「狭心症の前兆となる初期症状」はご存知ですか?セルフチェック法も医師が解説!
狭心症の初期症状にはどんな症状がある?Medical DOC監修医が狭心症の初期症状・原因・治療法・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
小正 晃裕(医師)
目次 -INDEX-
「狭心症」とは?
狭心症とは、心臓に血液を供給する冠動脈という血管が詰まって狭くなり、十分な血液が心臓の筋肉に届かない状態を指します。この状態が起こると、心臓は必要な酸素や栄養を得られず、胸部に痛みや圧迫感といった症状を引き起こします。
特に、運動やストレスなどで心臓に強い負担がかかるときに症状が現れやすく、休息によって改善することが多いです。しかし、放置すると症状が悪化して、重大な心臓疾患につながる可能性があります。すなわち、狭心症は心臓の「警告信号」とも言える疾患であり、早期発見と適切な治療が非常に重要となります。
狭心症の初期症状
胸痛、胸部圧迫感
胸痛、胸部圧迫感は狭心症の最も代表的な初期症状で、典型的には運動時やストレスがかかった時に症状が現れます。この症状は通常、休息することで改善されることが多く、放散痛といって痛みが別の部位からも見られることがあり、首や顎の痛み、肩こりなどとして自覚されることもあります。症状が長時間続く場合や非常に強い痛みの場合、繰り返し症状を認めた場合にはすぐに心臓専門医の受診が必要となります。
息切れ、動悸
狭心症では、心筋への血流障害によって不整脈が生じて動悸を自覚したり、息切れを感じたりすることもあります。このような症状が出た場合は、まずは無理をせずに休息を取ることが重要ですが、安静にしても症状が続く場合には、内科または循環器科を受診し、症状の原因について精密検査を受けることが推奨されます。
吐き気、冷や汗
狭心症の症状としてそれほど典型的ではありませんが、心筋への血流不足が重症化すると吐き気や冷や汗、頭痛などを伴うことがあります。これらの症状が現れた場合は、すぐに休息を取り、症状が改善しない場合は速やかに医療機関を受診する必要があります。特に、胸の痛みや圧迫感、息切れなど前に述べた症状と合わせて現れる場合には、緊急性が高くすぐの受診が必要です。
狭心症の主な原因
冠動脈の動脈硬化
心臓に栄養を送る血管である冠動脈の動脈硬化は、狭心症の最も一般的な原因です。動脈硬化は主に高血圧や脂質異常症、糖尿病、喫煙などにより起こり、動脈硬化によって冠動脈の内腔が狭くなります。これにより、心筋への血流が低下して胸の痛みや胸部圧迫感が生じます。発症した場合は、なるべく早期に循環器科の受診が必要です。動脈硬化は進行性の病気であり、早期発見と治療、再発予防が重要となります。
高血圧症
高血圧は、心臓への負担を増加させ、動脈硬化から冠動脈の状態を悪化させる可能性があります。また、心負荷自体も狭心症の原因となることがあります。高血圧に関連する症状には、頻繁な胸の不快感や息切れ、下腿浮腫(足のむくみ)などがあり、コントロール不良な高血圧が認められる場合には、早めに内科や循環器科の受診が推奨されます。
ストレス
過度のストレスは、冠動脈の狭窄(血管が狭くなること)やけいれんを引き起こしやすく、結果として狭心症を引き起こす可能性があります。ストレスによる狭心症では、胸の圧迫感や息切れなどの症状が現れることがあります。高ストレス環境においてこれらの症状があらわれた場合、内科や循環器科に相談すると良いでしょう。また、他の原因がなくストレスが主な原因となり狭心症を起こす場合には、ストレスを軽減するような介入も必要になることがあります。
すぐに病院へ行くべき「狭心症の初期症状」
ここまでは狭心症の初期症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
胸痛や呼吸困難、意識消失などの症状がある場合は、救急科へ
休息しても改善しない、あるいは30分以上続く胸の痛みや圧迫感がある場合には、心筋への血流が極端に制限されている可能性があり非常に危険な症状と言えます。また、突然の息切れや呼吸困難、めまいや一過性(一時的)の意識消失なども心臓による血液循環が不十分であることを示唆する重篤な兆候です。これらの症状がある場合には、様子を見るのではなくただちに救急車を呼ぶか最寄りの医療機関を受診してください。
上記のような症状は迅速な対応が必要な場合が多く、病院を受診する際には可能であれば症状の開始時刻や発症時に何をしていたか、その他の症状はあるか、同様の症状は以前にも繰り返しあったのか、などの情報があると診断の助けとなります。
受診・予防の目安となる「狭心症」のセルフチェック法
- ・突然の胸痛、胸部圧迫感がある場合
- ・息切れ、呼吸困難がある場合
- ・動悸がある場合
- ・めまい、意識消失がある場合
狭心症の治療法
薬物療法
狭心症の程度が軽度であれば、薬物治療のみで経過をみるケースもあります。狭心症の薬物治療は主に循環器科で行われ、内服薬の種類としては血管を広げる薬(硝酸薬)、血圧を下げる薬(降圧薬)、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)、脂質を下げる薬(スタチン系)などが使われます。通常、入院の必要はなく外来治療で行われますが、症状によっては短期間の入院が必要な場合もあります。薬物治療には定期的なフォローアップが必要で、場合によっては生活習慣の改善やリハビリも合わせて推奨されることもあります。
カテーテル治療
各種の検査の結果、狭心症の程度が強ければカテーテル治療の対象となります。狭心症のカテーテル治療は、冠動脈の狭窄部分を広げるために行われ、手首や足の血管からカテーテルという細い管を心臓まで通して狭窄部位をバルーンで広げたり、ステントという金属の小さな筒を留置する治療が主に行われます。通常循環器科で実施されることが多く、治療後は経過観察のため数日間の入院が必要となることがあります。また、退院後には、再狭窄を防ぐための薬物治療や生活習慣の改善、必要に応じてリハビリが行われます。
心臓手術
血管の狭窄部位や狭窄の程度によっては薬物治療やカテーテル治療だけでは不十分な場合があり、冠動脈バイパス術などの心臓手術が行われることがあります。この手術は主に心臓血管外科で行われ、手術後は再発がないことの確認や心臓機能を回復させるためのリハビリ目的で入院が必要となります。また、退院後も術後の長期的な管理として、薬物治療や生活習慣の見直しが必要です。
狭心症の予防法
食生活の改善
狭心症の予防には高血圧や脂質異常症、糖尿病などの動脈硬化リスク因子の予防がとても重要となり、食生活の改善は非常に重要です。塩分や脂肪分の低い、バランスの取れた食事を心がけたり、野菜や果物を多く含む食事をとることで高血圧や動脈硬化を予防し、狭心症予防に働きます。
有酸素運動の継続
定期的な運動は、心臓の健康を保つのに非常に効果的です。適度な運動は血圧を下げ、体重管理にも役立つ上に、ストレス緩和にも効果的です。運動の内容としてはウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動が推奨されており、1日あたり20-30分くらいを目標に最初は週1-2回から始めて、慣れたら毎日を目標としましょう。また、食生活の改善と組み合わせることでさらに効果的です。
禁煙
食事・運動以外の要素として喫煙は心臓病の大きなリスクとなります。禁煙することで、動脈硬化による冠動脈疾患のリスクを大幅に減少させることができます。また、禁煙は血流を改善する効果もあり、全身の血流維持にも非常に大切です。喫煙は心臓病以外にも呼吸器系疾患や悪性腫瘍などのリスクにもなるため、狭心症予防の観点でも禁煙は必須です。
「狭心症の初期症状」についてよくある質問
ここまで狭心症の初期症状を紹介しました。ここでは「狭心症の初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
狭心症と心筋梗塞の初期症状に違いはありますか?
小正 晃裕 医師
狭心症と心筋梗塞の初期症状には類似点が多いですが、いくつかの違いがあります。
狭心症では、胸の痛みや圧迫感は通常、主に運動やストレスによって引き起こされ、休息や硝酸薬によって改善されることが多いです。
一方で心筋梗塞の場合、胸痛はより強く、持続的で、休息や硝酸薬による効果が少ないか無いことが多いです。また、心筋梗塞では胸痛の他にも吐き気、冷汗、呼吸困難などの症状が伴うこともあります。これらの症状が現れた場合は、ただちに医療機関を受診する必要があります。
ただし、あくまで上記は一般的な話であり、狭心症でも強い症状を伴ったり心筋梗塞でも軽度の症状のみで複数の症状は認めないことも十分に考えられます。もしこれらの症状が突然発症したり、繰り返し起こるようなら精密検査を受けることが望ましいため、自己判断するのではなく早めに医療機関を受診するようにしましょう。
狭心症を発症すると心電図にはどのような特徴が現れますか?
小正 晃裕 医師
狭心症を発症すると、心電図に特有の変化が現れることがあります。代表的なものとして心電図のST部分やT波の異常が認められることがあります。これらの変化は、心筋虚血を示しており、冠動脈狭窄を示唆する所見です。
ただし、狭心症の全ての患者でこれらの変化が見られるわけではなく、心電図が正常であっても狭心症の可能性があるため、狭心症を疑う症状がある場合には他の検査結果と合わせて総合的に評価する必要があります。
編集部まとめ
狭心症は、心臓への血流が不十分になることで起こる病気で、胸の痛みや圧迫感などの症状が特徴的です。早期発見と適切な治療が重要であり、日常生活での予防も欠かせません。また、禁煙、健康的な食生活、定期的な運動が狭心症の予防に効果的です。初期症状を疑う症状を自覚したら早めに医療機関を受診し、心電図などの検査を通じて、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。
「狭心症の初期症状」と関連する病気
「狭心症の初期症状」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
狭心症の初期症状は他の心臓疾患と共通するものも多く、また呼吸苦などは呼吸器疾患との鑑別が重要となります。典型的な症状を呈さない狭心症もあるため、これらの症状が認められた際は早めに医療機関で精密検査を受けるようにしてください。
「狭心症の初期症状」と関連する症状
「狭心症の初期症状」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
狭心症の初期症状としては上記のようなものが一般的ですが、ほかにも放散痛として歯や首、肩の痛みとして自覚されることもあります。運動時やストレスのかかった時に症状が繰り返し起こる場合には狭心症の初期症状の可能性もあるので、何か症状がある場合には医療機関で相談してみてください。