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健康診断で「脂肪肝」と指摘されたときの対処法はご存じですか? 放置リスクと生活習慣の改善法も医師が解説!

 公開日:2025/04/27

肥満の人やお酒をよく飲む人などは、健康診断で脂肪肝を指摘されることがあるかもしれません。そんなとき、一体どうすればいいのでしょうか。何科を受診して精密検査を受ければいいのかも気になるところです。脂肪肝を放置することのリスクも含め、「渕上医院」の渕上先生に詳しく教えていただきました。

渕上 彰

監修医師
渕上 彰(渕上医院)

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埼玉医科大学卒業。埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科入局。その後、大学病院にて、通常の検査及び早期がん治療を含めて年間500件ほど内視鏡検査実施の経験。早期の胃がん・食道がんや大腸がんに対する内視鏡治療に従事。牧田総合病院健診科・内視鏡センターにて胃カメラ・大腸カメラを担当。その後、現職の「渕上医院」副院長に就任。日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。

脂肪肝とは?

脂肪肝とは?

編集部編集部

そもそも、脂肪肝とはなんですか?

渕上 彰先生渕上先生

「肝臓に余分な脂肪が蓄積された状態」を脂肪肝と言います。脂肪肝を放置すると、肝炎や肝硬変などを引き起こすことがあります。

編集部編集部

なぜ、脂肪肝になるのですか?

渕上 彰先生渕上先生

大きな原因は、お酒の飲み過ぎです。アルコールが原因となる脂肪肝のことを「アルコール性脂肪肝」と言い、アルコールに含まれるアセトアルデヒドという物質が原因です。アセトアルデヒドが体内で代謝される過程で肝細胞が傷ついたり、脂肪の分解が抑制されたりして、肝臓に脂肪がたまりやすくなるのです。

編集部編集部

お酒の飲み過ぎ以外にも、脂肪肝の原因はありますか?

渕上 彰先生渕上先生

脂肪肝はアルコール性脂肪肝のほか、「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」というものがあります。お酒をあまり飲んでいないにもかかわらず、肝臓に脂肪が蓄積してしまうタイプの脂肪肝です。現在、患者数が増加傾向にあり、注目を集めている疾患です。

編集部編集部

なぜ、NAFLDを発症するのですか?

渕上 彰先生渕上先生

NAFLDの多くは肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を伴っており、メタボリックシンドロームの肝臓病と言われています。

編集部編集部

どうして、肥満や糖尿病などが脂肪肝になるのですか?

渕上 彰先生渕上先生

摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、肝臓は余分なエネルギーを中性脂肪に変えて蓄積する働きがあります。そのため、肥満の人や糖質を多く取る人、脂っこいものを多く摂る人、運動不足の人などは肝臓に脂肪が溜まりやすいのです。特に現在では、食生活の変化から非アルコール性の脂肪肝の患者数が増加しています。

脂肪肝を放置するとどうなるか?

脂肪肝を放置するとどうなるか?

編集部編集部

脂肪肝を放置するとどうなりますか?

渕上 彰先生渕上先生

脂肪肝を放置すると、肝炎や肝硬変、肝臓がんなどの病気へ進行する可能性があります。特に脂肪肝のうち、アルコール性のなかで肝臓に炎症が起きているものを「ASH(アルコール性脂肪性肝炎)」と言い、肝硬変や肝がんなどへ進行するリスクが高いとされています。

編集部編集部

肝硬変や肝がんになることもあるのですね。

渕上 彰先生渕上先生

はい。怖いのは自覚症状が出ないまま、密かに病気が進行していることもあるということです。そのため、発見が遅れて気づいたときにはかなり進んでいたことも少なくありません。

編集部編集部

非アルコール性脂肪肝も肝硬変や肝がんになることがあるのですか?

渕上 彰先生渕上先生

非アルコール性脂肪肝は炎症の有無によって、肝細胞のなかに脂肪が溜まっているだけで炎症がない「NAFL(非アルコール性脂肪肝)」と、炎症が起きている「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」に分類されます。これまでは、NAFLは肝硬変などに移行するリスクは少ないと考えられていましたが、近年の研究によりNASHは肝硬変や肝がんなどへ進行していくことがわかっています。

編集部編集部

肝硬変とはなんですか?

渕上 彰先生渕上先生

肝硬変は、慢性的な肝障害が長く続いた結果、肝臓がゴツゴツとして小さくなり、肝臓の機能が低下する疾患です。初期ではほとんど症状がありませんが、進行すると黄疸や腹水、浮腫といった症状を引き起こすことがあります。肝硬変は不可逆性で、一度肝臓がそのような状態になると元に戻ることはありません。そのまま進行すると肝臓がん、胃食道静脈瘤、肝性脳症などの合併症を起こすこともあり、注意が必要です。

健康診断で脂肪肝と診断されたら?

健康診断で脂肪肝と診断されたら??

編集部編集部

健康診断で脂肪肝と言われたらどうすればいいのでしょうか?

渕上 彰先生渕上先生

まずは、食事内容と運動習慣を見直してみましょう。お酒を飲み過ぎている人は節酒を心がけてください。一般的には、1日あたり日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、ワインならグラス2杯を目安にすることが必要です。運動習慣のない人は定期的に運動するよう意識しましょう。

編集部編集部

お酒との付き合い方を見直すことが必要ですね。

渕上 彰先生渕上先生

量を見直すだけでなく、お酒を飲まない“休肝日”を作ることも大切です。毎日お酒を飲むことをやめ、まずは1日おきに飲まない日を作ることを目指してみてください。

編集部編集部

そのほか、食事で気をつけることは?

渕上 彰先生渕上先生

肥満や糖尿病の人はインスリンの働きが悪くなり、肝臓に脂肪が溜まりやすくなります。減量を心がけ、食べ過ぎに注意しましょう。また、肥満体型でなくても、糖質や脂質の摂り過ぎは脂肪肝の原因となります。食物繊維やビタミンなどもしっかり摂取して、バランスの良い食事を意識しましょう。

編集部編集部

脂肪肝は食事や運動などに気をつけることで改善できるのですか?

渕上 彰先生渕上先生

はい。医療機関では脂肪肝に対する薬物治療をおこなうこともありますが、生活習慣の改善が最も大切です。食事と運動に気をつけ、肝臓に脂肪を蓄積しないようにしましょう。

編集部編集部

日常生活を改めることで改善が期待できるのですね。

渕上 彰先生渕上先生

日常生活を見直すことに加え、定期的な検診を受けることも必要です。気づかないうちに肝硬変や肝がんが進行していることもあるので、治療と並行して年1回、お腹の超音波検査などを受け、異常がないか確認しましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

渕上 彰先生渕上先生

脂肪肝の患者数は増加傾向にあり、特にお酒の飲み過ぎや肥満などを原因として発症する人が増えています。肝硬変や肝がんは自覚症状がないまま進行していくこともあるので、日頃から生活習慣に気をつけるとともに、定期的に検診を受けることが重要です。血液検査だけでなく画像検査も受け、病変の早期発見に努めましょう。また、「自分は痩せているから脂肪肝ではない」と考える人もいますが、実際は痩せていても脂肪肝になることもあります。油断せず、食事や運動を改めて見直してみましょう。

編集部まとめ

肝臓の病気の多くは不可逆性であり、時間の経過とともに慢性化するため、少しでも早く病気に気づいて治療を開始することが必要です。また、健康診断で「脂肪肝の疑いあり」と指摘された場合には、食事や運動習慣を見直してみるなど、できることをすぐに始めることが大切です。

医院情報

渕上医院

渕上医院
所在地 〒143-0025 東京都大田区南馬込3-36-12
アクセス JR「大森駅」 徒歩17分
診療科目 内科、小児科

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