コーヒーを飲むとトイレが近くなる理由を医師が解説 近くならない方法は?
「コーヒーを飲むとトイレが近くなる…」という人は多いと思います。コーヒーには利尿作用のあるカフェインが含まれ、その影響でトイレが近くなってしまうことがあるといいます。では、どのくらいの量ならトイレが近くならないのでしょうか。そこで、カフェインのもつ利尿作用についてやコーヒーのおすすめの適量について、「つくばウロケアクリニック」の黄鼎文(ファン・ティンウェン)先生に話を聞きました。
監修医師:
黄 鼎文(つくばウロケアクリニック)
目次 -INDEX-
なぜコーヒーやお茶を飲むとトイレが近くなるのですか?
編集部
コーヒーを飲むとトイレが近くなるというのは事実ですか? 利尿作用について教えてください。
黄先生
コーヒーにはカフェインが含まれるため、カフェインの持つ「利尿作用」の影響で、トイレが近くなることもあるでしょう。カフェインが利尿作用をもたらすメカニズムには、腎臓の機能が関わっています。腎臓には尿を作る役割があり、カフェインを摂取すると、本来腎臓で行われている体内への水分の「再吸収」を抑えてしまうのです。本来は体内に戻るはずの水分が再吸収されずに排泄されてしまうため、尿が多く作られ、結果的に排尿回数が増えてしまうのです。
編集部
どのくらいコーヒーを飲むとトイレが近くなる可能性がありますか?
黄先生
これには個人差が大きく一概にはいえませんが、コーヒー4杯に含まれる程度のカフェイン(250mg〜300mg)を一度に摂取した場合に、その可能性があるといわれています。
コーヒーを飲むと何度もトイレに行きたくなる 利尿作用のメリット・デメリット
編集部
利尿作用にはメリットはありますか?
黄先生
健康な場合には、これといったメリットはないように思います。そもそも、腎臓には体内の老廃物や不要になった水分を濃縮して排泄する役割があります。利尿作用が加われば、より排出する作用が促進されるのです。そのため、医療の現場では、心臓や腎臓の機能が低下して尿が作られにくくなった方に対し、利尿剤を投与するなどの治療が行われているのです。しかし、健康な方の場合には、体内の状況に応じて腎臓が尿量を調整しています。利尿作用によって、多少のむくみが軽減するなどの効果は期待できるかもしれませんが、メリットといえるほどではないかもしれません。
編集部
では、デメリットはありますか?
黄先生
一部では脱水を懸念する声もあるようですが、さまざまな研究結果からもカフェインの利尿作用による脱水の可能性は低いといわれています。私たちの体は、定期的にカフェインを摂取すると耐性ができて、カフェインの利尿作用が低減されるといわれています。そのため、毎日コーヒーなどからカフェインを摂取していても、脱水症状を招く可能性は低いと考えられます。
編集部
デメリットはないものの、コーヒーを飲んで何度もトイレに行きたくなる人はいるようですね。
黄先生
そうですね。それを避けたいのであれば、コーヒーを飲むときには一度にたくさん飲まないようにして、適量の範囲で嗜むことが重要といえるでしょう。
コーヒーは腎臓に負担をかけるって本当? 一日の摂取量は何mlぐらいが良い?
編集部
コーヒーによって腎臓に負担をかけてしまうことはありますか?
黄先生
健康な場合には、適量のコーヒーであれば腎臓に負担をかけてしまうことはありません。しかし、腎臓病などを発症し、腎機能が低下している方は注意が必要です。
編集部
それはどうしてなのでしょうか?
黄先生
コーヒーにはカフェインのほか「カリウム」が含まれます。カリウムはミネラルの一種で、通常は尿として体外へ排出されます。しかし、腎機能が低下していると、カリウムを排出することが困難になってしまい、血液中のカリウムの濃度が高くなります。
編集部
血液中のカリウム濃度が高くなるとどうなるのですか?
黄先生
カリウムの数値があまり高くなってしまうと、腎機能の更なる悪化を招くほか、心臓に悪影響を及す恐れもあるのです。そのため、腎臓病の方は、カリウムの摂取制限が必要になることがあります。たとえば、腎臓病で人工透析治療中の方は、カリウムの摂取量を一日に2000mg以下に抑えるよう指導をおこなっています。腎臓病で治療を受けていてもコーヒーを飲んではいけないということはありませんが、カリウムはコーヒー以外にもさまざまな食品に含まれるため、注意が必要です。
編集部
では、健康な場合、コーヒーは1日何mlくらいが適量なのでしょうか?
黄先生
日本ではカフェインの摂取基準を明確に定めていませんが、1日のカフェインの摂取量は、コーヒーに換算して4~5杯までが適量といわれています。しかし、コーヒー以外にも紅茶や緑茶、エナジードリンク、コーラなどの清涼飲料水などにもカフェインが含まれているため、コーヒーのほかこのような飲料を飲んでいるという場合には注意が必要です。1日のカフェイン摂取量を意識しながら、何を飲むか選ぶように気を付けた方が良いでしょう。
編集部
コーヒーを飲んでもトイレが近くならない方法はありますか?
黄先生
カフェインレスのものを選んだり、寝る前にはコーヒーを飲まないようにしたりすると良いでしょう。寝る前にカフェインを大量に摂ってしまうと、カフェインの覚醒作用で眠れなくなってしまう可能性があります。そうすると、コーヒー自体の水分に加えて、利尿作用、覚醒作用も加わり、それらの相乗効果(起きている時間が長いとその分トイレにも行く)によって、よりトイレが近く感じてしまうことが考えられます。利尿作用に個人差はありますが、夜間にトイレで起きてしまうこともあるので、寝る前にコーヒーをたくさん飲むのは控えた方が良いでしょう。
編集部
ありがとうございました。最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
黄先生
カフェインは、コーヒーだけでなくさまざま飲み物に含まれています。たとえば、普段緑茶や紅茶を飲むという場合には、それに加えてコーヒーも飲むことで、それぞれは適量だったとしても、結果的にカフェインの摂取量が増えてしまいます。そのためトイレが近いことが嫌な場合、普段の飲食物にカフェインが含まれているかを把握し、それらを飲み過ぎないよう気を付けた方が良いでしょう。
編集部まとめ
やはり、コーヒーを飲み過ぎると、カフェインの利尿作用によってトイレが近くなってしまうことがあるとのことでした。また、特に夜間に多量のコーヒーを飲んでしまうと、利尿作用に覚醒作用も相乗し、さらに回数が増えてしまう恐れがあるとのことです。コーヒーは適量に留め、夜間は飲まないよう心がけましょう。
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