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「紅麹」が引き起こす可能性がある「ファンコーニ症候群」とは? 腎臓専門医に聞いてみた

 公開日:2024/04/09
「紅麹」が引き起こす可能性がある「ファンコーニ症候群」とは? 腎臓専門医に聞いてみた

紅麹を含むサプリメントが腎障害を引き起こすリスクについて多くの報道がなされていますが、具体的にはどのような腎障害を引き起こすと考えられているのでしょうか。まだ決定的な情報が得られていない中ではありますが、日本腎臓学会の報告をもとに、紅麹に関して知っておくべき情報や、身近な健康の味方であるサプリメントとの上手な付き合い方について、日本腎臓学会専門医の天野方一先生に解説していただきました。

天野 方一

監修医師
天野 方一(eHealth clinic(イーヘルスクリニック))

プロフィールをもっと見る
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を終了。腎臓病学や高血圧学の臨床や研究に従事し、腎臓専門医や抗加齢医学専門医などの資格を取得。大学病院の医師として勤務を行いながら、予防医学やアンチエイジングの重要性を実感。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、eHealth clinicを2022年4月に開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
腎臓専門医・指導医、抗加齢医学専門医、日本医師会認定産業医、公衆衛生学修士、博士(公衆衛生学)の資格を有する。

紅麹と腎障害の関係について

紅麹と腎障害の関係について

編集部編集部

紅麹が腎障害を引き起こすというのは事実なのでしょうか?

天野 方一医師天野先生

紅麹に含まれる成分が腎臓病を引き起こす可能性についての報道がありますが、この主張にはまだ科学的根拠が不足しています。紅麹は伝統的に健康食品として利用されてきたものですし、前提としてどのような食品やサプリメントであっても過剰摂取は避けるべきです。現在のところ、紅麹が腎臓病を直接引き起こすかどうかは明確ではありませんが、安全性についてさらなる検証が必要だと考えています。

編集部編集部

紅麹以外のサプリメントや薬が腎障害を引き起こすことはありますか?

天野 方一医師天野先生

「サプリメントや薬が腎障害を引き起こすこと」は必ずしも珍しいことではありません。多くの薬剤やサプリメントは、腎臓を介して体外に排出されます。そのため、特定の薬剤やサプリメントは過剰に摂取することで腎臓に負担をかけ、時には腎障害を引き起こす可能性があります。とくに、腎機能が既に低下している人では、腎臓への影響がより顕著になることがあります。

編集部編集部

紅麹を飲んでいる人で起こったとされている腎障害について教えてください。

天野 方一医師天野先生

正確な病態はこれから明らかになるものと思われますが、日本腎臓学会による中間報告では「ファンコーニ症候群」に似た症状が出たと報告されています。また、腎臓の生検では尿細管間質性腎炎、尿細管壊死、急性尿細管障害が主な病変として認められています。

※参照:日本腎臓学会【「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究」アンケート調査(中間報告)】

ファンコーニ症候群とは

ファンコーニ症候群とは

編集部編集部

ファンコーニ症候群とはどのようなものなのでしょうか?

天野 方一医師天野先生

腎臓には、尿を作った後に、体に本当に必要な成分を再び吸収する役割があります。ファンコーニ症候群では、この吸収が上手くできず、ブドウ糖や重炭酸塩、リン、尿酸、カリウム、一部のアミノ酸などが過剰に排泄されます。この症候群には、遺伝的な原因と後天的な原因があります。後天的な原因は、薬や一部の血液疾患などによって引き起こされます。

編集部編集部

一般論として、ファンコーニ症候群の治療はどのようにおこなわれるのか教えてください。

天野 方一医師天野先生

原因とされる物質を取り除くこと」が最も重要です。低カリウム血症にはカリウム補充、代謝性アシドーシスには炭酸水素ナトリウムなどの補充がおこなわれます。また、尿細管の障害が深刻な場合はステロイド治療も検討されます。日本腎臓学会の報告によれば、紅麹コレステロール低減薬を服用している患者では、ステロイド治療をおこなったのは1/4、治療を中止しただけが3/4程度です。

編集部編集部

尿細管が障害されるとどのような問題が起こるのですか?

天野 方一医師天野先生

尿細管の障害は、感染症や薬の副作用、アレルギー反応などで引き起こされることがあります。障害された尿細管の場所によって、さまざまな問題が生じます。糸球体に近い場所にある「近位尿細管」が影響を受けると、尿細管性アシドーシスやファンコーニ症候群などの問題が発生します。実際、日本腎臓学会の報告によれば、紅麹コレステロール低減薬を服用している患者では、ファンコーニ症候群に特有の血中のカリウムやリン、尿酸の濃度が低下し、尿中に糖が見られることが確認されています。

サプリメントとの付き合い方

サプリメントとの付き合い方

編集部編集部

天野先生がおすすめするサプリメントの選び方について教えてください。

天野 方一医師天野先生

医療機関で販売されているサプリメントがおすすめです。一般的に、医療施設で販売されているサプリメントは、一般的なものよりも適切な試験をクリアしていることが多く、効果も高い場合があります。一般的なサプリメントを使う前には、必ず薬剤師に相談することが望ましいですね。

編集部編集部

サプリメントと薬の併用は安全ですか?

天野 方一医師天野先生

一般的には安全ですが、基礎疾患がある人や高齢者は気を付ける必要があります。例えば、腎機能が低下している高齢者が骨粗しょう症予防のためにビタミンDを過剰に摂取すると、血中のカルシウム濃度が上がりすぎて腎機能がさらに低下する可能性があります。そのため、サプリメントを服用している方は定期的に血液検査を受けて、副作用がないか確認することが大切です。

編集部編集部

サプリメントを摂取する量やタイミングによって効果が変わることはありますか?

天野 方一医師天野先生

もちろんです。サプリメントの使用の目的は大きく2つに分かれます。「栄養素の不足を補うために使う場合」と、「特定の目的や状態を改善するために使う場合」です。例えば、ビタミンCのサプリメントを考えてみましょう。不足を補うためには、1日あたり約0.1g程度の摂取が十分ですが、免疫機能を維持したり、シミなどを予防したりするためには、1日に2000〜3000mg(2〜3g)の摂取が必要です。

編集部まとめ

紅麹の問題のみならず、安全にサプリメントを摂取するためのポイントについて詳しく教えていただきました。紅麹の情報をはじめ、医療の世界では常に新たな疑問や情報が浮上し、それに応じて専門家の見解も変化していきます。一方で、安全で効果的にサプリメントを使用するためには、専門家との相談や定期的な健康診断が推奨されることは普遍です。本稿が読者の皆様にとって、様々な健康補助食品を安心して使用するための一助となりましたら幸いです。

この記事の監修医師