「紅麹サプリ」患者の85%が腎機能回復せず、死亡調査は97人に
日本腎臓学会は、小林製薬の紅麹成分入りサプリメントを巡る問題について「2024年5月までに報告された患者105人のうち、約85%は1カ月以上腎機能が正常値に戻らない状態だった」という調査結果を発表しました。また、厚生労働省は、7月8日時点で死亡との因果関係を調査している死者が97人になったことを公表しています。この内容について中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
日本腎臓学会が発表した内容とは?
小林製薬の紅麹成分入りサプリメントを巡る健康問題について、日本腎臓学会が発表した内容を教えてください。
中路先生
日本腎臓学会は2024年6月30日に開かれた学術総会で、小林製薬の紅麹成分入りサプリメントを巡る問題について取り上げました。
日本腎臓学会には、2024年3~5月に患者206人分の症状や治療経過などの情報が全国の医師から寄せられていました。寄せられた情報の中で、腎機能の指標となるデータが確認できた105人分を分析したところ、治療を続けても腎機能の数値が正常値を下回っていた患者は90人いたことが判明し、その割合は85.7%になります。
日本腎臓学会によると、治療開始時は回復がみられたものの、正常な状態までは回復していない患者が多いとのことです。日本腎臓学会の猪阪副理事長は「多くの患者が、腎機能が低下したまま慢性腎臓病のような状態になっている」と指摘しています。
また、学術総会では小林製薬が2024年3月に発表した死者5人のうち1人についても詳細な状況が報告されました。報告によると、亡くなった患者は90代の女性で、2023年3月より前から小林製薬の商品「紅麹コレステヘルプ」を服用していました。2023年12月に発熱や倦怠感などの症状が出たため、医療機関を受診したところ、腎機能が低下していることがわかり、入院しています。その後、全身の筋力が衰えが進行し、さらには尿路感染症なども合併し、2024年2月に亡くなりました。
学術総会では、紅麹問題が明らかになる前から患者を診察していた日本大学の阿部雅紀主任教授も講演し、「腎機能は一度障害が起きると、将来的に透析が必要になるケースもある。今後、長期的にみていく必要がある」と警鐘を鳴らしました。
紅麹問題の経緯は?
小林製薬の紅麹成分入りサプリメントを巡る健康問題について、これまでの経緯を教えてください。
中路先生
まず、小林製薬は2021年2月に紅麹コレステヘルプを発売しました。発売開始から約2年後の2024年1月11日、患者から腎疾患の症状を訴える連絡を小林製薬が受けています。この2カ月後の2024年3月22日に小林製薬は記者会見を開き、健康被害と製品の自主回収を発表しました。この時点で明らかになっていた死者数は5人でした。3月末には厚生労働省と大阪市が紅麹の原料を製造していた工場の立ち入り検査を実施しています。事態が再び動いたのは2024年6月に入ってからで、13日に厚生労働省が小林製薬に被害情報の更新を確認したところ「死者数の更新はない」と回答しましたが、翌日14日には一転して「公表していない死亡事例がある」と報告しました。これを受けて、2021年2月厚生労働省は詳細な調査を指示し、28日に厚生労働省からサプリメントの摂取との因果関係が疑われる死者が新たに76人判明したと発表されました。
日本腎臓学会が発表した内容ついての受け止めは?
日本腎臓学会が発表した紅麹問題についての受け止めを教えてください。
中路先生
学会から指摘があるように「全身倦怠感」や「食欲不振」などの症状は、サプリメントの服用中止で一定の改善はみられます。しかし、炎症による尿細管の組織の繊維化などが進み、不可逆的な腎機能障害をきたす可能性が示唆されており、かなり長期的な経過観察が必要と思われます。慢性腎臓病へ移行した場合を含め、医療費の適切な補助も今後の課題となるでしょう。
まとめ
日本腎臓学会は、小林製薬の紅麹成分入りサプリメントを巡る問題について「2024年5月までに報告された患者105人のうち、約85%が1カ月以上腎機能が正常値に戻らない状態だった」という調査結果を発表しました。サプリメントの摂取との因果関係が疑われる死者数も新たに判明するなど、この問題は引き続き大きな関心を集めそうです。