「腹膜播種の自覚症状」はご存知ですか?発症しやすい人の特徴も医師が解説!

腹膜播種の自覚症状とは?Medical DOC監修医が腹膜播種の初期症状・なりやすい人の特徴・検査法・治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。
目次 -INDEX-
「腹膜播種」とは?
腹膜播種とは、がん細胞が腹膜に広がる状態を指します。胃がん、大腸がん、膵臓がんなど消化器がんや卵巣がんなどの婦人科がんから進行したがん細胞が、腹膜に散らばるように転移することで起こります。腹膜は、お腹の内側を覆う薄い膜で、臓器を包み込み、保護する役割があります。腹膜播種になると、腹膜全体にがん細胞が広がり、様々な症状を引き起こすことがあります。
腹膜播種の自覚症状
腹膜播種の症状は、がんの種類や進行度合いによって異なりますが、初期には自覚症状がないことも多いです。進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
腹痛
腹膜播種が進行すると、腹痛が現れることがあります。鈍痛や圧迫感として感じられることが多いですが、激しい痛みが生じることもあります。痛みが続く場合は、医療機関を受診しましょう。受診する科は、消化器内科がおすすめです。受診時には、痛みの種類や程度、いつから始まったかなどを医師に伝えるようにしましょう。
腹部膨満感
腹膜播種によって腹水が貯まると、お腹が張った感じや膨満感を感じることがあります。症状を和らげるためには、楽な姿勢をとりましょう。病院を受診する際は、腹部膨満感以外に症状があるか、どれくらいの期間でお腹周りのサイズがどの程度変化したかなどを医師に伝えるようにしましょう。
食欲不振・吐き気
腹膜播種が進行すると、食欲不振や吐き気、嘔吐などが起こることがあります。症状が続く場合は、消化の良い食事を少量ずつ摂取したり、水分補給をこまめに行うことが大切です。医療機関では、吐き気止めや制酸剤などの薬を処方したり、入院で点滴で加療することがあります。
便秘・下痢
腹膜播種によって腸の動きが悪くなると、便秘や下痢が起こることがあります。症状を改善するためには整腸剤を服用することも有効です。症状が続く場合は、消化器内科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
腹膜播種の初期症状
腹膜播種の自覚症状は前述のような症状となります。しかし、腹膜播種の初期には、ほとんど自覚症状がないことが多いです。腹部の違和感や軽い鈍痛や背部痛、軽度の満腹感や体重の増加が腹膜播種の初期症状の可能性があります。これらの症状が持続する場合、気になる症状がある方は医療機関を受診しましょう。
腹膜播種を発症しやすい人の特徴
腹膜播種は、すべてのがん患者に起こる可能性がありますが、特に消化器がんや婦人科系がんの患者さんに多い傾向があります。また、進行したがんや再発したがんの場合、腹膜播種を起こしやすいと考えられています。
進行胃がんになった人
胃がんは進行すると腹膜播種をきたしやすいです。とくにスキルス胃がんなど進行が早いがんもあります。家族歴がある人やピロリ菌の感染がある人は定期的に健康診断を受けて、胃がんの早期発見を目指しましょう。
進行大腸がんになった人
大腸がんは進行すると腹膜播種をきたしやすいがんです。特に大腸がんが進行して大きくなると便通異常や血便などの症状が出やすくなります。大腸がん検診などを受けて、大腸がんを早期に発見しましょう。
膵臓がんになった人
膵臓がんは消化器がんの中でも特に腹膜播種をきたしやすいがんです。症状が現れにくく、発見されたときには進行がんや腹膜播種が起こってしまっていることも多いがんです。定期的な健診を受け、異常がないか体調の変化があれば、早めに病院を受診しましょう。
卵巣がんになった人
卵巣がんも腹膜播種をきたしやすい癌です。女性で下腹部にしこりが触れたり、下腹部痛や腹部の張りがあったりする人は婦人科を受診しましょう。
腹膜播種の検査法
画像検査
CT検査やMRI検査、PET検査、超音波検査などを行い、がんの広がりや多臓器への転移の有無、腹膜結節の有無を確認します。通常、放射線科の外来で検査を行います。
血液検査
血液中の腫瘍マーカーの値を測定し、がんの活動性や再発の可能性、治療の効果判定の一部に用いられます。外来の検査科で検査を行います。
腹水検査
お腹に針を刺し腹水を吸引して採取します。そして腹水の病理検査を行い、がん細胞の有無を調べます。画像検査ではわからない細胞レベルの腹膜播種がないかどうか判定を行います。経過観察を兼ねて入院で行うことが多い検査です。
腹膜播種の治療法
腹膜播種の治療法は、がんの種類や進行度合い、患者さんの状態によって異なりますが、以下のものがあります。
化学療法
化学療法は、抗がん剤を用いてがん細胞の増殖を抑える治療法です。腹膜播種に対する化学療法は、全身化学療法と局所化学療法に分けられます。全身化学療法は、点滴や内服薬によって抗がん剤を全身に投与する方法です。腹膜播種の原因となっているがん細胞だけでなく、全身に広がっている可能性のあるがん細胞にも効果が期待できます。局所化学療法は、腹腔内化学療法や動注化学療法など、がん細胞が存在する特定の部位に抗がん剤を投与する方法です。全身化学療法に比べて、副作用を軽減できる可能性があります。化学療法は入院で化学療法を行うことが多いですが、一部外来加療に移行することができます。
放射線療法
腹膜播種に対して放射線療法を行う場合、化学療法の補助的な役割や症状緩和を目的とした外部照射を行います。副作用として、皮膚炎や消化器症状などが起こることがあります。
手術療法
手術は、可能な限りがん細胞を取り除く治療法です。腹膜播種の場合、がん細胞が広範囲に広がっていることが多く、手術だけで完全に治すことは難しい場合がありますが、手術でできる限り腫瘍を取り除くことで予後の改善が見込めたり、症状を緩和したりできる可能性があります。入院で外科や婦人科で加療が行われます。
「腹膜播種の自覚症状」についてよくある質問
ここまで腹膜播種の自覚症状を紹介しました。ここでは「腹膜播種の自覚症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
腹膜播種はCT検査で発見できるのでしょうか?
齋藤 雄佑 医師
数mmくらいの結節があれば、CT検査で腹膜播種を発見できるようになります。ただし、それ以下の結節や細胞レベルでの腹膜播種は画像検査ではわからないことも多く、腹水の採取や手術中に初めてわかることもあります。このように、初期の腹膜播種や小さな病変は、CT検査で発見しにくいこともあります。
編集部まとめ 腹膜播種を疑ったら、消化器内科を受診しよう!
腹膜播種が起こりやすいがんは胃がん、大腸がん、膵臓がん、卵巣がんなどです。しかし、このほかのがんでも起こる可能性があります。腹膜播種は、早期発見・早期治療が大切です。現在がんの治療後や治療中の場合には、ご自身の症状の変化に注意をしましょう。また、そのほかの方でも定期的な健康診断やがん検診を受け、気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。この記事が、腹膜播種に関する正しい知識を身につけ、適切な行動を取るための一助となれば幸いです。
「腹膜播種」と関連する病気
「腹膜播種」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
上記の病気は腹膜播種を起こしやすいがんです。しかし、他のがんでも腹膜播種を起こす可能性があります。がんの治療後や治療中である場合、気になる症状があれば主治医に相談をしてみましょう。
「腹膜播種」と関連する症状
「腹膜播種」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記の様な症状は腹膜播種で起こり得ますが、他の病気でも起こることがあります。症状だけでは腹膜播種の診断はできません。気になる症状が続く場合には、主治医、もしくは消化器内科で相談をしてみましょう。