「コーヒーは肝臓に悪い飲み物」これって実際どうなの? 肝臓専門医が解説
健康診断でγ-GTPなどの肝機能異常や脂肪肝を医者に注意されたことがある人の中には、コーヒーは肝臓に悪い飲み物なのか、それとも肝臓に良い飲み物なのか気になる人もいるのではないでしょうか。肝機能障害がある人はコーヒーを控えるべきなのか、それとも飲んでも大丈夫なのか、「SUGAR LLC」の佐藤先生に回答してもらいました。
監修医師:
佐藤 将人(SUGAR LLC)
コーヒーは肝機能障害や肝がんのリスクを下げる
編集部
ズバリ、コーヒーは肝臓に悪い飲み物なのでしょうか?
佐藤先生
結論から言えば、「コーヒーは肝臓に悪い飲み物ではなく、肝臓に良い飲み物である」と多くの研究からわかっています。
編集部
具体的に、コーヒーを飲むとどう肝臓に良いのでしょうか?
佐藤先生
多くの研究の結果から、「コーヒーを1日に2~4杯(1杯100ml程度)飲む人は、コーヒーを飲まない人と比べて、肝臓が硬くなって機能が落ちてしまう病気である肝硬変のリスクが84%低くなる」と報告されています。また、「肝臓がんのリスクも最大で64%程度低くなる」こともわかっています。(※1・2)さらに、日本人を対象にした研究でも「コーヒーをほとんど飲まない人と比較して、コーヒーを毎日飲む人は肝がんの発症のリスクが51%低かった」ということが報告されています。(※3)
編集部
すでに肝機能障害や脂肪肝などの肝臓の病気を抱えている人にとっても、コーヒーは肝臓に良い飲み物でしょうか?
佐藤先生
はい。肝機能障害や脂肪肝などの人にとっても、コーヒーは健康に良い飲み物です。肝臓の病気がある人がコーヒーを飲むことで、病気の進行を遅らせたり、早くに亡くなってしまうリスクを下げたりすることができると言われています。
カフェインではなくコーヒーに含まれる「クロロゲン」が肝臓に良い
編集部
ところで、なぜコーヒーは肝臓に良いのでしょうか?
佐藤先生
どうしてコーヒーが肝臓に良いのかという理由については、まだはっきりとはわかっていません。しかし、現時点では、コーヒーに含まれるポリフェノールの一種である「クロロゲン」という抗酸化物質が肝臓の良い影響を与えると言われています。(※1・2)
編集部
コーヒーに含まれるクロロゲンという物質が肝臓に良いのですね。コーヒーといえばカフェインが浮かんできますが、カフェインが肝臓に良いわけではないのですか?
佐藤先生
コーヒーに含まれるカフェインが肝臓に良い影響を与えているかどうかは不明です。もしかしたらコーヒーに含まれるカフェインも肝臓に良い成分として作用している可能性もあるかもしれませんが、現時点でカフェインと肝臓との関係についての結論は出ていません。
編集部
コーヒー以外に、緑茶や紅茶などの飲み物も肝臓に良いのでしょうか?
佐藤先生
いいえ。残念ながら、緑茶や紅茶は肝臓に良い飲み物というわけではありません。実際に「The Singapore Chinese Health Study」という大規模な研究では、「紅茶や緑茶、そのほかのソフトドリンクなどを飲んでも肝機能が良くなったり悪くなったりしなかった」と報告されています。(※4)そのため、肝臓に良い飲み物を摂取したい人は、お茶類よりもコーヒーを習慣的に飲むことをおすすめします。
お酒を飲む人も1日1〜4杯のコーヒーは肝臓に良い
編集部
お酒をよく飲む人にとっても、コーヒーは肝臓に良い飲み物なのでしょうか?
佐藤先生
はい。アルコールをよく飲む人にとっても、コーヒーは肝臓に良い飲み物です。日本人を対象とした研究では、「同じ量のお酒を飲む人同士で比べると、コーヒーを普段から飲んでいる人の方が肝機能のγ-GTPなど値が低い」ことがわかっています。(※5)また、「コーヒーをよく飲む人は、お酒を習慣的に飲んでも肝機能が上がりにくいかもしれない」とも言われています。(※5)コーヒーが苦手でなければ、適度に飲むことをおすすめします。
編集部
1日にどのくらいの量を目安にすればいいでしょうか?
佐藤先生
どのくらいのコーヒーの量が一番肝臓に好影響についてはわかっていません。しかし、コーヒーに含まれるカフェインの悪影響が出ないようにするために、カフェインの摂取量上限を目安にすることがおすすめです。具体的な目安としては、妊婦さんや授乳中の女性以外の大人の場合には400mg程度のカフェイン量に相当するコーヒー4杯を1日の上限としてください。(※6)また、妊婦さんの場合には300mg程度のカフェイン量に相当するコーヒー3杯、授乳中の女性の場合には200mg程度のカフェイン量に相当するコーヒー2杯を1日の上限にしてみてください。(※6)
編集部
肝臓の機能が落ちている人がコーヒーを飲んでも大丈夫なのでしょうか?
佐藤先生
肝臓の機能がすでに落ちている人の場合には、コーヒーの量を少し控えた方がいいかもしれません。肝硬変などの病気で肝臓の機能が悪い人は、コーヒーに含まれるカフェインを代謝するのに時間がかかるため、高血圧や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などの健康被害のリスクがあると言われています。(※6)そのため、医師に肝臓の機能がすでに落ちていると指摘されたことがある人や現在医療機関などで通院されている人はかかりつけ医に相談した上で、適度な量のコーヒーを飲むようにしてみてください。
参考文献:
※1. Impact of coffee on liver diseases: a systematic review
Impact of coffee on liver diseases: a systematic review – PubMed (nih.gov)
※2. Coffee consumption and risk of liver cancer: a meta-analysis
Coffee consumption and risk of liver cancer: a meta-analysis – PubMed (nih.gov)
※3. Influence of coffee drinking on subsequent risk of hepatocellular carcinoma: a prospective study in Japan
Influence of coffee drinking on subsequent risk of hepatocellular carcinoma: a prospective study in Japan – PubMed (nih.gov)
※4. The National University of Singapore「The Singapore Chinese Health Study」
Singapore Chinese Health Study (SCHS) – Saw Swee Hock School of Public Health (nus.edu.sg)
※5. Coffee consumption and decreased serum gamma-glutamyl transferase and aminotransferase activities among male alcohol drinkers
Coffee consumption and decreased serum gamma-glutamyltransferase and aminotransferase activities among male alcohol drinkers – PubMed (nih.gov)
※6. 食品安全委員会「食品中のカフェイン」
factsheets_caffeine.pdf (fsc.go.jp)
編集部まとめ
コーヒーは肝臓に良い飲み物であることがわかりました。コーヒーが肝臓に良い理由ははっきりしていませんが、ポリフェノールの一種であるクロロゲンが肝硬変や肝臓がんのリスクを下げると言われています。妊婦さんや授乳中の女性を除き、健康な大人はカフェイン400mg相当のコーヒー4杯を1日の摂取量の上限にコーヒーを飲むのがおすすめとのことでした。肝臓の機能がすでに落ちている人は、かかりつけ医に相談した上でコーヒーを飲むようにしてみてください。