FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 「寝ても疲れが取れない…」それは寝不足ではなく『栄養不足』管理栄養士直伝の食事の工夫

「寝ても疲れが取れない…」それは寝不足ではなく『栄養不足』管理栄養士直伝の食事の工夫

 更新日:2024/03/05

「ちゃんと寝ているのに、なかなか疲れが取れない」という人は栄養不足かもしれません。疲労改善には、食事からの栄養摂取が必須です。忙しくて食事量が足りていないかもしれない方は、それが疲れの原因かもしれません。今回は疲労と栄養素の関係や疲労を感じたときに摂りたい栄養素、逆に疲労感を強めてしまう食習慣について、管理栄養士の佐久間さんに解説してもらいました。

佐久間 愛子

監修管理栄養士
佐久間 愛子(管理栄養士)

プロフィールをもっと見る
管理栄養士として介護・医療業界を渡り歩く。病院経験を経て予防医療の大切さに気付き、現在はICTでの特定保健指導に従事。また、糖尿病への理解を深めるため2021年に日本糖尿病療養指導士を取得。今までの経験を活かし、栄養・健康分野のライターとしても活動中。

「なかなか疲れが取れない」 過剰摂取・不足している栄養素は?

「なかなか疲れが取れない」 過剰摂取・不足している栄養素は?

編集部編集部

休んでも疲労感がぬぐえません。疲れに食生活や栄養素は関わっていますか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

疲れと食事(栄養素)はとても深く関係しています。例えば、炭水化物や脂質はガソリン、たんぱく質は車体、ビタミン・ミネラルは車体をスムーズに動かす潤滑油となり、私たちの体を動かしてくれるのです。なので、どれかが不足または過剰になると、体がスムーズに動かなくなります。これが体の不調や疲れの原因となります。

編集部編集部

では、疲れが取れないと感じるときは具体的にどの栄養素が不足していますか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

疲れがなかなか取れないときは、糖質やビタミンB群の不足が考えられます。疲れは、体を動かすエネルギーの産生や活用が上手くいっていない証拠です。エネルギーの供給が不十分だと、仕事や家事のパフォーマンスの低下にもつながります。さらに、体がエネルギーを補給しようと筋肉の分解を促すので体力の低下がおき、余計に疲れが増します。疲れを感じたときは糖質でエネルギー源を確保するほか、代謝を促すビタミンB群を摂ることが大切です。

編集部編集部

では、不足しやすい栄養素(糖質・ビタミンB群)を摂っていれば、疲れにくくなりますか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

いいえ、糖質やビタミンB群だけを集中して摂っていても疲労は改善しません。摂り過ぎてしまうことで、疲れを助長させてしまう可能性もあります。大事なのは、日頃から栄養バランスを意識して食事を摂り、疲れを感じたときに不足しやすい栄養素を強化したり過剰に摂っているものを抑えたりすることです。

疲れを取りたいときに意識して摂取したい栄養素3選

疲れを取りたいときに意識して摂取したい栄養素3選

編集部編集部

では、疲れを取りたいときに積極的に摂った方が良い栄養素は何でしょうか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

疲れを取りたいときに意識して摂りたい栄養素は大きく3つあり、「糖質・たんぱく質・ビタミンB群」です。さきほども言ったように、糖質は脳や体を動かすエネルギー源です。特に脳にエネルギーを供給するには糖質が欠かせません。また、ビタミンB群は、糖質・脂質・たんぱく質の代謝に大きく関わる栄養素です。これがないと体にエネルギーを効率よく供給できません。そして、たんぱく質は筋肉やホルモンなどの体全体の機能調整に関わる大事な栄養素です。これらの栄養素が不足してしまうと、体に充分なエネルギーが供給できない・免疫力の低下につながるので、意識的に摂るように心がけましょう。

編集部編集部

疲れると甘い物が食べたくなるのはなぜですか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

脳や体を動かすエネルギーが不足してくると疲れを感じます。そのため、体はすぐにエネルギーを補おうと糖質を欲します。チョコなどの甘いお菓子は、比較的簡単に体や脳にエネルギーを供給できるので、疲れると甘い物を無性に食べたくなるのです。しかし、欲するままに甘い物を食べてしまっても疲労は改善しません。むしろ、眠気や体のだるさを感じてしまう可能性もあります。普段から栄養をしっかり摂り、疲れにくい体にしておくことも大事ですね。

編集部編集部

疲れを取りたいときの三つの栄養素のうち、「ビタミンB群」には種類がたくさんあります。そのなかでも、どのビタミンを摂れば良いですか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

疲れを取りたいときは、「ビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシン」を意識しましょう。ビタミンB1は糖質の代謝に関わる栄養素で、豚肉や玄米、大豆などに含まれます。ビタミンB6は筋肉やホルモンなど、体をつくるたんぱく質の代謝に関わります。鶏肉やマグロ、バナナなどが代表的な食品です。糖質・脂質・たんぱく質の代謝に関わるナイアシンは、精神を落ち着かせるセロトニンをつくるためにも重要なビタミン。ほとんどの食品に含まれていますが、特に赤身肉やきのこに多いです。

編集部編集部

たんぱく質はどんな食べ物から摂れば良いですか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

おすすめは、たんぱく質もビタミンB群も摂れて一石二鳥の鶏肉や豚肉やカツオなどの赤身です。たんぱく質は筋肉やホルモンの主原料で、体を維持するのに欠かせません。赤身の肉・魚は、たんぱく質が豊富であり利用効率も高いのでおすすめです。また、豚肉や鶏肉やカツオはたんぱく質だけでなくビタミンB群も豊富な食品です。そのため、これらを食べる事でたんぱく質とビタミンB群の両方が補給できます。ただし、豚バラなどの脂質の多い肉類は胃の消化に時間がかかるので、胃疲れ防止のためにも赤身肉を選ぶようにしましょう。

編集部編集部

栄養素を摂るときに注意することはありますか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

注意したい点は、効率の良い組み合わせや調理方法を選ぶことです。例えば、ビタミンB1はアリシンという成分と合わせると吸収が高まります。アリシンはにんにくやねぎに多く含まれるので、豚肉とにんにく・ねぎのスタミナ焼きにして食べると疲労改善効果が高まります。また、ビタミンB群は水に溶け出しやすい栄養素なので、野菜であれば生で食べる・加熱調理のときはスープにすると、栄養素を余すところなく摂れます。

これには注意! 意外と疲れの原因となる食習慣について

これには注意! 意外と疲れの原因となる食習慣について

編集部編集部

疲労改善には糖質が大切とありましたが、チョコや飴などの甘い物を食べると良いのでしょうか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

体や脳を動かすためにも糖質は大事ですが、摂る種類が非常に大切です。チョコや飴などのお菓子に含まれる糖類(砂糖やブドウ糖)はすぐにエネルギーに変わるのと同時に、血糖値を急激に上げてしまいます。血糖値が急激に上がるとその反動で急激に下がるのですが、これにより眠気や体のだるさを感じやすくなります。甘い物の摂り過ぎは、疲労感が増す原因になるので、糖質を摂る時は食物繊維が豊富な玄米やもち麦などのごはんから摂りましょう。食物繊維は、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。

編集部編集部

疲れたときにエナジードリンクをよく飲みます。エナジードリンクで疲労は改善しますか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

エナジードリンクには疲労改善効果の期待はできず、飲むタイミングを間違えてしまうと疲労感が増すこともあるので注意が必要です。エナジードリンクは無理やり交感神経を優位にさせることで、一時的にやる気が出るように感じます。また、一般的なエナジードリンクは多量の砂糖が含まれ、お菓子同様に血糖値の急上昇を引き起こします。さらに、カフェインも同様に多量に入っています。飲むタイミングによっては睡眠を妨げたり気持ちが落ち着かなかったりするので、寝る4時間前には摂らないようにしましょう。

編集部編集部

寝る前にお酒を飲むとすぐ寝られるのですが、疲労改善効果があるのでしょうか?

佐久間 愛子さん佐久間さん

寝る前のお酒、通称「寝酒」はおすすめしません。むしろ疲労感を高めてしまいますよ。確かに、寝る前にお酒を飲むことで入眠は促せます。しかし、実際は眠りが浅く・睡眠の質が低下します。睡眠の質が低下すると、心身が充分に休まりません。また、お酒の分解の過程でナイアシンが消費されます。これによりエネルギー代謝が落ちたりセロトニンの量が減って気分の落ち込みが起きたりする可能性もあります。心身の疲労改善のためにも、寝酒はひかえましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

佐久間 愛子さん佐久間さん

体が疲れる・疲れが取れにくいときは、体と脳のエネルギー不足のサインです。そのようなときは、ガソリンである糖質や体の調整機能に関わるたんぱく質を意識しましょう。糖質やたんぱく質の代謝を促すビタミンB群も忘れずに摂ってください。また糖質の場合は、玄米入りごはんなどの食物繊維が豊富な食材がおすすめで、チョコレートなどは逆効果です。日々の食生活の栄養バランスを整えて、疲れにくい体を作りましょう。

編集部まとめ

睡眠時間を長めにとっても、休んでもなかなか取れない疲れの原因は、日々の栄養バランスの乱れにあるかもしれないことが分かりました。管理栄養士の佐久間さんに教えてもらった3つの栄養素を意識して摂り、食事だけでなく適度な運動とストレス解消も意識して、疲れにくい体で毎日のパフォーマンスを高めていきましょう。

この記事の監修管理栄養士