「背中が寝違えたように痛む」原因をご存知ですか？医師が徹底解説！

背中が寝違えたように痛い時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか？Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師：
甲斐沼 孟（上場企業産業医）

「背中が寝違えたような痛み」で考えられる病気と対処法

起床時などに首から左右の背中が寝違えたように急に痛くなった経験は誰しもあると思います。症状の原因はさまざま考えられますが、筋骨格系や消化器領域などの病気が関与しているケースも認められます。どんな場合に早めに病院受診を行う必要があるのか解説していきます。

背中が寝違えたような痛みで考えられる原因と対処法

背中を寝違えたような痛みがある場合には、ぎっくり背中などの可能性が考えられます。

ぎっくり背中

ぎっくり背中とは、首から背中にかけて走行している筋肉や筋肉を被覆している筋膜が肉離れ状態を引き起こしている病気です。
まずは患部を冷却する、そして安静を保持して患部を無理に動作させないことが応急処置となります。
痛みに関する情報が長時間に渡って脳に伝達されると、痛み症状自体に過敏になってしまうために、完治するまで長期間を要する可能性があります。なるべく早く整形外科を受診するように心がけましょう。

背中が寝違えたように痛く、息苦しい症状で考えられる原因と対処法

背中が寝違えたように痛くなり、かつ呼吸苦（息苦しさ・呼吸困難）や息苦しさを自覚する場合には、気胸などの可能性が考えられます。

気胸

気胸を発症する原因は、ブラ（肺のう胞）の破裂や外傷など何らかの理由がきっかけとなって臓側胸膜という身体の生体部位が損傷され、肺実質内部の空気成分が肺の外部の空間である胸腔内に漏出することと考えられています。
気胸に対する治療は、その重症度に基づいて判断されます。軽症の場合の多くは、特別な治療は必要とせずに安静を保持して経過観察することによって自然と改善します。
重症度が高い場合には、胸腔ドレナージ処置を施行されるケースが多く、脇腹に胸腔ドレーンという管を挿入して胸腔内に存在する余分な空気成分を体外排出します。
気胸の中でも、緊張性気胸を発症している場合には、特に緊急性が高いため、緊急で胸腔ドレナージ処置を実施する必要性があります。
気胸という病気は再発する危険性も指摘されているので、突然の胸部痛や背部痛に伴って呼吸苦（息苦しさ・呼吸困難）を呈するといった症状の出現様式や、発症時における迅速な対応方法などを知っておくことが望ましいものです。
気胸は、タバコの喫煙習慣を背景として発症するリスクが上昇するので、常日頃から禁煙を実践することが発症予防には重要です。
症状を自覚した際には、なるべく早く救急車を呼ぶなどして呼吸器外科を受診しましょう。

背中の左側が寝違えたような痛みで考えられる原因と対処法

背中の左側が寝違えたように痛くなる場合には、大動脈解離などの可能性が考えられます。

大動脈解離

動脈硬化に伴って発症しやすいと考えられている大動脈解離は、一般的に三層で成立している大動脈壁という血管の内膜が裂けて中膜の隙間に血液が流入して血管が裂けていく病気です。
動脈硬化性変化が進行しやすい高齢者で多く発症して罹患率が高いといわれています。大動脈解離は大動脈壁に物理的にかかるストレスの大きさと大動脈壁の強度とのバランスが破綻することで発症するといわれています。
緊急性が高く放置すれば命に係わる疾患なので、症状を自覚した際には大至急救急車を呼ぶなどして心臓血管外科を受診しましょう。

背中の右側が寝違えたような痛みで考えられる原因と対処法

背中の右側が寝違えたように痛くなる場合には、胆石症などの可能性が考えられます。

胆石症

胆汁と呼ばれる成分は、食事で摂取した脂肪分やビタミンの消化や吸収をサポートする黄褐色様の消化液であり、肝臓で1日に約700mL程度合成されます。
一般的に、この胆汁が流れる通り道を胆道と呼ばれており、胆道に結石ができる病気を胆石症といいます。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
緊急性は中等度で、放置すれば胆石発作や胆嚢炎を合併するリスクもありますので、症状を自覚した際には早めに消化器内科を受診しましょう。

背中の真ん中が寝違えたような痛みで考えられる原因と対処法

背中の真ん中部位が寝違えたように痛くなる場合には、急性膵炎などの可能性が考えられます。

急性膵炎

急性膵炎とは、膵臓が分泌する膵液内に含まれている消化酵素によって、膵臓そのものや周囲組織が消化されることで、関連器官に急激に大火事のような炎症が引き起こされる病気です。
発症原因のうち最も多いのは過度な飲酒に伴うアルコールであり、次いで胆石が胆道を閉塞させることによって発症することなどが挙げられます。
急性膵炎にかかった際には、一般的に絶飲食を余儀なくされ、入院して点滴投与を継続しながら、消炎鎮痛剤や抗生物質などを用いて治療を行います。
緊急性は中等度～高度であり、放置すれば炎症が腹腔内に波及して腹膜炎などを合併する危険性も考慮されるので、症状を自覚した際には急いで消化器内科を受診しましょう。

背中が寝違えたような痛みで治らない状態で考えられる原因と対処法

背中が寝違えたような痛みでなかなか治らない際には、その主な原因として、骨や軟骨、靭帯などの加齢性変化、重いものを持つなどの腰や背中に負荷をかける作業、不自然な姿勢などがあげられます。
腰や背中の痛みは、基本的には筋肉や骨の問題であることがほとんどであり、多くの場合は、痛む部分や患部を無理に動かそうとせず、安静にしていれば数週間単位で自然によくなることもあります。
だんだん症状が軽くなるようなら、しばらく様子をみていてもよいですが、症状が悪化する場合は、早めに整形外科など専門医療機関を受診するようにしてください。

すぐに病院へ行くべき「背中が寝違えたような痛み」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

背中が寝違えたような痛み・背部痛が改善しない場合は、内科へ

安静にしたにもかかわらず、依然として背中の痛みがとれない、急激に疼痛（ずきずきした痛み）症状を自覚して一向に良くならない場合には、ぎっくり背中、気胸、急性大動脈解離、胆石症、急性膵炎などの鑑別診断が挙げられます。
痛み症状に伴って意識消失する、あるいはショック状態に陥るなどのリスクも考えられます。適切な対処策や治療法を選択することが望ましいため、早めに専門医療機関を受診しましょう。

「背中が寝違えたような痛み」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「背中が寝違えたような痛み」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

ぎっくり背中

ぎっくり背中とは、背中に存在する筋肉繊維や筋肉を被覆している筋膜組織が微細な断裂所見を呈している状態を指しており、軽度の肉離れとしてイメージされています。
日常的に行う筋トレなどによって肉離れを起こすことで、筋肉内にいろいろな痛みを引き起こすサイトカインと呼ばれる物質が産生されることが知られています。
発症原因は明確ではありませんが、日常的に運動習慣を持っていない、もともと猫背の姿勢を取る傾向がある、もしくは肥満の方に発症しやすいと言われています。
また、同部位に過度にストレスが負荷される、あるいは無理な姿勢を継続することに伴って症状が出現するといわれています。
基本的には、患部を安静にして冷却することが推奨されています。
仮に痛み症状が厳しければ、ロキソニンが配合された市販の湿布薬を貼付することで症状を一時的に軽快（回復）させることが期待されます。
背部の痛みが軽減しないなどの症状があれば、早めに整形外科を受診するように心がけましょう。

結合織炎（けつごうしきえん）

結合織炎とは、一般的に引き起こされる肩コリや首の痛み、あるいは腰痛などの症状が、筋肉や骨格そのものの変化に伴うものではなく、神経組織や血液循環などの障害のために二次的に引き起こされた病気です。
背部（背中）のみならず、例えば筋肉断裂（肉離れ）を認めないにもかかわらず下腿部（ふくらはぎ）の腓腹筋における疼痛（ズキズキした痛み）症状などを呈する症例も散見されます。
治療は投薬などの対症療法が中心です。局所的に患部マッサージを実践して、筋肉の緊張感を取り除いて血流を良好にすることで、症状の改善は期待できます。
背部の痛みが改善しない場合には、早めに整形外科を受診するように心がけましょう。

骨折

脊椎圧迫骨折は、尻もち、転倒、物を持ち上げた時などに、背骨に大きな力が加わって生じ、強い痛みを伴うことが多いといわれています。
日常生活の中で知らぬ間に徐々に進行していく場合もありますので、「寝返りを打つ時に背中が痛い」などの症状が出たら、脊椎圧迫骨折を疑ってみましょう。
脊椎圧迫骨折は、寝たきりの原因にもなります。
治療には主に大きく硬いコルセットを着用して骨折が治癒するのを待つ｢保存療法｣と、手術によって骨折した背骨を治療する｢手術療法｣がありますので、心配であれば整形外科など専門医療機関を受診して相談しましょう。

尿管結石

腎臓で作られた尿が通る道は、尿路とよばれていて、尿路には、腎臓、尿管、膀胱、尿道が含まれます。尿路のどこかにミネラルや有機物を含む結石ができる病気を尿路結石といいます。
尿路結石になりやすい年齢は、日本人の男性では40歳代、女性では50歳代が多く、日本人では、尿路結石のうち95％以上が上部尿路結石です。
典型的な症状は結石の大きさや結石ができた場所によってさまざまですが、背中やわき腹の痛み、吐き気、血尿、頻尿などがよく起こります。
尿路結石症の治療法に関しては、小さな病変であれば自然に尿とともに排石するのを待ちますが、排石されないものはしばしば積極的な治療が必要となります。
一昔前はお腹を大きく切開する手術が主流でしたが、現在では体外衝撃波砕石術（以下、ＥＳＷＬ）が治療の第一選択となりました。
ＥＳＷＬとは、衝撃波を出す装置を結石付近の体表にあてて、そこから出る衝撃波を結石だけに集中させる治療法です。
尿管結石が心配であれば、泌尿器科など専門医療機関を受診して相談しましょう。

膵炎

背中が寝違えたように痛い際には、急性膵炎も鑑別診断の一つです。
急性膵炎とは、消化酵素が過剰に分泌されたり、膵管が閉塞して膵臓に炎症を起こしてしまう病気です。
みぞおちの痛み、背中の痛みなどの症状を伴い、重症化することもあります。
重症度にかかわらず、すぐに入院が必要です。
軽度であれば、絶食と点滴によって治すことができますが、膵臓や周囲の臓器器官に壊死が生じている場合には、手術が必要になります。
心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。

急性大動脈解離

急性大動脈解離は、背中や胸の激しい痛みで発症します。発症後数時間以内に病院で治療を受けなければ命に危険が及ぶ疾患です。
病状が進行すると、ショックに陥り突然死することも少なくないため、痛みの症状が現れた場合は直ちに救急車を呼ぶことが重要です。
心配であれば、循環器内科や心臓血管外科など専門医療機関を受診してください。

大動脈破裂

大動脈にコブができることを大動脈瘤と言いますが、大動脈瘤が破裂すると、腹腔内で大量に出血し、激しい胸や背中の痛みがおきます。
大動脈破裂は突然発症し、急激にショック状態になるため、緊急手術を行う場合がほとんどです。
最も重要なことは、軽い症状や他の病気の検査の時に、偶然にも大動脈瘤があると診断された場合には、定期的に専門医に相談してCT検査などで大動脈瘤の大きさをフォローアップして経過観察してもらうことです。
大動脈破裂となるような事態を避け、予防的手術や治療を行います。
心配であれば、心臓血管外科など専門医療機関を受診しましょう。

「背中が寝違えたような痛み」ときの正しい対処法は？

背中が寝違えたように痛む際には、NSAIDsと呼ばれるロキソプロフェン錠、あるいはイブプロフェン錠のようにアセトアミノフェン成分を含有した鎮痛剤などが有用（有効）です。
また、湿布貼付剤、冷却スプレーなどの外用薬も効果的です。
基本的には、患部を温めるのではなく冷却した方が改善する可能性は高いでしょう。
肋骨の周辺に位置しているスペースをツボ押ししたままの状態で緩徐に（ゆっくり静かに）深呼吸して、身体を左右に反転して捻るような動作姿勢を繰り返すことで疼痛（ズキズキした痛み）症状が改善することもあります。
ただし、場合によってはこれらの対応策では一時的な効果しか得られずに症状が再燃する可能性もあります。
早く改善したいときには、出来るだけ早めに医療機関を受診するのが良いでしょう。
市販薬を服用しても症状が改善しない、あるいは痛みの程度が悪化する場合には専門病院を受診するように心がけましょう。
また、普段の生活で過度の飲酒を控える、運動習慣を持つ、適切な睡眠時間を設ける、ストレスをため込み過ぎずに緩和する工夫策を手に入れるなど、日常的にセルフケアが出来るように努めることも重要なポイントです。

「背中が寝違えたような痛み」の誤った対処法は？

背中が寝違えたように痛む際に、家にあるカイロを患部に貼付する、もしくは熱いお風呂に長時間浸かるなど、急いで患部を保温するのはなるべく控えましょう。
患部を温めると患部周辺の血流が良好になり過ぎて、炎症所見がさらに進行し悪化する危険性があります。
また、背中が痛い場合にストレッチ運動を実践することはお勧めしません。
これもストレッチを行うことで血流が通常より循環しやすくなり、炎症が悪化して疼痛（ズキズキした痛み）症状が深刻化する可能性があります。

まとめ

背中が寝違えたような痛みといっても、肩甲骨周辺、みぞおち領域の背中側などを含めて痛みを呈する部位は広範囲に及ぶことがあり、ほとんどは筋骨格系の異常から由来します。
ただし、ごく稀に、脊椎や内臓疾患が原因で発症するタイプもあり、早急な治療が必要となる生命に直結する重大疾患が隠れていることもありますので注意しましょう。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

「背中が寝違えたような痛み」で考えられる病気と特徴

「背中が寝違えたような痛み」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

背中の痛みは、筋骨格系や消化器領域などのさまざまな病気が原因となることが考えられます。

「背中が寝違えたような痛み」と関連のある症状

「背中が寝違えたような痛み」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

「背中が寝違えたような痛み」の他に、これらの症状が見られる際は、「ぎっくり背中」「急性膵炎」「急性大動脈解離」「胆石症」「気胸」などの疾患の可能性が考えられます。痛みがひどい場合やなかなか治らない場合は、早めに医療機関への受診を検討しましょう。