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「脳溢血(のういっけつ)」とは?治療法・前兆・原因についても解説!

 更新日:2023/06/30
「脳溢血(のういっけつ)」とは?治療法・前兆・原因についても解説!

脳溢血とは、脳の血管が破れてしまい脳内に血液が流れ出てしまう恐ろしい病気です。重度の症状の場合、障害が残る可能性があります。

正しい対処や脳溢血にならないためにも、正しい知識を備えておくことが必要です。そこで本記事では、脳溢血とはどういった病気なのかをご紹介します。

原因や前兆・治療方法・後遺症・早期発見のポイントを解説するため、参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

>脳溢血の特徴

医師と患者

脳溢血はどのような病気ですか?

  • 脳溢血とは、脳内の血管が破れてしまい、その血管から流れ出た血液が脳内の神経細胞を圧迫してしまう状態となることをいいます。
  • 脳溢血は脳出血とも呼ばれる病です。似たような言葉で脳卒中がありますが、脳卒中とは脳が突然死んだようになるような病気のことです。
  • その原因が、脳出血や脳梗塞となります。そのため、脳溢血は脳卒中の1つに分類されるのです。また、脳溢血にも次のようにいくつか種類があり、それぞれ特徴が異なります。
  • 被殻出血
  • 橋出血
  • 視床出血
  • 小脳出血
  • 大脳皮質下出血
  • 被殻出血とは、脳溢血の中でも最多の割合を誇る病気であり、約29%を占めます。
  • 橋出血は、被殻出血の次に多い病気です。それぞれの出血箇所によって、症状や障害の度合いも異なってきます。

症状を教えてください。

  • 脳の中で出血が起き、その血液により脳内でさまざまなところが圧迫されるため、主に以下のような症状が生じます。
  • 意識喪失、意識障害
  • 頭痛
  • 嘔吐
  • また、先述したような分類に応じても症状が大きく異なるのです。被殻出血の場合、突然の頭痛だけでなく顔の麻痺や片麻痺・感覚障害を引き起こす可能性があります
  • 橋出血の場合、少量の出血の場合でも昏睡・呼吸障害・四肢の麻痺が起こる可能性が高いです。
  • これは橋が呼吸などの生命活動維持に欠かせない器官を制御しているためです。視床出血の場合は、被殻出血と同様の感覚障害・軽度の片麻痺などを起こします。
  • 小脳出血は、後頭部の頭痛・めまい・頭痛などの症状を引き起こします。これは、小脳が身体のバランスを保つ働きをしているためです。
  • 大脳皮質下出血の場合は、さらに細かく出血部分によって症状は異なります。主な症状としては、感覚障害・運動麻痺・会話ができなくなる・目が見えづらくなるなどが代表的です。

脳溢血は何が原因で起こりますか?

  • 脳溢血の最も多い原因は、高血圧です。普段から高血圧の方は、その状態を放置しておくと血管を痛めていきます。
  • その結果、徐々に血管が弱くなっていき、血管の破裂を引き起こします。その割合は脳溢血の約60%となるのです。
  • またその他の原因としては、血管病変が原因となることがわかっています。
  • 血管病変とは、例えば脳動静脈奇形海綿状血管腫などが代表的です。さらに、高齢者になると脳溢血のリスクが高まるといわれています。
  • これは、脳溢血の原因となる可能性がある脳アミロイド血管症・脳腫瘍・肝臓疾患などを発症するリスクが高まるためです。
  • 病気以外の原因では、血液をさらさらにする効果を持つ抗血小板薬や抗凝固薬の影響も考えられます。過剰摂取することで、脳溢血のリスクを高めてしまうのです。

前兆はありますか?

  • 脳溢血の前兆はありません。例えば脳梗塞の場合、一過性脳虚血といった前兆があります。一方で、脳溢血の場合は目で見てわかる前兆はないのです。
  • しかし、脳内で出血が起きていることで、頭痛などの異常を感じるケースはあります。これは脳出血などと同じ前兆であるため、脳溢血であるとは限りません。
  • しかし、1つの目安となるでしょう。また、頭痛だけでなく嘔吐・吐き気を感じるケースもあります。
  • 脳溢血の前兆ではないものの、異変を感じ取るきっかけにはなるため、異変を感じた場合は速やかに医療機関に相談した方が良いでしょう。

脳溢血の検査と治療方法

穿刺する指

どのような検査を行いますか?

  • 脳溢血の具体的な検査方法は、次のようなものを用います。
  • CT・MRI検査
  • 血管造影検査
  • CT・MRI検査は画像検査です。CT検査では出血部位とその出血量を調べます。
  • MRI検査では、脳出血なのか脳梗塞なのかなど詳しく判別していきます。
  • また、脳内の損傷程度や別部位における出血の有無なども画像から読み取ることで脳溢血の度合いを確認することが可能です。あわせて未然に脳出血が発生しそうな血管奇形などの所見も判明するかもしれません。
  • 血管造影検査 では、脳の血管に造影剤を注入して、活動的な出血サインが続いているかの状態を評価します。
  • その他、脳溢血の典型症状以外の所見が出現している場合は症状に応じて様々な検査を組み合わせて行います。

治療方法を教えてください。

  • 脳溢血が起きた場合、患者の意識レベルは全て同じではありません。意識が朦朧としている方もいれば、比較的はっきりした意識の方もいます。
  • そのため、脳溢血の治療は、画像検査によって得られた出血部位などの状態と患者の状態に併せて内容を決めて行います。
  • 意識が比較的はっきりしている状態であれば、内科的治療です。
  • 血圧を下げることから始め、脳のむくみが確認される場合には、浮腫(むくみ)を改善する薬を服用するなど推奨されます。
  • 一方で、意識がはっきりしていない場合は、血腫を取り除く手術が必要となることもあるのです。
  • 速やかに取り除かなければ障害が残る可能性があります。このように、患者の状態に応じても治療内容が変わり、必要に応じて呼吸の管理も必要です。

治療にかかる期間はどのくらいでしょうか?

  • 治療期間については、脳溢血の状態・期間に応じて変わります。状態・期間の分類は次のように3つあります。
  • 急性期
  • 回復期
  • 維持期
  • 急性期とは、症状が現れる時期・病気になり始めの時期から安定するまでの時期のことです。脳溢血の急性期は一般的に2週間といわれており、その間は生命維持のために必要な治療を行います。
  • そして、治療が進み問題ない状態まで行けば、リハビリなどが始まります。回復期は、生命の危険を乗り越えて本格的なリハビリを可能とする期間です。
  • 急性期でのリハビリはベッド横で行うものがほとんどでした。しかし、回復期でのリハビリは、専用のリハビリテーション病棟にて行うことがほとんどです。
  • このリハビリにより、日常生活で必要となる身体の機能を取り戻します。もちろん、ベッドサイドでのリハビリも継続して行います。
  • 例えば、基本的な座ったり立ったりなどの運動・会話や嚥下機能の回復運動などです。その他にも、患者の後遺症や障害の度合いに応じてリハビリ内容は変わります。
  • 維持期は、リハビリによって取り戻した機能を維持する役割をもちます。脳溢血の効果は、なくならない可能性があります。
  • そのため、動かさない期間などがあると、回復した機能も再度低下してしまう可能性があるのです。
  • せっかく回復した機能を失わないためにも、定期的な外来受診によりリハビリ・治療を受けたり、日常生活の中で意識して運動したりする必要があります。
  • 維持期では、自身でもコントロールをしながら機能回復につとめなければなりません。

後遺症にはどのようなものがありますか?

  • 後遺症の程度は、脳溢血によって障害を受けた脳細胞の程度によって大きく異なります。軽度の後遺症しか残らないケースがありますが、重度の後遺症が残るケースもあるのです。
  • 具体的な後遺症としては、次のようなものが挙げられます。
  • 運動障害
  • 構音障害
  • 嚥下障害
  • 記憶障害
  • 注意障害
  • 感情障害
  • 運動障害とは、麻痺することで手足が動かしにくくなり運動に支障をきたすことです。
  • 構音障害とは、言葉を正常にはっきり発音できなくなる障害です。話し方がぎこちなくなる・不規則になる・不明瞭になるなどの状態となります。
  • 嚥下障害とは上手く飲み込めなくなる状態です。記憶障害とは、何度も同じことを聞いたり話したりする状態のことをいいます。
  • 注意障害とは気が散りやすくなる状態のことで、仕事中などに集中できずミスを招きます。
  • 感情障害とは、感情のコントロールができなくなる障害のことです。このようにさまざまな障害があり、特に記憶障害・注意障害・感情障害は高次脳機能障害といいます。

脳溢血の早期発見と予防

頭痛を起こす高齢者

早期発見のポイントを教えてください。

  • 早期発見のためには、定期的な検査を受けることが最も有効です。
  • 前兆となる症状が出てからではすでに脳溢血が進行中である可能性が高く、重度の状態になっていては取り返しがつきません。
  • そのため、早期発見のためには検査を受けて健康状態を客観的に知っておく必要があります。
  • 現在は、MRIやエコー技術が進歩しているので、身体への負担は少ない状態で精密に検査を行えます。定期的な検査が、予防にも大きく効果を発揮してくれるでしょう。

予防方法はありますか?

  • 最も効果のある予防方法は、次の通りです。
  • 生活習慣の改善
  • 高血圧の改善
  • 運動不足・過食などの生活習慣の悪化は、脳溢血の原因である高血圧を引き起こします。そのため、適度な運動を行い食生活に気をつけましょう
  • また、すでに高血圧といわれたことのある方は、高血圧を改善するような対策を行っていきましょう。
  • 過度な塩分摂取・多量の飲酒などがあると高血圧を悪化させます。血圧を下げられるよう薄味のものを食べ、塩分を排出するカリウムやマグネシウムが含まれる野菜などを取るようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 脳溢血は、脳内で出血が起こりさまざまな症状を起こす可能性がある恐ろしい病気です。一時の症状だけでなく、場合によっては重度の障害が残るケースもあります。
  • 障害が残れば、普段の生活に戻るまで非常に長い期間がかかり、完全に機能回復しない可能性もあります。
  • 予防のためにも、定期的に医療機関で検査を受けて、自分の健康状態をしっかりと把握しておきましょう。

編集部まとめ

話す医者

重度の障害を残す可能性がある脳溢血は、誰しもが発症する可能性のある病気です。また、脳内での出血があれば、障害が残る可能性もあります。

軽度なものから重度のものまであり、普段の日常生活に戻れないかもしれません。そのような状態にならないためにも、原因や予防方法などの正しい情報を知っておきましょう。

また、最大の予防策は定期的な検査を受けることです。医療機関に相談・受診し脳の病気の予防に努めましょう。

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