中が痛い」と関連のある症状

「息を吸うと背中が痛い」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

「息を吸うと背中が痛い」の他に、これらの症状が見られる際は、「気胸」「骨粗しょう症」「腰椎圧迫骨折」「急性胆のう炎」「大動脈解離」などの病気の存在が疑われます。
急な症状の出現の際には、すぐに医療機関へ受診することを検討しましょう。

この記事の監修医師