「けいれん」を発症する原因・対処法はご存知ですか?医師が監修!
けいれんとは、自分の意志と関係なく筋肉に力が入ってしまう症状を指します。突然起こるため、自分も周囲も驚いてしまうでしょう。
体の一部分に起こる場合と全身に起こる場合がありますが、稀に重篤な疾患が隠れているケースもあります。けいれんを起こしたら慌てず適切に対処することが大切です。
とはいえ、実際に目の当たりにすればほとんどの方が慌ててしまうでしょう。冷静に対処するためには、けいれんについて正しい知識を持つことが重要です。
この記事では、けいれんの原因・けいれんを伴う疾患・対処法・緊急性の高い症状などを詳しく解説いたします。
もしも痙攣の症状が出た場合に備え、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
けいれんの原因
けいれんにはさまざまな原因が考えられます。例えばふくらはぎのけいれん・まぶたのけいれんなどの軽い症状もけいれんの1つです。このように部分的に起こるものであれば、水分が足りていない・電解質が不足している・筋肉に疲労がたまっているなどが原因のケースが多いです。体調や生活習慣に注意することである程度予防できるでしょう。
全身に起こるけいれんには重篤な疾患が隠れている可能性もあるため注意が必要です。発熱・脳疾患・頭部外傷などが発症頻度の高い原因として知られていますが、心因性の場合や原因不明のままとなる場合もあります。
短時間で治まったとしても疾患が隠れていると繰り返し発症したり、脳の機能に障害が残ったりするケースもあるため、大丈夫だと過信せず医療機関を受診しましょう。
けいれんを伴う疾患
全身症状として現れるけいれんは、疾患に伴う症状の可能性も高いといえます。特に発症頻度が高いことで知られている疾患は次の3つです。
- 熱性けいれん
- てんかん
- 脳の疾患
それぞれけいれんの引き金となりやすい疾患で、なかでも熱性けいれん・てんかんは乳幼児期にも発症しやすいことでも知られています。けいれんを起こした際にはこれらの疾患が潜んでいる可能性も考慮しつつ、できるだけ冷静に対処するよう注意が必要です。下記にそれぞれご紹介します。
熱性けいれん
5歳以下の乳幼児のけいれんで特に発症頻度の高い疾患が熱性けいれんです。発熱をきっかけに発症するけいれんで、特に38度以上の急激な発熱の際には注意が必要です。
多くの場合で風邪などの感染症が原因で発熱します。熱性けいれんは生後5か月~6歳くらいまでの子どもに使われる病名です。ただし、発熱の原因が髄膜炎・脳炎などの中枢性疾患や代謝性疾患の場合には熱性けいれんに該当しません。2~3日熱が続いたのちにけいれんを起こしたなら、熱性けいれんではなく髄膜炎や脳炎の可能性がより高いため注意しましょう。
また、熱性けいれんの発作はほとんどが5分以内に治まるのも特徴です。脳に影響が残る可能性もほとんどありません。しかし、1度発症すると約30~50%の乳幼児がけいれんを繰り返すといわれています。その多くが24時間以内であるため、一度けいれんが治まったあとも油断せず様子をみることが大切です。
てんかん
てんかんは慢性脳疾患の1つです。大脳の神経細胞が過剰に興奮することによる反復性の発作でけいれんが引き起こされます。乳幼児期の発症が多く、熱性けいれんの次に乳幼児に多くみられるけいれんです。
発熱はしていないのにけいれんを繰り返す場合にはてんかんの可能性が考えられ、脳波検査を行い異常が確認されるケースが多いです。また、てんかんの発作ではけいれん以外にも下記の症状が現れることがあります。
- 意識の消失
- 呼吸困難
- 顔面蒼白
- 歯の食いしばり
- 白目をむく
- 失禁
- 泡を吹く
発作は多くが1~2分程度で治まり、長くても5分以内が通常です。また、けいれんを繰り返したり長時間続いたりするとけいれん重積と呼ばれる障害が引き起こされる場合があります。発作の持続時間が15分以上に及ぶときは救急車を呼びましょう。
脳の疾患
脳に何らかの疾患がある場合にもけいれんが起こるケースがあります。けいれんを伴う脳の疾患は、脳性・脳外性の2つに大別できます。脳性の疾患で代表的なものは次のとおりです。
- 特発性(真性)てんかん
- 脳腫瘍・脳血管障害・頭部外傷・脱髄疾患・感染症・先天奇形などによる症候性てんかん
- 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの脳血管障害
- 脳腫瘍
- 脳挫傷を含む頭部外傷
- 脳炎・髄膜炎・脳膿瘍などの感染症
脳性の疾患は脳そのものに何らかの原因があるのが特徴です。一方で脳外性の疾患は、脳以外の原因から脳に機能障害がもたらされたものを指します。具体的には下記が代表例です。
- 熱性痙攣
- 低血糖
- 脱水症状
- 電解質異常
- 尿毒症
- 低酸素脳症
いずれも原因に合わせた適切な治療が必要です。けいれんを起こした際には自己診断せず、医療機関を受診しましょう。
けいれんが起きたときはどうすれば良い?
もしけいれんについてある程度の知識がある方でも、実際に目の当たりにすると多少なりとも動揺してしまうものです。対処法を全く知らなければ、適切な対処をとることは難しいでしょう。発作が起こったとき・発作の後はそれぞれどうするべきなのか、また、けいれん時にやってはいけないこともご紹介します。
けいれんを起こしているときは、できるだけ冷静に様子を観察することが正しい診断をするためにとても大切です。いざというときに慌てないためにもぜひ参考にしてください。
発作が起こったとき
発作が起こったときは、できるだけ冷静に様子を観察し、状態を整えて見守ることが大切です。まずは呼吸を妨げないよう衣服のボタンをはずし、嘔吐物などで窒息しないよう気道を確保しましょう。このとき、ゆっくりと体を横に向け、上になったほうの足を前に軽く曲げて寝かせると良いでしょう。
呼吸を妨げない状態に整えたら、名前を呼ぶ・体を揺するなどの行為はぐっとこらえて極力静かに様子を観察してください。様子を確実に伝えることで、医療機関での処置や診断に大きく役立ちます。特に押さえてほしいポイントは下記の2つです。
- けいれんの持続時間
- どのようなけいれんか(全身・体の片側・顔だけなど)
できれば補足情報として下記も簡潔に伝えられるようにしておくと良いでしょう。 - 時間帯
- 場所
- 何をしているときか
- 発症時に頭を打っていないか
けいれんは突然起こるため、動揺してしまうのは避けられないかもしれません。ですが、その場ですぐに亡くなることはありません。落ち着いて状況を観察し、速やかに医療機関と連絡を取り指示を仰ぎましょう。
発作の後
発作が初めての場合は、もしすぐに治まったとしても放置せずに医療機関を受診しましょう。脳の疾患など意外な原因が潜んでいる可能性もあるため、自己診断しないことが大切です。発作が治まっていても、医療機関を受診するまで呼吸の様子・顔色・手足の動きなどの観察を続けてください。
また、5分以上続くけいれんなら救急車を呼びましょう。何度も繰り返すけいれん・顔色が青くなっていくなどの様子がある場合も、救急車の要請をしてください。
やってはいけないこと
舌をかまないための対処として割りばし・タオルなどを口に入れる方がいますが、これは絶対にやめましょう。かえって嘔吐を誘発したり、舌がのどに押し込まれてしまったりする可能性があるため、窒息の原因となります。舌や口腔内を傷つける可能性も高いです。
また、名前を呼ぶなどの声掛けや、体を揺するなどの行為もこらえてください。脳への刺激を避けるため、極力触れたり大きな音を出したりせず、刺激を与えずに様子をみてください。
緊急性が高いけいれんの症状
まずは意識があるか・呼吸をしているかを必ず確認しましょう。言葉が話せる年齢であれば、呼びかけに応えられるか・会話ができるかどうかも確認します。もし呼吸が停止していればすぐに救急車を呼びましょう。
また、けいれんを起こす前に頭部に怪我をした場合にも注意が必要です。けいれん発症時に頭を打った・頭から血が出ている・舌をかんだ場合も同様です。頭痛・熱・けいれんの繰り返し・手足が思うように動かせないなどの症状がある場合も速やかに医療機関を受診しましょう。
また、けいれんの持続時間が5分以上であれば救急車を呼んでください。
すぐ病院に行ったほうが良い「けいれん」症状は?
- けいれんは収まったが、意識障害がある場合
- 5分間以上けいれんが続いている場合
- 妊娠している場合
これらの場合には、すぐに病院を受診しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、内科、脳神経内科、脳神経外科、精神科です。
問診、診察、血液検査、画像検査(CTやMRIなど)、髄液検査、脳波検査などを実施する可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
けいれんの種類によって必要な薬が変わってきます。そのため、けいれんが続いた時間や、体のどの部分からけいれんが始まったか、という発作の状態を医師へしっかりと伝える事が重要です。
治療をする場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
意識をなくすことなく、体の一部分のみのけいれんが起こった場合には、その多くは急いで受診する必要が無い事が多いです。しかし、まれにそのけいれんが全身けいれんに変化する場合があるため、全身けいれんを起こした時にはすぐに受診するようにしてください。
まとめ
けいれんについて、原因・けいれんを伴う疾患・対処法・緊急性の高い症状などを詳しく解説いたしました。
けいれんは知識を持っていても目の当たりにするととても怖い症状です。乳幼児にも多くみられるため、不安に感じている方も少なくないでしょう。
命にかかわる疾患が潜んでいる可能性はあるものの、一方で、けいれんの症状そのものではその場ですぐに亡くなることはありません。
正しく原因を診断し命を守るためにも、できるだけ冷静に状況をみて適切な対処をとりましょう。
けいれん症状の病気
関連する病気
- 急性症候性発作
- てんかん
- アルコール離脱症候群
- 薬物依存症
- 低酸素性虚血性脳症
- 先天性感染症
- 脳出血
- もやもや病
- 脳梗塞
- 髄膜炎
- 脳炎
- 脳症
- 熱性けいれん
- 機会性けいれん
- ビタミンB6欠乏症
- 神経皮膚症候群
- 良性乳児けいれん
- 軽症下痢に伴う乳幼児けいれん
- 憤怒けいれん
- 発作性運動誘発性ジスキネジア
- 頭部外傷
- ナルコレプシー
- 小児交互性片麻痺
- 低血糖発作
- 高血糖
- 低カルシウム血症
- 低カリウム血症
- 低ナトリウム血症
- 血管迷走神経性失神
- 頚動脈洞症候群
- Adams-Strokes症候群
- 心臓弁膜症
- 甲状腺機能亢進症
- 睡眠時無呼吸症候群
- 高血圧性脳症
- 熱中症
- ブドウ糖輸送体欠損症
- チック
- 転換性障害
- 入眠時ミオクローヌス
- 夜驚症・睡眠時遊行
- 胃食道逆流症
- 起立性調節障害
- 過換気症候群
- ヒステリー発作
- 銀杏中毒
- 眼球城展発作
- 自慰
- 身震い発作
- ジタリネス
- パニック発作
- 一過性全健忘
- 片麻痺性片頭痛
- 一過性脳虚血発作
- アルツハイマー型認知症
- 脳腫瘍
- 海馬硬化症
- 限局性皮質異形成
- 水頭症
- 慢性硬膜下血腫
- 結節性硬化症
- アイカルディ症候群
- ミラー・ディーカー症候群
- 脆弱性X症候群
- アンゲルマン症候群
- フェジャーマン症候群
- びっくり病
- 褐色細胞腫
- 発作性失調症
- 急性間欠性ポルフィリア
- 自閉症
- ミトコンドリア脳筋症
- 片側顔面けいれん