目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 栄養素の過不足から体におこる不調に根本的なアプローチ 「松倉式メディカル栄養療法」~後編~ これまでの松倉医師の歩み

栄養素の過不足から体におこる不調に根本的なアプローチ 「松倉式メディカル栄養療法」~後編~ これまでの松倉医師の歩み

 公開日:2023/02/24
前編では「ボトックスのパイオニア」と言われる松倉医師に美容医療の道に進んだ理由やボトックスとの出会いについて話を伺いました。後編では、「美と健康はイコール」という信条のもと導入したアンチエイジング手法である「総合ナチュラルホルモン補充療法」とホルモンだけではなく栄養素を使ったアプローチを行う「松倉式のメディカル栄養療法」を始めるきっかけなど、治療に込めた想いについて詳しく伺いました。

松倉 知之

監修医師
松倉 知之(医療法人社団 松徳会 松倉クリニック表参道)

プロフィールをもっと見る
日本形成外科学会専門医・医学博士。
昭和63年 北里大学医学部卒業、北里大学形成外科勤務。
平成10年 松倉クリニック&メディカルスパ(現・松倉クリニック表参道)開業。
ボトックス、ブルーピール、レチノイン酸などを日本に導入したことで知られる。

「美と健康はイコール」という信条のもと導入した内側からのアンチエイジングの手法

ボトックス注射をうつ女性

編集部編集部

ホルモンから身体のバランスを整える「総合ナチュラルホルモン補充療法」とは、どのような治療なのでしょうか?

松倉医師松倉先生

「美と健康はイコール」というのが私の信条で、開業当初から、外側からのアプローチだけでなく、内側からも、つまりからだ全体を診る統合的な美容・アンチエイジング医療を目指してきました。
そのために先ず取り入れたのがこの「総合ナチュラルホルモン補充療法」です。ホルモン補充療法が進んでいたアメリカに勉強に行き、「老化と成長ホルモンの関係性」の研究に取り組みました。
「総合ナチュラルホルモン補充療法」とは、加齢に伴い分泌量が減少するホルモンを適正量、バランスを取りながら補充することで、外面だけでなく、身体的、機能的にも若さを維持するアンチエイジングの治療です。
ホルモン補充療法というと更年期障害の緩和のためのもので、性ホルモンのみを補充するイメージが強いと思いますが、当院では、男性ホルモン、女性ホルモンのエストロゲン、プロゲストロンの他に、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、DHEA、プレグネノロン、メラトニンも処方しています。これらを調整して補充することで、各ホルモンが協調して働くようにしています。
当院のホルモン補充療法では「ナチュラルホルモン」を処方しています。「ナチュラル」というのは人のからだで作られるホルモンと同じ天然型(人体の作り出すホルモンと同じ構造式を持つ)という意味で、副作用のリスクが低いということがメリットです。
ホルモン補充療法はがんのリスクを高めると一時期言われましたが、ナチュラルホルモンは体内にもともとあるホルモンと同じように代謝される、つまり不必要に永く留まらないためがんのリスクを低減できるのです。

編集部編集部

「松倉式のメディカル栄養療法」を取り入れた経緯とは?

松倉医師松倉先生

ホルモンの研究を進める内に、「抗酸化」が重要ということに気づき、徐々に栄養の知識を増やしていきました。私自身は、「ホルモン」に対する強い関心を持っていましたが、当時はまだ更年期の治療くらいでしか使われることがなかったですし、「ホルモン」と言えばリバウンドがあるステロイドのイメージも強かったのです。なので、3年かけて師事する先生と出会い、研究に取り組んだんですが……。実際にホルモンを使ってみると、これだけでは解決できない問題があることに気づき、さまざまな身体の問題を解決するためには栄養素を使ったアプローチが大切だと思うようになりました。それが「松倉式メディカル栄養療法」を始めるきっかけになったのです。

「松倉式メディカル栄養療法」の基本である「分子整合栄養学」

ボトックス製剤と注射針

編集部編集部

チェックポイントが76項目の「松倉式メディカル栄養療法」とは、どのような治療方法なのでしょうか?

松倉医師松倉先生

「松倉式メディカル栄養療法」は、「分子整合栄養学」をベースにした、栄養素の過不足からからだに起こる不調や悩みを解決する治療です。
必要な栄養素の種類、適正量は個人差がありますが、それらが満たされてこそ、細胞は守られ、きちんと機能します。健康には細胞を守り、きちんと機能させることがとても重要です。
例えば、多くの人が悩むニキビも栄養素によって治すことができます。ニキビ菌がニキビの原因と言われていますが、実は皮膚の代謝異常が原因で、皮膚の代謝を正常化させる「活性型ビタミンA」を摂るとニキビはできなくなるのです。もう少し詳しくご説明しましょう。
ニキビ菌は空気を嫌います。皮膚の代謝(生まれ変わり)が滞り、角質が毛穴の一部を塞いでしまうと、通気性の悪くなった患部はニキビ菌の繁殖にとって恰好の環境になります。脂をエサに繁殖し、徐々に膨らんでニキビになってしまうのです。ニキビができないようにするには毛穴を塞がないように、つまり皮膚の代謝を正常化させればよく、それには「活性型ビタミンA」の摂取が欠かせないのです。
「松倉式メディカル栄養療法」を受けて、女性が一番効果を感じるのは「鉄分」ではないかと思います。「鉄分」の不足は出血が主な原因なので、鉄不足に陥るのは生理がある女性がほとんどです。コラーゲンを作るのはこの鉄とタンパク質、ビタミンCですが、女性は血中の鉄分が少なくコラーゲンが作られにくいので、男性よりも爪や皮膚が薄く、髪は本数は多いけれど細い傾向にあります。鉄はエネルギー産生にも関わるので、鉄不足は冷え性にも直結します。疲れやすいのも鉄不足が原因の可能性があります。したがって、鉄分の摂取を意識的に増やしていくと、さまざまな体調の改善を感じやすいかもしれません。
これらはほんの一例ですが、「松倉式メディカル栄養療法」は、育毛、不妊、メンタルの不調、美肌、ダイエットなどでもさまざまなよい結果に結び付きます。
76項目もの検査項目をさまざまに紐づけで解析することで、まるで透視したかのように患者さんの生活から代謝のクセのようなものまでがわかります。それを基に、必要な栄養素をサプリメントで補充、過剰な栄養素は制限し、適正量に近づけていきます。

編集部編集部

日常生活の改善で実現させる「病気になりにくい身体づくり」とは?

松倉医師松倉先生

栄養療法で難しいのは、日常生活における患者さんの努力にかかる部分もあることです。
サプリメントを補充して不足している栄養素を補うことには関与できますが、運動を習慣化したり、過剰に摂取している糖質を制限したりすることなどは、こちらのコントロールが及ばず、患者さんの努力にかかっています。
ですので、患者さんの主体性にかかる生活習慣については、患者さんが「それならできそう!」と思えるように、「食べ物をよく噛んでください」を「持った箸を一旦置くようにしてください」と言い換えたり、「(腹筋運動を勧める場合でも)最初は1回でいいですよ。それで物足りなくなったら2回に増やして下さい」などと指導したりするように心がけています。

編集部編集部

「内側からのアンチエイジング」治療に込めた想いとは?

松倉医師松倉先生

コラーゲンの原料である鉄・タンパク質・ビタミンCが足りず、コラーゲンを充分に作り出せてない、土台が貧弱な状態でレーザーなどの照射治療を受けても100%の効果は期待できません。そういう点でも内側からのアプローチが必要だと言えます。シミはレーザーで消すことができますが、細胞が傷ついていると考えるべきで、根本原因を内側から探ることが最善の治療に結び付きます。
「健康」を強調すると「まだ自分には関係ない」と思う人でも、たるみやシミという悩みにも直結することだと説明すると必要性を感じてもらえます。繰り返しになりますが、「総合ナチュラルホルモン補充療法」「松倉式メディカル栄養療法」を導入したのは「美と健康はイコール」で、それを叶えるには外側からと内側からの統合的なアプローチが必須という考えが基本にあったからです。
人生100年時代と言われるようになりましたし、新型コロナウィルスの影響もあってウェルネス志向もより高まってきましたので、今後はこういった考えもより受け入れられやすくなるかもしれません。
これからも、患者さんの健康と真摯に向き合っていきたいと考えています。

編集部まとめ

ボトックスやヒアルロン酸を使った美容整形は、多くの人に利用されるようになりましたが、そのパイオニアでもある松倉先生は外的な治療だけではなく、身体の内部を整えていくことの大切さをお話しして下さいました。本当の「アンチエイジング」を目指すために、日々の生活を改めて振り返り、改善を図ってみてはいかがでしょうか。

医院情報

医療法人社団 松徳会 松倉クリニック表参道

医療法人社団 松徳会 松倉クリニック表参道
所在地 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-11-6 表参道千代田ビル9F
アクセス 東京メトロ 表参道駅 A2出口 徒歩1分
診療科目 皮膚科・美容外科・形成外科・内科

この記事の監修医師