「息を吐くと胸が痛い」のは「肋間神経痛」が原因？医師が徹底解説！

息を吐くと胸が痛いとき、身体はどんなサインを発している？Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師：
甲斐沼 孟（上場企業産業医）

「息を吐くと胸が痛い」症状で考えられる病気と対処法

日常生活で深く息を吸った時や息を吐く場合に胸が痛い、あるいは咳症状に伴って鋭い胸の痛みが増強したという経験はありませんか。
軽度であればしばらく様子を見ることもできますが、症状が重度になると命にかかわる病気が潜んでいることも考えられます。
今回は、息を吐くと胸が痛くなる症状を認めた際に、原因となる主な病気や対処法について詳細に説明していきます。

息を吐くと胸が痛い症状で考えられる原因と対処法

息を吐くと胸が痛い症状で考えられる疾患として、「気胸」が挙げられます。
気胸とは何らかの原因により肺から空気が漏れることで、肺が潰れてへこんでしまう病気であり、通常突然の胸痛で発症し、呼吸困難を伴うこともあります。
気胸という病気は再発する危険性も指摘されているので、突然の胸部痛や背部痛に伴って呼吸苦を呈するといった症状の出現様式や、発症時における迅速な対応方法などを知っておくことが望ましいです。
気胸は、タバコの喫煙習慣を背景として発症するリスクが上昇すると言われていますので、常日頃から禁煙を実践することが予防する上で重要な視点となります。
特に、緊張性気胸という状態を認める場合には、一刻の猶予も許されず、緊急的に胸腔ドレナージ処置を実施する必要性が高いと考えられています。
気胸は放置すれば命に係わる病気であり、比較的緊急性が高い疾患ですので、症状を自覚した際には、なるべく迅速に救急車を呼ぶなどして、呼吸器外科を有する専門医療機関を受診するように意識しましょう。

深く息を吐くと胸が痛い症状で考えられる原因と対処法

深く息を吐くと胸が痛くなる症状で考えられる原因疾患の一つとして、「胃潰瘍」が考えられます。
胃潰瘍は、主にピロリ菌による感染、もしくは解熱鎮痛薬のひとつである非ステロイド系抗炎症薬の長期間の内服などによって、胃の粘膜がただれる状態を意味します。
ピロリ菌感染や薬剤性以外にも、胃潰瘍では喫煙や飲酒、過剰なストレス、刺激物の摂取などによって引き起こされる胃壁の粘膜障害も認められます。
胃潰瘍は現代社会の代表的な病気のひとつであり、胃液中に含まれる胃酸成分やペプシンと呼ばれる物質が胃を保護している粘膜を消化してしまうことによって発症すると考えられています。
胃潰瘍に対しては、規則正しい生活を送ると共に、胃粘膜保護薬などを服用することで症状が改善する効果が期待できます。
心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診しましょう。

息を吐くと左胸が痛い症状で考えられる原因と対処法

息を吐くと左胸が痛む症状で考えられる病気の一つとして、「胸膜炎」が考えられます。
肺を包む2枚の膜が炎症を起こす胸膜炎は体勢を変えたときに胸が痛みやすい症状として知られていますが、併せて息を吸うときに痛みが走ったり、発熱や咳などを伴ったりすることもあります。
また炎症を起こした膜を起点として肺の内部に水が溜まると、圧迫されるような強い痛みが出現するので危険ですし、呼吸困難に陥る可能性も十分に考えられるので早急に対処しないといけません。
心配であれば、呼吸器内科など専門医療機関を受診しましょう。

息を吐くと右胸が痛い症状で考えられる原因と対処法

息を吐くと右胸が痛む症状で考えられる病気の一つとして、「肋間神経痛」が考えられます。
肋間神経痛は、日々の規則正しい生活や運動ができているとなりにくいと指摘されています。
特に、免疫力の低下している人は帯状疱疹にかかりやすいため、結果的に肋間神経痛になりやすいですし、脊椎を支える筋肉や靭帯の老化でも肋間神経痛は起こるので、比較的若い人よりも年配の人に多くみられます。
肋間神経痛は様々な原因で引き起こされる症状であり、治療法も異なるため、はじめにしっかりと原因を突き止める必要があります。
肋間神経痛は軽度であれば内服薬で症状が改善しますが、重度になると外科的手術を行う場合もあります。
早期発見が大事ですので、少しでも痛みや違和感がある場合は内科など医療機関を受診しましょう。

息を吐くと胸の真ん中が痛い症状で考えられる原因と対処法

息を吐くと胸の真ん中が痛む症状で考えられる病気の一つとして、「急性心筋梗塞」が考えられます。
心臓の筋肉を養っている役割を持っている血管は、大動脈が心臓の左心室の部屋から出たところでちょうど枝分かれしている左右の冠動脈です。
心筋梗塞とは脂質異常症のみならず高血圧などが誘因となって形成される冠動脈の硬化性変化に伴って冠状動脈の血行障害をきたすことによっても発症します。
心筋梗塞は、急に胸に激痛が起こり、胸に締めつけられるような圧迫感を覚える危険な心臓の病気であり、発症した際には早急に治療を施さないと、死を招きやすいことでも広く知られており、多くの人を前触れもなく突然襲う恐ろしい病気と言えます。
心配であれば、循環器内科など専門医療機関を受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「息を吐くと胸が痛い」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

強い背部痛や冷や汗の症状が合併する場合は、救急科や心臓血管外科へ

息を吐くと胸が痛い以外にも、強い背部痛や冷や汗を認める際には、急性大動脈解離を疑います。
急性大動脈解離という病気は、大動脈の内膜に亀裂が入り、裂けた部分に血液が入り大動脈に平行して血管が剥がれ二構造になってしまう救急疾患です。
その多くは高血圧によって大動脈の壁が劣化することで発生します。
緊急的に、降圧薬の投与と場合によっては外科手術を行って裂け目を覆う治療を実施します。
心配であれば、すぐに救急科や心臓血管外科を受診しましょう。

受診・予防の目安となる「息を吐くと胸が痛い」ときのセルフチェック法

• ・息を吐くと胸が痛い以外に呼吸困難の症状がある場合
• ・息を吐くと胸が痛い以外に咳や発熱症状がある場合
• ・息を吐くと胸が痛い以外に意識消失や冷や汗がある場合

「息を吐くと胸が痛い」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「息を吐くと胸が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

気胸

息を吐くと胸が痛くなる病気の一つとして、気胸が考えられます。
気胸は救急外来で遭遇する比較的頻度の高い疾患であり、自然気胸と外傷性気胸に大きく分類されています。
気胸が発症する原因としては、ブラの破裂や外傷など何らかの理由が契機となって臓側胸膜という身体の生体部位が損傷されて、肺実質内部の空気成分が肺の外部の空間である胸腔内に漏出することと考えられています。
気胸に対する治療は、その重症度に基づいて判断されますが、もし軽症であれば、特別な治療は必要とせずに、安静を保持して経過観察することによって、自然と状態が改善することが多いです。
重症度が高い場合には、胸腔ドレナージ処置を余儀なく施行されるケースが多く、腋窩ラインに沿って胸腔ドレーンという管を挿入して胸腔内に存在する余分な空気成分を体外排出する目的で実施されます。
治療が必要な場合には、できるだけ早めに呼吸器外科を受診しましょう。

胸膜炎

胸膜炎とは、肺の表面あるいは胸壁を覆っている胸膜に炎症が起きた状態を指します。
胸膜に炎症をもたらす原因はさまざまです。
主な原因として感染症やがん、膠原病などが挙げられます。
感染症では、細菌性肺炎に続発する形で胸膜炎が生じることがありますし、インフルエンザや結核などが原因となることもあります。
がんに関連した胸膜炎としては、肺がんが代表的ですし、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病、薬剤（アミオダロン、ブレオマイシンなど）、骨折、アスベストなども胸膜炎の原因となります。
胸膜炎を発症すると、胸の痛みや息苦しさなどの症状が現れる以外にも、背中に痛みを自覚する、あるいは咳や発熱などがみられることもあります。
胸膜炎では、胸腔に胸水という液体成分が貯留して、呼吸困難が増強することもあります。
胸膜炎の治療は、症状を和らげる対症療法と、胸膜炎の原因に対する治療に大きく分類され、対症療法では、胸膜炎の痛みを取り除くために鎮痛剤の使用を検討しますし、胸水をドレナージするために胸に針を刺して排液する治療を行うことも見受けられます。
心配であれば、呼吸器内科など専門医療機関を受診しましょう。

肋間神経痛

肋間神経痛とは、肋骨に沿っている神経がズキズキと痛む症状などが引き起こされる疾患のひとつであり、その発症原因によって対処法も違います。
肋間神経痛の症状で特徴的なのは、肋間神経が痛むことであり、痛む場所や範囲がはっきりしていて、左右両側に起こることは比較的稀と言われています。
肋間神経痛は原因によって治療方法は異なり、軽度の場合には消炎鎮痛薬の内服で治療していきますが、重度になると外科的手術を施行する場合もあるので、なるべく軽度のうちに治療できるように早めの受診をおすすめします。
目安として2〜3日以上胸の痛みが続く場合は、内科などを受診しましょう。

「息を吐くと胸が痛い」ときの正しい対処法は？

息を吐くと胸が痛くなった際には、症状が軽度であれば深呼吸を繰り返して行い、体を冷やさないように意識しましょう。
一般的に、体が冷えると血行不良になり、筋肉が緊張した状態を引き起こして肋間神経痛などを誘発する恐れがあります。
生活習慣を整えてセルフケアを実施しても症状が良くならない際には、アセトアミノフェン錠など市販の鎮痛薬を服用してしばらく様子を見ることも場合によっては考えられます。
市販薬は用法用量を遵守して適切に使用し、仮にしばらく服用を継続しても症状が改善しない場合には重篤な病気が存在するかもしれませんので、できるだけ早く専門医療機関を受診しましょう。
日々のストレスは、心臓だけでなくさまざまな臓器の機能を低下させるため、できるだけ普段からストレスを解消し、自律神経の乱れを整えることが大切です。
ストレスを解消する方法として、ゆっくり湯船に入浴する、軽めの有酸素運動をする、自分なりのリラックスできる時間を作る、快適な睡眠リズムを確保するなどが考えられます。
症状を早く治したい時や応急処置をしても症状が収まらない場合は、重大な疾患が隠れている可能性も想定されますので、可及的速やかに専門医療機関を受診しましょう。

まとめ

日常生活において息を吐くと胸が痛くなる原因としては、胃潰瘍、心筋梗塞や気胸、肋間神経痛、胸膜炎などの病気が隠れている可能性があります。
特に、息を吐くと胸が痛くなる症状が改善しない場合や、同時に意識消失する、あるいは発熱や呼吸困難を伴うなどが認められる際には、迅速に状態を評価してもらえるように適切なタイミングで専門医療機関を受診することをお勧めします。
急性心筋梗塞や急性大動脈解離、緊張性気胸など生命に直結する危険なキラーディジーズが潜在している可能性を除外することも重要な判断となります。
息を吐くと胸が痛くなる症状を自覚した際には、迅速に医療機関を受診して各種検査によって症状を呈している疾患を特定して正確な診断に繋げた上で、適切な対処策や治療法を選択することが推奨されます。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

「息を吐くと胸が痛い」症状で考えられる病気

「息を吐くと胸が痛い」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

症状が軽度であればしばらく様子を見ることもできますが、症状が重度になると命に係わる病気が潜んでいることも考えられます。

「息を吐くと胸が痛い」に似ている症状・関連する症状

「息を吐くと胸が痛い」と関連している、似ている症状は17個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

「息を吐くと胸が痛い」症状の他にこれらの症状がある場合でも「急性心筋梗塞」「急性大動脈解離」「胸膜炎」「気胸」「肋間神経痛」「胃潰瘍」などの疾患の可能性が考えられます。強い胸の痛みを感じた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。