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痔瘻(肛門周囲膿瘍)の症状・原因・治療方法について

 更新日:2023/03/27

痔瘻(肛門周囲膿瘍)(読み方:じろう(こうもんしゅういのうよう))とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長

痔瘻(肛門周囲膿瘍)とは

肛門の内側にある肛門陰窩という窪みから細菌が侵入し、これにつながる肛門腺に感染を起こし、膿瘍を形成した後、肛門内から外の皮膚側まで膿の通る管(トンネル)ができた状態です。

引用:松島病院 大腸肛門病センター
http://www.matsushima-hp.or.jp/diagnosis/04/

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長監修ドクターのコメント
細菌が肛門の内側にある肛門陰窩より肛門の周囲に侵入し、炎症を起こすことを肛門周囲膿瘍といいます。非常に強い痛みがあり、放置すると膿が肛門周囲の皮膚から自然に排出されます。そうしてできた、肛門の内側と外側が交通した状態が慢性化したものが痔瘻と呼ばれています。

痔瘻(肛門周囲膿瘍)の症状

まず、肛門の周囲が化膿して膿がたまり、はれてズキズキと痛み、時には38~39℃の発熱を伴います(肛門周囲膿瘍)。肛門周囲膿瘍が進みたまった膿が出ると症状は楽になりますが、膿のトンネルができているので(痔ろう)、常に膿が出たりします。
こうした痔ろうや、その前段階の肛門周囲膿瘍は、市販薬では治すことができません。これらの症状が疑われたら、なるべく早く専門医を受診してください。

引用:ボラギノール(天藤製薬)
http://www.borraginol.com/knowledge/jirou/

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長ドクターの解説
細菌が肛門の内部に侵入すると、肛門周囲膿瘍をおこします。肛門周囲膿瘍は椅子に座れないほどの非常に強い痛みを伴うことが多く、さらに発熱などを伴います。多くの場合、痛みを我慢できず受診されることが多く、切開排膿を行います。切開排膿を行うと肛門周囲の痛みは軽快し楽になりますが、瘻管が残る場合には肛門の内側と外側が交通してしまいます。その瘻管を通って膿や粘液が排出し、パンツを汚したり、時折痛みや炎症を繰り返すなどの症状が出てきます。この状態が痔瘻を疑う症状になります。

痔瘻(肛門周囲膿瘍)の原因

痔ろうの主な原因は、下痢等によって肛門の組織に細菌が入り込むこととされています。歯状線には、「肛門陰窩(こうもんいんか)」と呼ばれる上向きのポケットがあり、粘液を出す「肛門腺」と呼ばれる腺があります。小さなくぼみなので、通常はここに便が入り込むことはありませんが、下痢をしていると、便が入りやすくなり、肛門腺に大腸菌等の細菌が入り込むことがあります。
この肛門腺に大腸菌が入った際に、付近に傷があったり、体の抵抗力が弱っていたりしていると、感染を起こして化膿し、肛門周囲膿瘍になるのです。さらに肛門周囲膿瘍が進行し、肛門の内外をつなぐトンネルができると、痔ろうとなります。

引用:ボラギノール(天藤製薬)
http://www.borraginol.com/knowledge/jirou/

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長監修ドクターのコメント
とくに肛門の内側に侵入しやすい下痢便の方に発症しやすいといわれ、また糖尿病や高齢者など免疫の弱った方も発生しやすいといわれています。また潰瘍性大腸炎やクローン病などの大腸の特殊な病気でも発生しやすく、その場合一度治療を行っても再発する場合が多く見られます。

痔瘻(肛門周囲膿瘍)の検査法

痔瘻診断に有用な検査法には, 視診, 触診, 肛門指診, 肛門鏡検査のほか, 画像診断として経肛門的超音波検査, CT, MRI検査, 瘻孔造影などがある. 中でも肛門指診が最も大切な検査であり熟練を要す.

引用:肛門疾患診療ガイドライン2014(日本大腸肛門病学会)
https://www.coloproctology.gr.jp/files/uploads/肛門疾患診療ガイドライン2014-2刷.pdf

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長監修ドクターのコメント
痔瘻の検査では、肛門内にできた1次口(細菌が侵入したところ)と、肛門外の2次口(膿が排出するところ)の特定が大切になります。治療の際にも大切になるのですが、とくに1次口を正確に診断できないと、治療後に再発し、再度痔瘻を作ってしまう場合もあります。また、瘻管(1次口と2次口をつなぐトンネル)と肛門括約筋や肛門挙筋などの排便にかかわる筋肉との位置関係も重要になります。またとくに若年者での発症の場合、特殊な大腸の病気の除外のためにも、大腸の検査が必要になります。またまれですが、痔瘻に「がん」が発生する場合があり、痔瘻がんといわれます。特に高齢者で5年あるいは10年以上継続する痔瘻には、痔瘻がんの疑いがあり注意が必要です。

痔瘻(肛門周囲膿瘍)の治療方法

肛門周囲膿瘍の治療の原則は切開排膿とドレナージです。広い範囲に化膿性炎症である蜂窩織炎を起こしている場合や、ドレナージでよくならない場合には抗生剤の投与を行う場合もあります。
痔瘻の場合には程度と広がりによって、さまざまな治療を選択します。基本的には長期にわたると肛門周囲膿瘍を繰り返してしまうため膿瘍の再燃防止のため外科的治療が行われます。ただし、クローン病などの炎症性腸疾患によって生じた痔瘻は、外科的な根治手術により傷口が治らなくなる場合もありますので、腸管の精査や全身的な治療が優先されます。炎症性腸疾患に伴う痔瘻や肛門周囲膿瘍の場合には、持続的にドレナージするためにシートン法というヒモを通して留置する治療を行います。

引用:徳洲会グループ
https://www.tokushukai.or.jp/treatment/digestive/ji_rou.php

寒河江 三太郎 医師 厚木胃腸科医院 院長監修ドクターのコメント
痔瘻はまれに自然治癒するものもありますが、通常根治手術を行わないと治りません。痔瘻の治療の基本は、瘻管に便からの細菌の進入を防ぐこと、瘻管を可能な範囲で切除すること、また術後に肛門のしまりが悪くなるなどの合併症をおこさないことです。以前は、瘻管の走向が深く肛門括約筋の深い部分を走向している場合、肛門括約筋を大きく切る場合もあり、肛門の締まりが悪くなってしまうことがありました。現在は様々な術式が存在しており、患者様の状態によって選択されます。痔瘻と診断された方は、よく主治医と相談され、治療法を選択されることをお勧めいたします。

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