目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. コーヒーで脂肪肝を抑制! 医師がコーヒーの健康効果や正しい飲み方を解説

コーヒーで脂肪肝を抑制! 医師がコーヒーの健康効果や正しい飲み方を解説

 更新日:2023/07/13
コーヒーで脂肪肝を抑制! 医師がコーヒーの健康効果や正しい飲み方を解説

コーヒーには様々な健康効果があり、近年の研究では脂肪肝を抑制することがわかっています。一体なぜ、コーヒーが脂肪肝の抑制に役立つのでしょうか。また、1日に何杯コーヒーを飲めば効果が期待できるのかも気になるところです。今回はコーヒーと脂肪肝の関係性について、「青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック」の金沢先生に解説していただきました。

金沢 憲由

監修医師
金沢 憲由(青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック)

プロフィールをもっと見る
秋田大学医学部卒業。その後、秋田組合総合病院(現・秋田厚生医療センター)、秋田大学医学部附属病院、横浜労災病院で経験を積む。2023年、神奈川県横浜市に「青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック」を開院。日本消化器病学会専門医・関東支部評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・関東支部評議員、日本肝臓学会専門医、日本内科学会専門医、日本消化管学会専門医。難病指定医。

肝臓に中性脂肪がたまる脂肪肝とは? 医師が脂肪肝の主な原因・症状・受診の目安・治療法を解説

肝臓に中性脂肪がたまる脂肪肝とは? 医師が脂肪肝の主な原因・症状・受診の目安・治療法を解説

編集部編集部

脂肪肝とはなんですか?

金沢 憲由先生金沢先生

簡単に言えば、肝臓に脂肪が溜まって、フォアグラのような状態になることです。エネルギーを摂取しすぎると、余分なエネルギーが中性脂肪に変換され、肝臓に蓄積します。この脂肪が肝臓の5%以上を占めるようになると脂肪肝とされますが、脂肪蓄積が30%以上になるまでは画像上ではわからないこともあります。現在、日本では成人の3人に1人が脂肪肝を罹患(りかん)していると言われています。

編集部編集部

脂肪肝の原因はなんですか?

金沢 憲由先生金沢先生

主な原因として、肥満やアルコールの飲み過ぎが挙げられます。つまり、脂肪肝は必ずしもアルコールの飲み過ぎと関係があるわけではなく、アルコール性と非アルコール性の2種類があります。そのうち、非アルコール性脂肪性肝疾患は 「NAFLD(ナッフルディー):Non-Alcoholic Fatty Liver Disease」と呼ばれ、日本人男性の30~40%、女性の10~20%程度がNAFLDを発症しているとされています。

編集部編集部

脂肪肝というと「アルコールの飲み過ぎ」というイメージがありますが、アルコールと関係ない脂肪肝もあるのですね。

金沢 憲由先生金沢先生

はい。従来はアルコール性の脂肪肝ばかり注目されていましたが、ここ最近では非アルコール性の脂肪肝が注目を集めています。実際、健康診断で健康な人を対象に統計をとってみると、NAFLDに当てはまる人が多いのです。ご自身も「それほどお酒を飲んでいないのに、なぜ自分が脂肪肝に?」と驚かれるようです。

編集部編集部

ほかにも、脂肪肝の原因はありますか?

金沢 憲由先生金沢先生

主に、以下のようなものとの関連が考えられています。

・メタボリックシンドローム
・生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧症)
・腸内細菌叢の変化
・サルコペニア
・遺伝的要因

編集部編集部

脂肪肝を放置すると、どのようなリスクがあるのですか?

金沢 憲由先生金沢先生

放置すると肝硬変に進行し、全身のむくみ、腹水、意識障害、胃や食道の静脈瘤など様々な症状を引き起こす場合があります。また、肝硬変は肝がんのリスクにもなるため、注意が必要です。

編集部編集部

脂肪肝ががんに進行することもあるのですか?

金沢 憲由先生金沢先生

はい。脂肪肝の人全員が肝硬変や肝がんへ進行するわけではありませんが、一部の人は進行してしまいます。例えばNAFLDには、何も肝障害を起こさない良性のものと、進行性の肝障害を起こすものがあり、進行性の肝障害を「非アルコール性脂肪肝炎/NASH(ナッシュ):Non-Alcoholic SteatoHepatitis」と言います。NASHは徐々に肝硬変へ進行し、そこからがん化するリスクもあります。

編集部編集部

非アルコール性でも、がん化するリスクがあるのですね。

金沢 憲由先生金沢先生

そうですね。以前は肝がんと言えばB型肝炎やC型肝炎に由来するものが多かったのですが、現在ではNASHから起きるケースが目立っています。

「脂肪肝はコーヒーで抑制できる」理由と研究結果を医師が解説 コーヒーの健康効果で脂肪肝以外にもどんな病気が予防できる?

「脂肪肝はコーヒーで抑制できる」理由と研究結果を医師が解説 コーヒーの健康効果で脂肪肝以外にもどんな病気が予防できる?

編集部編集部

最近、「コーヒーで肝硬変を抑制できる」とメディアなどで目にします。この説は本当なのでしょうか?

金沢 憲由先生金沢先生

近年の研究では、「コーヒーの摂取が非アルコール性の脂肪肝の発症と進行を防ぐ効果が期待できる」ということが報告されています。つまり、「コーヒーは肝硬変を抑制できる」とは言いすぎですが、少なくとも一定の効果は期待できます。

編集部編集部

なぜ、コーヒーが脂肪肝に効果的なのですか?

金沢 憲由先生金沢先生

コーヒーと脂肪肝の間には、様々な関係があることが研究で判明しています。少し難しい話になりますが、その1つとして肝臓に存在する「肝星細胞」と呼ばれる細胞の作用を阻害することが挙げられています。この細胞の作用とは肝臓を線維化させ、肝硬変に導くものです。この作用をコーヒーに含まれるカフェインが遮断することで肝障害の悪化を防ぐというわけです。詳細は省きますが、面白いことにノンカフェインのコーヒーも非アルコール性脂肪肝に効果的であるとする報告もあります。

編集部編集部

脂肪肝のほかにも、コーヒーが予防に役立つ疾患はありますか?

金沢 憲由先生金沢先生

そのほかにも、コーヒーの健康効果については様々な研究が進められています。例えば、コーヒーは心筋梗塞、心不全、脳卒中などの心血管疾患の予防にも効果が期待できることがわかっています。これもカフェインの有無に関わらず効果があるようです。

編集部編集部

コーヒーをたくさん飲めば、肝臓がんを予防できるということでしょうか?

金沢 憲由先生金沢先生

いいえ。コーヒーを多く飲むと肝がんの発生率が低くなるかどうかについては、まだ証明されていません。ただし、アメリカやイタリアの研究でも肝障害を改善したり、肝硬変を予防したりする効果が証明されており、肝臓に対するコーヒーの健康効果はますます注目を集めています。

脂肪肝改善に知っておきたいコーヒーの正しい飲み方と注意点 1日どれくらい? インスタントコーヒーでもいい? 牛乳や豆乳と一緒に飲むと効果的?

脂肪肝改善に知っておきたいコーヒーの正しい飲み方と注意点 1日どれくらい? インスタントコーヒーでもいい? 牛乳や豆乳と一緒に飲むと効果的?

編集部編集部

脂肪肝の改善のためには、毎日どれくらいコーヒーを飲むのがいいのでしょうか?

金沢 憲由先生金沢先生

研究によると、「毎日2~3杯のコーヒーを飲むと、2型糖尿病による脂肪肝の予防に効果が期待できる」ということがわかっています。カフェインの量で換算すると、1日に300mgくらいが適量です。

編集部編集部

インスタントコーヒーでもいいのですか?

金沢 憲由先生金沢先生

欧州心臓病学会(ESC)の発表によると、「豆を挽いていれたコーヒーと同様、インスタントコーヒーでも心血管の予防に効果がみられた」とされています。さらに、カフェインの入っていないコーヒーでも同じような効果が得られたそうです。

編集部編集部

コーヒーを飲む際の注意点はありますか? 牛乳や豆乳と混ぜてもいいのですか?

金沢 憲由先生金沢先生

牛乳には胃の粘膜を保護する働きがありますし、また、牛乳に含まれるタンパク質は肝臓の働きを助けることがあります。最近の研究により、「コーヒーに牛乳を入れると抗炎症効果が高まる」ということもわかっていますから、ブラックコーヒーが苦手な人は牛乳を混ぜてもいいと思います。また、大豆も脂肪肝を抑制しますから、豆乳とコーヒーを混ぜても効果が期待できるかもしれません。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

金沢 憲由先生金沢先生

肝臓の病気は、ほとんど無症状で進行します。そのため、健康診断で肝臓の数値が悪くても、「気になる症状がないから」という理由で放置している人も多いのではないでしょうか。しかし、症状がなくても確実に病気が進行していることもあります。もし、健康診断で肝臓の数値が悪かった場合には放置せず、必ず専門医を受診してください。たしかに、サプリメントを常用していたり、風邪薬を服用した後に健康診断を受けたりした場合は、肝臓の数値が悪く出ることもあります。しかし、そのような場合でも必ず専門医の診察を受けて、「治療すべき問題がある異常値なのか」それとも「気にしなくてもいい異常値なのか」を判断してもらいましょう。

編集部まとめ

肝臓は無言の臓器と呼ばれており、全く症状がないまま病気が進んでいることもあります。「自分は太っていないし、お酒も飲まないから大丈夫」と過信することなく、健康診断で異常値が指摘された場合には、必ず一度は専門医の診察を受けましょう。

医院情報

青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック

青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック
所在地 〒227-0062 神奈川県横浜市青葉区青葉台2丁目2-2 キテラプラザ青葉台3階
アクセス 田園都市線「青葉台駅」 徒歩3分
診療科目 消化器内科、肝臓内科、内科

この記事の監修医師