過活動膀胱の症状・原因・治療方法とは?
過活動膀胱(読み方:かかつどうぼうこう)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
名城 文雄 医師 なしろハルンクリニック院長
過活動膀胱とは
過活動膀胱とは「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」などの症状を示す病気です。40歳以上の男女の8人に1人が、過活動膀胱の症状をもっていることが、最近の調査でわかりました。
引用:アステラス製薬
https://www.astellas.com/jp/health/healthcare/oab/
過活動膀胱の症状
(1)急に、尿意をもよおし、もれそうでがまんできない(尿意切迫感)
(2)トイレが近い(頻尿)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
人がトイレへ行く回数は、日中で5~7回、寝ている間は0回が正常と言われています。 日中8回以上トイレに行き、夜間も1回以上おしっこのために起きるようなら、それは頻尿(夜間頻尿)と言えます。
頻尿
(3)急に尿をしたくなり、トイレまでがまんできずもれてしまうことがある(切迫性尿失禁(尿もれ))
尿意切迫感だけでなく、場合によってはトイレまで我慢できずに尿が漏れてしまうこともあります。引用:アステラス製薬 排尿トラブル改善.com
http://www.hainyou.com/m/oab/
過活動膀胱の症状を以下に列記します。 これらの症状があれば過活動膀胱が疑われます。
【尿意切迫感】急に我慢が出来ないような尿意がおきる。おしっこが漏れそうで我慢が出来ない。
【頻尿】トイレが近い。 夜中に何度もトイレに行く。
【切迫尿失禁】急にトイレに行きたくなり、我慢が出来ず漏れてしまう。
過活動膀胱の原因
原因はまだよくわかっていません。加齢や精神的ストレスのほか、溜まった尿の量を感知する膀胱のセンサーが過敏になっている可能性、脳の中にある排尿を司る部分や自律神経の乱れなど、いろいろなことが関係していると考えられています。
引用:日本臨床内科医会「わかりやすい病気のはなし シリーズ39 過活動膀胱」
http://www.japha.jp/doc/byoki/039.pdf
・脊髄疾患(脊髄損傷、多発性硬化症、ATL等)
・末梢神経のトラブル(糖尿病、骨盤内手術後等)
・骨盤底筋のトラブル(出産後、骨盤内手術後等)
・膀胱の異常(膀胱の知覚過敏、加齢に伴う排尿筋障害、血流障害など)
・前立腺疾患に伴うもの(前立腺肥大、前立腺炎、前立腺癌など)
・骨盤内臓器の炎症やがん
・その他、原因不明このように過活動膀胱はさまざまな原因で発症するため、治療の前に原因疾患の有無を調べます。
過活動膀胱の検査法
患者さんが医療機関を受診すると、医師はまず、問診や簡単な質問用紙を使って症状を把握します。次に検査で、感染症(膀胱炎など)や尿路結石、前立腺肥大症、がんなどの病気がないかを調べます。それらの病気が該当しない、またはすでにしっかり治療しているのであれば、過活動膀胱のために頻尿になっていると判断されます。
超音波検査で残尿量を確認
なお、排尿時に尿が出切らず、膀胱に尿が残っているために頻尿になっているケースもあります(前立腺肥大症の患者さんに多い)。排尿直後なのに膀胱内に尿が100mL(高齢者では50mL)以上ある場合は、より専門的な検査・治療が必要です。
残尿量は超音波を使った簡単な検査でわかります。初診のときだけでなく治療中にも、薬の副作用のチェックなどのために受けていただくことが あります。引用:日本臨床内科医会「わかりやすい病気のはなし シリーズ39 過活動膀胱」
http://www.japha.jp/doc/byoki/039.pdf
●過活動膀胱の診断には、以下の検査を必要に応じて行います。(検査項目は過活動膀胱の検査とほとんど同じ内容です)【問診】症状の経過、過去にかかった病気や手術歴、治療歴、治療薬の確認を行います。 また、排尿日誌をつけてもらい日常の排尿状況をチェックします。なお、過活動膀胱症状スコア―(OABSS)は過活動膀胱の診断に最も良く使われています。これらの問診のみで過活動膀胱はほぼ診断可能ですが、他の病気が隠れていないかどうかも以下の追加検査で調べます。
【尿検査】一般尿検査・尿沈渣:膀胱炎等尿路感染症の有無や血尿の有無を確認します。
【腹部超音波検査】腎臓や膀胱、膀胱周囲の臓器に異常の有無が無いかを調べます。
【尿流検査(ウロフローメトリー)】膀胱の容量、尿の勢い、排尿状態を調べます。
【尿流量動態検査(ウロダイナミクス検査)】蓄尿時および排尿時における膀胱内圧、排尿筋圧をモニターし、さらに尿道括約筋の働きを同時に記録することにより、排尿障害のタイプを診断します。
【レントゲン検査、CT検査、MRI検査】腎臓、膀胱など尿路の形態的異常、脳・脊髄等の神経の異常の有無を診断します。
【膀胱造影検査】神経因性膀胱に特有な膀胱の形態異常の有無、膀胱尿管逆流症(膀胱内の尿が腎臓側に逆流する病態)の有無を確認します。
過活動膀胱の治療方法
過活動膀胱の治療には、さまざまな方法があります。ここでは代表的な治療法をご紹介します。
いずれも医師の診察を受け、正しい方法で治療してください。行動療法
行動療法の主な治療法は、生活指導(1日の尿量を考え水分摂取量等を調節する方法)、骨盤底筋訓練(骨盤底筋とよばれる筋肉を鍛える訓練)、膀胱訓練(おしっこを我慢し、膀胱の容量を増やす訓練)、干渉低周波療法(皮膚に電極を貼り電気を流すことで下腹部を刺激する治療 )などがあります。薬による治療
過活動膀胱の治療薬には抗コリン薬、β₃アドレナリン受容体作動薬があり、膀胱の過敏な動きや尿意を抑え、膀胱に尿をためやすくします。
しかし、口が渇く、便秘をする、目がぼやける、尿が出にくくなるなど副作用がでることもあり、不適用の方もいます。磁気刺激療法
磁気刺激療法は、急速な磁場の変化によって骨盤底領域に電流(渦電流)を発生させ、主に骨盤底領域の神経を刺激し症状の改善を図ります。
2013年6月に、厚生労働省の薬事承認を受けた新しい治療法です。
過活動膀胱は基礎疾患の治療を行った上で、蓄尿症状に対して以下の治療を行います。
【薬物療法】過活動膀胱の治療は、薬物療法で行われるのが一般的です。よく使用される薬剤は以下の通りです。
①抗コリン薬: 膀胱の緊張を取り、膀胱の収縮力を抑える。
例)フェソテロジンフマル酸塩(トビエース)、コハク酸ソリフェナシン(ベシケア)、イミダフェナシン(ステーブラ・ウリトス)、塩酸プロピベリン(バップフォー)、塩酸オキシブチニン(ポラキス)など
②α1受容体遮断薬: 尿道や前立腺の筋肉を弛緩させる。男性の過活動膀胱、前立腺肥大症に伴う過活動膀胱には最初に使用されます。
例)シロドシン(ユリーフ)、塩酸タムスロシン(ハルナール)、ウラピジル(エブランチル)、ナフトピジル(アビショット)など
③β3受容体刺激薬: 膀胱を広げて尿道を縮ませる働きがある。抗コリン薬と比べて副作用が少ないとされており、高齢者にも処方しやすい。
例)ミラべクロン(ベタニス)
④漢方薬:牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、八味地黄丸料(はちみおうじかん)、猪苓湯(ちょれいとう)、六味地黄丸(ろくみじおうがん)等
【行動療法】
・膀胱訓練:意識して尿を我慢することで膀胱容量を増やしていきます。最初は5分尿を我慢するようにし、慣れてきたら徐々に時間を長くしていきます。
・骨盤底筋体操:加齢や出産が原因で弱った骨盤底筋を鍛えることで頻尿や尿失禁の改善を期待します。
・生活指導:体重減少、便秘の治療、飲酒量を控える等生活の改善を指導する。
【磁気刺激治療】
2013年6月に日本光電社が開発した新しい治療法です。副作用やその他の禁止事項などにより、薬物治療ができない場合や尿失禁治療薬を使用しても効果が無い場合に磁気刺激療法を検討します。この治療法は、服を着たまま特別な椅子に腰かけるだけの体への負担も少ない治療です。