「心筋梗塞」を疑ったら病院到着”何分以内に検査”が行われる?前兆症状も医師が解説!

心筋梗塞と聞くと、突然の激しい胸の痛みとともに命を落とす危険がある、恐ろしい病気というイメージを持つ方がいます。
実際に、発症してからの対応が遅れると命に関わるだけでなく、その後の生活の質を大きく左右するでしょう。
発症後どのような検査を行い、どのような前兆に気をつけるべきかを知っておくことは、早期発見と適切な治療介入への第一歩です。
この記事では、心筋梗塞が疑われる際に行われる各種検査の詳細から見逃してはいけない前兆症状、そして治療方法まで解説します。

監修医師:
太田 光彦(おおた循環器内科エコークリニック)
1994年3月 芦屋市立潮見小学校 卒業
2000年3月 私立高槻高等学校 卒業
2006年3月 神戸大学医学部医学科 卒業
2008年3月 西神戸医療センター 初期研修 修了
2008年4月 西神戸医療センター 循環器科
2011年4月 榊原記念病院 循環器内科 専修医
2014年4月 同病院 主任専修医
2015年5月 神戸市立医療センター中央市民病院 副医長 心エコー室長
2019年4月 虎の門病院 循環器センター内科 医長 心エコー室長
2021年11月 虎の門病院 弁膜症外来 開設
2025年4月 おおた循環器内科エコークリニック 開設 【資格・所属学会】
日本循環器学会 循環器専門医
日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
日本超音波医学会 超音波専門医・超音波指導医
日本心エコー図学会 SHD心エコー図認証医
日本心臓弁膜症学会
厚生労働省 臨床研修指導医
東京都 難病指定医(循環器系疾患)
順天堂大学医学部附属順天堂医院 心臓血管外科 非常勤助手
虎の門病院 循環器センター内科 非常勤医(水曜 エコー技術指導)
目次 -INDEX-
心筋梗塞とは
心筋梗塞とは、心臓の筋肉に酸素や栄養を運ぶための冠動脈が、閉塞してしまう病気です。血管が閉塞を起こすと、心臓の細胞が壊死に陥ります。心筋梗塞を起こす主な原因は、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病による動脈硬化の進行です。
心筋梗塞の検査方法
心筋梗塞の疑いがある場合、病院では迅速に検査を開始します。発症からの経過時間を把握し、心筋の損傷を抑えるための適切な治療方法を選択することが目的です。心臓の異変をいち早く察知するために、病院到着から10分以内に心電図検査や血液検査などを進めることが推奨されています。検査によって、心臓のどの部分に、どの程度のダメージが及んでいるかを多角的に判断します。
心電図検査
心電図検査は、心臓の電気的な動きを記録するもので、診断を確定させるために欠かせない検査です。急性心筋梗塞においては、心電図の波形でSTとよばれる箇所が上昇することが判断基準です。
血液検査
血液検査では、心筋傷害マーカーとよばれる成分の数値を調べます。特に、心筋トロポニンTや心筋トロポニンI、CK-MBといった成分の測定が重要です。心筋トロポニンTは発症から2〜3時間という早い段階で上昇し始め、その後も長期間にわたって高い値を維持します。
心筋トロポニンIも使用される頻度が高く、特に超急性期では感度が高いとされ、よく用いられます。血液検査の結果は、心筋がどの程度壊死しているかという、重症度を把握するためにも欠かせない情報です。
心臓超音波検査
心臓超音波検査は、エコーを用いて心臓の形や動きを観察する検査です。心筋の一部が正常に動かなくなる壁運動異常を確認し、心筋梗塞の範囲を特定することが重要です。また、心臓のポンプ機能がどの程度維持されているかを評価するほか、心筋梗塞に伴って起こる深刻な合併症の有無を確認する際にも役立ちます。
冠動脈造影検査
冠動脈造影検査は、心臓の血管である冠動脈が、どの場所で、どの程度狭窄したり閉塞したりしているかを確認する検査です。得られた情報をもとに、カテーテル治療で血管を広げるべきか冠動脈バイパス手術を検討すべきかといった、その後の治療方針を決定します。
胸部レントゲン検査
胸部レントゲン検査は、心臓の大きさや肺の状態を客観的に評価するために行います。心筋梗塞によって心臓の働きが低下すると、心臓が拡大したり、肺に水が溜まったりする肺うっ血を引き起こすことが少なくありません。全身の容体を把握し、治療の経過を観察するためには欠かせない検査の一つです。
心筋梗塞を疑われる前兆症状
心筋梗塞は、発症の数日から数週間前に、何らかの前兆を感じる方が少なくありません。これらの兆候は不安定狭心症とよばれる状態で、血管が完全に詰まる一歩手前のサインです。早期に異変に気付き、適切な処置を行うことで心筋の壊死を未然に防ぎ、予後をよくするために重要です。
ここでは、見逃してはいけない代表的な前兆症状について解説します。
胸の圧迫感や痛み
心筋梗塞の兆候として代表的なものが胸痛です。胸の中央付近が締め付けられるような感覚(絞扼感)や焼けるような痛み(灼熱感)、あるいは重いものが乗っているような圧迫感として現れます。これらの痛みは20分以上持続することが特徴で、安静にしていても治まらない場合は、すでに心筋梗塞へと移行している可能性が少なくありません。
注意すべき点として、高齢の方や糖尿病の持病がある方は神経の働きが低下しているために、胸の痛みを明確に感じない無症候性心筋虚血を起こしていることもあります。後に、陳旧性心筋梗塞(OMI)として発見することも珍しくありません。痛みがなくても、呼吸困難感や冷や汗といったほかの症状がみられる場合は、速やかな確認が必要です。
激しい頭痛
心筋梗塞において、胸部以外の場所に痛みが生じる現象を放散痛とよびます。左肩や左腕、顎などに痛みが出ることは珍しくありません。場合によっては、首から後頭部にかけての激しい痛み、顔面の違和感として現れることもあります。これまでに経験したことのないような不自然な痛みが上半身に広がる場合は、単なる肩こりや頭痛と自己判断せず、心臓の異変を疑う視点を持つことが大切です。
嘔気や嘔吐
心筋梗塞に伴う吐き気は、冷や汗を伴うことが大きな特徴です。単なる胃腸の不調であれば胸の重苦しさや冷や汗を伴うことは稀ですが、心筋梗塞の場合はこれらの症状が同時に現れる傾向にあります。突然激しい吐き気に襲われ、同時に息苦しさや冷や汗がみられる場合は、一刻を争う事態であると認識し速やかに医療機関への連絡を行いましょう。
心筋梗塞の治療方法
心筋梗塞の治療における大きな目的は、一刻も早く詰まった血管を開通させ、心筋のダメージをできるだけ抑えることです。病院に到着してから治療開始までの時間をいかに短縮できるかが、その後の経過を左右する重要な要素となるでしょう。初期対応としては、MONAとよばれる処置が行われます。
・モルヒネ(M)
・酸素投与(O)
・血管を広げる硝酸薬(N)
・血栓を防ぐアスピリン(A)
の頭文字をとったもので、再灌流療法を行うための準備として重要です。
血栓溶解療法
血栓溶解療法は、血管を塞いでいる血栓を薬で溶かす治療方法です。血栓溶解剤を点滴にて投与し、血流の再開を図ります。カテーテル治療が可能な病院への搬送に時間がかかる場合や、発症から間もない段階で速やかな処置が必要な場合に、検討されます。
ただし、現在の国内の医療現場ではカテーテル治療が選択されることが多く、実際に血栓溶解療法が行われるケースはほとんどありません。
カテーテル治療
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)はカテーテル治療ともよばれる治療方法です。手首や足の付け根から細い管を差し込み、血管の詰まった部分をバルーンで膨らませたり、網目状のステントを留置したりして血流を確保します。ガイドラインでは病院到着から90分以内に処置を完了させることが推奨されており、心筋の壊死が進む前に血流を再開させることで心機能の低下を抑え、良好な経過を期待できるようになります。
冠動脈バイパス手術
冠動脈バイパス手術は、詰まった血管の先に新しい血液の通り道(バイパス)を作る手術です。足の静脈や胸の動脈など、患者さん自身の健康な血管の一部(グラフト)を使用し、バイパスを作ります。カテーテル治療では対応が困難な病変や複数の血管に広範囲の狭窄、左冠動脈主幹部に狭窄病変がある場合は、バイパス手術を行うことが推奨されています。心筋梗塞の検査についてよくある質問
ここまで心筋梗塞の検査から治療方法まで紹介しました。ここでは「心筋梗塞の検査」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
人間ドッグで行う検査で心筋梗塞へのリスクはわかりますか?
人間ドックで実施される検査は、心筋梗塞を引き起こすリスク要因を把握するためにも有効です。血圧測定や血液検査による脂質や血糖値の確認を通じて、動脈硬化の進行に影響を与える生活習慣病の有無を適切に評価できます。
検査を受ける場合の流れを教えてください。
激しい胸の痛みや呼吸困難などの症状があり、救急車で搬送された場合や緊急受診をした場合は、迅速な対応を取ります。病院へ到着してから10分以内に心電図検査や血液検査を実施し、診断を確定させることが目標です。血液検査では、心筋のダメージを示す心筋トロポニンTなどのマーカーを測定し、心電図の波形変化を確認したうえで総合的に判断します。
急性心筋梗塞と診断されると、緊急のカテーテル治療(PCI)などの再灌流療法へと移行します。検査から治療開始までの時間を短くすることが大切です。
編集部まとめ
ここまで、心筋梗塞の検査から治療の方法と流れを解説しました。心電図におけるSTの上昇や血液中の心筋トロポニンTといった心筋傷害マーカーの数値を詳しく調べることで、心臓のダメージの程度や病変の場所を客観的に評価します。
心筋梗塞の治療には、カテーテル治療や冠動脈バイパス手術、さらには血栓溶解療法といった選択肢があります。
検診や人間ドックなどを活用して自身の血管の状態やリスクを把握し、生活習慣の改善に取り組むことも有効な手段です。
ご自身またはご家族で気になる症状や異変があるという方は、一人で悩まずなるべく早く医療機関に相談するとよいでしょう。
心筋梗塞と関連する病気
「心筋梗塞」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 高血圧
- 脂質異常症
- 糖尿病
- 慢性腎臓病(CKD)
- メタボリックシンドローム
心筋梗塞に関連する病気には以上のような種類があるため、定期的な検診と生活習慣の改善に努め、早期発見と早期治療を心がけましょう。
心筋梗塞と関連する症状
「心筋梗塞」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 激しい胸の痛み(絞扼感や圧迫感)が20分以上続く
- 左肩や左腕の痺れ
- 冷や汗
- 吐き気や嘔吐
- 呼吸困難や息切れ
心筋梗塞に関連した症状は、心臓以外の場所で痛みなどが起こります。これらの症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。




