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「うっ血性心不全」とは?症状・原因・治療についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/07/13
「うっ血性心不全」とは?症状・原因・治療についても解説!【医師監修】

心臓のポンプ機能が弱くなり、息切れや手足のむくみ、倦怠感などの症状が現れる病態に心不全があります。そのうち、肺やそのほかの臓器にうっ血が起こるものを「うっ血性心不全」と呼びます。悪化すると命に関わることもある病気です。

今回はうっ血性心不全の症状や原因、治療方法などを解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

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うっ血性心不全とは?

うっ血性心不全とはどのような病気ですか?

    うっ血性心不全とは、体の中で血液が滞留したために、肺やほかの臓器などに静脈血が滞っている状態の心不全です。うっ血性心不全になると、息切れや動悸、激しい咳、手足のむくみ、倦怠感、呼吸苦などの症状が現れます(腎障害が合併すると、乏尿傾向になる場合もあります)。

    虚血性心疾患、高血圧、心臓弁膜症などさまざまな心臓の病気が原因となって起こります。うっ血性心不全の重症度はNYHA心機能分類で4段階あり、比較的症状の軽いⅡ度から疲労や動悸、呼吸困難などの症状を自覚して、身体活動が制限されるのが特徴です。

うっ血性心不全と心不全の違い

うっ血性心不全と心不全は違うのですか?

    そもそも心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が弱くなり、全身に十分な量の血液が送れない状態です。うっ血性心不全とは、この心不全のくくりの中にある一つの病態を指します。

    心不全は起こり方や進行速度により急性心不全と慢性心不全に分かれます。一般的に「うっ血性心不全」といえば、慢性心不全の急性増悪状態です。

    慢性心不全は、体内に水分とナトリウムが過剰に蓄積されることで、手足などにむくみが現れます。すると、さまざまな機能が本来の役割を補って血圧を維持しようと働きます。そのため、心臓の負担は大きくなり、心不全を悪化させるのです。

うっ血性心不全の症状

うっ血性心不全 むくみ

うっ血性心不全になるとどのような症状が現れますか?

    うっ血性心不全になると以下のような症状が現れます。

  • 息切れ(呼吸困難)
  • 動悸
  • 食欲不振
  • 胸の痛み
  • 手足のむくみ、冷感
  • 体重増加
  • 倦怠感
  • 心不全の初期の段階では、夜間にトイレに起きるようになります。これは、日中に四肢で滞留していた血液が、横になって休むことで心臓に戻る循環血液量が増加して腎血流が増えるためです。

    心不全が進行して重症化すると、就寝時にも息苦しさを感じます。また上半身を起こすと呼吸が楽になる「起坐呼吸」の症状が現れることもあるでしょう。この頃には、激しい咳やピンク色の痰、胸の痛みがでることもあり、狭心症かもしれないと受診する患者さんもいます。

うっ血性心不全の原因となる代表的な病気

うっ血性心不全の原因となる病気を教えてください。

    うっ血性心不全の原因となる病気は、虚血性心疾患、高血圧、心臓弁膜症、心筋症、心筋炎、先天性心疾患、不整脈、そしてそのほかの病気です。それぞれの特徴を解説します。

虚血性心疾患

虚血性心疾患とはどのような病気ですか?

    虚血性心疾患は心不全の原因の多くを占める病気です。心臓の筋肉に栄養を与えている冠動脈が動脈硬化により狭窄・閉塞することで、血液が行きわたらなくなり十分な収縮・弛緩ができなくなります。

    動脈硬化を引き起こす原因は、糖尿病や高血圧、肥満、脂質異常症などです。これらは、動脈を硬くしたり、動脈の内側にコレステロールの塊であるプラークを作ったりします。

    虚血性心疾患の代表的な病気は狭心症や心筋梗塞です。

高血圧

高血圧とはどのような状態ですか?

    高血圧とは、血圧が基準値を上回っている状態を指します。高血圧の診察室での基準値は以下のとおりです。

    〇診察室血圧
    ・収縮期血圧:140mmHg以上
    ・拡張期血圧:90mmHg以上

    血圧が高くなると、心臓や血管に大きな負担をかけてしまいます。高血圧になると初めは心肥大が起こりますが、進行すると心臓全体が硬くなり心不全に至ります。

心臓弁膜症

心臓弁膜症とはどのような病気ですか?

    心臓弁膜症とは、何らかの原因で心臓の弁の開閉機能に障害が起こる病気です。うまく開かなくなると全身に血液が流れにくくなり、閉鎖不全になると血液が逆流します。

    原因は加齢や先天性の病気、感染症などです。いずれも進行すると、心不全を引き起こします。

心筋症

心筋症とはどのような病気ですか?

    心筋症とは、心臓の筋肉に異常が起こり、心臓のポンプ機能が阻害される病気です。原因はウイルス感染やアルコールの過剰摂取、コカインや抗がん剤などの薬物で、これらの原因により、心臓の筋細胞が破壊されると心不全を引き起こします。

    明らかな原因が不明な場合は、特発性心筋症として区別します。

心筋炎

心筋炎とはどのような病気ですか?

    心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症が起こる病気です。原因の多くはウイルス感染で、心臓の筋肉が障害されると機能不全を起こし心不全となります。

先天性心疾患

先天性心疾患とはどのような病気ですか?

    先天性心疾患とは生まれつき心臓の構造に障害がある病気です。心臓の壁や、弁膜などが生まれつき正常ではないため、心臓に負担がかかり重症であれば心不全を引き起こします。

不整脈

うっ血性心不全 不整脈

不整脈とはどのような病気ですか?

    不整脈とは、心臓の拍動が速かったり遅かったり、リズムが不規則になったりする病気です。不整脈のうち、脈が速くなる頻脈が持続すると、心筋が常に活発に働きます。すると、やがて心臓は疲れてしまい、心不全を引き起こします。

そのほかの病気や薬

そのほかの病気にはどのようなものがありますか?

    糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、重度の貧血、肺気腫、甲状腺機能亢進症、アミロイドーシス、ヘモクロマトーシスなどの病気も進行すると心不全を引き起こします。

    また、抗不整脈薬やβ遮断薬、抗がん剤などの薬もうっ血性心不全を引き起こすことがあります。

 

うっ血性心不全の受診科目

うっ血性心不全の症状があれば何科を受診すればいいですか?

    胸の痛みや動悸など気になる症状があれば、循環器内科や心臓血管外科を受診しましょう。息切れや咳などの呼吸器の症状と区別できない場合は、まずはかかりつけ医で相談してみましょう。

うっ血性心不全の検査

うっ血性心不全ではどのような検査を行いますか?

    心不全の疑いがあれば以下の詳しい検査を行います。

  • 血液検査
  • 胸部レントゲン検査
  • 安静時心電図検査/ホルター心電図検査
  • 心エコー検査
  • 運動耐容能検査
  • トレッドミル運動心電図検査
  • 運動・薬剤負荷心筋シンチグラフィ検査
  • 心臓CT、心臓MRI
  • 心臓カテーテル検査
  • このような検査を行うことで、心臓の機能を評価することができます。それぞれの結果を元に適切な治療を行います。

うっ血性心不全の治療法

うっ血性心不全はどのような治療を行いますか?

    うっ血性心不全では、薬物療法、CRT(心臓再同期療法)、補助循環治療などの治療を行います。それぞれの治療法を解説します。

薬物療法

薬物療法ではどのような薬を使用するのですか?

    薬物療法では、血管拡張作用のあるACE阻害薬やARBなどの薬、体の水分を減らす目的で利尿剤などの薬を使用します。徐脈の場合をのぞき、交感神経の働きを抑える目的でベータ遮断薬を使用することもあります。

CRT(心臓再同期療法)

CRT(心臓再同期療法)とはどのような治療法ですか?

    CRT(心臓再同期療法)とは、心不全により心臓のポンプ機能が低下している患者さんに対して、心臓の動きが遅れたところを電気で刺激して心臓の動きを整え、ポンプ機能を改善させる治療法です。

補助循環治療

補助循環治療ではどのようなことを行うのですか?

    補助循環治療では、IABP・PCPSなどの補助循環を使用して、一時的に心臓を休ませて機能を回復させます。VADと呼ばれる補助人工心臓を使うこともあります。

    60歳以下で心不全を起こしており、ほかに有効な治療法がない場合には、心臓移植を検討します。

編集部まとめ

心臓のポンプ機能が弱くなり、肺やそのほかの臓器にうっ血が起こるものを「うっ血性心不全」と呼びます。うっ血性心不全が悪化すると命に関わることもあるため、早期発見し適切な治療が必要です。

胸の痛みや激しい咳など気になる症状があれば、循環器内科や心臓血管外科を受診して詳しい検査を受けましょう。

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