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「仙腸関節痛」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

公開日:2022/12/23  更新日:2023/03/27
「仙腸関節痛」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

厚生労働省が実施した国民生活基礎調査(2019年)有訴者率(病気やけが等で自覚症状を持つ者の割合)によると、腰痛は男性では第1位、女性では肩こりに次ぐ第2位でした。

しかし、一言で腰痛といっても様々で、部位・疾患によって治療法・リハビリ内容も変わってきます。
仙腸関節痛というのは聞きなれない病名かもしれませんが腰痛の一種であり、あなたが今抱えている痛みは、もしかするとそれに分類されるかもしれません。

こちらでは仙腸関節痛の症状・原因・検査・治療・リハビリの内容についてもご紹介致しますので、ご自身の症状と照らし合わせてご覧ください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

仙腸関節痛の原因と症状

腰痛の女性

仙腸関節痛はどのような病気でしょうか?

仙腸関節は骨盤の骨である仙骨と腸骨の間にある関節のことで、その周囲は強い靭帯によって結ばれており、通常でもわずか数mmの動かない可動域の小さい関節です。この関節は上半身と下半身を繋ぐ重要なもので、両者の衝撃を吸収する役割があります。
その仙腸関節に様々な原因で負荷がかかって運動制限などの障害が起こり、痛みが出てくることを仙腸関節痛といいます。陽痛における仙腸関節障害(疼痛・炎症含む)の割合は15~30%を占めているという報告もあり、私たちにとって身近な病気です。

どのような症状がありますか?

仙腸関節痛の主な症状は以下の通りです。

  • 仰向けで寝ることができない
  • 痛みのある方を下にして寝ることができない
  • 長い時間椅子に座れない(正座では楽なことが多い)
  • 痛みのある方の臀部を浮かせて座ってしまう
  • 動き始め・歩き始めが痛く、徐々に楽になる

痛みの部位としては、仙腸関節を中心とした腰部・臀部・鼠径部(足の付け根)・下腿(膝から足首まで)・足部など幅広く、また痛みだけではなく下肢に痺れが出現することもあります。そしてこの病気の特徴は、症状が片側に出現するということです。
これらの症状は、腰椎の疾患(腰部脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニアなど)や坐骨神経痛と似ているため、注意が必要になります。両者の大きな違いを挙げるとすると、腰椎疾患では立位や歩行で痛みが増強して座位になると軽減するのに対し、仙腸関節痛は立位や歩行の始めは痛みを伴いますが徐々に落ち着き、逆に座位で痛みが増すということです。

発症する原因を教えてください。

中腰での作業・不用意な動作・同じ動作の繰り返しが続くと、仙腸関節に負荷がかかってきます。すると、関節が緩んだり、靭帯が伸びすぎてしまい、上半身・下半身の衝撃の吸収が上手くいかなくなるのです。そうなることで関節に小さな不具合(ズレ)が生じてしまい、運動制限等の機能障害が起こって痛みが発生する原因になります。

どのような人がなりやすいのでしょうか?

仙腸関節痛は、体幹や股関節周囲の筋力が落ち、骨盤が不安定な状態な人に多くみられます。仙腸関節障害の性別・年齢分布をみてみると、10代の若者から80代の高齢者まで幅広く、女性は男性の2倍以上となっています。
妊娠・出産後を経験した女性に多い腰痛だといわれてきましたが、実は老若男女に起こりえる病気であることがお分かりいただけると思います。

仙腸関節痛の受診と治療

医師

仙腸関節痛を疑う場合は何科を受診すれば良いでしょうか?

仙腸関節痛は腰痛の1つですので、疑いのある場合に受診する診療科目は整形外科です。
しかし、画像検査での発見が難しいため、見逃されやすく注意が必要です。仙腸関節部を含む臀部の痛みに関して、患者さんは腰痛として訴えることがありますが、医師は腰痛の認識がない場合もあるためしっかりと経過と症状を伝えることが大切になります。

仙腸関節痛はどのような検査で診断されるのでしょうか?

わずかな動きしかない仙腸関節は、MRI・CT・レントゲン等の画像検査では診断が困難なのが現状です。そこでまずは、画像所見と症状からその鑑別を行います。
そして、仙腸関節痛の診断で時に重要とされているのが、患者さん自身の症状と触診です。検査・診断には以下の方法が用いられます。

  • ワンフィンガーテスト:患者さん自身の人差し指で痛みの部位を指し示してもらう方法。日常生活の中で、どのような姿勢でどこが痛むのか示してもらう。
  • 仙腸関節への疼痛誘発テスト:医師の手によって仙腸関節や骨盤の前方部分(鼠径部)を圧迫する方法。圧迫することで捻じれが増強し、痛みが増すため診断の補助となる。
  • 仙腸関節ブロック:最終的に仙腸関節からくる痛みが疑われれば、仙腸関節ブロック(局所麻酔を使った痛み止め注射)を行い、効果のある場合は仙腸関節痛と診断される。

治療方法について教えてください。

まず行われるのは、以下の保存的治療です。 多くの場合、この保存療法が有効なことが報告されています。

  • 安静:負荷のかかる動作を控えて安静にしてもらうことで痛みの沈静化を図る。(これは長期間の安静が良いということではなく一定期間である)
  • 鎮痛剤の使用:疼痛の程度・状況により選択される。
  • 骨盤ゴムベルト:骨盤周囲を抑えることで、仙腸関節痛を一時的に抑える効果がある。仕事復帰等の再発予防にも使われる。

これらの治療で改善がみられない場合には、以下の方法が選択されることもあります。

  • 仙腸関節ブロック:仙腸関節に局所麻酔を注射し、痛みの軽減を図る。
  • AKA(関節運動学的アプローチ)博田法:素手で関節の動きを改善する方法。これは行っている医療機関が少ないことや、技術者によって治療効果に差が生じるという問題点がある。
  • 仙腸関節固定術:長期の保存療法でも効果がなく、日常生活に支障をきたしてしまう場合に選択される手術。

完治するまでの期間を教えてください。

同じ仙腸関節痛であっても、その方の関節の状態・痛みの程度・日常生活の様子・仕事内容・年齢等によって、完治するまでの期間にも差があるので一概には言えません。
1~2回の治療で完治する方もいれば、年単位で長期の治療が必要な方もいます。治療と同時に、日常生活の中で、引き金となっている動作をどれくらい避けることができるかで完治までの期間も大きく変わります。仙腸関節に負担がかかり続けて痛みを慢性化させてしまわないことが重要です。

仙腸関節痛のリハビリ

リハビリ

仙腸関節痛のリハビリについて教えてください。

仙腸関節痛のリハビリには、ストレッチ・筋力強化・屈伸を取り入れた体操等がありますので、いくつか内容をご紹介します。

  • 腰から臀部を伸ばす:仰向けで片膝を抱え、ゆっくりと自分の胸に近づける。反対側の足の膝は床に押し付ける。さらに、抱えた片膝を反対へひねることで臀部の筋肉を伸ばす。
  • 太もも(前面)を伸ばす:横向きで踵を臀部につけるようにゆっくりと膝を曲げる。腰を反らないように注意する。
  • 太もも(後面)を伸ばす:立った状態で片足を膝の高さほどの段差や椅子に乗せてて膝を曲げ、乗せていない側の太もも後面を伸ばす。股関節のストレッチにもなる。

他にも足首の曲げ伸ばし(底背屈運動)・膝の屈伸運動・壁を使ったスクワット・つま先立ち・骨盤周囲や腰背部を中心とした筋力強化訓練等、患者さんの状態に応じて医師・理学療法士等でそのメニューを決めます。

仙腸関節痛と診断された場合にやってはいけないことはありますか?

仙腸関節痛と診断された場合、その原因として考えられることは避けなければなりません。中腰での作業・長時間椅子に座ること・重たい物を持つこと・急な動作等は更に痛みを増強させるのでやめましょう。
また、自己流のストレッチ等ではなく、必ず医師や理学療法士等の専門家の指導の下で運動療法を行うようにしてください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

仙腸関節痛は妊娠や出産を経験した女性に多いイメージでしたが、老若男女問わず、誰でもなりうる身近なものであることがお分かりいただけたと思います。しかし、たかが腰痛だと軽く考えてしまうと、悪化や長期治療が必要となってしまうことがあります。その原因や治療法を知って、悪化・慢性化しないように気を付けることが重要です。痛みは我慢するものではありません。早めに専門医を受診して、快適な生活を取り戻しましょう。

編集部まとめ

相談する医師
仙腸関節痛について詳しくまとめました。仙腸関節痛を引き起こしてしまう原因をしっかり知っておくことで、発症を防ぐことも十分にできます。

日常生活における動作の1つ1つをもう一度見直して、痛みの原因を取り除いていきましょう。

また症状が出た場合は、どこにでもある腰痛だと放置せずに早めに受診し、早期診断・適切な治療を受けて慢性化・難治化しないようにしましょう。