【紅麹問題】腎臓の機能障害「66%が女性」日本腎臓学会のアンケート調査報告
厚生労働省は、小林製薬の紅麹の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題をめぐり、4月3日の時点で、延べ188人が入院したと発表しました。この内容について久高医師に伺いました。
監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
紅麹成分を含む健康食品をめぐる問題とは?
小林製薬の紅麹の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題について、現在わかっていることを教えてください。
久高先生
小林製薬の紅麹の成分を含む健康食品を摂取した後に、腎臓の病気を発症するなどして、これまでに5人が死亡しています。この問題については厚生労働省も調査に乗り出しており、各地の保健所などとも連携して被害の確認を進めています。厚生労働省の発表によると、小林製薬から報告された4月3日時点で延べ1058人が体調に異変を感じるなどして医療機関を受診しています。さらに、2024年3月29日から設置されている厚生労働省と消費者庁のコールセンターには、4月3日までの6日間で合計2821件の相談が寄せられています。
今回の問題の原因となった物質は現在も調査中ですが、厚生労働省は2024年3月29日、小林製薬のサプリメントに「プベルル酸」という物質が意図せずに含まれていたことを明らかにしています。プベルル酸は、青カビからつくられる天然の化合物で、混入経路は不明とのことです。プベルル酸は抗生物質としての特性があり、抗マラリア効果があるほど毒性が非常に高いとされていますが、腎臓への影響は現時点では不明です。小林製薬は、特定のロットにだけプベルル酸が入っていたことを確認しています。繰り返しになりますが、健康被害の原因がプベルル酸なのかは現時点では不明のため、今後動物実験などで毒性を評価していくことになります。
日本腎臓学会による中間報告の内容は?
今回の問題をめぐって、日本腎臓学会も調査に乗り出しています。中間報告の内容について教えてください。
久高先生
2024年4月1日、日本腎臓学会は会員医師を対象に調査の中間報告を公表しています。調査の内容は、回収対象となっている小林製薬の3種類の製品を摂取した後に腎臓の機能に障害が出た患者がいないか、会員医師にアンケートを実施したものです。中間報告によると、腎臓の機能に障害が出た患者は全国から47人報告され、このうち46人が「紅麹コレステヘルプ」、1人が「ナイシヘルプ+コレステロール」を摂取していたということです。年齢の約9割が40代から60代で、66%が女性でした。受診時期は最も早い人で2023年11月で、2024年1月以降に受診した人が全体の8割でした。
患者の約半数が倦怠感、食欲の低下、尿の異常、腎臓の機能の障害といった症状を訴えていたほか、2割近くの患者が腹部の症状や体重の減少を訴えていました。また、報告された4分の1の患者がステロイドによる治療を受け、患者2人が人工透析を受けたとのことです。
紅麹成分を含む健康食品をめぐる問題への受け止めは?
紅麹成分を含む健康食品をめぐる問題への受け止めを教えてください。
久高先生
健康食品の中には、特定保健用食品のように人での実験を義務付けているものもあれば、動物実験や書類の提出で済むものもあります。サプリメントは無害という認識を改め、使用する際には事前に主治医へ相談すること、政府としては健康食品として定義される食品の認定基準の厳格化を検討する必要があると個人的には考えます。
まとめ
厚生労働省は、小林製薬の紅麹の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題をめぐり、4月3日の時点で、延べ188人が入院したと発表しました。健康の維持・増進をうたった機能性表示食品で、死亡につながったと疑われる事例が判明したのは初めてのことなので、今回の問題は引き続き注目を集めそうです。