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“マルチビタミン”サプリは無意味!? 「病気で死亡するリスクは下がらない」アメリカの研究結果

 更新日:2024/07/19

アメリカ国立がん研究所の研究グループは、「マルチビタミンのサプリメントを毎日摂取しても死亡率は下がらない」という研究結果を発表しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

アメリカ国立がん研究所の研究グループが発表した内容を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回発表された内容は、アメリカ国立がん研究所の研究グループによるもので、研究結果は学術誌「JAMA」に掲載されています。

研究グループは、アメリカの成人の3人に1人が疾病予防のためにマルチビタミンを使用していることに着目し、マルチビタミンの使用と死亡リスクとの関連を推定することを目的に研究をおこないました。研究対象となったのは39万124人で、年齢中央値61.5歳でした。対象のうち55.4%が男性でした。また、対象の40.9%にあたる15万9692人は喫煙経験がなく、40.3%の15万7319人が大卒でした。毎日のマルチビタミン使用者は、女性が49.3%、大卒が42.0%であったのに対し、マルチビタミンを使用しない人は、女性が39.3%、大卒が37.9%でした。日常的にマルチビタミンを使用している人の11.0%(非使用者の13.0%)が現在喫煙者でした。マルチビタミンの使用は追跡期間の前半または後半において、全死因死亡リスクの低下とは関連していなかったとのことです。

研究グループは、「アメリカの成人を対象としたこのコホート研究では、マルチビタミンの使用は死亡率の増加とは関連していなかった。それでもなお、アメリカの成人の多くが健康の維持または改善のためにマルチビタミンを使用していると述べている」と結論づけています。

アメリカのマルチビタミンへの対応とは?

「マルチビタミンを毎日摂取しても死亡率は下がらない」ということが今回紹介した研究で明らかにされました。実際にアメリカでは、マルチビタミンに対してどのような対応をしているのでしょうか?

中路 幸之助 医師中路先生

FDA(アメリカ食品医薬品局)は、マルチビタミンなどの栄養補助食品を承認していません。多くの企業はFDAに届け出ずにマルチビタミンを製造・販売しています。一方で、何か問題がある場合にFDAは規制をかけています。また、USPSTF(アメリカ予防医療専門委員会)は、2021年に実施した研究で、マルチビタミンを摂取しても、がんや心臓病の発症率が下がらないことをすでに示しています。また、ビタミンやミネラルのサプリメントは「ほとんど有益性がない」と結論づけており、心血管疾患やがんの予防を目的として「β-カロテン」や「ビタミンE」のサプリメントを摂取しないよう勧告している状況です。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

アメリカ国立がん研究所の研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回のアメリカでの研究結果は、サプリメント好きなアメリカ人を対象とし、マルチビタミンの摂取と死亡リスクとの関連を検討した大人数のコホート研究であり、大変興味深い研究と思われます。ただし、もともとマルチビタミンを摂取する人は肥満や喫煙、高血圧や糖尿病などの生活習慣病などの健康に不安を持っている人が多いと思われ、マルチビタミンによる影響というよりは、マルチビタミンを摂取する人のキャラクターが多く反映されていることには注意すべきと考えます。いずれにしても、今回の研究結果にあるように、マルチビタミンに頼らず、規則正しい生活習慣を心がけていくことが重要です。

まとめ

アメリカ国立がん研究所の研究グループは、「マルチビタミンのサプリメントを毎日摂取しても死亡率は下がらない」という研究結果を発表しました。サプリメントはドラッグストアなどでも簡単に買えるので、こうした有効性についての研究は注目を集めそうです。

この記事の監修医師