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「褐色細胞腫」とは?症状・治療法・原因・検査についても解説!医師が監修!

 更新日:2023/08/17
「褐色細胞腫」とは?症状・治療法・原因・検査についても解説!医師が監修!

褐色細胞腫という病名を聞いたことはあるでしょうか。

もともと体内に存在する物質を過剰に生成させる性質をもつ腫瘍で、高血圧やそのほかの心疾患・糖尿病などを引き起こします。

症状がこの病気特有のものでないため、発見が遅れることも少なくないのが特徴です。

今回はこの褐色細胞腫という病気について、原因・検査法・治療法・予防や注意点といった具体的なポイントを解説していきます。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

褐色細胞腫の症状と原因

苦しそうな女性

褐色細胞腫とはどのような病気ですか?

  • 褐色細胞腫とは、副腎髄質やその周囲の神経節に発生する腫瘍のことです。カテコールアミンという物質を過剰に産生することで様々な症状を引き起こします。
  • カテコールアミンにはノルアドレナリン・アドレナリン・ドーパミンといった様々な神経ホルモンが含まれます。腫瘍の9割は副腎髄質に発生するといわれますが、悪性の場合はその他の場合に転移することもあるのが特徴です。
  • さらに副腎髄質に発生した褐色細胞腫では、悪性が10%未満といわれます。副腎外腫瘍では30%が悪性と、大幅に確率が上がります。

褐色細胞腫の代表的な症状について教えてください。

  • 褐色細胞腫による症状としては高血圧, 代謝亢進, 高血糖, 頭痛, 多汗が代表的です。また、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病に近い症状も多くの患者に見られます。
  • そのほかにも激しい動悸・息切れ・発汗・立ちくらみ・顔面蒼白・重度の頭痛・胸痛・胃痛・吐き気・視覚障害・末端部の違和感など、様々な症状が付随します。
  • どれもこの病気の特有の症状ではないため、判別が容易ではないのが特徴です。特に生活習慣病の症状と勘違いされがちで、年齢が高いほど発見が遅れる傾向にあります。

褐色細胞腫の原因が知りたいです。

  • 褐色細胞腫では細胞腫自体ではなく、そこから発生するカテコールアミンにより引き起こされる症状が主眼となります。カテコールアミンは通常のヒト体内でも生理的に分泌されている物質です。本来は心臓の収縮力を強化したり、血管の収縮を促したりして全身に滞りなく血液が行き渡るようにはたらいています。これが細胞腫内で過剰に産生・分泌されることで、上記のような症状を引き起こしています。
  • 細胞腫自体の発生原因は、今のところよくわかっていません。現在確認されているうちでは男女差はないとされ、いずれの年齢でも発生しうるとされますが、ピークは20〜40代です。

褐色細胞腫は遺伝することもあるのですね・・・。

  • 褐色細胞腫では、これまでに発見された3〜4割程度が遺伝的な原因によるものとされています。SDHB・SDHD・VHL・RET・NF1と呼ばれる遺伝子のほか、現在では約10種類の関連因子が発見されるなど、調査の進んでいる病気です。
  • そういった遺伝子が腫瘍を活性させる原理は未だ研究中ですが、遺伝的に細胞腫が発生しやすいと考えられる家系では、幼いうちから定期的に検査を行うなどのフォローアップも行われています。

褐色細胞腫の生存率を教えてください。

  • 褐色細胞腫は、発生したからといってすぐに命に関わるような病気ではありません。腫瘍の影響によって引き起こされる二次的疾患を放置すれば命に関わることもありますが、それ自体はこの病気特有の悪性ではありません。
  • 基本的には、発見次第適切に処置を行うことで問題なく回復します。ただし腫瘍が悪性の場合には治療が難しく、症例によって予後の生存期間や状況が大きく変わります。
  • 早期発見・早期治療を実現するためにも、前述のような症状が不自然に発生した場合などには、きちんと医療機関を受診するように心がけましょう。

褐色細胞腫の検査と治療方法

注射器

受診を検討すべき目安を教えてください。

  • 褐色細胞腫では、細胞腫自体に外見的特徴はほとんどみられないのが特徴です。付随する症状もこの病気に特有のものではないため、初めから褐色細胞腫として受診されることはまれでしょう。特に高血圧からくる動悸・心狭窄による胸痛・糖尿病などの診断の際、ホルモン検査を行い腫瘍が発覚することが多いです。

検査方法が知りたいです。

  • 褐色細胞腫は、カテコールアミンの分泌量を検査することで発見されます。カテコールアミンは体内で生成され循環する物質のため、血液検査や尿検査が主流です。上記の検査で異常分泌が確認されたら、CTやMRI検査をはじめとして123I-MIBGシンチグラフィー・FDG-PET-CT・オクトレオチドシンチグラフィーといった手法で腫瘍の位置や大きさを確定します。

造影剤を使う検査は行わないのですね。

  • 前述のように褐色細胞腫では、心拍や血管の収縮が強化されます。その際ヨード造影剤を使用すると、血圧が急激に上昇する可能性があるといわれています。血圧の急な上昇は、最悪の場合は心停止や大量出血を伴う危険な現象です。そのため、この病気の検査では原則としてヨード造影剤の使用が禁止されています。

治療方法を教えてください。

  • 良性の褐色細胞腫では、手術による摘出が基本です。摘出が難しい部位の場合などには、抗がん剤による治療が行われることもあります。多くの場合は手術により摘出することで完治しますが、細かく様々な部位に転移する悪性のものでは抗がん剤での治療も間に合わない場合があります。
  • 現状、悪性の褐色細胞腫に対する有効な手立ては発見されていません。とはいえ、どんな病気でも早期発見・早期治療は最も有効な方法です。気になることがあった場合は、なるべく早く医療機関を受診するようにしましょう。

褐色細胞腫の予防と注意点

人差し指を立てる男性

褐色細胞腫を予防する方法が知りたいです。

  • 褐色細胞腫はその3〜4割程度が遺伝性と考えられていますが、遺伝性の場合もそうでない場合も、明確な発生要因はわかっていません。近しい親族にこの病気を発症した方がいる場合は、特に血圧に気を配るなどの対応をすることがおすすめです。
  • 褐色細胞腫は現在も研究が続けられており、腫瘍の発現要因となる遺伝子が特定されるなど大きく進歩しています。今後さらに原因が解明されていくことが期待できるでしょう。それまでは健康診断などを定期的に受けて、自分の体の調子を正確に把握していくことが何よりの予防・対策といえます。

褐色細胞腫は完治しますか?

  • 良性の褐色細胞腫は、腫瘍の手術的摘出でほとんどが問題なく完治するといわれます。対して、悪性の場合は有効な治療法が未だ確立されていないのが現状です。この悪性・良性の判別も術後の病理診断で行われることがほとんどで、他の部位への転移が認められて初めて悪性と判明する例も少なくありません。まずは早期発見・早期治療を心がけ、必要以上に気に病むことなく健康的な生活を送るようにしましょう。

家族が褐色細胞腫と診断された場合の注意点を教えてください。

  • 褐色細胞腫は、その半分以上が手術で完治することのできる良性のものです。必要以上に恐れず、適切な治療と健康的な環境づくりを心がけてください。また普段から血圧や血糖値に異常の出る生活習慣病に罹りやすいような生活をしていると、発見が遅れることも考えられます。病気があろうとなかろうと、過度な飲酒・生活習慣の乱れ・運動不足などには気を使っておくとよいでしょう。

最後に、読者にメッセージがあればお願いします。

  • 褐色細胞腫は、現在も研究が続けられている病気のひとつです。いずれは遺伝子を含む発生原因が完全に特定され、悪性腫瘍の治療法も見つかると期待されています。過度に恐れることはなく、ただし過度に油断することもないよう意識しておくのが現状の最善策です。常日頃の生活習慣に気をつけ、何かあった場合はすぐに受診できるかかりつけ医を決めておくのがおすすめです。

編集部まとめ

微笑む女性

今回は褐色細胞腫という病気について、症状や原因・治療法などをまとめてご紹介してきました。

遺伝性の病気ということで、親族の方の病歴などが気になった方もいるのではないでしょうか。

悪性・良性の違いが命運を分ける病気ではありますが、良性の場合でも発見が遅れれば命に関わります。

日頃の生活を見直すとともに、ご自身の遺伝情報や家族の病気について、今一度チェックしてみましょう。

この記事の監修医師