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“使用済みの油”で揚げ物はダメ!? 「再利用は脳に悪影響」動物実験の結果で明らかに

 公開日:2024/04/23
使用済み油の再利用による悪影響は脳にまで?動物実験の結果を発表

インドのタミル・ナードゥ中央大学の研究グループは、「ラットに使用済みの食用油と餌を与え続けると、肝臓や大腸に問題が生じるだけではなく、脳の健康にも影響を及ぼした」と発表しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

インドのタミル・ナードゥ中央大学の研究グループが発表した内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介する研究報告はインドのタミル・ナードゥ中央大学の研究グループによるもので、2024年3月23~26日に開催された米国生化学・分子生物学会議で発表されました。

研究グループは、揚げ油を長期摂取した場合の影響を調べるため、ラットを用いた実験をおこないました。実験期間は30日で、標準的な餌を与えるグループ、未使用のゴマ油またはヒマワリ油0.1mlと標準的な餌を与えるグループ、加熱使用済みのゴマ油またはヒマワリ油0.1mlと標準的な餌を食べるグループの5群にラットをわけて実施しました。餌の影響の追跡は、子どもの代までおこないました。

実験の結果、加熱使用済みのゴマ油またはヒマワリ油を摂取したグループは、ほかのグループと比べて、総コレステロール、LDLコレステロール、TAG(トリアシルグリセロール)の値が有意に増加しました。また、肝機能検査では、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の値が有意に上昇していました。肝臓と大腸の組織学的解析では、加熱使用済みのゴマ油またはヒマワリ油を摂取したグループで細胞構造に有意な損傷がみられ、ダメージを受けた大腸では特定の細菌から放出される毒素であるエンドトキシンやリポ多糖に変化が生じていたとのことです。

研究グループは「肝臓の脂質代謝が著しく変化し、重要な脳のオメガ-3脂肪酸であるDHAの輸送が減少したことで、これらのラットとその子孫では神経変性が引き起こされた」と説明しています。

研究グループによる総括と今後の研究について

研究グループは今回の結果をどのように総括しているのでしょうか? また、今後はどのような研究を実施していく予定なのでしょうか?

中路 幸之助 医師中路先生

インドのタミル・ナードゥ中央大学の研究グループは、「ラットに使用済みの食用油と餌を与え続けると、子どもの世代まで脳の神経変性が引き起こされたことを明らかにした」と発表しました。このことについて、研究グループは「使用済みの油の再利用が、肝臓・腸・脳の間の結合に影響を及ぼす可能性を示唆している」と述べています。しかし一方で、「これは初期の研究結果であり、動物実験の結果が人にも当てはまるとは限らない」と強調しています。

研究の次の段階として、「揚げ物の摂取がアルツハイマー病やパーキンソン病のような脳の病気、不安やうつ病のような気分障害に及ぼす潜在的な影響について研究したい」と考えているそうです。また、こうした研究の結果から、腸内細菌叢と脳の関係に関する新たな研究実施の可能性も示唆しています。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

インドのタミル・ナードゥ中央大学が発表した内容についての受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

使用済みの油(酸化した油)が臓器への悪影響があることは以前より知られていましたが、それが脳にまで影響を与えることに加え、世代にわたり影響を与えることを証明したものとして、今回の研究は大変興味深い内容と言えるでしょう。本研究の結果によると、揚げ物をつくる際には、常に新鮮な油を使うことが推奨されます。しかし、その都度使用済みの油を再利用せずに捨てることは非現実的であり、地球温暖化対策を持続可能なものにする意味でも困難です。今後の人への応用に際しては、企業による「酸化しにくい油の開発」や「どの程度の再利用なら人体への影響が少ないか」の検討がむしろ重要であると考えます。

まとめ

インドのタミル・ナードゥ中央大学の研究グループが「ラットに使用済みの食用油と餌を与え続けると、肝臓や大腸に問題が生じるだけではなく、脳の健康にも影響を及ぼした」と発表したことが、今回のニュースでわかりました。学会で発表された研究結果は「査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なもの」と見なされますが、身近な揚げ物をテーマにした研究は注目を集めそうです。

この記事の監修医師