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初期は症状のない「骨粗しょう症」 どこで診断・治療できる? 医師が必要な検査・治療法を解説

 公開日:2023/09/08
骨粗しょう症はどこで診断・治療できる? 医師が受診科と必要な検査・治療を解説

「骨粗しょう症」という言葉を、何となく聞いたことがある方は多いと思います。「老化現象のひとつ」として、治療を諦めていた方もいらっしゃるかもしれませんが、医療機関で診断・治療が可能だそうです。そこで「骨粗しょう症」の原因や病院での診断・治療について、整形外科医の中谷創先生(つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。

中谷 創

監修医師
中谷 創(つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック)

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防衛医科大学校病院や自衛隊中央病院などで医師としての経験を積み、自衛隊札幌病院 整形外科部長、自衛隊中央病院 整形外科医長などを経て、2022年12月、「つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック」を開院、院長となる。また、ラグビー日本代表チームドクターや、2021年東京オリンピック 七人制ラグビー 大会ドクターなど、スポーツドクターとしての経験も豊富。取得資格は、日本整形外科学会 整形外科専門医、日本整形外科学会 スポーツ医、日本整形外科学会 運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会 スポーツドクターなど。

骨が脆くなる骨粗鬆症とはどんな病気? 女性の高齢者に多いって本当? ステロイド性骨粗鬆症とは?

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編集部編集部

骨粗しょう症(骨粗鬆症)とはどんな病気ですか?

中谷 創先生中谷先生

骨粗しょう症とは骨がすかすかになり、もろくなって骨折しやすくなってしまった状態です。骨を構成するミネラル成分のつまり具合を表す「骨密度」という言葉を聞いたことがあると思いますが、この骨密度が減少することによって骨粗しょう症と言われる状態になります。

編集部編集部

高齢者に多いイメージがあります。

中谷 創先生中谷先生

骨に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル量は20〜30歳頃がピークで、歳を重ねるとともに減少していきます。これに伴い、骨密度も50歳ごろから低下し始め、60歳を超えると多くの人が骨粗しょう症の状態になると言われています。

編集部編集部

骨粗しょう症になると、どんな症状が出るのですか?

中谷 創先生中谷先生

骨粗しょう症になっても、初期は痛みなどの症状がない場合がほとんどです。しかし、進行するにつれて、自分の身体の重みで背骨がつぶれて「脊椎圧迫骨折」をきたしたり、軽く転倒しただけで手や足を骨折するといった事態を引き起こしたりします。

編集部編集部

女性は閉経前後で進行しやすいと聞いたことがあります。

中谷 創先生中谷先生

そうですね。全身の骨は「新しい組織を作る(形成)」のと「古い組織を壊す(分解)」というのを常に続けています。女性ホルモンの分泌が低下する更年期以降の女性は、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制するホルモンの働きが鈍くなるため、骨がもろくなってしまうのです。そのため、閉経を迎える50歳前後から骨量が急激に減少し始めます。

編集部編集部

なるほど。そのような機序あるのですね。

中谷 創先生中谷先生

一方で、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒なども骨粗しょう症の原因と考えられており、最近は高齢の女性だけでなく若い女性の骨粗しょう症も問題視されています。あとは、ステロイドを長期使用している方も、ステロイドの副作用で骨粗しょう症となりやすいですね。

骨が弱くなっているかも…骨粗しょう症の人は何科の病院へ行くべき? 骨密度のほかどんな検査で骨粗しょう症が診断される?

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編集部編集部

どんな検査をするのですか?

中谷 創先生中谷先生

骨粗鬆症の診断には「脆弱性骨折」(※)があるかが重要となるため、脊椎のX線検査で脊椎圧迫骨折がないかをチェックしたり、骨密度を調べたりします。骨密度を測定する方法はいくつかあるのですが、現在、最も信頼性が高いと言われているのは「DXA (デキサ) 法」という測定方法です。DXA法は、エネルギーの低い2種類のX線を使って骨量を測定する方法で、痛みもありません。骨粗しょう症の診断には腰椎と股関節(大腿骨)の2つの部位を測定することが推奨されています。

※脆弱性骨折:転倒などの強い力が加わることなく、生活動作などの弱い力で生じた骨折。脆弱性骨折の中でも、「脊椎圧迫骨折」は最も頻度が高い

編集部編集部

「骨粗しょう症の精密検査」は何科で受けられるのでしょうか?

中谷 創先生中谷先生

基本は整形外科が良いと思いますが、内科や婦人科でも検査してくれるところがあります。 また、多くの自治体では40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳の女性を対象(対象年齢は自治体によって異なる)に、「骨粗しょう症検診」が行われていますので、こちらを利用して調べることもできます。

編集部編集部

ほかにはどんな検査をするのですか?

中谷 創先生中谷先生

ほかには、血液検査や尿検査で「骨代謝マーカー」と呼ばれる特定の数値を調べることにより、骨の新陳代謝の速度が分かります。例えば、骨の吸収を示す数値が高い人は、骨密度の低下速度が速いということなので、骨折の危険性が高くなっているということです。あとは、身長測定をすることもあります。

編集部編集部

身長測定で骨粗しょう症がわかるのですか?

中谷 創先生中谷先生

身長で骨粗しょう症を「診断」することはできませんが、ひとつの目安にはなります。先ほども申し上げましたが、骨粗しょう症になって骨がもろくなると、背骨がつぶれてしまうため、身長が縮んでしまうケースが多いのです。同じ理由から、急に「猫背」になってきた、という方も注意が必要です。数年の間に約2cmの身長の減少があった方や壁に背中をつけようとした時、ピッタリくっつかずに肩甲骨のあたりが壁から離れてしまうといった方は、骨粗しょう症の検査をお勧めします。

骨密度が低下した骨粗しょう症の治療は何をする? 骨折を防ぐ薬物療法・食事療法・運動療法とは?

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編集部編集部

骨粗しょう症の治療にはどんなものがあるのですか?

中谷 創先生中谷先生

大きく分けると、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つがあります。このうち、「食事療法」と「運動療法」は、治療だけでなく予防法としても有用ですので現時点で骨粗しょう症の心配がない方も、生活に取り入れる価値はあります。

編集部編集部

それぞれについて詳しく教えてください。まずは食事療法から。

中谷 創先生中谷先生

食事療法としては、骨の主成分であるカルシウムやタンパク質、骨の形成に必要なビタミンD・Kなどの栄養素を積極的に取るように指導しています。ビタミンDはキノコや魚、ビタミンKはほうれん草や小松菜などの青菜や納豆に多く含まれています。骨粗しょう症の人が避けるべき食品は特にありませんが、カフェインやアルコールの摂り過ぎには注意しましょう。過剰な量のアルコールは、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄を増やしたりします。また、カフェインも、カルシウムの排泄を促し、骨を脆くします。

編集部編集部

では「運動療法」は?

中谷 創先生中谷先生

骨は適度な負荷をかけることで、より丈夫になります。さらに、筋肉を鍛えることで体をしっかり支えられるようになったり、バランスがよくなったりして転倒防止にもつながるため、運動療法は骨粗しょう症の治療に欠かせません。骨量を増やすには、ウォーキングやジョギング、エアロビクスなど中程度の強度の運動が効果的です。激しい運動をする必要はありません。散歩などを、週に数回でも良いので、長く続けていきましょう。先ほどのビタミンDは、日光に当たることで生成されるということもあり、私は特に日中、日光浴をしながらのお散歩・ウォーキングをお勧めしています。

編集部編集部

「薬物療法」についても教えてください。

中谷 創先生中谷先生

症状が進んだケースでは、食事療法や運動療法に併せて薬物療法を開始します。現在使われている薬は、骨の吸収を抑える「骨吸収抑制剤」や、骨の形成を助ける「骨形成促進剤」、骨の栄養素である各種ビタミン剤(D・K)などです。投与方法も注射や飲み薬などさまざまで、どんな薬を選びいつから治療を開始するかなどについては、個々の年齢や症状の進み具合などを考えながら、医師とともに決めていきましょう。

(参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjoms/66/2/66_40/_pdf/-char/ja

編集部編集部

最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。

中谷 創先生中谷先生

骨粗しょう症は、初期には症状がほとんどないため、骨折して初めて気付くというケースが少なくありません。そして、骨粗しょう症の方が骨折してしまうと、治癒に長い時間がかかってしまいます。そうなってからでは遅いので、骨粗しょう症は早期発見がとても大事です。女性は閉経したら必ず、男性も60歳を過ぎたらまず一度骨密度検査を受けるようにしてください。検査方法はいくつかありますが、やはりDXA法で検査していただくのが最も信頼できてお勧めです。

編集部まとめ

「骨粗しょう症」に初期症状がほとんどなく、骨折して初めて気付くというのは怖いところです。そうならないためにも、定期的に骨密度検査を受けましょう。

医院情報

つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック

つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック
所在地 〒153-0052 東京都目黒区祐天寺2-14-20 祐天寺駅前ビル3階
アクセス 東急東横線「祐天寺」駅東口2を出てすぐ
診療科目 整形外科・リハビリテーション科・スポーツ整形外科

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