「背中が痛い」と感じることはありませんか?医師が原因も解説!
背中が痛い時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
弓場 智雄 医師
もともと心臓外科を研修していたが、担当した患者さんが集中治療室(ICU)の術後管理で劇的に回復したことをきっかけに麻酔科に転科。専門は集中治療、手術麻酔、ペインクリニック、無痛分娩。研究は酸化ストレス、慢性痛や術後せん妄、無痛分娩など。
「背中が痛い」症状で考えられる病気と対処法
背中が痛い症状ではいろいろな病気の可能性があります。中には命にかかわるような重大な病気の可能性があります。今回は背中が痛い時に考えられる病気やその対処法についてお話ししようと思います。
背中が痛い症状で考えられる原因と対処法
まずは今回のお話しする「背中」という場所を、肩から下・腰より上ということとしましょう。またさらに背中を右、左、真ん中にわけて考えます。というのも痛みの「場所」というのは非常に重要だからです。そして痛みについても「動かすと痛い(動かさなければ痛くない)」場合と「しびれるような、焼けるような痛み(動かさなくても痛い)」という表現にわけてお話ししようと思います。本当はもっとたくさんの専門用語や分類、表現方法があるのですが、あまり詳しく話すとわかりにくくなるため、あえてこのようにします。以上の「痛みの場所」と「痛みの種類」によってある程度原因を絞ることができます。
背中が痛いときの対処法
次に簡単にできる対処法について説明します。痛みがでるような動きや姿勢はやめましょう。しかし安静にしても痛みが改善しない場合もあります。そういった場合は危険な病気の兆候の可能性があるためはやめに医療機関を受診しましょう。また安静にすれば痛みが和らぐとしても、原因がはっきりしない場合は一度医療機関で専門家の診察をうけることをおすすめします。
原因としては筋肉や腱の炎症、椎間関節症、椎骨圧迫骨折、五十肩、帯状疱疹、肋間神経痛といったものから膵臓癌や骨髄の腫瘍である多発性骨髄腫といった癌、また大動脈解離や心筋梗塞などの血管の病気のこともあります。
最終的には原因によって治療する専門家はいろいろですが、まずは医療機関を受診し整形外科など痛みの診察を得意としている科の診察を受けることをおすすめします。
背中が痛く、息苦しい症状で考えられる原因と対処法
背中の痛みだけでなく、胸が締め付けられるような息苦しさもある状態です。このような場合は心筋梗塞や大動脈解離といった命に関わるような内臓の病気の可能性があります。また痛みが安静にしていても続く場合はより緊急性が高いです。その場合はすぐに医療機関を受診し、時には緊急手術や治療が必要な場合があります。よって循環器専門の医師がいる医療機関ならよりいいですが、かかりつけ医がいる場合はまずそちらに相談しても大丈夫です。
左側の背中が痛い症状で考えられる原因と対処法
痛みが背中の左側にある場合です。背中の筋肉のうち左側にあるものが原因であったり、時には左側にある内臓(心臓や膵臓、大動脈)が原因の場合があります。また帯状疱疹などのウイルス感染の場合もあります。痛みの性質としては安静にしたら改善する場合と、改善しない場合があります。安静にすれば改善する場合は筋肉や腱といった整形外科的な疾患、そうでない場合は心臓や膵臓、大動脈など内臓のトラブルの可能性があります。
対処法としては、まずは安静にして症状が改善するか様子をみてください。改善しない場合はすぐに医療機関を受診する必要があります。安静にすれば改善する場合は整形外科、そうでない場合は内科の先生の診察を受けることをお勧めします。原因としては筋肉や腱などの痛み、椎間関節症、帯状疱疹、心筋梗塞や大動脈解離、膵癌などが考えられます。
右側の背中が痛い症状で考えられる原因と対処法
背中の右側が痛い場合は、背中の右側の筋肉や腱が原因の他に右側にある内臓が原因の場合があります。例としては胆嚢や肝臓が挙げられます。この場合も、まずは安静にして症状が改善するか様子をみてください。改善しない場合はすぐに医療機関を受診する必要があります。背中の左側が痛い時と同様に、安静にすれば改善する場合は整形外科、そうでない場合は内科の先生の診察を受けることをお勧めします。原因としては筋肉や腱などの痛み、椎間関節症、帯状疱疹、胆嚢炎、肝炎や肝臓癌などが考えられます。
ストレスで背中の真ん中が痛い症状で考えられる原因と対処法
背中の中央が痛い場合は、脊椎など背中を支える骨が原因の場合があります。また上記に示した心臓や膵臓、大動脈なども時には背中の中央が痛い場合があります。この場合も安静にすれば痛みがマシになるかどうかがポイントです。またストレスでは胃への負担が増え胃潰瘍が発生し、その症状として背中が痛くなることがあります。
対処法としては、横になって安静にすることで痛みが良くなる可能性があります。そうではない場合はやはり内臓(胃や十二指腸、心臓や膵臓、大動脈)などのトラブルの可能性があります。特に食事や空腹と対応して痛みが発生する場合は胃や十二指腸潰瘍が疑われます。安静にして痛みが改善する場合は椎間関節症や椎骨圧迫骨折、背骨を支える筋肉や腱の問題である可能性が高いです。背中の真ん中が痛い場合の頻度としては背骨に関する問題の場合が多いので、まずは整形外科受診をお勧めします。また安静時も痛むようなら内科の受診をお勧めします。
すぐに病院へ行くべき「背中が痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
安静にしていても続く、しびれるような・焼けるような痛みの場合は、ペインクリニック・整形外科へ
筋肉や腱が原因の痛みは安静にすれば改善することがありますが、神経が原因の場合は安静にしていても痛みが続き、また痛みもしびれるような・焼けるような痛みがします。また痛みは夜間に寝る時などに強く、他にやることがあって意識がそちらに向いている時は痛みが和らぐ傾向があります。こういった神経が原因の痛みを神経障害性疼痛といい、筋肉や関節の痛みとは治療法や処方箋が全く異なります。背中が痛む神経障害性疼痛の原因としては帯状疱疹の皮疹が治った後も痛みが続く帯状疱疹後神経痛や、肋骨の間を走る神経が原因の肋間神経痛などが考えられます。
医療機関を受診する際は、神経が原因の痛みを診察・治療できる医師の診察を受けることをお勧めします。特にペインクリニック科や、神経ブロック注射を得意とするような整形外科の先生はお勧めです。
「背中が痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「背中が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
膵臓がん(すいぞうがん)
膵臓は胃の後ろ側、体の奥の方にあります。体の表面からの超音波検査などでは大腸ガスなどが邪魔をして検査ができない場合もあり、検査が難しい臓器としても有名です。また癌の中でも悪性度が高いことでも有名です。早期発見・早期治療が非常に重要であり、もし痛みが膵臓癌の症状のサインとしてでているなら見逃さずすぐに検査を受けることが大切です。
膵臓癌が原因の場合の痛みは安静にしていても出現します。また痛みの場所としては背中の左側や真ん中である場合もありますが、少し離れた場所が痛くなる可能性もあります。いずれにしても安静時にも出現する痛みというのがポイントです。そういった場合は内科の先生の診察を受け、腹部超音波検査や血液検査などをお勧めします。
大動脈解離
さまざまな悪い生活習慣が原因となり動脈硬化がすすみ、ちょっとしたきっかけで動脈が裂けることによって大動脈解離が起きます。激しい痛みを伴います。裂け目から血液が流れ込み、その場所から血管の上流と下流にむけて血管が裂けていき、重要な臓器への血流を阻害し最悪の場合死に至ります。痛みの場所は裂けた血管の場所により、その後の経過によっては痛みの場所が移動します。
大動脈解離は適切に対処しないと発症後1日以内に亡くなることも多い非常に危険な疾患です。大動脈解離の場合は必ず専門の医療機関で適切な検査と治療を受ける必要があります。症状の特徴としては激しい背中の痛みと、安静にしてもつづく痛みで、動脈が裂けていくことによって痛みの場所が移動します。そのような場合は速やかに循環器内科の受診、また場合によっては緊急手術が必要となるため心臓血管外科があるような病院が適切です。しかし近くにない場合はまずは内科でも大丈夫ですので、速やかに医療機関を受診しましょう。
放散痛
放散痛とは、例えば内臓などの臓器の以上がある時に、その場所とは離れた場所に出現する痛みのことです。心筋梗塞では左側の背中や肩に痛みが出現することがあり、これも放散痛です。しかしその場所は様々であり、心筋梗塞でも右側の背中の痛みを訴えたり、腹痛を訴える方もいます。いずれにせよ、なにか重大な病気のサインの可能性があります。
放散痛の場合、痛みを感じる部分の機能は正常のことが多いです。よって肩が痛いのに普通に動かせたり、背中が痛くても痛い場所を触ってもなんともなかったりします。そういった場合は放散痛を考え、はやめに医療機関を受診して内臓などの原因を調べる必要があります。はじめの受診は、まず内科で全身を診察してもらうのがいいでしょう。かかりつけの先生がいる場合はまずその先生に相談しましょう。
多発性骨髄腫
骨髄という骨の中にある場所に存在する細胞の癌です。骨髄とはさまざまな血球の産生などをしている臓器ですが、その中の細胞が癌化することで血中の細胞や血液成分に異常がでます。よって血液検査などで発見に至る場合が多いです。また骨髄が癌化することで骨が脆くなり、ちょっとしたことで骨折したりしてさまざまな痛みが出現します。痛みの場所としては腰や背中のことが多いです。
多発性骨髄腫の診断には血液検査を受ける必要があります。痛みがひどい場合や、徐々にひどくなるようなら一度医療機関の受診をお勧めします。また症状がなくても健康診断などでたまたまみつかる場合も多く、定期的な健康診断の受診が重要です。もししばらく健康診断を受けていないようなら、地域の検診情報を調べて受診するといいでしょう。また内科の先生で血液検査などしていただいても大丈夫です。もし多発性骨髄腫と診断がついたら、治療は血液内科の先生が中心となって行います。
五十肩
他にも肩こりなどと呼ばれます。医学的には「肩関節周囲炎」といいます。動かした時の肩の痛みが特徴ですが、ひどくなると安静時も痛くなり、また肩が上がらなくなったりします。
安静やストレッチで徐々に改善するようなら大丈夫ですが、徐々に痛みがひどくなるようなら対処が必要です。その理由は、痛みがあると人は無意識に痛い場所を使わなくなり、その結果その場所の筋肉が痩せ細り関節も硬くなり、さらに痛みがひどくなるからです。特に肩は痛くても反対の手で日常生活をカバーすることができ、症状があっても放置される場合が多いです。痛みがある時ほど肩のストレッチ(痛みが出ない程度で)などで関節が硬くならないようにすることが非常に重要です。ストレッチで痛みが良くなることも多いです。しかし1ヶ月以上痛みが続いたり、また肩が上がらなくなったり痛みが徐々にひどくなる場合は医療機関を受診しましょう。長引けばそれだけ筋肉が回復するのに時間がかかってしまいます。まずは整形外科受診をしましょう。
「背中が痛い」ときの正しい対処法は?
「背中が痛い」ときに「自分でできる治療について」
まずは薬について説明します。筋肉や骨、腱の痛みには、飲み薬としてはNSAIDsといわれるロキソニンを代表とする鎮痛薬、アセトアミノフェン配合の鎮痛剤が効果的です。また湿布薬も有効です。その他の原因の背中の痛みには市販薬は効果がない場合があります。上記の薬は薬局でも売っており、他にも湿布で痛みが良くなるなら使用して構いません。
しかし薬の効果が乏しく、また飲んでもすぐに痛みが再発するようなら薬の飲み過ぎにつながる可能性があるため自己判断で長期間使用してはいけません。どんな薬でも飲みすぎると有害です。特に上記に示した薬のうち、ロキソニンを代表とするNSAIDsは胃潰瘍や腎機能障害の原因となります。たとえ薬が効果的でも毎日飲まないといけないような場合はすぐに医療機関を受診しましょう。背中ではありませんが、例えば頭痛で市販の痛み止めを飲みすぎると痛み止めを飲まないと頭痛が発生する、薬物乱用頭痛になってしまいます。例え薬局で売っていても非常に強い薬です。注意しましょう。
「背中が痛い」とき「ストレッチ • マッサージをしてもいいの?」
次にストレッチ • マッサージについて説明します。このような治療は医師以外でも行うことができるため、よく民間療法と言われます。これらについては、病態や本人の体の特徴、考え方などによって効果がある場合とない場合、むしろ痛みがひどくなる場合があります。つまりケースバイケースということです。しかしいずれにしても一度試してみないとわからないため行ってもらって大丈夫ですが、その場合の注意点をいくつか説明します。
まずはそのストレッチ・マッサージが痛みの出る動きを含む場合はだめです。またその時は痛みがなくても翌日に痛みがひどくなるようならやりすぎですので回数や時間を減らしてください。またこういった民間療法はわれわれ医師が公式な病院でおこなっている治療と異なり、基本的に自費診療となります。なかには驚くような高額な料金を請求し、高価な機械を売りつけてくる団体もあります。痛みに苦しむ人につけこむような人は、残念ながら非常に多いです。私も自分の診察した患者様が詐欺のような機械を買わされそうになっていたのを止めたこともあります。こういった手口もあるということを知っておいてください。
「背中の痛み」を「はやく治すポイント」
痛みに悩む人はみなさん早く治したいと思っています。その場合に重要なことは、まず痛みの原因をはっきりとみつけることです。原因がはっきりしないのに治療法に進むと効果が出ない場合がほとんどで、しかもその間に時間が経過しどんどん治りにくい痛みとなっていきます。とはいえ原因をみつけるために治療を開始し、その反応をみて原因を探す場合もあります。医療機関を受診しなにかしらの治療をすすめられた際には、どういった考えでその治療をすすめているのか医師に質問してください。答えられない場合は根拠なく治療をすすめている可能性が高く、要注意です。また全身の痛みを総合的に診察できる医師は、実はほとんどいません。可能なら痛みを専門としている先生(整形外科やペインクリニック)の診察を受けることをおすすめします。
「背中が痛い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「背中が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
背中に筋肉痛のような痛みがあるのは何科の病院で治療できますか?
弓場 智雄 医師
原因によるのですが、頻度的には筋肉や骨が原因のことが多く、整形外科が専門になります。どこにいけばいいかわからない場合はまず整形外科受診をお勧めします。
背中・背骨が痛いのは姿勢が悪いのでしょうか?
弓場 智雄 医師
その場合が多いです。また痛みが原因でそれをかばうためにさらに姿勢が悪くなることもあります。
座ったりしゃがむと背中が痛いのはどんな原因が考えられますか?
弓場 智雄 医師
体を動かすことで痛みが出る場合は、骨や筋肉、腱にトラブルがある場合が多いです。椎骨圧迫骨折や筋肉の炎症などが考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?痛みというのはまだまだわかっていないことが多いのですが、痛みは身体が発する重要なサインである可能性があります。痛みによって病気が早期に発見できる可能性もあります。痛みへの対応はある程度可能ですが、そのためには痛みの場所や性質が診断の鍵となります。日本人は痛みに耐えるのを美学とするような考え方も確かにありますが、そのような考え方は医学的にはよくない結果を招く可能性が高いです。まずはひとりで我慢せず、適切に医療機関を利用して痛みの原因検索と対処法を探してみてください。
「背中が痛い」で考えられる病気と特徴
「背中が痛い」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血液内科の病気
痛みの原因がはっきりすれば、いろいろな対処法があります。痛みに詳しい医師(整形外科やペインクリニック)に一度相談してみてください。
「背中が痛い」と関連のある症状
「背中が痛い」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「背中が痛い」の他に、これらの症状が見られる際は、「急性大動脈解離」「急性膵炎」「胆嚢炎」「胃十二指腸潰瘍」「多発性骨髄腫」などの疾患の可能性が考えられます。我慢できないほど痛みが続く場合は、早めに医療機関へ受診しましょう。