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「誤嚥性肺炎」とは?症状・原因・予防についても詳しく解説!

 更新日:2023/04/03
「誤嚥性肺炎」とは?症状・原因・予防についても詳しく解説!

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)をご存じでしょうか。食べ物や唾液など、気管に入ってはいけない異物が気管に入ることで起こる肺炎で、75歳以上の高齢者に多い疾患です。

今回は誤嚥性肺炎の、症状や原因、受診科目や検査、治療と予防方法を紹介します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

誤嚥性肺炎とは

誤嚥性肺炎とはどのような疾患でしょうか?

    誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液などの気管に入ってはいけない異物が気管に入ることがきっかけとなり、主に口腔内の細菌が肺に入ることで生じる肺炎です。食べ物や唾液などの異物が気管に入ることを、誤嚥といいます。

    加齢による老化、脳血管障害の後遺症、神経疾患を抱えている人などが、嚥下(飲み込むこと)や咳をする力が弱まることで発症しやすい疾患です。

    ほかに、睡眠中に唾液や胃液などが気管に入る不顕性(ふけんせい)の誤嚥もあります。睡眠中なので本人に自覚はなく、繰り返し発生する場合が多いです。高齢者では命に関わるケースも珍しくありません。

    また、胃にチューブを入れて栄養を送る経管栄養でも、誤嚥性肺炎になる可能性があります。なお、他者に感染することはありません。

誤嚥性肺炎の症状

誤嚥性肺炎にはどのような症状がありますか?

    誤嚥性肺炎の症状は、発熱、激しい咳、濃い色の痰、肺雑音、呼吸が苦しい、などがあります。食事中にむせたり咳が続いたりする場合は、誤嚥の可能性があるため、注意しなければなりません。

    また、風邪と症状が似ているため間違えて診断される場合もありますが、高齢者の場合は、誤嚥性肺炎の可能性があります。

    しかし、高齢者の場合は症状が現れにくいこともあります。元気や食欲がなくぼんやりしている、食後にぐったりしている、食事を飲み込めない、睡眠時に咳きこむ、体重が減るなど、一見すると肺炎には見えない症状が現れることもあります。

誤嚥性肺炎の原因

誤嚥性肺炎はどのような原因で患いますか?

    加齢による老化、脳血管障害の後遺症、パーキンソン病などの神経疾患などの原因により、嚥下機能が低下して患うことが多いです。ほかにも嘔吐物を誤嚥して起こることもあります。

    そもそも人間の身体には、仮に気管に異物が入ってしまっても反射的に咳で排除する機能があります。しかし、高齢者の場合はこの能力が低下して、異物が気管に入ってもむせることなく不顕性誤嚥になってしまうのです。

    また、口腔内が清潔でない場合、肺炎の原因菌が繁殖して誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

ほかにも、誤嚥性肺炎の原因となることはありますか?

    75歳以上の高齢者、栄養不良、基礎疾患、脳卒中、糖尿病、パーキンソン病、不十分な口腔ケア、齲歯(虫歯)、経管栄養などが原因となります。

誤嚥性肺炎の受診科目

誤嚥性肺炎が疑われる場合、何科を受診すればいいでしょうか?

    呼吸器内科を受診しましょう。先ほど解説した高齢者や、脳血管障害、神経疾患などを抱えている人に、発熱、激しい咳、濃い色の痰などの症状が現れた場合は、誤嚥性肺炎の可能性があるため、すぐに受診しましょう。

    ほかにも、食事でむせることが増えたり、痰が増えたりした場合も、誤嚥が起こっている可能性があります。これらの症状が増えたら、すぐに受診するようにしましょう。

誤嚥性肺炎の検査・診断

レントゲン検査

誤嚥性肺炎が疑われる場合、どのような検査を行いますか?

    過去に誤嚥性肺炎を発症している人、嚥下機能が低下している人、誤嚥の症状が見られる人が、胸部レントゲンで肺炎像が確認された場合、誤嚥性肺炎と診断されます。

    ほかにも、血液検査で炎症反応や白血球の増加が見られる場合も診断されます。

誤嚥性肺炎の治療方法

誤嚥性肺炎の治療方法を教えてください。

    肺炎を治すために、抗菌薬を使った薬物療法を行います。しかし、薬で肺炎を治療しても、誤嚥を防ぐことはできません。再び誤嚥をすれば肺炎も再発する可能性があるため、誤嚥を予防する対策が必要です。

    また、肺炎を予防するために口腔ケアも重要です。

誤嚥性肺炎の予防方法

誤嚥性肺炎の予防に大切なことを教えてください。

    誤嚥性肺炎の予防には、誤嚥の予防と肺炎の予防、それぞれ重要です。

誤嚥予防

予防体操

最初に、誤嚥の予防方法を教えてください。

    誤嚥を防ぐためには、食事の時に嚥下に意識を集中することが重要です。食事中はしっかり座りよく噛んで、話をしたりよそ見をしたりしないようにしましょう。また、食後すぐに横にならず、2時間ほど上半身を起こしておくことも有効です。

    飲み込みやすいように、食べ物を小さく切ったり、水分を多めにしたりする工夫もおすすめです。

    そして、食べる前に嚥下体操を行ってください。嚥下体操は、首、肩、口、舌などの動きを良くして嚥下をしやすくするために行います。食事前に数分間行いましょう。

嚥下体操はどのように行いますか?

    まず腹式呼吸でゆっくりと深呼吸を行います。お腹に手を当てて、お腹をへこませながら口からゆっくりと息を吐き、お腹を膨らませながら鼻から息を吸います。これを数回繰り返しましょう。

    普段の呼吸に戻します。左右に一回ずつ首を回して、左右に一回ずつ首を倒します。

    今度は、肩をすくめるように上げて、力を抜くように下ろします。これを2〜3回繰り返しましょう。続けて両手をあげて背伸びを行います。さらに肩回しをして、上半身をゆっくり左右に倒してください。

    その後、頰をふくらませたりすぼめたりを2〜3回行います。今度は舌を大きく出したり引いたり、左右に動かしたりします。これも2〜3回行ってください。

    パパパ、ラララ、カカカとゆっくり5回ほど発声します。最後に、最初にやった深呼吸を行って終了です。

肺炎予防

続いて、肺炎の予防方法を教えてください。

    嚥下体操を行っても、誤嚥を完全になくすことは困難です。嚥下機能や咳の機能が弱まっている場合は、睡眠中に不顕性の誤嚥を起こしてしまう可能性があるため、誤嚥してしまってもできるだけ肺炎にならないようにする対策も必要です。

    しっかりと歯磨きを行うなど、口腔ケアを行いましょう。口腔ケアが不十分だと細菌が増殖してしまうため、誤嚥したときに取り込まれる細菌が増えて、肺炎のリスクが高まります。

    また、粘膜の細菌が増殖するのを防ぐために、禁煙も重要です。

編集部まとめ

誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液などの異物が気管に入る「誤嚥」をきっかけに発症する肺炎です。主に口腔内の細菌が肺に入ることで起こります。加齢などにより、嚥下機能や咳をする機能が衰えることで起こります。

よくある症状は、発熱、激しい咳、濃い色の痰、肺雑音、呼吸が苦しいなどです。加齢による老化、脳血管障害の後遺症、パーキンソン病などの神経疾患などにより、嚥下機能が低下することが主な原因になります。

誤嚥性肺炎が疑われる場合は、呼吸器内科を受診しましょう。胸部レントゲンや血液検査で診断されます。治療は肺炎を治すために薬物療法が行われますが、誤嚥は防ぐことができません。

誤嚥を予防するために食事中はしっかり座ってよく噛んで、嚥下に意識を集中しましょう。食後はすぐに横にならないように気をつけてください。食べる前には数分間嚥下体操を行うこともおすすめです。

また、肺炎を予防するために、しっかりと歯磨きを行うなどの十分な口腔ケアが必要です。

誤嚥性肺炎の予防を行いつつ、疑われる場合には早急に呼吸器内科を受診しましょう。

この記事の監修医師