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「50肩」とは?症状・治療法・予防法についても解説!

 更新日:2023/03/27
「50肩」とは?症状・治療法・予防法についても解説!

ある日突然肩が痛くなり、腕が上がらなくなるのが50肩です。加齢が原因といわれており「年だから仕方ない」「病院に行くほどでもない」と放置されることが多い病気です。

しかし、きちんと対処すれば痛みも和らぎ、早期の改善が見込める病気でもあります。ここでは症状や治療方法をみていきましょう。

また、自分でできるケア・予防方法も紹介します。痛みが強いときには、医療機関を受診することで格段に改善が可能です。

肩こりと混同されることも多く、他の肩の病気という可能性もあります。中には早い処置が必要な病気もあるため、「痛い」と感じたのなら早めの受診がおすすめです。

田中 栄

監修医師
田中 栄(医師)

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東京大学医学部医学科卒業。その後、東京大学医学部附属病院整形外科研修医、Yale大学医学部整形外科留学、東京大学医学部附属病院整形外科助手、東京大学大学院医学系研究科外科学専攻整形外科学准教授、東京大学大学院医学系研究科外科学専攻整形外科学教授、東京大学医学部附属病院副院長を務める。2021年より東京大学医学部附属病院副院長、東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター副センター長。

50肩とは?

肩こりの女性

50肩と40肩の違いはありますか?

  • 医学的には肩関節周囲炎という病気です。肩関節の周辺の筋肉や靭帯、軟骨などが炎症を起こす病気です。中年以降、50代によく見られることから50肩と呼ばれ、40肩と違いはありません。40代で発症する方が増えたことから、40代の患者さんに配慮して40肩とも呼ばれるようになりました。
  • どちらも肩こりと混同されることがあります。しかし、肩こりなら肩が上下左右に動かすことが可能です。

肩の症状にはどんなものがありますか?

  • 50肩の症状はさまざまです。特徴的なのは強い痛みで、腕を肩より上にあげるときや腕を背中に回すときに痛みを感じます。「服を着るときに腕が上がらない」「背中のファスナーの上げ下げができない」といった不自由を感じるようになります。
  • 痛みは鈍痛ではなくて、キリキリとした痛みです。また、炎症のピーク時には夜中に肩が激しく痛むこともあります。炎症が治まれば痛みも軽くなりますが、炎症の影響で肩の関節の動きが悪くなる可能性大です。

そうなんですね。症状はいつまで続くのでしょうか?

  • そのまま放置しても、多くの場合は経過とともに痛みは軽減します。軽症の場合は、痛む期間は数ヶ月です。しかし、重症の場合は最低でも1年半は痛みが続くと報告されています。
  • 「急性期」「慢性期」「回復期」という時期を経て治ります。「急性期」は痛みの強い期間、肩が動かない期間を「慢性期」、痛みが改善する時期が「回復期」です。トータルで3年程かかるといわれています。
  • 適切な治療を行うことで、この期間を縮めることが可能です。痛みが強くて日常生活に支障をきたすようなら、医療機関で治療をうけることをおすすめします。

50肩の診断・検査方法

肩の痛み

50肩の判断基準は何ですか?

  • 50代の肩の痛みすべてが50肩とは限りません。中高年の肩の痛みは「腱板断裂」や「石灰沈着性腱板炎」という可能性もあるからです。どちらも早期の治療が必要な疾患です。特に「腱板断裂」ならば、自然治癒はせず悪化します。ただ、腱板断裂でも症状がない場合もあります。肩が痛いと感じたのなら、自己判断せずに医療機関での診断・検査がおすすめです。
  • 50肩は「肩が全方向に動きにくい」という特徴があります。背中が痒くても手が後ろに回りません。腕も上がらず、シャンプーもできなくなります。このように、極端に肩が動かなくなる状態が特徴です。
  • 「腱板断裂」や「石灰沈着性腱板炎」の場合は、それほど肩が動かしにくくはならないはずです。腕を上げる途中に痛むが、腕を上げることはできますが、腱板断裂でも広範囲の断裂の場合は肩関節の運動が著しく制限されます。

50肩の検査はレントゲン以外に何をしますか?

  • レントゲン検査をはじめ、関節造影検査・MRI・超音波検査をします。
  • しかし、50肩ではレントゲンなどの検査では異常が出ません。「石灰沈着性腱板炎」などの病気の場合は、レントゲンで異常が見つかります。「腱板断裂」などの病気の場合は、MRIで確認が可能です。レントゲンもMRIも、「腱板断裂」や「石灰沈着性腱板炎」などの病気を見つけるための検査です。
  • つまり、50肩以外の病気を除外するためにレントゲンやMRIなどの検査が必要になります。

受診する目安が知りたいです。

  • 両腕をあげて万歳をしてみましょう。左右の腕がきれいに上げられない場合は、医療機関に受診することをおすすめします。上げた腕が耳につかない場合も同様です。
  • 肩こりの場合は、肩甲骨周辺をマッサージすることで痛みが軽減し、肩の可動域も広がります。
  • 早期に受診して適切な治療を受けることで、50肩の改善が可能です。痛みが強いときや夜間痛があるときにも、医療機関の受診をおすすめします。まずは痛みを和らげて、楽に日常生活をおくることを目指しましょう。

50肩は治療が必要?

ヨガをする女性

50肩は治療で改善しますか?

  • 「自然に治る」といわれますが、医療機関で治療することで早期の改善が見込めます。治療をせずに放置すると、悪化するリスクもあります。しかし、50肩は加齢が原因の病気です。老化によっておこった肩間接周りのダメージを、完全に元通りにすることは難しいと考えられています。まずは痛みを取り除く治療をしましょう。
  • 痛みが治まったら、運動やストレッチなどのリハビリが効果的です。適切なリハビリを行うことで、再発を防げると考えられています。特にデスクワーク中心の仕事をしている方は、肩にダメージを受けやすくなっています。仕事の合間に、肩をほぐす運動やストレッチがおすすめです。

50肩の治療方法を教えてください。

  • 強い痛みがある場合は、肩の中で炎症が起こっています。このときに肩を動かすリハビリをすると、痛みはさらに強くなってしまいます。三角巾やアームスリングなどを使って安静にし、消炎鎮痛剤(痛み止め)の内服・注射が効果的です。
  • 運動療法などのリハビリは、痛みが治まってから開始しましょう。痛みが治まった後に放置すると、肩周辺が固まって可動域が狭くなることがあります。ストレッチや振り子運動で、肩関節をほぐし、肩関節の可動域を広げます。
  • また、温熱療法も有効です。患部を温めることで、血行がよくなり治癒に繋がります。医療機関での温熱療法では、ホットパックやマイクロ波などの器具を使う治療が一般的です。

自分でできるケア方法や予防方法も教えてください。

  • 予防するためには、日常的に肩を動かすことが大切です。長時間のデスクワークやパソコンでの作業のあとは、ストレッチをしましょう。ストレッチや軽い運動を日常生活に取り入れて、肩関節を動かすことが50肩の予防になります。胸郭ストレッチや振り子体操、肩甲骨を上下させる体操が効果的です。
  • また、体を冷やさないことも大切です。入浴時には肩までしっかりと湯につかるように心掛けましょう。血行をよくするためには温めることが必要ですが、痛みがあるときには患部を冷やすことも効果的です。冷湿布などのアイシングをしましょう。
  • 50肩は「治りかけてはぶり返す」を繰り返す病気です。痛みがなくなれば油断して、ストレッチや運動を怠るためにぶり返すと考えられています。痛みがなくてもストレッチを欠かさないことが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 50肩は加齢が原因で起こる病気です。年齢とともに、身体は衰えていきます。しかし、衰えたからといって使わなければ、さらに身体は老化してしまいます。予防のためにも、適度な運動を日常に取り入れることが大切です。
  • また、身体全体の健康を維持するためには、バランスの良い食事も必要です。サプリメントなども取り入れて、食事の偏りに気を付けてください。
  • 食事と運動、規則正しい生活が中高年の健康を保つ基本となります。

編集部まとめ

診察する医師
50肩は一般的に「自然に治る」といわれています。しかし、我慢できない激しい痛みが伴うこともあります。更に放置していると、痛みが治まっても肩の可動域が狭くなる可能性が高いです。

50肩をこじらせて肩が動かなくなり、外科手術を行うこともあります。肩には筋肉や血管が豊富にある場所で、上半身の要所です。

肩の冷えや運動不足により、血液の流れが悪くなると50肩が発症しやすくなります。上半身の適度な運動や冷えに気を付けることで、予防することが大切です。

適切なときに適切な治療をおこなうことで、早期の改善を目指しましょう。

この記事の監修医師