腰痛や坐骨神経痛の予防ためのストレッチ・エクササイズのポイントを医師が解説
腰痛に悩まされている人はとても多いと聞きますが、医師に相談する機会はあまりないかもしれません。そこで「腰痛や坐骨神経痛を予防する」ために押さえておきたいストレッチ・エクササイズのポイントについて、整形外科医の田島 祐基先生(武蔵野アトラスターズ整形外科スポーツクリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
田島 祐基(武蔵野アトラスターズ整形外科スポーツクリニック)
目次 -INDEX-
腰痛や坐骨神経痛はなぜ起きる? 立ちっぱなし、座り方など原因はどこに?
編集部
まず、腰痛や坐骨神経痛が起きる原因を教えてください。
田島先生
いわゆる「腰痛」の原因はさまざまですが、立ちっぱなしや座りっぱなしなど、同じ姿勢を長時間続けた時に起こりやすいと言われています。ほかには、重いものを持ち上げた時や、前かがみ、あるいは反り腰などの姿勢を取るような動作でも腰痛を誘発します。現代は、腰痛に悩まされている人がとても多く、特に40〜50代に多いようです。
編集部
どうして40〜50代に多いのでしょうか?
田島先生
年齢的にも、ライフスタイル的にも、この年代の方は腰痛になりやすい要素が多いのです。まず、40歳を過ぎると、男女ともに徐々に筋肉が落ちていく傾向にあります。腰まわり、つまり体幹を支える筋肉が弱くなると、腰痛を引き起こしやすくなるのです。また、ライフスタイルの変化として、この年齢の方は、親御さんの介護などがはじまる場合も多く、先ほどのように、前かがみの姿勢を取ったり、力を入れて持ち上げようとしたりする場面で腰痛となる方も増えています。
編集部
どうしたら良いのでしょうか?
田島先生
ならないようにするのが一番ですが、もし腰痛になってしまった場合、とくに、急に強い痛みが出た場合は、まずは無理せず安静にしてください。しかし、何日も動かないと筋肉がさらに落ちてしまうので、痛みが落ち着いたら、無理のない範囲で少しずつストレッチやエクササイズを取り入れていくことをおすすめします。
編集部
予防と対策、どちらも大事なのですね。
田島先生
そうですね。予防としては、なるべく同じ姿勢を続けないようにするのが大事ですが、それが難しい場合は、せめて座り方を少し変えてみましょう。椅子やクッションを使って、腰まわりに負担がかからないようにしたり、腰痛予防・腰痛対策グッズを使用したりするなども良いと思います。あとは、普段から適度な運動を取り入れて、筋力を維持したいですね。
腰痛や坐骨神経痛の予防に有効な、40歳からでも自宅で始められるストレッチやエクササイズのポイントを教えて
編集部
適度な運動が大事とはいえ、ジムに通うのが難しい方も多いと思います。
田島先生
継続して通うのはなかなか難しいですよね。でも、そんなに特別なことをしなくても大丈夫です。時間のある時に1駅分を歩いてみるなどでも良いですし、自宅でできるストレッチやエクササイズもありますよ。
編集部
自宅でできるのはうれしいです。腰痛予防・対策のストレッチやエクササイズにはどんなものがありますか?
田島先生
ストレッチは、「ハムストリングス」と呼ばれる太ももの裏側の筋肉を充分に伸ばすと、動作時に反り腰になりにくいとされています。仰向けに寝た状態で片方の太ももを抱え込み、足裏を天井に近づけるイメージで少しずつ膝を伸ばしていくストレッチがおすすめです。エクササイズは、体幹の筋肉を鍛えるものがおすすめですね。ひと口に「体幹を鍛える」といっても、いわゆる「腹筋」のように、寝た状態から無理に起き上がるようなエクササイズなどは、かえって腰を痛めてしまいます。起きあがろうと力を入れるだけでも充分に効果はありますので、続けられるものを選んで行ってください。
編集部
どのように選んだら良いのでしょうか?
田島先生
いま紹介した2つでも効果は期待できると思いますが、「もう少ししっかりやってみたい」という人もいるかもしれませんね。ただ、一括りに腰痛・坐骨神経痛といっても様々な病態があり、また体力などにも個人差がありますので、一概に「この方法が良いですよ」とは言えません。書籍やインターネットなどにもたくさん紹介されていますので、参考にしてみると良いと思います。
編集部
どんなところを意識して行えば良いですか?
田島先生
ストレッチは、「どこが伸びているか」を意識しながら行うことです。そして「伸ばせば伸ばすほど効果的」というわけではないので、ご自身の身体の声を聞きながら、「痛気持ち良い」ところまで伸ばしてください。エクササイズも、辛くなるまで行う必要はありません。また、どちらも呼吸を止めずに、むしろ深く呼吸しながら行うようにしてみてください。
ぎっくり腰や椎間板ヘルニアなど、腰痛予防のストレッチやエクササイズが勧められない人とは
編集部
それなら普段あまり運動をしない人もトライできそうですね。
田島先生
はい。しかし、注意が必要なケースもあります。腰痛予防・改善のために行うストレッチやエクササイズが、かえって症状を悪化させてしまうリスクのある方もいるのです。
編集部
ストレッチやエクササイズがおすすめできないのはどんな人でしょうか?
田島先生
いわゆる「ぎっくり腰」など、急激に発症した激痛の場合や、「椎間板ヘルニア」などで、下肢(脚)のしびれや痛みなどの神経症状が出ている場合です。「全くおすすめできない」というわけではないのですが、専門家に聞きながら進めた方が良いと思います。
編集部
「とにかくやった方が良い」というわけではないのですね。
田島先生
はい。あとは、このような診断名が付いていなくても、実際にストレッチやエクササイズをやってみて、痛みや動きにくさが悪化したと感じる人は、自己判断で無理して続けず、医師の診察を受けてください。先ほども言いましたが「自分の身体の声を聞く」のが大切です。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
田島先生
以前と比べて、腰痛を訴える患者さんがとても多くなっていると感じます。日常生活に無理なく取り入れられる予防手段はたくさんありますので、できる範囲で取り入れてみてください。
編集部まとめ
「腰痛」や「坐骨神経痛」について、原因や予防法、自宅でできるストレッチやエクササイズについてお話を伺いました。「腰」という漢字は「体の要(かなめ)」を意味するそうです。しっかり整えて、痛みのない毎日を過ごしたいですね。
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