「多発性骨髄腫」を発症すると「どこにどんな痛み」を感じる?医師が徹底解説!

多発性骨髄腫を発症するとどんな痛みを感じる?Medical DOC監修医がどこに痛みを感じるか・症状・原因・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
鎌田 百合(医師)
目次 -INDEX-
「多発性骨髄腫」とは?
多発性骨髄腫とは、血液細胞の一つである形質細胞という細胞ががん化した病気です。形質細胞は、体内に侵入した病原体と戦うための抗体を作る細胞です。この形質細胞ががん化することで、役立たずの抗体(Mタンパク)をたくさん作ってしまいます。このMタンパクが血液や臓器の中へ蓄積されることで、多彩な症状を起こします。
その代表的なものの一つが痛みです。痛みは、初診時におよそ半数以上の患者さんで認められるとの報告もあり、生活の質を下げてしまうため適切な対処が必要です。
それでは、多発性骨髄腫ではどんな痛みを感じるのでしょうか?痛みの特徴や治療法、対処法などについて詳しく解説します。
多発性骨髄腫を発症するとどんな痛みを感じる?
強い腰痛
多発性骨髄腫は、骨がもろくなりやすい病気です。
人間の骨は、骨を溶かす破骨細胞と骨を作る骨芽細胞がバランスよく働いています。
しかし多発性骨髄腫を発症すると、骨を溶かす破骨細胞が刺激され、骨が過剰に溶けてもろくなってしまいます。
骨がもろくなっていると、物を持ち上げる、前にかがむなどの軽い力が加わっただけで背骨(椎体)がつぶれてしまうことがあります。これを圧迫骨折といい、強い腰痛を起こします。圧迫骨折自体は比較的頻度の高い病気ですが、実は多発性骨髄腫が原因で発症する場合もあるのです。
下肢のしびれ
圧迫骨折を起こすと、腰の痛みだけでなくしびれや感覚異常を起こすことがあります。
圧迫骨折によってつぶれてしまった椎体が変形し、神経を圧迫することで起こります。しびれだけでなく、足の力が入りにくくなることがある場合もあり、注意が必要です。
鈍痛
破骨細胞が骨を破壊することで鈍痛が生じる場合があります。疼くような痛みと表現されたりもします。
多発性骨髄腫は全身の骨が破壊されていくため、さまざまな部位で鈍痛を感じる可能性があり注意が必要です。背骨、肋骨、骨盤、大腿骨などあらゆる骨に症状が出現する可能性がありますが、痛みの範囲や程度は人によってさまざまです。
多発性骨髄腫を発症すると、どこにどんな痛みを感じる?
腰の痛み
前述のとおり、骨がもろくなると椎体が潰れてしまい、圧迫骨折を起こしやすいことが知られています。圧迫骨折は腰の強い痛みを感じ、場合によっては動けなくなるほど痛むこともあります。
足の痛み
圧迫骨折によって神経が障害されると、足のしびれや痛みを生じる場合もあります。場合によっては足の筋力低下や、排尿障害、排便障害を合併することもあります。
また、多発性骨髄腫が腫瘤を作り脊髄を圧迫すると、足のしびれ、麻痺、排尿障害、排便障害などの症状が起こります。圧迫骨折と症状が似ていますが、この場合は早期に治療を行わないと両足の麻痺などが回復不可能な状況に陥るため緊急性が高く、早急な放射線照射などの治療が必要です。
胸の痛み
多発性骨髄腫では、体のあらゆる骨を破壊します。腰や背中が痛むこともあれば、肋骨、背骨、骨盤、大腿骨など、全身のあらゆる骨の痛みが起こります。
肋骨の病変は胸の痛みを生じます。肋骨が折れた場合は、骨折による激痛を感じることがあります。
多発性骨髄腫の代表的な症状
多発性骨髄腫の症状は痛みだけではなく、さまざまな症状が起こります。以下に代表的な症状を解説します。
めまい、吐き気
骨が溶けることで、血液中のカルシウム濃度が高くなり、高カルシウム血症を発症します。
高カルシウム血症は、めまい、口の渇き、吐き気、食欲不振といった症状が出現します。重症化すると、意識障害が起こる場合もあります。
むくみ
骨髄腫細胞が作り出した大量のMタンパクは、血液中を流れ各臓器に蓄積されます。血液をろ過する臓器である腎臓に大きな負担がかかり、腎臓の機能が悪くなり、むくみが起こります。腎臓が悪くなると、ほかにも尿量が減るといった症状が出る場合もあります。
動悸、息切れ
骨髄腫細胞が増殖することで、正常な血液を作る働きが低下します。その中でも赤血球が減少すると、動悸、息切れなどの貧血症状が起こりやすくなります。
多発性骨髄腫を発症する原因
多発性骨髄腫は血液中の形質細胞ががん化する病気ですが、その原因ははっきりとはわかっていません。
多発性骨髄腫の検査法
多発性骨髄腫を疑った場合は、以下のような検査を行い診断します。骨髄腫細胞の有無やMタンパクを調べ、骨の状態、貧血の状態、治療方針を決めるための全身の臓器の合併症の有無などを調べていきます。
血液検査、尿検査
ヘモグロビン、白血球、血小板などを検査し、造血能を調べます。治療方針の決定のため、肝臓や腎臓などの機能が問題ないか確認します。
また、血液検査でMタンパクが増加しているかどうかを確認します。血液中でMタンパクが増えていなくても、尿中にベンスジョーンズ蛋白というMタンパクが排出されている場合もあるため、尿の検査も行われます。
骨髄検査
骨の中にある骨髄に針を刺して骨髄液を採取し、多発性骨髄腫の細胞の種類や悪性度を検査します。細胞の表面マーカーを調べ、腫瘍に特徴的なマーカーがあるか調べます。また、染色体検査で予後を推定します。
骨髄検査は血液検査や画像検査などで多発性骨髄腫が疑われた場合に、診断をするために行われます。
CT、MRI、X線
骨病変の検索のために、画像検査を行います。骨の病変があるか、病的骨折があるかなどについて確認します。より詳細な病変を確認するためには、PET CTという検査を行う場合があります。
PET CTは、ブドウ糖にがんが集まる性質を利用し、FDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を用いて、がん細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を確認することで病変の詳細な広がりを調べることができる検査です。
多発性骨髄腫の治療法
薬物治療
多発性骨髄腫の治療は、抗がん剤による化学療法が中心となります。血液内科が治療を担当します。
抗がん剤は、様々な種類の薬剤を複数組み合わせて行います。近年は新規薬剤と呼ばれるボルテゾミブ、レナリドミドなどの薬剤が使用できるようになりました。さらには分子標的薬であるカルフィルゾミブ、ダラツムマブ、イキサゾミブ、エルラナタマブなどが治療選択肢に加わりました。近年では細胞免疫療法であるCAR-T療法も行われるようになっており、患者さんの全身状態、病気の状態などで治療が選択されます。
放射線治療
骨髄腫細胞は放射線への感受性が高く、骨痛の緩和や骨折の予防が期待できるため、局所療法として行われる場合があります。また、多発性骨髄腫の腫瘤が脊髄を圧迫している場合、すみやかな放射線治療が必要です。
緩和的な放射線治療では放射線量は少なく、局所的に照射するため副作用も比較的少ないとされています。放射線科が主体となって治療が行われます。
支持療法
多発性骨髄腫は多彩な症状が起こるため、症状に対する治療も同時に行われます。
骨の痛みに対しては鎮痛剤の投与が行われます。圧迫骨折を起こしている場合はコルセットを使用すると症状が緩和します。さらに、もろくなった骨を強化するため、ビスホスホネート製剤などの薬物治療で骨を強化します。
貧血が高度の場合は、輸血が行われる場合もあります。
「多発性骨髄腫の痛み」についてよくある質問
ここまで多発性骨髄腫の痛みなどを紹介しました。ここでは「多発性骨髄腫の痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
多発性骨髄腫が進行するとどんな症状が現れますか?
鎌田 百合 医師
多発性骨髄腫は多彩な症状を引き起こします。代表的な症状に、骨痛、貧血、めまい、むくみ、しびれなどがあります。
また、免疫を担当する形質細胞ががん化する病気のため、感染症を起こしやすいことも特徴です。
多発性骨髄腫の進行速度はどれくらいでしょうか?
鎌田 百合 医師
多発性骨髄腫の進行速度は、病気のステージや診断時の状況によって異なるため、一概には言えません。
R-ISS分類という病期分類は、染色体異常、血清乳酸脱水素酵素(LDH)、血清アルブミン値、β2ミクログロブリン値で決定され、おおよその予後が推定されます。治療は、全身状態やステージなどを総合的に考え決定されます。医師とよく相談して治療を行いましょう。
まとめ
多発性骨髄腫で起こることの多い痛みについて解説しました。痛みは多発性骨髄腫に多い症状で、生活の質を大きく下げてしまいます。痛みが強い場合は、医師に相談して症状緩和の治療を受けるようにしましょう。
「多発性骨髄腫」と関連する病気
「多発性骨髄腫」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
整形外科の病気
- 圧迫骨折
腎臓内科の病気
- ネフローゼ症候群
- アミロイド腎症
血液内科の病気
- 貧血
- アミロイドーシス
- 原発性マクログロブリン血症
- POEMS症候群
電解質の異常
多発性骨髄腫は骨をはじめ、体のさまざまな臓器に症状を起こします。
「多発性骨髄腫」と関連する症状
「多発性骨髄腫」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
多発性骨髄腫は上記のような多彩な症状を起こす病気です。このような症状が起きた場合は、医療機関を受診してください。

