五十肩･四十肩の治療法を医師が解説 腕が上がらない･肩が痛い症状の治し方

宇南山先生

五十肩は正式名称ではなく、一般的には肩の痛みや運動制限からなる、中高年によくみられる肩の疾患の総称です。多くの場合、「肩関節周囲炎」という病態を呈しています。

宇南山先生

どちらも正式な疾患名ではなく、定義も曖昧です。基本的に四十肩と五十肩は、ほぼ同じ病態と考えていいと思います。

宇南山先生

肩の痛みや肩関節の運動制限が代表的です。初期の痛みは関節の運動時のみですが、徐々に安静にしていても痛みを感じるようになります。運動制限も最初は「肩を捻るような動きのときだけ」など限定的だったのが、徐々に着替えなどの通常の生活動作にも支障が出てきます。

宇南山先生

通常、五十肩の症状は数カ月～数年間続きますが、一定の時期が経過すると自然に改善されることが多いと報告されています。

宇南山先生

基本的には安静にしていただくのが一番です。ただし、肩関節の炎症が強い場合には、痛み止めや湿布を処方します。さらに、ステロイド剤やヒアルロン酸の注射をおこなったり、「ハイドロリリース」をしたりします。それでも治療効果が不十分な場合は、徒手授動術という「サイレントマニュピレーション」をおこないます。主に、疼痛が続いて運動制限の改善がない「凍結肩」という状態になった人に対して実施します。

宇南山先生

ハイドロリリースは、エコーで画像確認しながら筋膜に薬液を注入し、筋膜同士を剥がす治療法です。五十肩の人は肩を動かす筋肉（腱板）と、その外側にある三角筋という筋肉の筋膜同士がへばりついて、痛みや運動制限を引き起こしていることが多いのです。筋膜を剝がして筋肉の動きを改善することで、疼痛や運動制限の解消を目指します。

宇南山先生

ただし、ハイドロリリースで一時的に痛みが消失しても、生活習慣や身体の使い方が変わらなければ、また筋膜がくっついてしまう可能性もあります。効果を持続させるためには、運動療法との併用で筋肉をつけ、正しい姿勢を保持するようにしましょう。当院では、ハイドロリリース後も生活環境や動作のアドバイス、理学療法士による運動療法などをしています。

宇南山先生

腕を真っすぐに下ろしたいわゆる「気をつけ」の姿勢は、腕の重みで肩に大きな負担がかかります。腕の重さは、片方の腕が体重の6％と言われています。 例えば65kgの人の場合、約4kgの荷物を肩から下げていることと同じです。脇を少し開いて肘を曲げる姿勢を取ることで、肩への負担を軽減することができます。

宇南山先生

姿勢に気をつけても痛みが辛い場合は、三角巾で腕を吊ると楽になります。また、「椅子に座るときは、テーブルや肘掛に腕を置く」「就寝時は仰向けで、お腹の上に置いたクッションの上に腕を乗せる」「横向きになって、抱き枕を使う」などを取り入れるだけでも変わってくると思います。

宇南山先生

動かしにくいからと言って、勢いをつけて関節運動をしたり、制限のある範囲まで動かしたりしないでください。また、患部が熱を持っているときに温めようとするのは逆効果の可能性があります。あとは、自己流のストレッチなども注意したいですね。

宇南山先生

「テーブルサンディング」と呼ばれる方法がおすすめです。椅子に座って、肘を伸ばした状態で手のひらをテーブル上に置き、お辞儀をしていくことで、肩関節の動きを無理なく促すことができます。テーブルに対し横向きに座っておこなうと、腕を外側に開く動きに対しても同じ効果が期待できます。

宇南山先生

肩の痛みに悩んでいる人は、非常に多くいらっしゃいます。放置していても、いずれ良くなる人もいるのは事実ですが、そうでない人ももちろんいます。「私は放っておいても治ったから大丈夫」といった言葉を鵜呑みにして我慢し続けて、一大事になるケースもあります。肩の痛みが辛い人は、一度お近くの整形外科に相談してみることをおすすめします。仮に何年後かに自然治癒するとしても、できるときにできる治療をしておく、そのときに合った治療を選択していくことが重要です。