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【新発見】タウリンにアンチエイジング効果の可能性 動物実験で老化防止を確認

 公開日:2023/06/16
「タウリン」の老化防止効果の可能性 動物実験で確認

アメリカのコロンビア大学などの研究グループは、魚介類などに含まれる「タウリン」を補充することが老化防止に有望であることを動物実験で確かめたと発表しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

発表された研究内容とは?

今回、アメリカのコロンビア大学などの研究グループが発表した研究内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介する研究は、アメリカのコロンビア大学などの研究グループがおこなったものです。研究グループが、マウス・サル・ヒトの血中のタウリン濃度を測定したところ、年齢とともに濃度の低下が確認されました。15歳のサルの血中タウリン濃度は、5歳のサルと比べて85%減少していました。また、研究グループがマウスのグループにタウリンを毎日投与したところ、タウリンを追加投与しなかった対照群と比べて、寿命が雌で約12%、雄で約10%延びたという結果が出ました。さらに、タウリンを投与したマウスは、筋持久力や体力の向上などの健康効果があったとのことです。加えて、雌ではうつ病や不安に関連する行動が減少して、免疫系が強化されたという結果になりました。タウリンを含む食品を中年のアカゲザルに与えたところ、タウリンを摂取したサルは体重が減って、骨密度が上がり、肝臓障害の徴候が減少したとのことです。

研究グループは「タウリンの存在量は加齢とともに減少する。タウリンの補給によってこの減少を逆転させると、マウスでは健康寿命と寿命が、サルでは健康寿命が延びる。このことから、これらの種ではタウリン欠乏が老化の促進因子であることが明らかになった。タウリン欠乏がヒトにおいても老化の促進因子であるかどうかを検証するためには、健康寿命と寿命が成果として測定される長期的で良好にコントロールされたタウリン補給試験が必要である」と論文の中で結論付けています。また、研究グループは会見で「我々は、ヒトを対象とした多国籍介入試験を検討している」とも述べています。

タウリンとは?

今回の研究で取り上げられたタウリンについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

タウリンは、イカやタコ、貝類、甲殻類などに多く含まれている含硫アミノ酸様化合物の一種です。タウリンには、「血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす効果」「血圧を正しく保って高い血圧を下げる効果」「肝臓の解毒能力を強化する効果」「糖尿病の予防・治療において重要な役割を担うインスリンの分泌を促進する効果」「視力の衰えを防ぎ、新生児の脳や網膜の発育を助ける効果」などがあります。人間の体内には、体重の0.1%のタウリンがあると言われており、心臓、肺、肝臓、脳、骨髄などの様々な臓器や組織に広く含まれていることから、生命の維持に必要な成分と考えられています。

発表内容への受け止めは?

アメリカのコロンビア大学などの研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

基礎研究成果を新たな疾患の診断、治療・予防など、人に臨床応用できるようにするのを目的におこなう研究であるトランスレーショナルリサーチとして、大変興味深い研究であると考えます。タウリンは人体でも作られ、肝臓の解毒効果を増強したり、コレステロールや中性脂肪を下げたりする効果があるとされています。

今回の研究では人に近いとされる動物のサルで、タウリンが老化防止に関係していることを明らかにした素晴らしい研究結果と言えるでしょう。だだし、人に対する効果や有効量などは不明で、今後の検証が必要と思われます。タウリンはみなさんもご存知の栄養ドリンクの成分としてもよく知られていますが、老化の防止目的での多量の摂取は避けるべきです。

まとめ

アメリカのコロンビア大学などの研究グループは、魚介類などに含まれる「タウリン」を補充することが老化防止に有望であることを動物実験で確かめたと発表しました。研究グループは、人を対象とした研究を検討しているとのことで、今後の研究結果にも注目が集まります。

この記事の監修医師