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「肥大型心筋症」とは?症状・原因・検査・治療について詳しく解説!

 更新日:2023/04/04
「肥大型心筋症」とは?症状・原因・検査・治療について詳しく解説!

肥大型心筋症とは、心肥大を起こす明らかな原因が無い状態で、左右の心室の壁が厚くなって硬くなる疾患です。無症状の場合もありますが、呼吸困難や胸の圧迫感、突然死を起こす危険もあります。肥大型心筋症の治療は、内服薬の使用や手術などさまざまです。
今回は肥大型心筋症の症状や検査・診断方法、治療法を解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

肥大型心筋症とは

肥大型心筋症とは、どんな病気ですか?

肥大型心筋症とは、左室壁15mm以上の心肥大(肥大型心筋症の家族歴がある場合は13mm以上)で高血圧症などの圧付加や二次性心筋症を疑う所見がないにも関わらず、心臓の左右の心室の壁が厚く硬くなり、心臓の機能障害が起きる疾患です。

肥大型心筋症は、息切れ、胸痛、動悸(不規則な心拍の自覚)などの自覚症状や失神、最悪の場合には、突然死を起こす危険もあります。ほとんどの肥大型心筋症は、親から受け継いだ遺伝子の異常が原因です。

医師は身体所見でこの病気が疑われる場合、心エコー検査やMRI検査により診断を確定します。肥大型心筋症の治療は、心臓の収縮力を低下させる内服薬の使用や手術などさまざまで、症状の悪化を避けるため、運動、飲酒、妊娠などに制限が必要な場合もあります。

心エコー検査によるスクリーニングの研究結果では、日本人10万人あたり374人、男女比3:2で男性に多く、男女とも60から69歳にピークが見られています。

肥大型心筋症の症状

肥大型心筋症の症状

肥大型心筋症の症状はどのようなものですか?

肥大型心筋症の症状には、胸部症状と脳症状があります。胸部症状は胸痛、呼吸困難、動悸などです。脳症状は眼前暗黒感や立ちくらみ、失神などで、肥大化した心室や不整脈の影響によるものです。これらの症状は、急に立ち上がった場合や飲酒時、寒いところから暖かいところへ移動したときなどの急な気温の変化などで出やすくなります。

無症状の場合もありますが、重篤な場合には、心室からの血液供給の減少、不整脈の発生に関連して失神や突然死を起こす原因にもなります。医師から肥大型心筋症と診断された場合は、経過観察に慎重な注意が必要です。

症状は通常20から40歳で発症し、まずは活動時に失神、胸痛、息切れ、動悸などが起こります。失神は通常警戒すべき兆候が無く突然起こり、失神や突然死が最初に見られる兆候の場合すらあります。

肥大型心筋症の原因

肥大型心筋症の原因はどのようなものですか?

肥大型心筋症は、心筋が異常に厚くなることで心室内部のスペースが小さくなり、本来心室に蓄えられるべき血液量が減少します。1回の心拍で全身に送り出せる血液量が低下するため、必要な血液を全身に送り出せなくなる疾患です。

心筋が肥厚する原因は、自然発生した遺伝子変異、または親から受け継がれた遺伝子の異常に起因します。肥大型心筋症の約半数で常染色体優性遺伝の家族内発症が見られ、TroponinTなどサルコメア関連遺伝子をはじめとして、16種類以上の遺伝子による900種類以上の変異が明らかになっています。原因となる遺伝子によって経過や症状は違います。

ただし、肥大型心筋症の発症原因は、家族歴がある場合だけでなく、遺伝子異常が特定できないものも見られます。

肥大型心筋症の検査・診断

肥大型心筋症の検査と診断はどのようにしますか?

肥大型心筋症の診断では、症状と身体診察、心臓超音波検査、心電図検査、胸部X線検査、MRI検査などを実施します。聴診器で聴こえる心音や心雑音は診断に有効です。心臓超音波検査は診断を確定するために最良の方法ですが、MRI検査を行うことでより詳細な情報が得られます。

心臓カテーテル検査は、カテーテルを腕などから心臓の内部に挿入します。体への負担が大きい検査ですが、手術を検討している場合に心臓内の血圧を測定するために実施します。また、肥大型心筋症は遺伝子変異が主な原因であるため、遺伝子検査を実施することもあります。

心臓超音波検査

心臓超音波検査とはどのようなものですか?

心臓超音波検査を行うと、非均等に左室壁が肥厚している様子がわかります。左心室の出口が狭い左室流出路狭窄がある場合には、僧帽弁の異常運動や血流速度の増加などが見られます。

心電図検査

心電図検査

心電図検査とはどのようなものですか?

心電図検査では、心室が厚くなっていることによる波形の異常を確認できます。肥大型心筋症患者では、75から96%の方に何らかの異常所見が認められ、肥大した心室の影響で、ST-T変化や異常Q波、陰性T波、高電位などの所見が見られます。

心臓カテーテル検査・心筋生検

心臓カテーテル検査・心筋生検とはどのようなものですか?

心臓カテーテル検査は、血行動態をより詳しく確認することを目的に実施します。心臓カテーテル検査時に心臓の細胞を採取して心筋生検を行い、より正確に肥大型心筋症の診断を行います。

肥大型心筋症の治療

肥大型心筋症の治療とはどのようなものですか?

肥大型心筋症の治療は、心臓に血液が流れ込む際の抵抗を軽減することを目的に、症状や重症度に応じて治療法を選択します。薬物療法と侵襲的治療(非薬物治療)に大別されますが、自覚症状が無く不整脈の既往歴が無い場合は無投薬で経過観察することも可能です。

肥大型心筋症の治療薬

肥大型心筋症の治療薬

肥大型心筋症の治療薬とはどのようなものですか?

主な治療薬は、β遮断薬とベラパミルというカルシウム拮抗薬を、単独または併用して投与します。どちらの薬も心筋の収縮力を低下させる作用があり、その結果心臓により多くの血液が流入するようになります。

また、厚くなった心筋によって血流が遮断された場合にと、心臓からの血液流出がスムーズになります。さらに、心拍を遅くする働きもあり、心臓に血液が流れ込む時間が長くなります。

心臓の収縮力を弱める働きがあるジソピラミドや、不整脈の治療を目的にアミオダロンを使用することもあります。

心筋切除術

心筋切除術とはどのようなものですか?

薬物療法で症状が改善しなかった場合のみ、厚くなった心筋の一部を切除する心筋切除術を実施し、心臓から出る血流を改善します。心筋切除術によって症状の軽減が期待できますが、死亡のリスクは低下しません。

カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーションとはどのような治療ですか?

カテーテルアブレーションの方法は焼灼・凍結・化学的方法の3つがあり、化学的方法がアルコールアブレーションで比較的新しい方法になります。アルコールアルブレーションは、心臓からの血流を改善するため、アルコールを注射することで心筋の一部分を限定して破壊します。

この治療は心臓カテーテル検査中に実施可能です。左室流出路狭窄の原因となる肥厚した中隔心筋に流れる冠動脈に、高濃度エタノールを注入し、局所的に壊死させて左室流出路狭窄を改善します。

カテーテルアブレーションにはカテーテルを用いて、異常な部分に対して焼灼または冷凍凝固を行って症状を改善する方法もあります。

植込み型除細動器

植込み型除細動器とはどのような治療ですか?

特に心腔を隔てる中隔に重度の肥厚が見られる人は突然死のリスクが高いため、植のみ型除細動器を使用し、流出路の圧較差を軽減することで効果が期待できます。

編集部まとめ

肥大型心筋症は、無症状のケースもありますが、重篤な症状の場合には失神や突然死などを起こす原因にもなるため、肥大型心筋症と診断された場合は慎重な経過観察が必要です。また、日常生活では症状の悪化を避けるため、運動、飲酒、妊娠などに制限がかかることもありますので、医師の指示に従った生活をこころがけましょう。

この記事の監修医師