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頭蓋咽頭腫の症状や原因、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27
頭蓋咽頭腫

頭蓋咽頭腫とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

頭蓋咽頭腫とは

良性脳腫瘍に分類される腫瘍です。

胎生期の頭蓋咽頭管(下垂体を作る組織で、本来は下垂体が作られた後に無くなる)が消えずに残ったものから発生する先天性腫瘍と考えられています。
脳からぶら下がる、内分泌機能の中枢である脳下垂体の茎の部分に発生し、一部嚢胞(袋)を有する腫瘍です。
嚢胞内はモーター油に似た内用液とコレステロール結晶を含みます。

脳腫瘍の発生は年間1万人に1人程度といわれています。頭蓋咽頭腫は、これら原発性脳腫瘍の約3%の頻度で発症します。つまり、人口100万人に年間約3人が発症します。

10代の小児と40-60代の成人に多くみられます。
全体の患者さんのうち約25%が20歳以下で、小児原発性脳腫瘍中の約9%(第4位)を占めます。性差はありません。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

病理学的には良性の腫瘍で、転移はしません。

良性腫瘍と聞くと、完全に治るというイメージを持つかもしれません。

しかし、この病気の治療にあたっては、手術の難易度が高く、後遺症の問題があること、腫瘍の再発が多いことなどから、患者さんと医師側との両者で乗り越えるべきさまざまな課題点があります。

頭蓋咽頭腫の症状

視力視野障害、視床下部・下垂体性内分泌機能障害、頭蓋内圧亢進症状で発症します。

腫瘍が視神経を圧迫すると、非対称性で両側の外側が見えにくいという視野狭窄をきたします。

内分泌機能障害としては、小児期の身体発育を遅延させ、低身長、薄い毛髪、基礎代謝の低下等、下垂体機能不全症状を起こします。
成人では全身倦怠感、集中力低下、水分を多く飲む、何回も排尿をするなどの症状を認めます。
視床下部症状として記憶障害、注意力低下、低体温などがみられることもあります。

さらに腫瘍が大きくなると、脳脊髄液の通過障害が起こり水頭症となり、頭痛、嘔吐の頭蓋内圧亢進症状を起こします。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
視機能障害、ホルモン異常、頭蓋内圧亢進症状などが見られます。視機能障害
・徐々に眼が見づらくなる

ホルモン異常
・たくさん水を飲んでおしっこがたくさん出る(尿崩症)
・身長が伸びなくなる、元気がなくなる、疲れやすい、
・成人では生理が止まる、性欲が無くなる

頭蓋内圧亢進症状
・頭痛、吐き気、意識障害、認知症など

頭蓋咽頭腫の原因

発生機序としては、遺残上皮細胞、あるいは扁平上皮化生した前葉細胞、中間葉の細胞などの、シグナル伝達経路の構造的活性化が原因の一つとして考えられています。

遺伝することはありません。

頭蓋咽頭腫の検査法

頭部CT・MRI検査で診断を行います。
視力検査や視野検査、血液検査(ホルモン値測定)などを行います。

頭蓋咽頭腫の治療方法

腫瘍に対しては、外科手術、放射線治療、嚢胞内治療(袋の中に薬剤を注入)があります。

第一選択は、手術による摘出です。全摘出が望ましいのですが、腫瘍の境界には極めて重要な視床下部や視交叉、下垂体茎があるため、それら重要組織に癒着していたり浸み込んでいたりする場合には全摘できないこともあります。

手術では、鼻の穴から行う経鼻的拡大蝶形骨手術と頭を開ける開頭手術の2つの方法があります。
手術による摘出で視力視野障害の多くは改善しますが、全摘出がなされるほど術後の下垂体視床下部症状(ホルモン分泌低下、尿崩症)が強く出現します。

副腎皮質ホルモンや成長ホルモン等のホルモン補充や、尿崩症に対する抗利尿ホルモンの投与が必要になります。適切な補充によって正常な発達や日常生活が可能です。

非全摘例には、再発防止のために放射線治療が有効です。

嚢胞形成例には、腔内へのチューブ挿入による内容液の吸引や腔内照射、抗癌剤の注入も行われますが、これらの治療が通常の放射線治療以上に有効性があるか否かについては未だ議論があります。

個々の症例に応じて、手術、放射線の両治療法の長所を組み合わせて、手術で腫瘍をできるだけ減らし、残存があれば放射線治療を行い、必要に応じたホルモン補充療法を加えるのが現在の治療法といえます。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

それぞれの症例ごとに患者さん・家族と十分に話し合って方針を決めることになります。

手術で腫瘍を摘出することが基本的な治療です。
全摘出できれば、再発率は低くなります。

ただ、手術が成功しても、下垂体ホルモンの不足、認知機能障害、視力視野障害など、なんらかの後遺症を残すことが多く、いかに後遺症を減らすかという問題があります。

なぜなら、腫瘍が発生した場所の近くに重要な神経組織(視神経や下垂体、下垂体丙、視床下部など)が多く存在するため、腫瘍の場所や広がりによっては、全摘出できないからです。

腫瘍が残存すると確実に再発しますし、全摘出できたと思っても再発することがあります。

神経損傷による予想される後遺症が薬物治療可能であれば、その後遺症が残ることを覚悟してでも、再発率を減らすために全摘出を目指すこともあります。

摘出できなかった小さな残存腫瘍あるいは小さな再発腫瘍に放射線治療を行いますが、放射線治療をしても再発することは珍しくありません。

有効な抗がん剤はないため薬物治療はできません。

頭蓋咽頭腫の予防方法

良性腫瘍ではありますが、再発の多い腫瘍であり、長期にわたった綿密な経過観察が必須です。

手術で全摘出来たと判断しても再発することがあり、残存した場合は、さらに再増大がおきやすいため、定期的に術後もMRIで検査を行います。

治療前後を通して、ホルモン補充療法が必要になることが多いため、脳神経外科医、内分泌内科医、小児科医の連携のもとに診療が継続されます。

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