「鉄分の多い食べ物」はご存知ですか?過剰摂取すると現れる症状も解説!

鉄分の多い食べ物とは?Medical DOC監修医が鉄分の多い食べ物・一日の摂取量・効果・不足すると現れる症状・過剰摂取すると現れる症状・効率的な摂取方法などを解説します。

監修管理栄養士:
近藤 志保(管理栄養士)
目次 -INDEX-
「鉄分」とは?
鉄分は体に不可欠なミネラルのひとつで、成人の体には3〜4gの鉄分が存在しています。
血液中のヘモグロビンを作り、酸素を体中に運ぶ役割を果たします。また、エネルギーを生み出すためにも使われています。そのため、鉄分が不足すると、疲れやすくなったり
、顔色が悪くなったり、集中力が落ちたりすることがあります。妊娠期や成長期では鉄分の需要が増加し、不足しやすいため意識的な摂取が必要です。
【男性】鉄分の一日の摂取量
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、男性の鉄分の推奨量は以下のように定められています。
18~29歳、50~64歳、65~74歳:1日7.0mg
30~49歳:1日7.5mg
75歳以上:1日6.5mg
特に成長期の若年男性(12〜14歳)では、骨格や筋肉の発達に伴い必要量が増加し推奨量は、9.0mg/日とされています。
【女性】鉄分の一日の摂取量
〇18歳~29歳の女性
推奨量は 月経なし6.0mg/日 月経あり10.0mg/日
月経による鉄の損失が多いため、鉄欠乏性貧血の予防が重要です。
〇授乳中の女性
推奨量は +2.0mg/日。母乳に必要な鉄分を補うため、適切な摂取が求められます。
【妊娠中の女性】鉄分の一日の摂取量
〇妊娠中の女性
妊娠初期 +2.5mg/日
妊娠中期以降 +8.5mg/日
胎児の成長や母体の鉄分貯蔵を確保するため、必要量が増加します。
鉄分の種類
鉄は主にヘム鉄(動物性食品に含まれる)と非ヘム鉄(植物性食品に含まれる)に分類され、吸収率はヘム鉄の方が高いです。また、タンニン(お茶やコーヒー)やフィチン酸(穀物)などの成分は鉄の吸収を妨げることが知られています。
ヘム鉄
ヘム鉄は、貧血予防や酸素運搬能力の向上に特に効果的な鉄分の一種です。鉄欠乏性貧血の治療や予防においては、動物性食品である牛肉、豚肉、鶏肉のほか、レバーや魚介類(カツオ、マグロなど)の摂取が重要な役割を果たします。ヘム鉄は、タンニン(お茶やコーヒー)やフィチン酸(穀物など)といった成分による吸収阻害の影響を受けにくいため、効率的に体内へ吸収される点が特徴です。このため、食事からの鉄分補給を効果的に行うことができます。
非ヘム鉄
非ヘム鉄は、主に植物性食品(ほうれん草、大豆、穀物など)や一部の動物性食品(卵など)に含まれる鉄です。非ヘム鉄の吸収率はヘム鉄よりも低く、ビタミンCや動物性タンパク質と一緒に摂取することで吸収率が向上します。
鉄分の効果
酸素を運ぶ大切な役割
鉄分は赤血球のヘモグロビンの材料で、肺で取り込んだ酸素を全身の細胞に届ける働きをします。不足すると酸素がうまく運ばれず、疲労感や息切れが起こります。
疲れにくい体を作る
鉄はエネルギーを生み出す酵素の働きにも関与しています。不足すると体のエネルギー代謝が低下し、集中力が落ちたり、倦怠感が続いたりすることがあります。
免疫力を高める
鉄分は免疫細胞の機能をサポートします。鉄不足は免疫力低下を引き起こし、感染症リスクを増加させることが報告されています。
認知機能の向上
鉄は脳の発達にとって重要であり、特に幼少期においては脳の成長と神経伝達に欠かせない栄養素です。脳への酸素供給を助け、集中力や認知機能をサポートします。
妊娠中および成長期に重要
〇妊婦にとって鉄は特に重要です。鉄は胎児の血液や臓器形成に必要なため、妊娠中は血液量が増加し、赤ちゃんへの酸素供給のために鉄の必要量が増加します。鉄不足は妊婦自身の貧血や早産、低体重児のリスクを高める可能性があります。
〇成長期では、骨や筋肉、脳の発達に必要で、特に思春期の急成長に伴い需要が増えます。
鉄はヘモグロビンの材料となり、酸素を体中に運ぶ役割を果たしますが、成長期には血液量が増えるため、鉄分が必要です。
鉄分の多い食品
レバー
レバーは鉄分補給に最適な食品であり、日常的な食事に取り入れやすい食材です。ヘム鉄を多く含むため、他の食品成分(タンニンやフィチン酸)の影響を受けにくく、効率的に吸収されます。例えば、ほうれん草やニラと一緒に炒めたり、トマト煮にすることで、付け合わせの野菜に含まれる非ヘム鉄の吸収率を向上させる効果も期待できます。
魚介類(カツオ、マグロ、アサリ、牡蠣など)
魚介類は味付けや調理の幅が広く、日々の食卓で鉄分を効率的に補えます。
アサリはスープや炊き込みご飯にすると汁に溶けた鉄分も摂取でき、牡蠣は軽く焼くか蒸してレモンをかけると、吸収率が向上します。
納豆・豆乳など大豆製品
大豆製品は、植物性食品の中でも鉄分が豊富で、日常的に取り入れやすい食材です。
きな粉をヨーグルトや牛乳に混ぜたり、納豆ご飯や豆腐、高野豆腐の味噌汁など手軽に摂取可能で、忙しい日常でも取り入れやすい食品です。
葉物野菜(小松菜・春菊・ほうれん草)
葉物野菜は加熱することでかさが減り、一度に多くの量を摂取でき、茹でて冷凍保存しておくと便利です。
小松菜とバナナのスムージーにビタミンCを含む柑橘類(レモンなど)をプラスする、
春菊と豚肉の炒め物やほうれん草入りカレーで動物性食品と組み合わせて吸収率アップさせるなど、簡単に日常の食事に取り入れられます。
海藻類(ひじき、わかめ、昆布など)
海藻類に含まれる鉄は吸収率が低いため、ひじきの煮物にピーマンを加える、わかめサラダにトマトを加えるなど、ビタミンCを豊富に含む食品と一緒に摂ると効果的です。さらに、青のりを卵焼きに加えるなど、動物性たんぱく質(肉や魚、卵)と一緒に摂取すると、鉄分の吸収が向上します。
鉄分が不足すると現れる症状
貧血症状
疲労感、息切れ、顔面蒼白などの症状が特徴で、めまいや動悸を感じた場合は、座るか横になり、足を高く上げて血流を促し安静にし、脱水を防ぐため水分補給を行いましょう。
食事面では、吸収されやすいヘム鉄を含む食品(レバー、赤身肉、魚)を摂取し、非ヘム鉄では、吸収を助けるビタミンCを含む食品(柑橘類、ピーマン、いちご)を一緒に摂ると良いでしょう。内科を受診し、月経過多や妊娠中などの場合は産婦人科を受診しましょう。
神経・認知機能、免疫力の低下
鉄は脳内の神経伝達物質の合成に必要で、不足すると認知機能が低下する可能性があります。不安感や気分の変動が現れる場合もあり、免疫細胞の機能低下による感染症のリスクが増加します。
内科、神経内科を受診しましょう。
爪や皮膚の変化
スプーン状爪(爪が反り返る)、乾燥肌や脱毛などの症状。爪には保湿用クリームを塗って保護したり、鉄分が多い食品のヘム鉄(赤身肉、レバー、貝類)を積極的に摂取し、非ヘム鉄のほうれん草や豆類とビタミンCを一緒に摂ると吸収が促進します。皮膚科、内科、婦人科(月経過多が原因で鉄不足が生じている可能性がある場合)を受診しましょう。
鉄分を過剰摂取すると現れる症状
通常の食事による鉄分の過剰摂取はほとんど起こりませんが、サプリメントなどで大量に摂取した場合には過剰症を引き起こす可能性があります。日本人の食事摂取基準(2025年版)では、以下のように注意が呼びかけられています。
「鉄欠乏性貧血の治療など特別な場合を除き、推奨量を大幅に超える鉄の補給は合理的ではなく、健康障害を引き起こす可能性があります。また、鉄欠乏でない人が鉄分を追加で摂取しても、貧血の予防には効果がありません。鉄欠乏や鉄欠乏性貧血の補給は医師の指示のもとで行うべきであり、個人の判断でサプリメントなどを利用して補給することは控えるべきです。」
このように、必要以上の鉄分摂取には慎重であることが求められます。
胃腸の不調
鉄分の過剰摂取による吐き気や腹痛などの症状が出た場合、鉄サプリを中止し、食事からの鉄分も控えめにします。水分補給や白湯で胃腸を休め、消化に良い食事(おかゆやスープ)を摂りましょう。症状が続く場合は内科や消化器科を受診してください。
肝臓への負担
肝臓は鉄を貯蔵する主要な臓器で、鉄分の過剰摂取により黄疸や腹痛、疲労、食欲不振が現れることがあります。鉄サプリを中止し、水分補給と休息を心がけ、症状が悪化する場合は内科や肝臓専門医を受診してください。
酸化ストレスによる細胞障害
鉄分が過剰になると、フリーラジカルが生成され、酸化ストレスを引き起こすことがあります。この酸化ストレスは、細胞や組織にダメージを与え、発がんリスクが上昇することが報告されています。抗酸化物質( ビタミンCやビタミンEなど)を含む食品を摂ることで、フリーラジカルのダメージを減らすことができます。症状が出た場合は内科を受診してください。
鉄分の効率的な摂取方法
ビタミンC、クエン酸を含む食品
ビタミンCを含む食品(オレンジ、キウイ、ブロッコリー、トマトなど)はデザートやサラダ、スープに、クエン酸(レモン、酢など)はドレッシングや和え物に使うと、鉄の吸収効率を簡単に高められます。
動物性たんぱく質
動物性たんぱく質(鶏肉、牛肉、魚、卵)は、非ヘム鉄の吸収を高める成分が含まれています。また、鉄以外にもビタミンB12(レバー、魚介類、チーズなど)や葉酸(レバーなど)が含まれ、これらは赤血球を作るうえで必要な栄養素です。鉄との組み合わせにより、血液の酸素運搬能力の向上が期待されます。
鉄分の効果を高める摂取タイミング
鉄分の吸収効率は朝食後から昼食後が高く、サプリメントは食前が効果的です。ただし、空腹時の摂取は吐き気や胃もたれを起こすことがあるため、使用は医師に相談しましょう。
「鉄分の食べ物」についてよくある質問
ここまで鉄分の食べ物などを紹介しました。ここでは「鉄分の食べ物」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
鉄分の多い果物について教えてください。
近藤 志保
果物の水分を蒸発させて作るドライフルーツは、レーズン2.3mg、プルーン1.1mg、乾燥なつめ1.5mgと生の果物よりも鉄分含有量が多く、手軽に摂取できるので鉄分不足が気になる方にはおすすめです。ただ、糖質も高いので食べ過ぎには注意が必要です。
編集部まとめ
鉄分は体に不可欠な栄養素で、酸素の運搬やエネルギー生産に重要な役割を果たします。不足すると、貧血や疲労感、免疫力の低下が起こることがあります。特に妊娠中や成長期は鉄分の需要が増加するため、意識的に摂取することが必要です。
「鉄分」と関連する病気
「鉄分」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
- 月経異常
内科の病気
「鉄分」と関連する症状
「鉄分」と関連している、似ている症状は14個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
参考文献