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「低カリウム血症」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

 更新日:2023/06/30
「低カリウム血症」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】

何らかの原因で血液中のカリウムの濃度が非常に低下してしまう状態を「低カリウム血症」といいます。カリウムは、神経・心臓・筋肉の細胞の機能に関連する重要な要素で、高すぎても低すぎても問題があります。心配なのは、異常をそのまま放っておくと症状が進み、さまざまな疾患を引き起こすことです。

今回は低カリウム血症の症状や原因、検査、治療方法などを紹介します。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

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低カリウム血症とは

低カリウム血症とはどのような病気でしょうか?

    血液中のカリウムが非常に低下してしまう状態を「低カリウム血症」といいます。
    カリウムは、生野菜や果物に多く含まれる電解質です。何らかの原因によってカリウムが消化管から喪失したり、細胞の中に移動したり、尿中に多量に排出される場合があります。

    そのような異常事態によってカリウムの数値が非常に低くなると、さまざまな症状が出るので注意しましょう。症状が持続する場合には、放置せずに受診することが大切です。受診をしないでいると、起立や歩行困難になるなど症状を悪化させてしまう恐れがあります。

低カリウム血症の症状は

低カリウム血症はどのような症状が現れますか?

    主な症状としては、手足のチカラが抜けたり弱くなったりすることです。次いで、手足のだるさやこわばり、筋肉痛や麻痺のほかに、不整脈・多尿・脱力発作による歩行障害・腸管機能の低下が起こることもあります。症状が進行すれば、体を動かすだけで息苦しくなるなどの症状を訴えることもあるでしょう。

注意した方がいい症状

注意しなくてはいけない症状はありますか?

    はい。症状が出ているのに放置すると悪化していきます。歩いたり走ったりすることができなくなり、尿にも異変が現れます。赤褐色の尿が出る、尿がたくさん出たり少なかったりするなどの症状です。糖尿病の持病がある場合は、症状が悪化していきます。

低カリウム血症の原因

低カリウム血症の原因はどのようなことが考えられるでしょうか?

    カリウム不足になると起こる病気ですが、不足する原因はカリウムの摂取不足や、下痢・嘔吐が考えられます。また薬剤の服用や他の病気が原因となる場合もあります。

カリウムの摂取不足が原因

カリウムの摂取不足が原因とは、どのようなことがあげられますか?

    多くの食品に含まれるカリウムは、通常の食生活で健康に悪影響が及ぶほど不足することはないといわれています。極度のダイエットや、偏った食生活などが続く場合は、不足することも考えられるでしょう。

下痢や嘔吐が原因

下痢や嘔吐が原因とは、どのようなことがあげられますか?

    下痢や嘔吐により、胃や腸管からカリウムが喪失されることです。体内にあるカリウムは、下痢や嘔吐が強いと吐物や便とともに体外に排出され、低値になります。

薬剤が原因

薬剤が原因の場合は、どのようなことがあげられますか?

    利尿剤や漢方薬を服用している場合は、腎臓から尿へカリウムが多く排出されてしまい、必要以上に失われるのがよくあるケースです。また、医薬品が原因の場合は、服用後数週間経ってから発症することも多く見られ、複数の医薬品の飲み合わせで発症するケースもあります。

他の病気が原因

他の病気が原因の場合は、どのようなことがあげられますか?

    原因となる病気としてあげられるのは、原発性アルドステロン症や甲状腺機能亢進症などのホルモンの病気や、腎臓の尿細管の機能障害などです。このような病気が原因になっている場合は、必ず治療する必要があります。

    また、糖尿病治療でインスリンを注射する場合も注意が必要です。過剰に注射してしまうと、カリウムは血液中の糖分とともに細胞外から細胞内に移動するため、血液中の濃度が低値になります。

低カリウム血症の受診科目

低カリウム血症が疑われる場合には、何科を受診すればいいのでしょうか?

    低カリウム血症は、内科もしくは腎臓内科を受診してください。

低カリウム血症で行う検査

低カリウム血症では、どのような検査を行いますか?

    まず、病院では問診や診察の後、血液検査や尿検査を行います。問診や診察の内容によっては、心電図検査が必要となる場合もあります。

問診や診察

問診や診察とはどんな検査ですか?

    患者本人に、問診や診察をして状況を確認します。病歴や食習慣、摂食状態や下痢などの症状の有無、利尿剤や抗菌薬などの治療歴を中心に聴取することが、原因を絞り込む重要なポイントです。受診する際は、服用した医薬品の種類と服用後の経過時間を医師や薬剤師に伝えましょう。

血液検査や尿検査

血液検査や尿検査とはどんな検査ですか?

    主に行うのは、血中・尿中のホルモンやカリウムの濃度を測る検査です。電解質(
    Na/K/Cl/Ca/P/Mg)・血漿レニン活性・血中アルドステロン濃度・血中および尿中浸透圧・血算・尿㏗などを測定します。

心電図検査

低カリウム血症 検査

心電図検査とはどんな検査ですか?

    心電図検査を行い、低カリウム血症に特徴的な波形が見られるか確認します。不整脈がある場合も、心電図に波形の変化が現れます。

低カリウム血症の性差・年齢差など

低カリウム血症では、性差や年齢差はありますか?

    比較的10代後半から50代前半の女性がなりやすいといわれています。低カリウム血症は、何らかの原因で嘔吐・下痢・多尿が起こるときになりやすい病気です。女性の場合、痩せ願望により、便秘で下剤を使いすぎたり、摂食障害(拒食症)で吐くことを繰り返したりすることによって低カリウム血症になる患者も少なくありません。

低カリウム血症の治療方法

低カリウム血症にはどのような治療方法がありますか?

    低カリウム血症は、原因に対する治療が必要です。同時に食事療法や薬物療法を行うこともあります。

食事療法

低カリウム血症 食事療法

食事療法とは、どのような治療ですか?

    カリウムの補充は、経口摂取が原則です。正常値から1mEq未満の不足であれば、基本的に食事で補充します。

    カリウムを豊富に含む食べ物は、野菜・果物・海藻などです。カリウムは水に溶ける性質があるので、食材を水にさらしたり、茹でたりすると摂取量が減ってしまいます。茹で汁を捨てるのではなく、レンジで加熱したり蒸したりするのが、効率的に摂取できる調理法です。

薬物療法

薬物療法とは、どのような治療ですか?

    食事での補充では不十分な場合は、カリウムの内服薬を服用します。徐々にカリウム濃度を上げる場合と、早く補正する場合によって薬の種類が違います。カリウムは、補充しすぎると過剰になってしまい、また別の問題が起こります。薬物による補充については慎重に行うことが大切です。

    さらに、内服薬では補正が間に合わない場合は、末梢点滴や中心静脈投与でのカリウム補正を行います。静脈投与は大量のカリウム補充が行えますが、非常に危険な低カリウム血症の場合に行う治療方法とされています。

編集部まとめ

血液中のカリウムが不足することで起こる低カリウム血症は、進行することで全身が麻痺して動かなくなるなど怖い病気であることがわかりました。できるだけ早いうちに発見し、治療を行うことが大切です。 カリウムを多く含む野菜や果物を意識して摂取するなど、日頃からケアに努めましょう。

手足のだるさが抜けないなど病変がある場合はもちろん、病変がなくても気になる症状があれば、お近くの内科や腎臓内科のある医療機関を受診してください。かかりつけ医を見つけておけば、早期発見にもつながります。

この記事の監修医師