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「筋膜リリース」の方法と効果とは? 体のこりがある人は必見!

 更新日:2023/03/27

アスリートや運動を熱心におこなう人たちの間で、少し前から話題になっている「筋膜リリース」。最近では、一般人でも筋膜リリースを日常的におこない、体の不調を自力で改善している人たちがいます。一体、筋膜リリースには、どのような効果があるのでしょうか。「小石川整形外科」の丸山先生に詳しく教えていただきました。

丸山剛

監修医師
丸山 剛(小石川整形外科 院長)

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日本医科大学医学部卒業。その後、複数の病院の整形外科・リウマチ外科で経験を積む。2021年、東京都文京区に「小石川整形外科」を開院。常に患者に寄り添った診療を心がけ、地域医療に貢献している。日本整形外科学会専門医。日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会、日本股関節学会、関東整形災害外科学会の各会員。日本整形外科学会認定リハビリテーション医・スポーツ医・リウマチ医。

筋膜を解きほぐして(リリース)、しこりや癒着を取り除く

筋膜を解きほぐして、しこりや癒着を取り除く

編集部編集部

最近、「筋膜リリース」という言葉を耳にします。

丸山剛丸山先生

アスリートやスポーツ選手などが、体のコンディションを整えるために取り入れていますね。文字通り、筋膜をリリース、つまり解きほぐすことです。筋膜は強く引っ張られてしまうと、しこりや癒着を起こしてしまうのが弱点です。そのため、そのしこりや癒着を取り除くのが、「筋膜リリース」というわけです。

編集部編集部

そもそも、「筋膜」がイマイチわかりません……。

丸山剛丸山先生

簡単にいうと、筋膜はウェットスーツのように体全体の筋肉を覆っている膜のことです。また、筋膜は筋肉だけでなく、骨や内臓、血管、神経などの体を構成している組織を包み込んでいます。立体的に全身を覆っていることから、「第二の骨格」とも呼ばれています。

編集部編集部

筋膜には、どのような働きがあるのですか?

丸山剛丸山先生

筋肉を守ったり、組織同士を結合させたりする役割を担っています。また、特定の腱や筋肉を動かすときに正しく力を伝達し、動作をスムーズにおこなえるようにする働きもあります。

同じ体勢を長時間続けていると筋膜の癒着が起こる

同じ体勢を長時間続けていると筋膜の癒着が起こる

編集部編集部

先ほど、筋膜にしこりや癒着が起こるとのことでしたが?

丸山剛丸山先生

はい。例えば、悪い姿勢を長時間続けたり、無理のある動作を繰り返したりしたときに起こり得ます。そもそも筋膜は、網目上の構造をしていて、伸び縮みしながら機能を保っています。しかし、同じ姿勢を長時間続けていると、筋膜の一部が伸び切ったり、縮まったりして、癒着を起こしてしまうのです。実は、日常生活でそうした癒着は頻繁に起こっていて、うまく元に戻せず、固定されてしまうことが多いのです。また、けがや手術後にも癒着が起こりやすくなっています。

編集部編集部

そう考えると、デスクワークの人やパソコンに向かう時間が長い人は、筋膜の癒着が起こりやすそうですね。

丸山剛丸山先生

そのとおりです。とくに、新型コロナウイルスの影響から自宅で働くようになった人は、毎日通勤する必要がなくなり、運動量が減りました。さらに、ずっと家で仕事をするようになったことで、先述したように筋膜が固定化してしまいます。実際にコロナ禍では、運動不足が原因で、体調不良を感じる人も多いようです。

編集部編集部

筋膜が癒着したり、しこりになったりすると、どのような症状が起こるのですか?

丸山剛丸山先生

一番多く見られる症状は、こりや痛みです。例えば、ずっとパソコンに向かい続けた後などは、肩や腰、背中にこりやハリを感じることがあるでしょう。これは、筋膜が癒着を起こしているからです。筋膜にはたくさんの感覚受容器があるため、筋膜に異常が発生すると痛みが出てきてしまいます。

編集部編集部

癒着やしこりは、放置していてもいいのでしょうか?

丸山剛丸山先生

筋膜の変化が修復されないまま放置されると、変形した筋膜はほかの筋膜を引っ張りこんで、癒着や歪みを広げてしまいます。ちょうど一部の筋膜にピンが刺さったような感じで、伸びなくなってしまうのです。伸縮性が低下した筋膜に包まれている筋肉は、可動域が狭くなって硬くなり、柔軟性や運動パフォーマンスの低下につながります。その結果、生活に支障をきたしてしまうことに加えて、リンパ液の還流や血液循環の障害も引き起こしかねません。

筋膜リリースは自分でもできる?

筋膜リリースは自分でもできる?

編集部編集部

筋膜の癒着やしこりを改善して不調を解消するのが、「筋膜リリース」なのですね。

丸山剛丸山先生

そうです。肩こりや腰痛などを感じた場合、マッサージや温熱療法をおこなう人も多いのではないでしょうか。たしかに、一時的な効果はありますが、筋膜の癒着を改善することはできません。すぐに症状が出てきてしまうでしょう。そのため、筋膜の癒着やしこりを改善するには、「リリースする(解きほぐす)」という考えが必要なのです。

編集部編集部

具体的には、どうやるのでしょうか?

丸山剛丸山先生

自分で痛みのある部分をマッサージしたり、ほぐしたりして癒着をある程度は改善することができます。しかし、凝り固まった癒着は理学療法士や整形外科医などによる治療を受けるのがおすすめです。筋膜をリリースする方法は、超音波で画像を確認しながらピンポイントで薬剤を注入して癒着を剥がす方法や、ローラーなどで物理的に圧迫・刺激を与えて筋膜の乱れを取り除く方法など、実に多彩です。

編集部編集部

どのような効果が期待できますか?

丸山剛丸山先生

筋膜の癒着やしこりによって生じていた痛みやしびれなどの改善が期待できます。また、慢性的な頑固な痛みからも解放され、生活の質も上がるのではないでしょうか。

編集部編集部

治療後に気をつけることはありますか?

丸山剛丸山先生

癒着やしこりは、生活習慣や姿勢によっては再発する可能性があるので、根本的に治療するには適切なリハビリテーション指導が必要です。理学療法士による運動指導などを受けると、柔軟性も回復して正しい姿勢や動作を楽におこなえるようになるでしょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

丸山剛丸山先生

普段から肩こりや腰痛に悩んでいる人のほとんどは、運動不足に陥っています。デスクワークが多い人は、意識的に休憩の時間を取って、ストレッチや軽い運動をするよう心がけましょう。また、肩や腰に痛みがあったとしても、痛みが悪化しない程度に「動かす」ことは大切です。痛いからといって動かさずにいると、ますます痛みがひどくなってしまいます。1~2時間に1回ほどストレッチをするといった、簡単な運動をする習慣をつけるようにしましょう。

編集部まとめ

筋膜リリースは、整形外科医や理学療法士に施してもらう以外にも、マッサージやローラーなどの器具を使って自分でおこなうこともできます。お風呂上がりやテレビ鑑賞中などの、ちょっとした時間を上手に使って、普段から筋膜をほぐしてあげましょう。

医院情報

小石川整形外科

小石川整形外科
所在地 〒112-0002 東京都文京区小石川1丁目5番1号 パークコート文京小石川 ザ タワー3階
アクセス 都営三田線・大江戸線「春日駅」 徒歩1分
東京メトロ丸ノ内線・南北線「後楽園駅」 徒歩3分
JR総武線「水道橋駅」徒歩12分
診療科目 整形外科、リハビリテーション科、リウマチ科

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