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「家庭料理への介入」が減塩・血圧低下に有効? 中国疾病予防管理センターらの研究

 公開日:2023/10/05
家庭料理への介入が減塩・血圧降下に有効との研究発表

中国疾病予防管理センターの研究グループは、「家庭で料理を担当する人とその家族をターゲットにコミュニティベースの減塩教育やモニタリングを実施すると、食塩摂取量および血圧低下に有効であった」と発表しました。この内容について甲斐沼医師に伺いました。


甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

発表された内容とは?

中国疾病予防管理センターの研究グループが発表した内容について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

今回の研究は、中国疾病予防管理センターの研究グループが実施したものです。研究グループは、2018年10月~2019年12月に、中国6省6都市から60コミュニティを募集して家庭料理と家族を対象に減塩介入の効果を評価しました。対象者は18~75歳の成人の26名で、週4日以上家で料理を食べる家族のうち調理を担当する人とその家族になります。また、介入内容は「減塩支援のための環境整備、減塩に関する6回の教育セッション、7日間の食塩摂取モニタリング」を12ヵ月間実施しました。一方、対照群にはいずれの介入もおこないませんでした。その結果、24時間尿中ナトリウム排泄量が対照群と比較して介入群において336.8mg減少していたことがわかりました。また、収縮期血圧と拡張期血圧も2.0mmHg低下しており、適切な食塩摂取に関する知識や態度、行動についても、対照群に比べ介入群で有意に改善したということです。研究グループは論文の中で「家庭の料理人や家族を対象とした地域ベースの減塩パッケージは、食塩摂取量と血圧の低下に有効であった。この介入は、家庭料理が食塩摂取の主要な原因である中国やその他の国々で広く適用される可能性がある」と結論づけています。

発表内容への受け止めは?

中国疾病予防管理センターの研究グループが発表した内容について、受け止めを教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

中国疾病管理予防センターは、非感染性疾患(NCD)の認知向上、高血圧・糖尿病の管理、禁煙、減塩、疾病に関する知識強化などを目的とした活動に従事しています。減塩は、食塩の多い食品を控える、減塩調味料を使って食材の本来の味を楽しむなど、簡単にできるところから始められます。今回の研究を通じて、家庭内で料理をする方やその家族を対象とした減塩教育指導は食塩摂取量と血圧コントロールへ有効であり、生活習慣病の予防に繋がると期待できます。

日本の食生活の中で今回の研究結果は活かせる?

中国の疾病予防管理センターの研究グループは、「今回の介入は、家庭料理が高血圧の主要な原因となっている、中国以外のさまざまな国でも広く活用できる可能性がある」と論文内で述べていますが、日本でもうまく活用できる可能性はあるのでしょうか?

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

日本高血圧学会 減塩・栄養委員会は、血圧が正常な人に対しても予防目的で塩分制限(可能であれば1日6g未満)を推奨しています。みなさんの中でも、血圧が高いなどの理由で、医師や栄養士・保健師などから減塩を指導された経験をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。今まで好きなものを自由に食べていた方が、急に塩分を極端に減らした薄味の食事に変えると、おいしくないと感じてしまい食欲が低下し、エネルギーや栄養素を十分に摂取できないといったことも起こりがちです。日本においても今回報告された研究結果で見られたように「家族でサポートしてながら毎日の食事をちょっと工夫して、栄養バランスを保ちながら減塩に取り組む」ことが大切です。塩分の摂りすぎによる高血圧などの基礎疾患は、今後日本でも重要な健康課題になると考えられます。

まとめ

中国疾病予防管理センターの研究グループは、家庭で料理をする人とその家族をターゲットにコミュニティベースの減塩教育やモニタリングを実施すると、食塩摂取量および血圧の低下に有効であったと発表しました。日本でも減塩については話題になることが多いので、こうした研究も参考になりそうです。

原著論文はこちら
https://pmc.carenet.com/?pmid=37620015&keiro=journal

この記事の監修医師