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「白内障」の手術を受けた方がいい人の特徴を医師が解説 視力が良くても手術が必要?

 公開日:2024/01/25

白内障の根治治療は、手術をするしかないのだそうです。しかし、そうは言っても「目の手術」と聞くと、不安や恐怖を感じる人も多いのではないでしょうか。今回は、白内障の治療法やどのようなケースで手術を受けるのかについて、「祐天寺たぐち眼科」の田口先生に解説していただきました。

田口 万藏

監修医師
田口 万藏(祐天寺たぐち眼科)

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防衛医科大学校卒業。その後、広島大学病院、自衛隊中央病院、三宿病院などで診療経験を積む。大学院では糖尿病網膜症の研究に携わる。2022年、東京都目黒区に「祐天寺たぐち眼科」を開院。医学博士。日本眼科学会専門医。東京都難病指定医、東京都身体障害者福祉法指定医。

白内障とは? 症状・原因・治療法を医師が解説

白内障とは? 症状・原因・治療法を医師が解説

編集部編集部

まず、白内障について教えてください。

田口 万藏先生田口先生

白内障は、目の中でレンズの役割をしている「水晶体」が白く濁ってしまう病気です。主な原因は老化で、本来の水晶体はほぼ透明ですが、加齢とともに濁りはじめ、段々と光が十分に通らなくなります。60~70代で発症し、80歳代になるとほとんどの人に白内障が認められると言われています。

編集部編集部

どんな症状が出るのですか?

田口 万藏先生田口先生

白内障の症状は、主に視力低下やまぶしさ、ピントの合いにくさなどがありますが、これらの症状は、最初は本人も気がつかないほどで、少しずつ進行します。そのため、ある程度進行していても、本人が全く自覚していないケースも多くみられます。

編集部編集部

白内障には、どのような治療法がありますか?

田口 万藏先生田口先生

初期の段階であれば、点眼薬やサプリメントでの薬物療法もあります。ただし、あくまでも対症療法・進行予防が目的です。生卵の白身は透明ですが、ゆで卵になって白くなってしまうと元に戻らないのと同様に、一度白く濁った水晶体が再び透明になることはないため、白内障を根本治療するには、手術しかありません。具体的には、濁った水晶体を取り除き、その代わりに人工の水晶体である眼内レンズを挿入します。

編集部編集部

手術について、もう少し詳しく教えてください。

田口 万藏先生田口先生

白内障手術は、まずは一般検査やカウンセリングをおこない、眼内レンズの種類などを決めます。手術は日帰りで可能で、手術当日は瞳孔を開く薬を点眼して、麻酔をします。その後、水晶体嚢と呼ばれる袋の前面に切り込みを入れて水晶体を吸い出し、眼内レンズを入れて固定します。一連の工程は約10分で完了し、手術後はリカバリールームで休んでから帰宅という流れになります。

白内障手術は必ず受けるべき? 手術を検討した方がいいケースとは

白内障手術は必ず受けるべき? 手術を検討した方がいいケースとは

編集部編集部

白内障は必ず手術しなければならないのでしょうか?

田口 万藏先生田口先生

白内障だからといって、必ず手術しなければならないわけではありません。とはいえ、「手術は絶対しない」と決めつけず、まずは主治医の説明を聞き、時間をかけて手術のメリット・デメリットを理解した上で、判断いただければと思います。

編集部編集部

手術を積極的に検討した方がいいケースはありますか?

田口 万藏先生田口先生

運転やお仕事に影響が出てきた場合や、読書などの趣味ができなくなってしまった場合などは、本人のQOL(生活の質)を上げるためにも、手術をおすすめします。また、ほかの疾患との兼ね合いで、早めの手術を推奨することもあります。

編集部編集部

具体的には、どのような疾患ですか?

田口 万藏先生田口先生

まず、「閉塞隅角緑内障」を併発している場合は、早めの手術を強くおすすめします。なぜなら、ある日突然眼圧が上がって、頭痛や眼痛を発症して、失明することがあるからです。白内障手術をすることで眼内の水の流れが良くなり、急性緑内障発作を予防することができます。急性緑内障発作で目が見えなくなった場合、そこから視力・視野の回復はないので、現時点で症状がなくても手術を受けましょう。急性緑内障発作が起こる患者さんは、視力も良く水晶体自体の濁りもそんなにないことが多いため、普段は無症状です。しかし、実際は「今まで目だけは良くて、眼科なんて行ったこともなかったのに……」という声を現場でも耳にします。

編集部編集部

ほかには、どのようなケースがありますか?

田口 万藏先生田口先生

糖尿病を発症している人は、糖尿病性網膜症をコントロールするために、定期的な眼底検査が必要です。白内障で眼底が見えにくくなっている場合などは、手術を受けた方がいいと考えます。また、80歳を超えると水晶体を支える「チン小帯」が弱まって、白内障手術に加えて硝子体手術も必要になる場合があります。白内障手術よりも手術の難度が上がるため、そうなる前の手術を推奨しています。

編集部編集部

では、手術を待ってもいいケースは?

田口 万藏先生田口先生

上記に当てはまらないケースです。本人や周りの環境的に白内障の影響なく過ごすことができ、急激に進行しているなどでなければ、少し様子を見てもいいかもしれません。

白内障手術の費用や治療前に知っておきたいこと

白内障手術の費用や治療前に知っておきたいこと

編集部編集部

「見えにくくなったら手術」というだけではないのですね。

田口 万藏先生田口先生

そうですね。手術をするかどうかは、先ほどお伝えしたような様々な観点を踏まえて総合的に判断します。視力が良くても、緑内障や糖尿病の罹患(りかん)状況、年齢などによって、白内障手術の必要度が高くなることもあるのです。したがって、症状が全くなくても自治体の眼科検診は必ず受けてください。

編集部編集部

白内障手術の費用についても教えてください。

田口 万藏先生田口先生

眼内レンズは大きく分けて、1カ所にピントが合う「単焦点眼内レンズ」と、「遠距離」と「近距離」など、複数箇所にピントが合うようになっている「多焦点眼内レンズ」の2種類があります。保険が適用される単焦点眼内レンズの手術だと、日帰り手術で3割負担だと片目約5万円、1割負担だと片目約1万8000円でおこなうことができます。ただし、検査・診察代は別途費用がかかります。入院で手術をする場合は治療費とは別に入院費がさらに上乗せされます。加えて、お仕事の休暇調整や入院の準備なども必要になってきます。特に術後に全身的な管理を必要としない人は、日帰りの方がメリットは高いと思われます。お仕事になるべく影響をきたさないように、当院では日曜日も手術をおこなっています。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

田口 万藏先生田口先生

「目の手術は怖い」というイメージを持っている人は多いと思います。特に、いわゆる「昔の医療」を経験されてきたご高齢の方は、そのような意識が強いと感じています。しかし、白内障手術は機器の技術革新が目覚ましく、現在はとても安全な術式が確立しており、手術時間も約10分と、手術というよりは処置に近いものです。私自身も海外の病院を見学したことがありますが、日本の眼科医の先生は手先が器用だと感じました。従来の「手術」のイメージよりはハードルが低くなっているので、悩んでいる人はぜひ検討してみてください。

編集部まとめ

今回は、どんな人が白内障手術を受ける必要があるのかについて解説していただきました。現時点で白内障の症状がなくても、緑内障や糖尿病を併発している人は手術をした方がいいとのことでした。今は手術時間も約10分と短く、安全性も十分に確立された手術とのことなので、症状に悩んでいる人や手術をした方がいいケースに該当する場合は、まず一度、お近くの眼科に相談してみてはいかがでしょうか。

医院情報

祐天寺たぐち眼科

祐天寺たぐち眼科
所在地 〒153-0052 東京都目黒区祐天寺1丁目23-20 祐天寺駅前メディカルセンタービル2F
アクセス 東急東横線「祐天寺駅」 徒歩1分
診療科目 眼科

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