クレーター肌や赤みが残るニキビ跡ができる原因はご存じですか? 改善するための治療法も皮膚科医が解説!

ニキビの治療は最初が肝心。治療開始が遅れたり、誤った治療を続けたりすると、ニキビ跡がクレーターや赤みとして残ってしまうこともあるからです。しかし、クレーターや赤みが残ってしまったとしても諦める必要はありません。今回は、重症化したニキビ跡の治療法について、「さおり皮ふ科クリニック」の山本先生に解説していただきました。

監修医師:
山本 佐織(さおり皮ふ科クリニック)
なぜクレーターや赤みが残るの?

編集部
ニキビができた後、クレーターや赤みが残ることがあるのはなぜでしょうか?
山本先生
様々な原因が考えられますが、ほとんどの場合は「早期に適切な治療をおこなわない」ことが原因として挙げられます。そもそも、クレーターができる原因はニキビの炎症が皮膚の奥にまで進行してしまうことです。ニキビの炎症が重症だったり、炎症が長引いたり、自分でニキビを潰してしまって皮膚の真皮層(深い層)にまでダメージが広がってしまったりしたことでクレーターができます。
編集部
炎症が長引くとクレーターになるのですか?
山本先生
クレーターになるかどうかは、炎症の重症度と炎症の持続時間に関係しています。ニキビが重症化すると毛穴の中でアクネ菌が異常に増殖し、炎症を起こします。すると、そのアクネ菌の働きによって毛穴周辺の皮膚組織が破壊され、真皮層の組織までダメージを受けてしまいます。炎症が長引くと、治った後も真皮層のダメージだけが残り、凹みやくぼみとなって残存してしまうのです。
編集部
赤みが残る原因はなんですか?
山本先生
ニキビの跡に赤みが残る原因は、毛細血管が透けて見えるからです。簡単に言うと、ニキビの炎症によって皮膚の組織がダメージを受けると、それを修復しようとして毛細血管が増えます。この増殖した毛細血管が拡張し、それが皮膚から透けて見えることで赤みとなってしまうのです。
編集部
どちらも重症化したニキビが原因なのですね。
山本先生
はい。ニキビはできるだけ早めに適切な処置をおこなえば悪化を防ぎ、炎症の重症化を食い止めることができますが、この時期に治療法を誤ると皮膚の組織が大きなダメージを受けてしまいます。クレーターや赤みができると、自宅でのセルフケアではなかなか改善することができません。こうした症状に悩んでいる場合には、できるだけ早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
クレーターはどうやって治す?

編集部
どのようにして、クレーターは治すことができるのですか?
山本先生
日本では現在、クレーターを治すのに有効な保険適用の治療法はありません。しかし、国内では未承認ですが、海外ではすでに承認されており、効果が確認されている治療法はあります。その筆頭が、「ダーマペン」や「ポテンツァ」です。
編集部
どのような治療法なのでしょうか?
山本先生
簡単に言えば、皮膚の再生力を活用した治療法です。髪の毛よりも細い微細な針で皮膚表皮層を傷つけずに微小な穴を開け、それを修復しようとする皮膚の力を利用して、コラーゲンやエラスチンなど皮膚のハリや弾力性をアップする成分を増やし、皮膚を綺麗にしていきます。
編集部
自己回復力に期待するということですね。
山本先生
はい。ダーマペンやポテンツァは、特にニキビ跡やクレーターに効果を発揮すると言われています。肌の凸凹に作用してコラーゲンやエラスチンを作り、凹んだ部分の皮膚の再生を促すためです。
編集部
どれくらいの効果が期待できるのですか?
山本先生
ダーマペンやポテンツァと組み合わせる薬剤によっても異なりますが、例えば当院では「エクソソーム」という薬剤を用いています。エクソソームは幹細胞培養上清液と呼ばれるもので、人間から抽出された幹細胞を培養し上澄み液を用いた成長因子を皮膚に塗布します。すると傷を治そうとする力がさらに高まり、また、コラーゲンの生成も促進され、クレーターの改善に大きな効果が期待できます。そのほかにも、「ポテンツァ専用薬剤」や「マックーム」も高い効果が期待できます。
編集部
ほかにも、治療法はありますか?
山本先生
「キュアジェット」という治療法もあります。キュアジェットは、針を使わず、ジェット噴射により真皮層まで薬剤を届ける画期的な治療法です。ニキビ跡の凹みや傷跡の原因となる線維化した組織を断ち切りながら薬剤を注入します。ニキビ跡やクレーターだけでなく、額や首などのシワ、水疱瘡などの跡などにも有効です。
赤みが残ったニキビ跡の治療法

編集部
赤みが残ったニキビ跡は、どのようにして治療するのですか?
山本先生
クレーター治療と違ってニキビ跡の赤みには、保険治療で有効な塗り薬や漢方薬を使うことができます。ただし、これらの治療を3カ月ほど継続しても効果が実感できない場合には、先述したダーマペンやポテンツァ、IPLをおこなうことがあります。
編集部
IPLとはなんですか?
山本先生
肌にIPL(インテンス・パルス・ライト)と呼ばれる光を照射して、シミやしわ、赤みなどを改善して肌全体を若返らせる治療のことです。光治療やフォト治療とも呼ばれ、ニキビ跡の赤みのほか広範囲にわたるシミ、そばかす、顔全体のくすみなどにも有効です。
編集部
赤みを完全に綺麗にすることはできるのですか?
山本先生
保険治療と並行してポテンツァなどの治療をおこなうことで、だいぶ綺麗になると思います。ポテンツァは1回でも効果を感じることができますが、3回連続しておこなうことで満足度の高い結果が得られると思います。医師の指示に従って、継続するようにしましょう。
編集部
クレーターや赤みを残さないようにするためには、どのようなことに気をつければいいでしょうか?
山本先生
ニキビの後にクレーターや赤みができるのは、炎症がひどくなった証拠です。つまり、炎症がひどくなる前に適切な治療をおこなえばクレーターや赤みを残さずに済むのです。ニキビを予防するためには普段から適切なスキンケアをおこなったり、健康的な生活習慣を意識したりすることが大事です。万が一、ニキビができてしまった場合には自己流のセルフケアをおこなわず、できるだけ早めに専門医の診察を受けることが跡を残さず治療するための近道です。炎症があるニキビ治療には保険が適用になるので、困ったことがあれば早めに皮膚科医に相談しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山本先生
クレーターや赤みは、一度起きてしまうと治療が本当に大変です。満足のいく治療結果を得るまでには、お金も時間もかかります。特に思春期の場合には重症化しやすく、病院へ行こうか迷っているうちに、顔全体にクレーターや赤みが広がってしまい、治療が困難になったというケースは少なくありません。ニキビは、軽症のうちに対処すれば治療も比較的簡単です。もしニキビに悩んでいる場合には、早めに医師に相談してほしいと思います。
編集部まとめ
自己流のセルフケアや市販薬で治療を続けた結果、クレーターや赤みが残ってしまったというケースも多くみられます。綺麗な肌を取り戻すには、先手必勝。早めに医師の診察を受け、できるだけニキビが小さいうちに治療を受けるのがベターです。
医院情報
所在地 | 〒407-0015 山梨県韮崎市若宮2-9-47 |
アクセス | JR「韮崎駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 皮膚科、小児皮膚科、美容皮膚科 |