目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 【漫画付き】寝ているとき、何回もトイレに起きてしまう…これって病気ですか?

【漫画付き】寝ているとき、何回もトイレに起きてしまう…これって病気ですか?

 更新日:2023/03/27
【漫画付き】寝ているとき、何回もトイレに起きてしまう…これって病気ですか?

自身の生活の質を下げてしまうばかりか、家族から白い目で見られかねない夜間頻尿。もしかしたら「年のせいだからしょうがない」と、諦めていませんか。この点について、「大宮エヴァグリーンクリニック」の伊勢呂先生は、「尿のコントロールは可能」と言い切ります。どういうことなのか、詳しい話を伺いました。

伊勢呂哲也

監修医師
伊勢呂 哲也(大宮エヴァグリーンクリニック 院長)

プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部医学科卒業。JAあいち豊田厚生病院腎臓泌尿器外科、高木病院、おおたかの森病院などの勤務を経た2019年、埼玉県さいたま市に位置する「大宮エヴァグリーンクリニック」を継承、院長に就任。泌尿器科・消化器科分野で積み重ねてきた知見を元に、地域医療へ専心している。マンモグラフィ読影認定医、日本医師会認定産業医、日本泌尿器科学会認定専門医。日本消化器内視鏡学会、日本消化器がん検診学会、日本人間ドック学会、日本泌尿器科学会の各会員。

日中につくりきれなかった尿が、夜間へ持ち越される

大宮エヴァグリーンクリニックphoto

編集部編集部

ヒトは何回くらい、就寝中にトイレで起きるものなのでしょう?

伊勢呂先生

通常なら「ゼロ」ですね。「1回以上」トイレに起きる場合、夜間頻尿と定義され、「2回以上」の場合は“病的である” とみなされます。なにかが起きているということなのでしょう。

編集部編集部

夜中に尿意で2回以上起きるようなら、異常を疑ったほうがいいと?

伊勢呂先生

はい。夜間頻尿の原因は大きく3つあり、夜間多尿ぼうこう容量の減少睡眠障害に分けられます。このうちの夜間多尿とは、1日のうち「夜間の尿量比率が多いこと」を指します。

編集部編集部

なぜ、夜間の尿量が増えてしまうのですか?

伊勢呂先生

わかりやすいのは、寝る前の水分の取りすぎです。ほか、関連する疾患としては、糖尿病、高血圧、うっ血性心不全、腎機能障害などの全身性疾患です。また、加齢も重要な要素ですね。

編集部編集部

加齢ですか? ショックです……。

伊勢呂先生

糖尿病や加齢といった要因が重なってくると、日中に十分な尿をつくれず、夜間へ持ち越されてしまうのです。この傾向は「排尿日誌」を付けていただくとわかります。夜間尿量の割合が1日の中で3分の1を超えると、「夜間多尿」と診断されます

残る2点、「ぼうこう容量の減少」と「睡眠障害」について

大宮エヴァグリーンクリニックphoto

編集部編集部

続けて、「ぼうこう容量の減少」についても教えてください。

伊勢呂先生

ぼうこうの弾力性が衰えてくると、十分に膨らまなくなるので、尿をためこみにくくなります。また、前立腺肥大症などが原因で神経過敏になると、少量の尿でもトイレへ行きたくなります。この後者も、「ぼうこう容量の減少」に含めていいのではないでしょうか。

編集部編集部

考えられる病気には、どのようなものが?

伊勢呂先生

女性に多いのは、少量の尿でもぼうこうが収縮してしまう過活動ぼうこうで、加齢によるものと考えられています。男性に多いのは、尿路を取り囲んでいる前立腺が膨らむ前立腺肥大症ですね。ほか、ぼうこうのコントロールが効かなくなる「脳や脊髄の病気」なども散見されます。

編集部編集部

最後は「睡眠障害」についてです。

伊勢呂先生

睡眠障害の原因は多彩ですよね。代表的なものとしては、ストレス、寝具、精神疾患、睡眠時無呼吸症候群、そして加齢です。ただ、フォーカスを当てるべきは、冒頭に取りあげた夜間多尿でしょう。

編集部編集部

排尿日誌の話題が出ていましたよね?

伊勢呂先生

そうですね。日誌を付ける際は、「朝起きて最初に出る尿も、夜間の尿に含まれる」ということに注意してください。出すタイミングは朝でも、つくられているタイミングは夜間です。

編集部編集部

尿量って、秒数などで測るのですか?

伊勢呂先生

いいえ。きちんと、大きめの紙コップなどを使ってください。300cc以上の容量があるコップを用意しましょう。

夜間に持ち越された宿題を日中に片付ける

大宮エヴァグリーンクリニックphoto

編集部編集部

夜間頻尿は治せるのでしょうか?

伊勢呂先生

治療方法としてはホルモン剤が有効で、夜間につくられる尿の量を減らしていきます。かつて夜間に8回もトイレへ行っていた患者さんが、1回になった症例もありますね。

編集部編集部

しかし、腎機能障害は改善できないと聞いたことがあります。

伊勢呂先生

腎機能障害ほか、高血圧や心疾患などの対策は、もちろん平行しておこなっていきます。それとは別に、夜間多尿の改善方法として、ホルモン剤が使えるということです。「腎機能障害は改善できないから、夜間多尿も治らない」ということではありません。

編集部編集部

同じ流れで「ぼうこう容量の減少」の改善についても教えてください。

伊勢呂先生

過活動ぼうこうでは、ぼうこうの勝手な収縮を抑えるお薬を処方します。前立腺肥大症についても、有効なお薬が出ています。

編集部編集部

最後の「睡眠障害」ですが、睡眠薬などを頼るのですか?

伊勢呂先生

まずは、よく眠れるような環境の整備や生活リズムの改善が重要です。それでも眠れないようなら、睡眠薬の内服を検討していきます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

伊勢呂先生

夜間頻尿は改善が望めるようになりました。にもかかわらず、諦めてしまっている方が少なからずいらっしゃいます。夜間頻尿は生活の質を下げる最たるものですので、ぜひ、泌尿器科へご相談ください。

編集部まとめ

寝ているとき、何回もトイレに起きてしまうとしたら、加齢も含めた病気と考えたほうが良さそうです。このとき、主訴の治療と並行して、尿量を調節するお薬の処方が受けられるとのこと。生活のリズムを取り戻し、モチベーションを高めつつ、主訴の治療へ取り組みましょう。

医院情報

大宮エヴァグリーンクリニック

大宮エヴァグリーンクリニック
所在地 〒330-0844 埼玉県さいたま市大宮区下町2丁目16-1 アクロスビル3F
アクセス 大宮駅から徒歩5分
診療科目 内科 消化器科(胃腸科)泌尿器科 外科 肛門科

この記事の監修医師