「漢方薬には副作用がない」ってホントなの?
副作用がないという話もある漢方薬。はたして本当なのでしょうか。あるとしたら、どんな副作用があるのでしょう。多くの人が疑問を感じるこのテーマについて、「東西医学ビルクリニック」の齋藤先生に解説していただきました。
監修医師:
齋藤 竜太郎(東西医学ビルクリニック 院長)
帝京大学医学部卒業。川崎幸病院での勤務を経た1999年、東西医学ビルクリニック副院長就任。現職は2005年から。東洋医学と西洋医学の結合による、心と身体にやさしい医療の提供と研究をおこなっている。日本整形外科学会専門医。日本東洋医学会、日本整形外科学会、日本統合医療学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本バイ・ディジタルオーリングテスト協会の各会員。
体へ作用する限り、副作用は起こりえる
編集部
ズバリ、漢方薬に副作用はあるのでしょうか?
齋藤先生
あります。たとえば、甘草(かんぞう)という植物が含まれる漢方薬は、とりすぎることで、血圧を上げてしまう可能性があります。処方には注意が必要でしょう。ただし、西洋医学のお薬と比べ、副作用が“圧倒的に”少ないのは事実です。
編集部
副作用の見極めの注意点はあるのですか?
齋藤先生
その人の病態について診断することを、東洋医学では「証」と呼んでいます。この「証」が正しく見極められず、誤った漢方薬をお出ししてしまうと、好ましくない結果に至るでしょう。これを誤治(ごち)と言います。また、瞑眩(めんげん)反応といって、病状の改善が現れる前、一時的に悪化することもあります。瞑眩反応は、同じ漢方薬をのみ続けることで、治まってきます。それらの見極めが大切です。
編集部
なぜ、「副作用はない」という誤解が生じたとお考えですか?
齋藤先生
自然由来だからですかね。普段食べているものと同じで、「食品の一種だ」という誤解があるのだと思います。しかし、そもそも薬理的な作用がなかったら、漢方薬として認められてこなかったはずです。加えて日本の場合、漢方が注目されてきたのは最近のことです。作用・副作用を含めて症例数が少なく、表立ってこなかったことも関係しているでしょう。
編集部
漢方の副作用は、人によって異なるのですか?
齋藤先生
漢方薬の効果・副作用は個人差に顕著な違いがあります。我々医師は、漢方薬の処方を患者さんの様子に注意しながら処方していきます。
編集部
副作用が出た場合、どうすればいいのでしょう?
齋藤先生
処方された医療機関に相談するのが一番です。症状が副作用なのか、もしくは「誤治」「瞑眩反応」なのか、判断することが大切です。
本来の漢方薬は、オーダーメイドで処方される
編集部
そもそも、漢方薬とは何でしょう?
齋藤先生
漢方薬は自然界にあるものから作られる生薬を基本としており、病気の原因ではなく、病態・体質によって組み合わせるお薬の一種です。症状は人によって異なりますから、漢方薬の処方も多彩です。オーダーメイドと言ってもいいのではないでしょうか。
編集部
対する西洋医学の薬とは?
齋藤先生
単一の成分で人工的に作られた薬品であり、あらかじめ製薬として存在しています。「病態」ではなく「病気」そのものをターゲットにしている薬ですね。
編集部
漢方薬のオーダーメイドについて、詳しく教えてください。
齋藤先生
漢方薬は、さまざまな効能のある生薬を組み合わせて処方します。その手がかりは、主に五感を使った診断ですね。どのような症状・訴えがあるのか、それによって生薬の組み合わせを変えていきます。したがって、他の人が効いたから自分にも効くとは限りません。同じ胃炎でも、痛いのか気持ち悪いのかで、処方が違ってきます。さらに言えば、いろいろな生薬を入れることで、単一の成分が暴走しないようにしています。
編集部
薬局で、袋に入った漢方薬のパッケージを見かけますがあれはどうでしょう?
齋藤先生
幅広く手軽に利用できるよう、主だった生薬をあらかじめ調合しているのだと思います。医師の診断を必要とせず購入できることから、保険で処方する漢方薬に比べて、効果は弱いと思います。また、自分で何を飲むか判断しなければならないので、選択が難しいでしょう。
編集部
健康食品、機能性表示食品とも違うのですよね?
齋藤先生
漢方は、約2000年にわたって積み重ねられてきた、系統的な学問です。漢方で定められた独自の決まりがあります。健康食品などは、メーカーさん独自の研究によるものでしょう。
漢方は自分で買ってのまない、専門家による処方を推奨
編集部
市販のパッケージ化されたものが漢方薬だと思っていました。
齋藤先生
市販の漢方薬は、自分で買いますよね。相談というプロセスを経ないので、当たり外れが出ると思います。漢方薬による治療をご希望の場合、ぜひ、専門の医院で処方してもらってください。
編集部
漢方薬を服用するうえでの注意点はありますか?
齋藤先生
保険で処方されている漢方薬は、生薬から抽出されたエキスを顆粒や粉末状に加工した「エキス製剤」を使用するのですが、「エキス製剤」は白湯や水で内服することで吸収されやすくなります。
編集部
漢方薬ののみあわせはどうでしょう? 禁忌などはありますか?
齋藤先生
西洋のお薬とののみあわせは、基本的に大丈夫です。漢方薬どうしの場合は、医師や薬剤師へご相談ください。副作用リスクや、本来の効能を得られないことが考えられます。サプリメントなどと相互作用することもあるので、専門家へ確認していただきたいですね。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
齋藤先生
お薬に関しては、なるべくご自身での判断を控えるようにしてください。昨今、複数のお薬を服用する弊害「ポリファーマシー」が注目されています。漢方薬もお薬手帳の対象ですので、受診時には持参しましょう。加えて、のみきれずに残してしまったお薬があるときは、その種類と量を申告していただくと助かります。
編集部まとめ
漢方薬も薬の一種です。体に作用を起こす薬であるからには、専門家の指示が欠かせません。個人の症状に合わせてブレンドしたものが本来の漢方薬ですので、レディメイドや調合済みという概念がなじまないのではないでしょうか。副作用を避けるためにも、専門医の指示の下、適切に服用してください。
医院情報
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診療科目 | 内科、皮膚科、アレルギー科、整形外科、心療内科、婦人科 |