FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 症状から調べる
  3. 皮膚・爪・髪
  4. 「おしりにできもの」ができる原因をご存知ですか?医師が徹底解説!

「おしりにできもの」ができる原因をご存知ですか?医師が徹底解説!

おしりにできものがある時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

後藤 和哉 医師

監修医師
後藤 和哉 医師(京都大学医学部附属病院)

プロフィールをもっと見る
大分大学医学部卒業後、関西電力病院、京都大学医学部附属病院、研修医を経て
京都大学医学部附属病院、天理よろづ相談所、皮膚科医。

「おしりのできもの」で考えられる病気と対処法

おしりのできものはさまざまありますが、頻度の高い疾患とまれだけど知っておくほうがよい疾患とを解説いたします。

おしりのできもので考えられる原因と対処法

まず、おしり(臀部)のできもので頻度の高いものは毛包炎毛嚢炎)や粉瘤、脂肪腫です。まれですが悪性腫瘍の可能性もあります。また、肛門から飛び出るようにできたものは痔核や皮垂(スキンタグ)の可能性があります。
赤く腫れて膿がでている、痛みがある場合は感染性や炎症性の疾患(詳しくは後述)の可能性がありますので清潔なガーゼをあててすみやかに皮膚科を受診されることをおすすめします。
通常の粉瘤や脂肪腫の場合は気づいた時点で一度皮膚科を受診することを検討してください。明らかに肛門(おしりの穴)にあるときは外科(肛門科)の受診をおすすめします。

おしりにできものができてかゆい症状で考えられる原因と対処法

このような場合には、ウィルス性のイボがデリケートゾーン(性器や肛門の周囲)に多発する尖圭コンジローマという病気が考えられます。性行為などにより感染します。先が尖ったピンク色や茶色の小さなイボで、多発して密集するとカリフラワー状に見えることがあります。かゆみや痛みは特にないとされていますが、わずかに感じる方がおられます。液体窒素による冷凍凝固療法や外科的切除術、外用薬による治療があります。婦人科、泌尿器科、皮膚科を受診してください。

おしりのできものが痛くて赤い症状で考えられる原因と対処法

このような場合には、毛包炎(毛嚢炎)、せつ(おでき)や炎症性粉瘤、肛門周囲膿瘍などが考えられます。
毛包炎とは毛穴にできた傷などをきっかけに表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌が感染して毛包(毛根を包む皮膚組織)に炎症がおきる病気です。赤みと圧痛があり小さな膿をもちます。せつは、毛包炎が悪化して痛みと熱感を伴って膿でふくらんだ状態を言います。

粉瘤

粉瘤は毛穴の部分が袋状になり、中に角質などがたまる病気です。袋が皮膚の中でやぶれたり感染して炎症を起こす(炎症性粉瘤)と急に赤くはれて大きくなり痛みと膿がでてくる点はせつと似ています。
おしりの毛包炎は少数の場合、清潔にすれば数日で自然治癒します。多発する場合は抗菌薬内服が必要になることがあります。また、せつ、炎症性粉瘤では抗菌薬内服や、切開をして膿を出す必要があることが多いので、ガーゼをあててなるべく早く皮膚科を受診してください。痛みが強い場合は市販の痛み止めを内服してもよいでしょう。温めると炎症で痛みが強くなるので入浴はせずシャワーで流すだけにしてください。
いずれも健康な方にできますが、せつは肥満や免疫の低下している方、高齢者、糖尿病患者がよりかかりやすい病気です。これらは頻繁に再発することは通常ありません。ですが、もし毛包炎やせつに似ている症状がすぐに再発したり治りの悪い場合は、化膿性汗腺炎を発症する可能性があります。詳しくは後述します。

肛門周囲膿瘍

また、肛門(お尻の穴)の周囲に痛みと赤みがありぶよぶよと内部に膿がたまっていそうなときは、肛門周囲膿瘍の可能性があります。肛門から膿がでてきたり、38-39度の発熱がでたりします。肛門(粘膜側)の病気なので、このような症状のときはすみやかに外科(肛門科)を受診してください。

おしりのできものがぶよぶよしていて痛い症状で考えられる原因と対処法

このような場合、皮下の脂肪細胞由来の腫瘍である脂肪腫や脂肪肉腫などを考えます。
良性腫瘍である脂肪腫も、脂肪肉腫などの悪性腫瘍(軟部肉腫)も大きくなり神経を圧迫するようになれば痛みを感じます。良性の脂肪腫は数年単位で大きくなりますが、悪性の場合は急速に大きくなることがあります。超音波やMRIなどの画像検査、場合により組織検査を行って診断します。治療は切除術になります。
脂肪腫を疑う場合、クリニックではなく検査や手術のできる総合病院の皮膚科の受診をおすすめします。悪性を疑う場合は整形外科が専門になります。診断及び治療に高い専門性が必要な病気ですので、皮下にできものがある際は皮膚科と整形外科の常勤医がいる総合病院や軟部腫瘍の専門医のいる病院を受診して相談されることをおすすめします。

おしりのできものがぶよぶよしているが痛くない症状で考えられる原因と対処法

このような場合には、脂肪腫や粉瘤の可能性があります。
脂肪腫は、皮膚表面に変化のない、皮下にできた良性腫瘍です。粉瘤は表面に小さな穴があり内部に角質がたまっている小さな袋状のできものです。いずれも、炎症やサイズが大きくなるなどで生活に支障がでなければ経過観察が可能です。ただ、皮下腫瘍の場合は見た目で良性悪性の区別は難しいため、総合病院の皮膚科や整形外科を一度受診して診断を受けることをおすすめします。
もし、おしりのできものが肛門から飛び出るようにできた場合には、痔核や皮垂(皮膚のたるみ)の可能性があります。この場合は外科(肛門科)を受診してください。

おしりのできものがしこりのように硬い・しこりがある症状で考えられる原因と対処法

このような場合、特に動きの悪いしこりの場合はまずは悪性腫瘍を疑います。皮膚が赤色や黒色をしている場合は皮膚癌、皮下にできている場合は軟部肉腫やその他の癌、肛門にできている場合は消化器癌の可能性があります。なるべく早く総合病院の皮膚科や外科を受診されることをおすすめします。
また、化膿性汗腺炎でもしこりのように硬くなることがありますが、くりかえす炎症の結果として硬くなるため皮膚科を受診して早めの診断と治療の開始をおすすめします。

すぐに病院へ行くべき「おしりのできもの」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

おしりのできものが赤く腫れて痛みと膿る場合や急におおきくなった場合は、皮膚科へ

このような場合は、細菌感染や炎症を起こしている可能性があります。おしりのできものが急に大きくなった場合や硬いしこりがある場合も感染や悪性の可能性があります。皮膚科を受診してください。

受診・予防の目安となる「おしりのできもの」のセルフチェック法

  • ・おしりのできものがかゆい状態の場合
    →先が尖ったピンク色や茶色の小さなイボがデリケートゾーンにみられる=尖圭コンジローマ
  • ・おしりのできものが赤くて痛い状態の場合
    →毛穴くらいのサイズで複数個認める場合=毛包炎(毛嚢炎)
    →単発のもので数センチ程度に腫れて中から臭い膿や角質がでてくる場合=炎症性粉瘤
    →肛門周囲が腫れて肛門から膿がでたり熱がでたりする場合=肛門周囲膿瘍
    →再発寛解を長期に繰り返して痕になる場合=化膿性汗腺炎の可能性
  • ・おしりのできもので痛みがない状態の場合
    →皮膚の下にありぶよぶよしている=軟部腫瘍(良性の脂肪腫や悪性の肉腫など)
    →数cmのおしりのできもの。表面に穴があり中から角質がでてくる。皮膚の色は常色〜灰色=粉瘤
    →肛門からでている=痔核や皮垂、まれだが悪性腫瘍の可能性
  • ・おしりのできものがしこりのように硬い場合
    →表面が赤色や黒色をしている場合=皮膚癌などの可能性
    →皮膚の下にあるしこり=軟部肉腫、その他の癌の可能性
  • 「おしりのできもの」症状が特徴的な病気・疾患

    ここではMedical DOC監修医が、「おしりのできもの」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
    どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

    粉瘤

    粉瘤は毛穴の部分で皮膚が袋状になり、中に角質や皮脂がたまる良性の腫瘍です。中の角質が透けて見えて灰色調に見えることがあります。小さいうちは1cm程度ですが10cm近くまで大きくなることがあります。皮膚表面に臍のような袋の出口が見られ、時々内部の角質や皮脂がでてきます。その袋が皮膚の中で破裂したり、感染すると炎症のため痛みを伴って赤く腫れ、臭い膿がでてきます(炎症性粉瘤)。粉瘤は無治療・経過観察でかまいませんが、炎症性粉瘤で膿がたまっている場合は、排膿させる応急処置を行う場合があります。毎日の洗浄と軟膏処置を行えば傷は閉じますが、袋自体は残りますので、再発予防目的で根治を希望される場合は、後日に全摘切除術を行うことになります。
    受診する科は皮膚科(形成外科)になります。根治術を希望される場合は、皮膚腫瘍の手術を行なっている病院かどうかあらかじめご確認ください。

    化膿性汗腺炎

    化膿性汗腺炎は慢性炎症性の皮膚病で、おしりなどにおできのようなものが出来ては治る経過を短期間で繰り返す病気です。膿のようなものがたまって大きくなり、破れて痕が残り痛みを伴うことが多い病気です。しかもこの症状が何ヶ月も続きます。思春期以降に発症しますが、おしりだけでなく、アポクリン腺(汗腺のひとつ)の多い脇の下、太ももの付け根(鼠径部)、乳房にもできます。最近はこの病気は(抗菌薬も治療のひとつですが)感染症ではないと考えられており、他の似たような疾患を除外することで診断されます。喫煙との関連も言われています。治療は切開排膿、手術などの外科的治療だけでなく抗菌薬の内服・外用・生物製剤(注射薬)といった様々な治療法があります。このような症状がある場合は皮膚科を受診ください。

    脂肪腫

    脂肪腫は皮膚の下にできた脂肪細胞由来の良性腫瘍です。皮膚の下がやわらかく盛り上がった状態になります。痛みは通常なく皮膚の色も変わりません。とても大きくなって痛みを生じたり生活の支障になる場合に切除術を行います。逆に生活に支障がない限りは経過観察でかまいませんが、腫瘍のタイプ(組織型)が様々あるので腫瘍の硬さや柔らかさだけでは良性と悪性の区別は困難です。もし軟部肉腫(悪性)であった場合は速やかに治療を開始する必要があります。生活に支障はなくとも皮膚の下にできものをみつけた場合は、総合病院の皮膚科や整形外科を受診することをおすすめします。

    「おしりにできもの」があるときの対処法は?

    今回ご紹介したおしりのできものの大半には塗り薬は効きません。軽い毛包炎の場合には、清潔にすることでも自然によくなりますが、サリチル酸含有のセナキュアなどピーリング作用のある市販薬を使用すると毛穴が開きやすくなり、有効なことがあります。
    座るとできものが痛い場合は、なるべく早めに病院を受診することが勧められますが、炎症を悪化させないために痛い場所にあたらない座り方をされるか、座りっぱなしをさけるようにしてください。

    「おしりのできもの」についてよくある質問

    ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「おしりのできもの」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

    おしりにできものがあって痛いときは何科の病院に行くべきですか?

    後藤 和哉(ごとう かずや)医師後藤 和哉(ごとう かずや)医師

    肛門から離れていれば、まずは皮膚科を受診ください。肛門や肛門に接するできものは、まずは外科(肛門科)を受診してください。

    おしりの近くに硬いできものがあるとき市販薬は効きますか?

    後藤 和哉(ごとう かずや)医師後藤 和哉(ごとう かずや)医師

    腫瘍の可能性があり効果はないと思われます。受診をおすすめします。

    赤ちゃんのおしりにできものがある時の原因は何が考えられますか?

    後藤 和哉(ごとう かずや)医師後藤 和哉(ごとう かずや)医師

    乳児期の赤ちゃんでは、下痢や緩い便が続いた後に肛門周囲が赤く腫れて膿がたまる肛門周囲膿瘍の可能性があります。痛みで機嫌が悪くよく泣くようになります。外科的な処置が必要になる場合があるためすみやかに小児外科を受診してください。

    おしりの腫れ物・おできがなかなか治らないのはなぜでしょうか?

    後藤 和哉(ごとう かずや)医師後藤 和哉(ごとう かずや)医師

    おしりは汗などで蒸れやすく座ってお尻を圧迫し、動くたびに衣服で摩擦を生じやすい場所なので、日常動作で炎症が悪化しやすい状況にあります。また、ご自身の免疫が落ちている場合になりやすいです。

    おしりのできものの再発予防で普段から出来ることを教えてください。

    後藤 和哉(ごとう かずや)医師後藤 和哉(ごとう かずや)医師

    座りっぱなし、硬い生地やゆとりのない衣類をさける、下着の工夫をしておしりへの摩擦や蒸れをなくす。ナイロンタオルなど皮膚を傷つけやすい硬いものでは洗わない。汗をかいたらこまめに流す。禁煙する。バランスの取れた食事、規則正しい生活、睡眠不足をなくす、疲れたら休憩する等免疫を落とさない生活をする。

    まとめ

    おしりのできものの大半は腫瘍によるものですが、炎症性や感染性のできものもあります。毛包炎や粉瘤は区別がつきやすく経過観察でよいですが、皮膚の下にあるできもの、硬いしこりになっているもの、膿がでてくるようなものはなるべく早く病院を受診されることをおすすめします。

    「おしりのできもの」で考えられる病気と特徴

    「おしりのできもの」から医師が考えられる病気は12個ほどあります。
    各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

    皮膚科の病気

    婦人科、泌尿器科、皮膚科の病気

    • 尖形コンジローマ

    外科(肛門科)・小児外科の病気

    整形外科の病気

    • 臀部肉腫

    ニキビ(尋常性ざ瘡)は、毛包炎の一種ですが常在菌のアクネ菌が関与し、おしりにできることは珍しいため今回は解説していません。

    「おしりのできもの」と関連のある症状

    「おしりのできもの」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
    各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

    関連する症状

    「おしりのできもの」の他にこれらの症状がある場合「毛包炎」「脂肪肉腫」「肛門周囲膿瘍」「化膿性汗腺炎」「尖圭コンジローマ」「痔核」などの疾患の可能性が考えられます。痛みや腫れ、膿などがある場合には、早めに医療機関への受診を検討しましょう。

この記事の監修医師